【NDRエルプフィル特別連載①エレーヌ・グリモー】「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」(伊熊よし子、音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

投稿日:
京都コンサートホール

15年ぶりに京都公演を行う、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)。約2ヶ月後に控えた公演に向けて、当ブログにて4回に渡って、出演者に注目する特別連載をいたします。

第1回は、今回エルプフィルと共演する、フランス出身の世界的ピアニストのエレーヌ・グリモーについてお届けします。約30年前から彼女を知る、音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんに特別寄稿いただきました。

11月1日(木)19時開演の公演詳細はこちら

(C)Mat Hennek

「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」
伊熊 よし子 (音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

エレーヌ・グリモーには初来日した17歳のころから取材を続けているが、性格も演奏も著しく変貌。当初より雄弁になり、表情も明るく、自信がみなぎるようになった。

「いろいろ回り道をしてきましたが、いまようやく自分が本当にしたいことができるようになったのです。私は子どものころからさまざまな問題を抱え、両親が扱いに困るような子でした。パリの音楽院に通っていたころも友だちはできず、いつもひとり。ベートーヴェンやブラームス、ロシア作品を弾きたいと思っていたのに、先生からは幅広い作品をまんべんなく学ぶようにいわれ、自分が弾きたい作品は弾かせてもらえなかった。次第に学校に行きたくなくなり、ひきこもりになったの」

子どものころからベートーヴェンに惹かれていた。「ベートーヴェンとともに人生を歩んできたといっても過言ではない」と語る通り、演奏する機会のないピアノ・ソナタやピアノ協奏曲をいつもひとりで弾いていた。

「ベートーヴェンは常に新しいことを目指しながらも古典的な形式に根差し、伝統を重んじる作品を書きました。伝統と革新、この両面が見事に融合されて、すばらしく大きな美の世界が生まれる。ベートーヴェンのソナタやコンチェルトを演奏していると、ひとりの偉大な人間に対する理解が深まっていく。ただし、それらの作品は容易に手の内に入るわけではありません。何度もコンサートにかけ、聴衆の反応を見て、奏法、表現、解釈を深めていかなくてはならないのです」

(C)Mat Hennek

ベートーヴェンの作品は、演奏するたびに常に新たな発見があるという。それがベートーヴェンのすばらしさであり、音楽家を惹きつけてやまないところなのだろう。

「ベートーヴェンは人間的にとても魅力的な人だったと思いますし、できることなら実際にお会いしたかった(笑)。人格の深さ、心の広さ、すべてが作品に表れています。私がもっとも多く演奏しているのはピアノ協奏曲第4番ですが、これはとても独創的で哲学的です。リリカルで詩的な面もあり、ラプソディーの要素も含まれていますよね。第1楽章の出だしも非常に美しいのですが、私はとりわけ第2楽章のオーケストラとピアノの音の対話に感銘を受けます。ことばでは表現できないほどの崇高さも秘めている。なんと魔力的な楽章なのでしょう。第5番《皇帝》の第2楽章も同様ですが、ベートーヴェンのいずれのコンチェルトも第2楽章はオリジナリティにあふれ、弾いていて幸せな気分になります」

グリモーは服装もメイクもごく自然でシンプル。それにもかかわらず、出身地のエクサンプロヴァンスの美しい色彩と馨しい香りをただよわせている。私は料理好きの趣味が高じてアーティストに自分のレシピを捧げているのだが、彼女には「白身魚のポワレ」を献呈。野菜たっぷりのラタトゥイユも彩り豊かに仕上げ、グリモーの説得力の強い、多種多様な色彩感を内包した演奏とリンクさせた。ピアノ協奏曲第4番の第2楽章が思い浮かぶように。


伊熊 よし子(いくま・よしこ)

音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社勤務、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、1989年フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。アーティストのインタビューの仕事も多い。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)、「図説 ショパン〈ふくろうの本〉」(河出書房新社)、「伊熊よし子のおいしい音楽案内―パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)、「ショパン大全集」(ユーキャン 共著)などがある。http://yoshikoikuma.jp/

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー特別連載②】進々堂 続木社長インタビュー(前編)

投稿日:
アンサンブルホールムラタ

2018年に没後100年を迎えるドビュッシーに焦点をあてたスペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家クロード・ドビュッシー》では、京都の老舗ベーカリーの進々堂様と特別コラボレーションをし、ご来場のお客様に記念パティスリーをプレゼントします。

シリーズをより知っていただく特別連載の第2回として、京都コンサートホールと一緒にコラボレーション内容を考えてくださった株式会社進々堂の続木創社長に、パティスリーの魅力をはじめ、パン作りや音楽についてお話を伺いました。非常に濃密な内容となりましたので、前編・後編と2回に分けてお送りします。

*  *  *

★コラボレーションについて★

――改めまして、この度は京都コンサートホールとのコラボレーションをお引き受けいただき、ありがとうございます。これまで、今回のように異ジャンルとのコラボレーションをされたことはございますでしょうか?

続木社長:はい、一番面白かったのは、京都市美術館がバルテュス展(2014)を開催した時のコラボレーション。美術館のみではなく、京都市内のいろんなところにバルテュスに関連したものが存在するような環境を作りたい、ということでバルテュスに因んだメニューを進々堂のレストランとカフェで出して欲しいというご依頼でした。
バルテュス未亡人が日本人の素敵な女性という幸運もあり、バルテュスが生前好物にしていた食事につき奥様にいろんなお話を聞くことができました。ところがこれが結構ハードルが高くて、「パン・ド・カンパーニュにハムを挟んだシンプルなサンドイッチ」とか、「スパゲッティも塩とバジルだけのシンプルなもの」とか。実はそういうのが一番難しいんですよね。あとは「チョコレートムースが好きだった」というお話もあったので、四苦八苦しながらも何とかメニューとしての体裁を整え、奥様に試作品を食べていただきOKが出たときにはみんなで大喜びしました。それまで知らなかったバルテュスという画家を身近に感じるようになって、とても楽しい仕事になりました。

 

――とても面白い試みですね!コラボレーションをするには時間もエネルギーもかかるかと思いますが、どういったところにコラボの価値を見出されますか?

続木社長:このようなコラボレーションをすると、僕にとっても社員にとってもとても良い刺激になります。やっぱりパンはヨーロッパの文化の中で育まれたものなので、「芸術家がどのようにパンを楽しんでいたか」を再現してみると、社員たちにとってもイマジネーションをふくらませる良い助けになります。そして、自分たちの仕事のルーツみたいなところを再確認することにもなります。普段なかなかここまで手間暇かけて商品開発は出来ないんですが、実際にコラボレーションに取り組ませることで、これだけ広がりがあって楽しいことができるということが社員たちの気持ちの中に芽生えます。今回のコラボレーションを担当した社員たちも、「仕事が全部こんなんだったら楽しいのにな」と言いながらやっていますよ。なおかつお客様にも進々堂の「食文化に対する姿勢」みたいなものが伝われば良いな、と社長としてはそういう打算(?)をたくさん持ってやっています(笑)。

★今回のコラボレーションと特別パティスリーについて★

――コラボレーションはパン作りの原点を見直す大切な機会なのですね。社員のことを大切に、そして真剣に考えていらっしゃる続木社長の想いがとても伝わってきました。
ところで私どもの企画である、京都・パリ友情盟約締結60周年・日仏友好160周年・ドビュッシー没後100年 スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》とのコラボレーションについてもお話を聞かせていただけますでしょうか。

続木社長:京都市・パリ市の60周年という記念すべき年に、進々堂がこのような形で関われるというのはとても光栄だと思っています。しかもドビュッシーの没後100年という時に、ドビュッシーにちなんだものを作れるというのはとても楽しいです。

 

――そう言っていただけて嬉しいです!今回のコラボレーションでは、とても素敵なパティスリーを作っていただきましたが、完成までにはどのような経緯があったのでしょうか?

