オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.63 “アレシュ・バールタ” 特別インタビュー

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インタビュー

2月23日(土)14時開催「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.63  世界のオルガニスト 」の奏者として登場するアレシュ・バールタは、チェコを代表する世界的オルガニストのひとり。
1984年プラハの春国際音楽コンクールオルガン部門をはじめ、数々のコンクールで優勝を果たしました。
圧倒的技巧を誇るバールタですが、その中でも特にバッハ演奏は格別です。
今回の京都公演では「バッハへのオマージュ」と題して、バッハ自身の作品や彼から影響を受けた作曲家による作品を披露します。

コンサートを一ヶ月後に控えたいま、「オルガン奏者アレシュ・バールタ」についてもっと知るために特別メールインタビューを実施しました。
公演チラシだけでは分からない、バールタの魅力が透けて見えてくるような内容となっています。

アレシュ・バールタ ©Hikaru☆

――バールタさん、こんにちは。このたびはバールタさんのオルガン演奏をたっぷりお聴き出来るので、とても嬉しいです。
それではまずはじめに、バールタさんとパイプオルガンとの出会いを教えていただけませんでしょうか。

アレシュ・バールタさん(以下、敬称略):私がオルガンに出会ったのは、12歳の時です。その時、通っていた音楽学校に電動式オルガンが設置されました。それをきっかけに、オルガンを学ぶようになりました。
その後、14歳の時にオロモウツ(チェコの都市。モラヴィア地方の中心に位置する)で開催された国際オルガン・フェスティバルを訪れました。そしてそのときに、ドイツのオルガニスト ヨハネス=エアンスト・ケーラー氏が演奏するバッハの《フーガの技法》を聴きました。本当に衝撃的な演奏でした。

――バールタさんをそこまで惹きつけるパイプオルガンの魅力って、どのようなところにあるのでしょうか。

バールタ:オルガンに関する文献って広範囲にわたってたくさんあります。パイプオルガンも、みんな同じ楽器に見えるかもしれませんが、それぞれに建築様式があって、それぞれにキャラクターがあるのです。そういったところに大変魅了されます。

――京都コンサートホールのパイプオルガンも個性的な楽器です。フランス様式とドイツ様式を融合したような楽器で、どちらの良い面も持っている楽器です。
ところで、バールタさんは普段、どのような活動をなさっているのでしょうか。

バールタ:いろいろな活動をしています。
オーケストラと一緒にオルガン協奏曲を演奏することもありますし、オルガン・リサイタルを開催することもあります。
オーケストラの中で演奏することもありますし、室内楽、管楽器奏者や歌手達との演奏活動も行っています。
日本でも人気のホルン奏者ラデク・バボラーク氏とも度々共演しています。

アレシュ・バールタ

――多彩な活動をなさっているのですね。そういえばバールタさんは、2016年4月に京都市交響楽団と共に京都コンサートホールでR. シュトラウスの《ツァラトゥストラはかく語りき》を、そして翌日の大阪特別公演ではサン=サーンスの《交響曲第3番「オルガン付き」》を演奏なさっていましたね。
ところで、少し楽器の話に戻したいと思います。さきほど「パイプオルガンには様々な建築様式がある」とおっしゃっていましたよね。わたしたちは、ドイツやフランスのオルガンには比較的馴染みがあるのですが、バールタさんの故郷であるチェコのパイプオルガンについてはほとんど知識がありません。
どのような楽器なのでしょうか?

バールタ:チェコにはバロック・オルガンやロマンティック・オルガン、そしてシンフォニック・オルガンがあります。なかでも、バロック・オルガンは、限られた範囲で演奏技術を駆使するという面で、私にとっては大変興味深いパイプオルガンです。

――さきほども話題に出ましたが、バールタさんは2016年すでに京都コンサートホールのパイプオルガンを演奏なさっていますよね。つまり、京都コンサートホールのパイプオルガンを知っていらっしゃいます。
その時、楽器としてどのような印象を持たれましたか?

バールタ:京都コンサートホールのパイプオルガンを演奏した時「美しい」と思い、あの楽器が好きになりました。
マエストロ広上淳一との演奏は、いまでも素晴らしい思い出です。

――良い印象を持ってくださっていて嬉しいです、ありがとうございます。
さて、今回の京都公演でもバッハを演奏してくださいますが、バールタさんはバッハ演奏をお得意とされていますよね。
バッハの作品を多く録音され、よく演奏されています。
バールタさんが、バッハ作品を演奏するときに心がけていらっしゃることがありましたらぜひ教えてください。

バールタ:私は特別なことはしていません。
私はすべてのバッハ作品を演奏しましたが、彼の音楽が備える「奥深さ」にずっと魅了されてきました。
もちろん彼の作品を演奏する時は、オルガンのストップ(音栓)や音、曲の形式など、それら全てを常に考慮しながら弾いています。
しかし、バッハ作品の不思議なところは、そういうものから自然とイメージが湧き上がってくる点です。だから、私は様々なことに考慮はしていますが、特別なことは何もしていません。

アレシュ・バールタ

――それでは次に、今回の京都公演に関する質問をさせてください。
このプログラミングはどのような意図でされたのでしょうか?

バールタ:オルガンについてあまり知らない方や、これまで聴いたことがないという方にもオルガンの素晴らしさをアピールできるようなプログラムを用意しました。
コンサートの第一部では、有名なバッハの《トッカータとフーガ ニ短調》を、そして第二部では、ロマン派を代表する作曲家フランツ・リストによる「B-A-C-H(ドイツ音名。シ♭-ラ-ド-シのこと)」の主題を扱った《バッハの名による前奏曲とフーガ》を演奏します。
どちらも技巧的で聴き応えのある作品ですが、前者はバロック時代の様式美が垣間見えます。後者は「ヴィルトゥオーソ」と呼ばれたリストの片鱗をうかがわせるような作品に仕上げられています。

――バッハ以降の作曲家は皆、彼から影響を受けてオルガン作品を作曲したと言っても過言ではないほど、バッハの影響力ってすごいですよね。
それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

バールタ:日本の聴衆の皆さんは、とても親切ですし、感受性豊かで私は大好きです。
京都コンサートホールの美しいオルガンの音色を是非楽しんで頂きたいと思います。

――バールタさん、お忙しいところご協力いただきまして、誠にありがとうございました!演奏会当日、バールタさんのオルガン演奏が聴けるのを今から楽しみに待っています!

(2019年1月10日 京都コンサートホール事業企画課メールインタビュー)

★公演情報はこちら→「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.63