続木社長:もともとは、ドビュッシーの生家があるサン=ジェルマン・アン・レー(SaintGermain-en-Laye) にある「メゾン・グランダン(Pâtisserie Grandin)」という老舗洋菓子屋さんの「ル・ドビュッシー(Le Debussy)」というチョコレート菓子を作ろうと真剣に考えました。ところが取り寄せて試食してみたら、味そのものがイマイチしっくりこなかったんですよね。その他にも色々難しい条件もあったので結局「ル・ドビュッシー」を作るのは諦めて、高野さん(京都コンサートホール 事業企画課)と相談しながらどんなことができるか考え、生まれたのがこの3つのパティスリーです。

――この3つのパティスリーはどうのように開発なさったのでしょうか?

続木社長:奇をてらうのではなく、もともとフランスの食文化の中にあるものを応用しながら、何か新しいものを作りたいと思いました。結局、第1回ではアーモンドクリームを包みこんだブリオッシュ、第2回では様々な形のフィナンシェ、そして第3回では南西フランス・ボルドー地方の伝統菓子カヌレにオレンジ・リキュールをきかせたものになりました。フランスの伝統的な「美味しさ」をうまく組み合わせて、今回のイベントにふさわしい味を作り出そうという試みだったんです。

例えば、第1回のブリオッシュ生地にアーモンドクリームを包んだヴェノワズリー(注:卵や牛乳、砂糖などを用いたリッチなパンの総称)なんてあって不思議じゃないのに、なぜか今まで無かった。第3回のカヌレも、カヌレに「グラン・マルニエ」のオレンジ・リキュールを加えるなんて今まで誰もやってないと思うんですけれど、やってみたらすごく美味しかったんです。「こんなに美味しいのになんで今までなかったのかな」というものを目指したので、皆さんがどのように召し上がってくださるかとても楽しみです(※詳しくは、当ブログ「進々堂様ご提供の特別パティスリー、詳細決定!」をご覧ください)。

★ドビュッシーについて★

――さて、続木社長はクラシック音楽がお好きだと聞きましたが、ドビュッシーはお好きですか?

続木社長:ドビュッシーはとても好きな作曲家です。僕自身はどちらかというと、バッハ、モーツァルトからベートーヴェン、ブラームスという流れのドイツ・クラシックが好きなんですけど、フランス音楽の中でも印象派のラヴェルやドビュッシーは好きです。実は僕は子供の頃からヴァイオリンを習っていて、学生時代に弦楽四重奏もやったのですが、ラヴェルの弦楽四重奏曲は弾いたことがあります。ドビュッシーも演奏したかったんですが、実はドビュッシーの方がずっと技術的に難しくて諦めました。でも、ロマン派以降の弦楽四重奏曲で一番好きな曲はと訊かれたら、多分ドビュッシーと答えます。特に子守唄のような第3楽章が好きですね。

それから今回のコラボレーションがはじまってもっとドビュッシーについて知りたいと思い、ドビュッシーの伝記、島松和正著 『ドビュッシー: 香りたつ音楽』(講談社エディトリアル刊)を読みました。お医者さんが書かれたすごく素敵な本で、ああいうディレッタンティズム(注:芸術や学問を趣味や道楽として愛好すること)ってすごいと思いました。読んでいて本当に楽しかったです。
今はユーチューブで世の中の曲ほぼ全てが聴けますよね。その伝記を読みながら、曲名をユーチューブに入力するとほとんど全部聞けてしまってびっくりしました。そして知ったのですが、ドビュッシーって若い頃に素敵な歌曲を本当にたくさん書いているんですね。後年に書かれた管弦楽曲とかは結構聞いていたんですけど、今回この企画に関わったおかげで若かりし日にドビュッシーが書いた歌曲たちという新しい世界を知ることができました。こういう出会いって本当に嬉しいものですね。

* * 後編につづく * *

(2018年7月4日京都コンサートホール事業企画課インタビュー@進々堂 本社)

*  *  *

スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》の特設ぺージはこちら。

京都コンサートホール×ニュイ・ブランシュKYOTO 2018 「瞑想のガムラン――光と闇に踊る影絵、覚醒の舞」

投稿日:
京都コンサートホール

みなさん、「ニュイ・ブランシュ(白夜祭)」というイベントはご存知でしょうか?
「ニュイ・ブランシュ」とは、パリ市が毎秋行う一夜限りの現代アートの祭典のこと。京都・パリ友情盟約締結60周年にあたる今年、日仏の現代アートを楽しめる「ニュイ・ブランシュKYOTO」が市内各所で盛大に開催されます。

今年のテーマは「五感」!視覚、聴覚はもちろんのこと、触覚、味覚、そして嗅覚を刺激するアートが、街のいたるところで繰り広げられます。
そこで京都コンサートホールでは、2018年に没後100年を迎えるフランス人作曲家クロード・ドビュッシーが大きな影響を受けた、インドネシアの伝統楽器「ガムラン」演奏と影絵「ワヤン」を皆さまにお届けします!

ガムラン
ワヤン(影絵)

ドビュッシーとガムランとの出会いは1889年にまでさかのぼります。その年、フランス革命100周年を記念して4回目のパリ万国博覧会が開催されました。エッフェル塔が建設されるなど、これまでにない盛り上がりを見せたこの記念すべきイベントで、作曲家クロード・ドビュッシーは「ガムラン」を初めて見聞きしたのです。その出会いは彼にとって衝撃的なものだったようで、友人のピエール・ルイスに宛てて次のように書き残しています。

ジャワの音楽を思い出してくれ。あらゆるニュアンスを、もうなんとも形容しがたいニュアンスまでも含んでいたではないか」。

とてもユニークで神秘的な響きを持つガムラン音楽。その秘密は、「スレンドロ」や「ペロッグ」と呼ばれるガムラン特有の音階にあります。「スレンドロ」とは一オクターブをほぼ均等に分ける五音音階、「ペロッグ」とは一オクターブを不均等に分けた七音音階のことです。先のパリ万博でドビュッシーが聴いたとされるガムラン音楽には、スレンドロ音階が使われていたと言われています。それを聴いたドビュッシーは、さっそく自らも5音音階を用いて作曲を試みましたが、あのガムラン独特の響きは再現出来ませんでした。それはなぜでしょうか?

その答えは「音律」です。スレンドロ音階では、五音の音程関係は固定されません。ところが、クラシック音楽で用いられる音律は「平均律(1オクターブを12音で均等に分ける方法)」。平均律では音程幅が固定されるので、スレンドロ風に5音を選んでも、均一な響きになります。つまりドビュッシーがガムラン風に作曲したとしても、基本の音律が異なるために、あの独特な響きを生み出すことは不可能なのです。ところが、このガムランとの出会いはドビュッシーの作曲家人生におけるターニングポイントとなり、「ドビュッシーらしい」響きを生み出すきっかけとなったのでした。

さて、今回のニュイ・ブランシュはそんなガムラン音楽を京都コンサートホールで聴くことが出来る、滅多とないチャンスです!
場所はホールではなく、京都コンサートホール1階のエントランスホール。演奏はインドネシア伝統芸能団「ハナジョス」の2人が担当します。

ハナジョス

身体に響きわたるガムラン音楽に酔いしれながら、幻想的なインドネシアの影絵「ワヤン」やバリ料理(特別出店・京都北山ダイニングカフェ バリガシ)も同時にお楽しみいただける、特別な一夜を演出します。入場は無料、21時30分スタート予定です。ぜひ、秋の夜長を京都コンサートホールでお過ごしくださいね。

 


出演:インドネシア伝統芸能団ハナジョス(ローフィット・イブラヒム&佐々木宏実)
入場無料(定員100名)
日時:2018年10月5日(金)21時30分開始予定(21時開場/22時30分終了予定)
場所:京都コンサートホール1階 エントランスホール
主催:京都コンサートホール(公益財団法人 京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市
協力:北山街協同組合
特別出店:ダイニングカフェ・バリガシ https://baligasi.com/
お問い合わせ:京都コンサートホール ☎075-711-2980 ※第1第3月曜休館(休日の場合は翌平日)

181005Nuit Blanche KYOTO 2018 English Flyer

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー特別連載①】ドビュッシーとパン(牧神)

投稿日:
京都コンサートホール

2018年に没後100年を迎えるフランスの作曲家ドビュッシーを讃えて、全3回のスペシャル・シリーズ『光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー』(10/13、11/10、11/23)を開催いたします。

よりドビュッシーを知っていただくため、そしてこのシリーズをより楽しんでいただくため、本ブログで特別連載を行います。

連載の第1回目は、本シリーズの第2回『ベル・エポック~サロン文化とドビュッシー~』で演奏される《ビリティスの3つの歌》をはじめとする3作品から、ドビュッシーとパン(牧神)の関係に迫ります。

* * *

牧神の午後への前奏曲、シリンクス、ビリティスの3つの歌。
ドビュッシーが残したこの3つの作品に共通するもの――それは「パン(牧神)」です。

ルーベンス:パンとシュリンクス

「パン(牧神)」とはギリシャ神話に登場する牧人と家畜の神。顎髭を生やし、山羊の角と脚を持ち、半人半獣の姿をしています。そしていつもトレードマークとも言われる「パンの笛」と呼ばれる笛を手にしているのですが・・・。この「パンの笛」とはいったい何でしょう?

パンは大の女好きでした。毎日、森や川の女神(ニンフ)を見つけては追いかけまわし、見つけては追いかけまわし・・・の繰り返し。そんなある日、パンは「シュリンクス(フランス語読みではシランクス)」というニンフに出会いました。女好きのパンはもちろんシュリンクスに声を掛けますが、パンのその醜い容姿に恐れおののいたシュリンクスは逃げ回ります。でも、パンの恋心は高まるばかり。あきらめきれないパンはしつこくシュリンクスを追いかけまわし、とうとう川辺まで追い詰めました。そしてパンがシュリンクスを抱きしめようとした瞬間・・・!シュリンクスは神に助けを求め、その姿を葦(あし)に変えてしまいました。
シュリンクスを失い悲しみに暮れるパン。するとヒューっと風が吹き、その風にそよいで葦が音を鳴らしました。その音色はまるでシュリンクスの声のよう。葦に彼女の姿を重ねたパンは「少なくとも、あなたの声と共にいることができた」と喜び、その葦を束ねて笛を作りました。そしてその笛に「シュリンクス」と名前をつけて、肌身離さずいつも身につけていたといいます。この「シュリンクス」と名づけられた笛が「パンの笛」です。

 

ドビュッシーはなぜこの「パン(牧神)」をテーマに3つの作品を書いたのでしょうか?

そのひとつのきっかけとなったのが、19世紀を代表するドイツの大作曲家、リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の存在です。

リヒャルト・ワーグナー

ドビュッシーが生まれる1年前の1861年、ワーグナーの楽劇「タンホイザー」のパリ初演がオペラ座で行われました。結果的には大失敗となったこの初演ですが、パリの文化人には多大な影響を与えることとなったのです。中でも、ボードレール(ドビュッシーが最も好きな詩人として名を挙げた人物)は『リヒャルト・ワーグナーと《タンホイザー》のパリ公演』を執筆しワーグナーを称え、マラルメ(「牧神の午後への前奏曲」の作者で、19世紀フランス印象派最大の詩人)は『ワーグナー論評』に論文を寄稿したというように、とりわけ文学者から絶大な支持を得ました。しかし音楽家にとって、このワーグナーの影響は少し違うものでした。ワーグナーが独自の手法で己の音楽様式を確立していく中で、フランスの音楽家たちはワーグナーの音楽に対してフランス独自の音楽を生み出すことの必要性を感じたのです。さらに、その思いに拍車をかけたのが1871年普仏戦争の敗戦。これまで音楽をはじめとする文化の中心地であったフランスですが、この敗戦を機にドイツの存在を意識せざるを得なくなります。そしてそれはドビュッシーが活躍する19世紀末まで続いたのです。サン=サーンス(1835-1921)は1871年に国民音楽協会を設立、フォーレ(1845-1924)らとともにフランス音楽の再興に尽力、近代フランス音楽の基礎を築きました。続くラヴェル(1875-1937)は古典的な形式や表現に回帰し、若くして独自の様式を確立。ドビュッシーはというと、全音音階や半音階、五音音階やギリシャ旋法を用い、これまでの調性・機能和声からの逸脱を図り独自の手法を見出したのですが、それらを音楽の中で実現する格好の題材のひとつがギリシャ神話、とりわけ「パン(牧神)」、そしてパンの笛から奏でられる音楽だったのです。

《牧神の午後への前奏曲》はマラルメの詩『牧神の午後』の官能的で夢幻的な世界を描写した作品ですが、この作品によりドビュッシーは独自のスタイルを確立するとともに、20世紀音楽の扉を開いたとも言われています。《シリンクス》(作曲当初は《パンの笛》と名付けられていました)では、音階や旋法を駆使してパンが奏でるその笛の音を、そしてギリシャ神話の世界を、たった1本のフルートで見事なまでに表現。《ビリティスの3つの歌》でもその東方的な旋律で、瞬く間に人々をドビュッシーの世界に惹きこみます。

ドビュッシーは「パン(牧神)」を通じて自らの音楽を創出していったのです。

* * *

さて、ここまで書いてきたことはドビュッシーのほんの一面に過ぎません。ドビュッシーにはまだまだ我々が知らないたくさんの魅力が隠れています。

そんなドビュッシーを、そして彼の音楽をより深く知っていただくため、京都コンサートホールではスペシャルシリーズ『光と色彩の作曲家クロード・ドビュッシー』を開催いたします。計3回にわたるコンサートでは、ドビュッシーに精通した専門家によるナビゲーションとともに、ドビュッシーにまつわる様々な作品をお届けいたします。

ドビュッシーを知りたくなった方、ますますドビュッシーに興味を持った方。この機会にドビュッシーの世界に浸ってみませんか?

スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》の特設ぺージはこちら。

(京都コンサートホール 事業企画課)


【参考文献】
広瀬大輔 2018 「パリでわき起こったワーグナーへの熱狂」産経新聞社『モーストリー・クラシッック』254: 56
大嶋義実 2014 「無伴奏フルートアナリーゼ」アルソ出版『ザ・フルート』139: 56-57
松本 學 2012 「連載 Wagneriana ワグネリアーナ~ワーグナーにまつわるあれこれ 2」(『東京・春・音楽祭』ウェブサイト内) http://www.tokyo-harusai.com/news/news_1047.html (2018年8月2日閲覧)

オルガニスト大木麻理 特別インタビュー(9/8オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.62「オルガニスト・エトワール」)

投稿日:
インタビュー

人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」の62回目、“オルガニスト・エトワール”にご出演いただく大木麻理さん。

大木さんは、第3回ブクステフーデ国際オルガン・コンクール優勝など輝かしい受賞歴を持つ、今注目のオルガニストです。その活躍は飛ぶ鳥を落とす勢いで、今年4月からミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストに就任されました。

今回、京都コンサートホール初登場を記念して、国内オルガニストの期待の星“エトワール”である大木さんに、オルガンの魅力や珍しい和太鼓との共演についてなど色々とお話を伺いました。

――こんにちは!この度はお忙しい中ありがとうございます。
まず大木さんのオルガンとの出会いをお聞かせいただけますでしょうか?

大木さん:小学校4年生の時に、地元静岡に新しいコンサートホールが完成し、そこにパイプオルガンが入りました。市民を対象に新しいオルガンの見学会が開催され、そこに参加したのがオルガンとの出会いです。
その豪華な見た目と、音色に一瞬で心をつかまれ・・・今に至ります!

――パイプオルガンは他の楽器にはない圧倒的な存在感がありますよね。大木さんにとって、パイプオルガンの魅力とは何でしょうか?

大木さん:心の琴線に触れるような繊細な音色から、天地がひっくり返りそうなダイナミックな音まで、一人で奏でることができることです。
また手だけではなく足を使って演奏したり、ストップ操作など、大きなおもちゃを操っている様な感覚になります。

――オルガニストの方々が両手両足を駆使して、大きなオルガンから様々な音色を引き出されている様子にはいつも感銘を受けます。この4月から務めていらっしゃる「ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト」について、具体的にどのようなお仕事をなさっているのか教えていただけますでしょうか。

大木さん:ソロやオーケストラとの共演など演奏のお仕事はもちろんのこと、「弾き込み」と称して、ホールが空いている時間は出来るだけ多くの時間楽器を鳴らすようにします。その中で楽器に不調がないか、チェックをしてオルガンが常に良い状態に保たれるように努めています。また外部からオルガニストをお招きする際には、その公演が円滑に進み、気持ちよく演奏をしていただくために“黒子”のような存在になることもあります。
そしてオルガンの魅力を一人でも多くの方に知っていただくため、オルガンの見学会やレッスンなども行っています。

(C)Mari Kusakari

――演奏だけでなく、様々な形でオルガンと関わっていらっしゃるのですね。大木さんは大学で教鞭も取られていますが、「教える」ことはお好きですか?また、「教える」ことによってオルガン演奏にどのようなプラス面がありますか?

大木さん:教えることは好きです。大きなやりがいを感じています。自分が教わってきたことを多くの人に伝えたいと思いますし、そのことがオルガンを習う人にとって何か助けになると嬉しいと考えています。レッスンをすることで音楽や演奏法などを客観的にそして冷静に見ることができ、自分が弾いている時には気付かない悪い癖などを知ることができます。
逆に生徒さんのオルガンと向き合う姿勢から学ぶことも沢山あり、レッスン後にはいつもオルガンが弾きたくなるんです!

――レッスン後でも弾きたくなるほど、オルガン愛に満ち溢れた大木さんから教えてもらえる生徒さんは幸せですね!
今回の演奏会では和太鼓との珍しいデュオを聞かせてくださいますが、なぜ今回和太鼓を選ばれたのでしょうか?

大木さん:いつかオルガンとコラボレーションしたい楽器の筆頭に「和太鼓」がありました。私の長年の夢だったのです!躍動感溢れる音、リズム、そして奏者の肉体と(誤解しないで下さい 笑)魅力的な要素が沢山詰まった楽器だと思います。

そしてもう一つの理由にオルガンと打楽器の相性の良さがあります。オルガンは繊細な音から地を揺らすような音まで、非常に大きなダイナミックレンジを持つ楽器ですが、アンサンブルをする時にお互いに音量の遠慮し合うことなく、つまりオルガンと対等のダイナミックレンジを持つ唯一の楽器が打楽器だと思います。

昨今ではオルガンとクラシック楽器としての打楽器との演奏機会は増えてきましたが、和太鼓はとても珍しいですよね・・・。日本人として日本の楽器を大切にしたい気持ちもあり、今回は同じ打楽器でも「和」なものを選んでみました。

大多和正樹(和太鼓)

――夢の共演を京都コンサートホールで聴けるのはとても楽しみです!
今回のプログラムの冒頭に演奏される、大木さんお得意の作曲家ブクステフーデについて、彼の作品の特徴や魅力などを教えていただけますでしょうか。

大木さん:得意なのかは正直わかりません・・・笑。でも大好きな作曲家の一人です。ブクステフーデの存在なしには、恐らくJ.S.バッハは誕生しなかったでしょう!
(青年バッハが約400kmの道のりを歩いて彼の演奏を聴きに行き、その虜になったという逸話が残っているくらいですから。)
ブクステフーデの音楽は、私にとって非常に「魅惑的」です。一筋縄ではいかない音楽の進行、そしてドラマチックなお芝居を見ているかのような劇的な音楽の展開に心を摑まれています。

――ブクステフーデはオルガン界にとって大切な存在で、時代や国を越えて多くの人を惹きつけた作曲家なのですね。
ところで、今回のプログラムについて、テーマや聴きどころをお教えいただけますでしょうか?

大木さん:私の中でのテーマは「未知への挑戦」です!オルガンと和太鼓によってどんな音楽が誕生するのか、私自身もわからないのです。でも面白いものになるという確信は持っています。
本音を言うと、私も一聴衆としてこの演奏会を聴きたいくらいです!
そして聴きどころは・・・「全部」!!

――プログラムを最初に拝見した時からずっとワクワクしております!
それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

大木さん:オルガンと和太鼓が一緒に演奏するなんて、どんな演奏会になるのだろう・・・と思われているお客様もいるのではないかと想像していますが、安心してください!きっとオルガンの新たな魅力を感じて頂ける機会になると思います。

個人的に最近気に入っている言葉に「オルガン浴」というものがあります。オルガンを聴くのではなく、リラックスしてオルガンの音を浴びて頂きたい、と思いついた言葉です。日光浴、森林浴などと並んで、この言葉がスタンダードになったら嬉しいな・・・なんて思っています。

初めての京都コンサートホールですが、新しいオルガンとの出会い、そしてお客様との出会いを今から心待ちにしております。オルガンの音を思う存分浴びにいらして下さい!

――色々なお話を聞かせてくださいまして、誠にありがとうございました。9月の公演がとても楽しみです!

(7月31日 京都コンサートホール事業企画課 メールインタビュー)

♪♪ 公演情報 ♪♪

オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62「オルガニスト・エトワール」

2018年9月8日(土)14:00開演(13:00開場)大ホール
[オルガン]大木 麻理(ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト)
[ゲスト]大多和 正樹(和太鼓)

[曲目]
ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV149
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ(A.ラントマン編曲):シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)
ボヴェ:「東京音頭」による幻想曲
ラヴェル(K.U.ルードヴィッヒ編曲):ボレロ
ほか

[チケット料金]
全席自由 一般 1,000円 高校生以下 500
〈京都コンサートホール・ロームシアター京都Club、京響友の会の会員〉 900円

※障がいのある方:900円(同伴者1名まで)
京都コンサートホール・ロームシアター京都のみで取扱。
窓口でご本人様が証明書等をご提示ください。

詳しくはこちら♪

和太鼓奏者・大多和正樹 特別インタビュー(9/8 オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62「オルガニスト・エトワール」共演者)

投稿日:
京都コンサートホール

9月8日(土)午後2時から開催される「オムロン パイプオルガンコンサートシリーズ vol.62 “オルガニスト・エトワール”」。今回の“エトワール”は、ミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストを務める大木麻理さんです。

オルガニスト 大木麻理

彼女が今回のプログラミングを考える際、一番最初に見せたこだわりが「和太鼓奏者の大多和正樹さんと共演したい」ということでした。
わたしたち京都コンサートホールもパイプオルガンと和太鼓の共演は初めてということで、どのようなコラボレーションになるか、わくわくしています。
そこで、和太鼓奏者の大多和正樹さんに、共演される際の聞きどころなどについてお話を伺うことにしました。

✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥

――はじめまして、今回のパイプオルガンと和太鼓のコラボレーション、とても楽しみにしています。大多和さんは普段、どのような活動をなさっているのか教えていただけますか。

大多和さん:最も大事なのはその場に合った音量、音色と考えています。
故に呼吸を伴った演奏ができることを心がけています。
様々なアンサンブルやソロにて多様な音量幅で活動しております。
尺八、津軽三味線、箏、篠笛などの和楽器はもちろん、ジャズ、ラテン、アフリカン、クラシックなどあらゆる音楽、ダンサー、書家、役者など様々な創作者の方々と共演しております。

和太鼓奏者 大多和正樹

――従来の和太鼓のイメージにとらわれずに、様々な楽器と一緒に演奏されていらっしゃるのですね!その中で和楽器である和太鼓と、洋楽器(今回で言えばパイプオルガン)とのコラボレーションにどのような可能性を見出されていますか?

大多和さん:どんな楽器も先人のお陰で今日まで受け継がれてきていることの素晴らしさ、また歴史ある楽器が今回共に奏でられることに大変感謝しております。
互いに音量幅の広い楽器であること、このダイナミクスレンジの幅が似ていると思われる両者の音から生まれる新たなスタンダードアンサンブルに期待しています。

――なるほど、一緒に演奏することで魅力も2倍になるということですね。
ところで、大多和さんと大木さんが今回共演されるきっかけを教えてくださいますか。

大多和さん:昨年11月の東京オペラシティで、あるオーケストラと共演した際、楽屋前で大木さんから今回のお声掛けをいただいたのがきっかけです。
そのときは二人の共演はなかったのですが、和太鼓とのアンサンブルにとても興味を持っていらっしゃいました。
同時に私も「どんな繊細かつ壮大なアンサンブルになるのだろう!」とワクワクしたことを覚えています。

――ということは、今回が記念すべき「初共演」でいらっしゃるのですね!余計に楽しみになってきました。
さて、今回のコンサートで大木さんと共演なさる曲について、聞きどころをそれぞれ教えてくださいますか。

大多和さん:《トッカータとフーガ ニ短調》については、いくつかのビートが出ているなかで各シーンが演奏されることになるかと思います。少しロック寄り?かもしれません。いずれにしても珍しいかたちで演奏されることになると思います。
《ボレロ》は当然の音量の変化と共に、両手で同時に鳴らされる太鼓の移り変わりにご注目ください。
《東京音頭》に関してはオルガンバージョンをまだ聴いたことがなく、今のところ全く見当もつきません。後日大木さんの演奏音源を頂いたらイメージが浮かぶと思います。

――バッハでロック寄りですか!?《トッカータとフーガ ニ短調》はもう何回も聴いている作品ですが、まったく新しい《トッカータとフーガ》に出会えるような気がします。バッハ=ロックは想像つかないのですが、絶対カッコイイですよね。
それでは最後に、当日お越しくださるお客様に大多和さんから一言お願いできますでしょうか。

大多和さん:演奏とは、イメージを擦り合わせるために会話をしていくことと似ている気がします。言語を使って人と意思を伝え合うように、その楽器を操る人、お客様と共感できることは大変大きな喜びです。
パイプオルガンと和太鼓の「繊細かつ壮大な音世界」、大木さんと私の「音の会話」から皆さんと共感できる瞬間が生まれることに期待しながら、とても楽しみです!是非体感しにいらしてください!

――ありがとうございました!新しいパイプオルガンの世界を創ってくださること、いまから楽しみにしております。どうぞ宜しくお願い致します。

(7月23日 京都コンサートホール事業企画課メールインタビュー)

✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥

【公演情報】

2018年9月8日(土)14:00開演(13:00開場)
大ホール
Saturday 8, September 2018 2:00 p.m. at Main Hall

いま注目の若手女流オルガニスト
待望の京都コンサートホール初登場!

輝かしい国際コンクール受賞歴を誇る、若き女流オルガニストの大木麻理。十八番のドイツ・バロック音楽はもちろん、和太鼓奏者の大多和正樹氏をゲストに迎えて、オルガンと和太鼓のコラボレーションまで披露します。
この魅力的なプログラムは、京都コンサートホールのためだけに組まれたものです!どうぞお見逃しなく!

[オルガン]
大木 麻理
(ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト)
Mari Ohki, Organ (Organist of MUZA Kawasaki Symphony Hall from1st April 2018)

[ゲスト]
大多和 正樹(和太鼓)
Masaki Otawa, Taiko (Japanese Drum)

[曲目]
ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV149
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ(A.ラントマン編曲):シャコンヌ
(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)
ボヴェ:「東京音頭」による幻想曲
ラヴェル(K.U.ルードヴィッヒ編曲):ボレロ
ほか

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー】進々堂様ご提供の特別パティスリー、詳細決定!

投稿日:
お知らせ

今年10月13日、11月10日、11月23日と3回にわたって開催されるスペシャル・シリーズ『光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー』。
そのチラシ裏面で予告させていただいていた「京都コンサートホール×進々堂 特別コラボレーション」について、このたびその内容が決定いたしました!
フランスにちなんだパティスリーをご来場いただいた皆さまにプレゼントさせていただくとアナウンスしておりましたが、進々堂様の粋なお取り計らいもあり、各公演をイメージしたとても可愛らしい&美味しいパティスリー3種が出来上がりました。

ほら、とっても美味しそうで可愛らしいでしょう?!

それでは、それぞれのパティスリーをご紹介させていただきます。

◆ブリオッシュ・ダマンド Brioche d’amandes (第1回(10月13日)配布予定)
新鮮なバターたっぷり、ほんのり甘くふわふわ食感のブリオッシュ。
中には、ブリオッシュと相性抜群のアーモンドクリームが包み込まれています。でも実はこのおいしい組み合わせ、何故かフランスのブーランジュリーでは見かけません。このブリオッシュ・ダマンドは進々堂様の職人技が可能にした、日本にしかないフランスの菓子パン(?)なのです!是非その新しいおいしさをお楽しみください。
ところで表面に プリントされたワンフレーズ、何の旋律かお分かりでしょうか?
そう、第1回にプログラミングされている《前奏曲集》第1巻より〈亜麻色の髪の乙女〉の冒頭部分です。コンサートと一緒に、ぜひこのブリオッシュを味わっていただきたいなぁと思って選曲してみました♪

◆フィナンシェ・ヴァリエ Financiers variés (第2回(11月10日)配布予定)
様々な楽器や作品が寄せ集められた第2回にふさわしい、色んな味が楽しめるフィナンシェです。進々堂様ではドビュッシーのピアノ曲「子供の領分」をイメージしながら開発したのだとか。
金融という意味の“financier”から、金塊型のフィナンシェが一般的ですが、今回はフランスから取り寄せた、ジンジャーマン型とハート型に可愛く作っていただきました。フレッシュなバターがふんだんに使われています。味はランダムで2種類入っており、抹茶やチョコチップ、フランボワーズなどを予定しています。

◆カヌレ・ア・ロランジュ Canelé à l’orange (第3回(11月23日)配布予定)
カヌレとはフランス南西部のボルドー地方の伝統的なお菓子ですが、このカヌレは普通のカヌレとはちょっとひと味違うんです!
フランスのオレンジ・リキュール一流ブランド「グランマルニエ」のリキュールが隠し味として入っています。
ふわりとフランスの薫り漂う《前奏曲集》のように、オレンジの香りが口いっぱいに広がります。

いずれもフランスの伝統的な作り方でありながら、ドビュッシーや彼の作風をイメージしながら新しく生み出された、こだわりたっぷりのオリジナル・パティスリーです。今回それぞれ各公演にお越しの方にもれなくプレゼントしますので、チケットをご購入くださったお客様はどうぞお楽しみに!

またこれら3点に加え、ドビュッシー没後100年を記念した特別マカロンを1個300円にて進々堂様で販売予定です。

表面には、「クロード・ドビュッシーを偲んで」とプリントされています。
味は爽快でほんのり甘いミント味(フレッシュミントをクリームに漬け込んで香りを抽出してあります)。マカロン部分のブルー&ピンク、クリーム部分の白色はもちろん、フランスの国旗トリコロール・カラーを意識したものです。
こちらのマカロンは、ドビュッシー・シリーズの各公演日に京都コンサートホール1階のカフェ・コンチェルトやアンサンブルホールムラタのドリンクコーナーでも販売予定です。ぜひお買い物求めくださいね。

さて、これらのパティスリーは、進々堂様と京都コンサートホールとの間でこれまで何度も話し合いをし、試作・試食を重ねてきました。
今日はその過程もほんの少し、ご紹介させていただきます。

第1回の試食会は京都コンサートホールにて。進々堂社長の続木創様と製造部の須藤様が試作品をご持参くださり、京都コンサートホールの職員で試食させていただきました。

この時点でパティスリーはすでに美味しかったのですが、第2回の試食会に向けて、意見交換を行いました。お菓子と音楽をリンクさせてお話させていただき、充実した楽しい時間を過ごすことが出来ました。

第2回の試食会は進々堂様で開催させていただきました。
当日実際に配布するものと同じパティスリーをご用意いただき、貼付するシールの大きさやデザインなどについて話し合いをさせていただきました。
京都コンサートホールの希望を精一杯受け止めてくださる進々堂様に感謝の気持ちでいっぱいです!本当にありがとうございます!

この試食会の後、今回の企画に快く応じてくださった続木社長様に取材をさせていただくことが出来ました。
パンや音楽など(続木社長は大のクラシック音楽ファンでもあります)、多岐にわたってとても楽しいお話を聞かせてくださった続木社長。インタビューの模様は近日中に公開予定ですので、こちらもどうぞお楽しみに!

 

★《クロード・ドビュッシー 光と色彩の作曲家》特設ページはこちら

「この秋、京都での一番の聴きもの」(NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団公演に寄せて)

投稿日:
京都コンサートホール

1945年に設立されたNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団は、70年の歴史を誇る名門オーケストラのひとつです。高水準の演奏技術と卓越した音楽性により、確固たる世界的地位を築いてきました。これまで長らく「ハンブルク北ドイツ放送交響楽団」として活動してきましたが、2017年に拠点を新設エルプフィルハーモニーホールへ移行したことから、名称を「NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団」に変更。今日に至るまで、精力的な活動を展開しています。

15年ぶりとなる今回の京都公演(11月1日19時開演)では、次期NDRエルプフィル管弦楽団首席指揮者のアラン・ギルバートと人気ピアニストのエレーヌ・グリモーが登場し、オール・ジャーマン・プログラムを披露します。

この公演のために、大阪音楽大学名誉教授であり音楽学者・音楽評論家でいらっしゃる中村孝義氏がNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団について特別寄稿してくださいました。
NDRエルプフィル公演への胸の高まりが聞こえてくるような、素敵なエッセイとなっております。


「この秋、京都での一番の聴きもの」
中村 孝義 (大阪音楽大学名誉教授、音楽学、音楽評論)

エルプフィルハーモニー管弦楽団。クラシックの世界にそれなりに通じておられる人でも、ちょっと耳慣れない名前のオーケストラだが、新しいオーケストラかなと思われたかもしれない。確かに名称は新しいのだが、実はオーケストラ自体は新しいわけではない。2017年1月までこのオーケストラは、北ドイツ放送交響楽団と名乗っていた。ハンブルクを本拠とし、ドイツの超一流が顔をそろえる放送オーケストラのなかでも、南のミュンヘンを本拠とするバイエルン放送交響楽団と並んでトップの地位を占めてきたオーケストラである。名匠ハンス=シュミット・イッセルシュテットによって1945年の創立以来じっくり育て上げられ、その後もクラウス・テンシュテット、ギュンター・ヴァント、ジョン・エリオット・ガーディナー、ヘルベルト・ブロムシュテット、クリストフ・エッシェンバッハ、クリストフ・フォン・ドホナーニなど名だたる名指揮者が跡を継ぎ、現在は古楽の分野でもすばらしい業績を重ねてきたトーマス・ヘンゲルブロックが首席指揮者を務めている。

NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団©NDR Michael Zapf

実は昨年2月、このオーケストラの本拠が従来のライスハレ(旧ムジークハレ)からハンブルクの新しいランドマークとなったエルプフィルハーモニーに変わった。このホール、実はエルベ河畔に建つ歴史遺産である埠頭倉庫の上に重ね積み上げて建てるという、奇想天外な方法で作られたものだが、計画が余りに奇抜であったためもあり、建設は、建築技術的にも資金的にも難航し、何と着工から10年もかかってやっと2016年10月に完成したものであった。しかし我が国の永田音響設計の豊田泰久氏によって設計された音響は抜群で、ハンブルクを代表する北ドイツ放送交響楽団もここに本拠を移すと同時にNDR(北ドイツ放送の略称)エルプフィルハーモニー管弦楽団と改名したのであった。

エルプフィルハーモニーホール©thies raetzke

私は北ドイツ放送交響楽団の時代に、朝比奈隆、ヴァント、エッシェンバッハ、ドホナーニ、ヘンゲルブロックの指揮でこのオーケストラを聴き、そのドイツ的な分厚くややくすんだ奥深い響き、それに放送交響楽団であることかくる俊敏な機動性を兼ね備えた優れた演奏に大きな魅力を感じたものだ。そして昨年エルプフィルハーモニーと改名したこのオーケストラが、首席客演指揮者のクシシュトフ・ウルバンスキに率いられて来日した公演を聴いてもう一度驚いた。古楽を主領域とするヘンゲルブロックの薫陶を受けてきたということもあろうが、ドイツ的な響きの温かさも残しながら、ずいぶんと明るさや軽やかさも加え、表現にもしなやかさが増していたからだ。近代的な新しい質感の響きを持った新本拠で演奏を重ねるうちに、彼らの響きや表現にも微妙な変化が起こっているのだろう。

今回は、来年から首席指揮者に就任するアメリカ期待のアラン・ギルバートが率いてくるが、しばらく前までニューヨーク・フィルの首席指揮者をしていたほどの傑物であるとともに、まだ若い清新な感覚を持つ俊英だけに、ワーグナー、ベートーヴェン、ブラームスという純ドイツ・プロで、このドイツ有数の名オーケストラと様々な化学反応を起こし、ドイツの伝統に立脚しながらも、斬新な解釈に彩られた素晴らしい演奏が展開されるのではと期待される。この秋に京都で聴ける最も楽しみなオーケストラ演奏会といってもよいだろう。

アラン・ギルバート©Chris Lee

 

中村 孝義(なかむら・たかよし、大阪音楽大学名誉教授、音楽学、音楽評論)

1985年ドイツ・ヴュルツブルク大学音楽学研究所客員研究員。1991年大阪音楽大学教授。2006年大阪音楽大学学長。現在は理事長、名誉教授、ザ・カレッジオペラハウス館長。文化審議会委員(文化勲章受章者選考)、文化庁芸術祭審査委員長、日本芸術文化振興会評価委員などを歴任。現在も、日本音楽芸術マネジメント学会理事長、ローム ミュージック ファンデーション、アフィニス文化財団、平和堂財団、花王芸術・科学財団、住友生命福祉文化財団などの評議員や理事、日本芸術文化振興会の運営委員など、多くの公益財団、公的機関の役員、委員、選考委員を務める。ベートーヴェンや室内楽を中心とする音楽学研究のほか、オペラ活動やアーツ・マネジメントにも関心を寄せ、音楽の友、レコード芸術、モーストリークラシックなどで評論活動も展開。主要著編書に「室内楽の歴史」(ミュージック・ペンクラブ賞新人賞受賞:東京書籍)「ベートーヴェン 器楽・室内楽の宇宙」(春秋社)「音楽の窓」(カワイ出版)「西洋音楽の歴史」(東京書籍)などがある。

吉野直子(ハープ)&宮田まゆみ(笙) 特別インタビュー(「あけてみよう!”音楽のトビラ”」7/26ご出演)

投稿日:
京都コンサートホール

大人から子どもまで、幅広い年代の方にクラシック音楽をお楽しみいただく「あけてみよう!“音楽のトビラ”」。今回は、日本を代表する演奏家、吉野直子さんと宮田まゆみさんをお迎えします。

吉野さんは、ベルリン・フィルをはじめとする世界主要オーケストラやギドン・クレーメルといった世界的なアーティストと共演しているハーピスト。宮田さんは、1998年の長野オリンピックの開会式で国歌を演奏した、笙演奏の第一人者です。

今回はお二人について、そして普段聞くことの少ないハープと笙についてもっと知っていただくためにメール・インタビューを敢行しました!
楽器やプログラムの魅力などを、とても丁寧に答えてくださいました。

――まずハーピストの吉野直子さんにお話を伺いたいと思います。ハープとの出会いをお聞かせいただけますでしょうか?

吉野さん:母がハーピストでしたので、物心がついた頃からハープが身近なところにありました。ハープをきちんと習い始めたのは6歳の時で、父の転勤に伴って家族で引っ越したアメリカのロサンゼルスででした。アメリカでもハープの勉強を続けたいと母がレッスンを受けていたスーザン・マクドナルド先生に私も教えていただき、この素晴らしい先生との出会いのおかげで、自然にハープの道に進むことになりました。

――吉野さんの思うハープの魅力とは何でしょうか?

吉野さん:まず第一に「自分の指で直接弦を弾いて音を出す」ということだと思います。ハープでは、音の強弱から微妙な表情のニュアンスまですべてを、弦の弾きかたを変えることによって表現しないといけません。また、ソロだけでなく、室内楽やオーケストラなどにおいて多様な表現力をもっていることも、ハープの大きな魅力だと思います。

――ハープを弾かれている姿を見ると、華麗な指先に目が行ってしまうのですが、実は足も駆使されていらっしゃるのですよね?一見優雅に見えるハープですが、演奏する際「これは大変!」あるいは「これだからハープは楽しい!」といったハープ奏者ならではのお話をお聞かせいただけますでしょうか?

吉野さん:先程の答えと関連しますが、「すべてを自分の指先だけで伝えることができるし、伝えなくてはいけない」というのが、ハープの一番の楽しさであると同時に、大変なところだと思います。さらに、ハープの演奏では足も大切な役割があります。ペダルが7本あり、これを操作することによって、弦の音程の高さがシャープやフラットなどに変わります。それなので、曲によっては手だけではなく、足も忙しく動かすことになります。

(C)Akira Muto

――そして今回、ハープとコラボレーションするのは、東洋の楽器、笙(しょう)。
笙奏者の宮田まゆみさんは、もともとピアノを専攻なさっていたと伺いましたが、笙を演奏することになったきっかけをお聞かせいただけますでしょうか?

宮田さん:ピアノもとても好きなのですが、大学の音楽美学の講義の中で「宇宙のハーモニー」という音楽の捉え方が古代ギリシャをはじめいろいろな地域にあったことを知り、そのハーモニーを私も聴いてみたいと模索しているうちに出会ったのが「笙」でした。

――ピアノやヴァイオリンなどと比べると、笙を見たり聴いたりする機会は多くはなく、どんな楽器かご存じでない方もいらっしゃるかと思います。笙とはどんな楽器でしょうか?

宮田さん:笙はとても古い楽器で、3300年ほど前の中国の古代文字の中にも「笙」を表す「龢」という字があるので、それ以前から存在していたようです。日本には奈良時代より少し前に、中国から伝えられました。環状に束ねた竹管が木製の空気室に挿し込まれ、各管の根元には金属製の薄い簧(リード)が付いています。竹管は17本ありますが、いつの時代からか2本の竹の簧が失われ、現在は17本あるうち15本の音だけ鳴るようになっています。簧には切り込みがあり、表と裏の両方向に振動するので吹く息、吸う息の交代で音を長く持続させることができ、また右手2本、左手4本の指を使って複数の音を同時に出すことができます。このような複雑な構造を持った楽器が3000年以上も前からあったとは、とても不思議です。

――笙の透き通った音色を聴くと、何だかとても清らかな気持ちになります。宮田さんにとって笙の魅力とは何でしょうか?

宮田さん:笙は複数の音を出せる、つまり和音を演奏することができて、吹く、吸うを繰り返して、その光のような輝きをもった和音がさまざまに色彩を変化させながら途切れることなく流れます。まるで天に流れる天の川のような感じです。

――ソロだけでなくオーケストラとも多数共演されていらっしゃいますが、オーケストラとは普段どのような作品を演奏されていらっしゃるのですか?

宮田さん:武満徹さんが作曲なさった「セレモニアル」という曲は一番多く演奏しています。ちゃんと数えたことはありませんが、多分何十回も演奏しているのではないでしょうか。日本の作曲家では細川俊夫さんが多く作曲して下さいました。一柳慧さん、石井眞木さん、猿谷紀郎さん、権代敦彦さんの作品もあります。外国ではジョン・ケージさん、ヘルムート・ラッヘンマンさん、ゲルハルト・シュテープラーさんの作品などがあります。ラッヘンマンさんの作品はオペラです。

――ヨーロッパやアメリカなどでもご活躍されていらっしゃいますが、海外で演奏した際の興味深かったエピソードなどありますでしょうか?

宮田さん:ヨーロッパでは教会で演奏することも多く、教会の音響や空間は笙と相性が良い気がします。ジョン・ケージさんの笙とほら貝のための作品を初演したイタリア・ペルージアの教会は、ゲーテがイタリア旅行の時に訪れて感動したという円形の大変古い教会でした。その古い教会の木のベンチでケージさんが2時間あまり、じっと聴いてくださったことは忘れられません。

――今回は、そんな2つの素敵な楽器によるデュオをお聴きすることになります。
このデュオを組むきっかけは何だったのでしょうか?またお二人が共演されることになったきっかけやエピソードなどお聞かせいただけますでしょうか?

吉野さん:宮田さんに初めてお会いしたのは、もう20年以上前のことで、雑誌の鼎談でした。初めての共演は、彩の国さいたま芸術劇場で、作曲家の諸井誠さんがヴィオラと笙とハープのために書かれた作品などを演奏しました。もっとも、宮田さんのお名前は細川俊夫さんの「うつろひ」の初演者として、その前からよく知っていましたし、演奏も聴かせていただいていました。今度の公演でも演奏する「うつろひ」は、日本の現代作品の傑作のひとつで、笙とハープのデュオにとっては、なくてはならない大切な曲です。

――「笙」とのデュオは大変珍しいですよね?「ハープ」と「笙」のデュオならではの面白さや聴きどころなどをお教えいただけますでしょうか?

吉野さん:宮田さんとは海外も含め、たびたび共演させていただいていますが、ご一緒すると、フルートやヴァイオリンなど西洋楽器と共演する時とは少し違う感覚があります。宮田さんの笙には、宇宙全体、空間全体に拡がるような独特の音の世界があって、その中でハープが自由に気持ちよく演奏させていただく、という感覚が強くあるのです。

――さて、今回お二方に出演いただく「あけてみよう!“音楽のトビラ”」は、演奏者と聴衆が共に楽器や演奏を「見て」「聴いて」、新しい音楽を「知る」ことのできるコンサートです。
今回の公演の「聴きどころ」「見どころ」、また今回の公演でみなさんに「知ってもらいたい」ことをお教えいただけますでしょうか?そして演奏されるプログラムについて、テーマや聴きどころをお教えいただけましたらと思います。

吉野さん:ハープは西洋の楽器、笙は東洋の楽器として、とても長い歴史をもっています。今回の公演では、笙とハープのデュオ作品に加えて、それぞれのソロ作品も演奏します。演奏の合間には楽器のお話なども交えて、2つの楽器をより深く知っていただきたいと思います。曲目も変化に富んでいますので、デュオの魅力のみならず、それぞれの楽器の魅力も十分に味わっていただけるのでは、と思っています。

宮田さん:ハープも笙も大変古くからある楽器です。同時に現代においても次々と新しい作品が発表されています。古代の香りと新しい息吹、両方お楽しみいただけたら嬉しく思います。またハープと笙に施された「蒔絵」をご覧いただけるとのも嬉しいことです。笙には雌雄の鳳凰の蒔絵が施されています。日本にはかつて、古代中国を経由して伝えられた「箜篌(くご)」という古代ハープがあり、古くは箜篌と笙も「共演」していたようです。ハープと笙はとても仲が良いのではないでしょうか。このコンサートでは、ハープと笙のそれぞれの古典音楽と、新しい音楽、そして二つの楽器が溶け合う響きをお楽しみいただけたらうれしく思います。

――最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、一言お願いいたします。

吉野さん:ハープと笙という、出自も個性も異なる2つの楽器が、アンサンブルホールムラタの素敵な音空間でどのように「響きあう」のか、今からとても楽しみにしています。当日は、小ホールならではの親密な空間での演奏を楽しんでいただければ、嬉しく思います。

宮田さん:楽器の歴史も古いですが、最初にお聴きいただく笙の「平調調子」は平安時代の中期、今から千年以上前にすでに演奏されていた曲です。平安時代の音楽観では「平調」は秋を象徴する調でした。コンサートの日、7月26日は旧暦では夏の6月14日にあたるようでまだまだ暑い盛りですが、涼やかな「平調調子」で秋に想いを馳せ、どうぞ暑さを忘れてください!

――お忙しいところ、ご協力いただきありがとうございました!7月26日の演奏会を楽しみにしています!

京都コンサートホール事業企画課(メール・インタビュー)

「北山クラシック倶楽部2018」後半セット券のご案内

投稿日:
アンサンブルホールムラタ

「いい音が響いてほしい」――それだけを願い、世界的建築家 磯崎新と永田音響設計が精魂込めて創り上げた室内楽専用ホール「アンサンブルホールムラタ」。星座の描かれた天井、宇宙を思わせる舞台照明、磁北を示す光のラインなど、まるで「ミクロコスモス」を思わせるホールのインテリアは、演奏者と聴衆の胸を高鳴らせると同時に我々を「異空間」へと誘います。

アンサンブルホールムラタ

ここを舞台に繰り広げられる「北山クラシック倶楽部」は、海外トップアーティストによる世界水準の演奏を、最高の空間で体感していただくシリーズです。
今回は、「北山クラシック倶楽部2018」全8公演から、12月~2019年3月に開催される後半4公演をご紹介します。小編成のアンサンブルからバロック・オーケストラまで、いま旬の多彩なアーティストたちが出演します!
演奏者の息遣いまで聞こえてくる濃密な空間で、世界レベルの演奏をご堪能ください。

なお、とってもお得に「北山クラシック倶楽部2018」後半4公演を聴いていただけるセット券(4公演・限定100セット・15%オフ、16,000円)を販売いたします(会員6/23、一般6/30~7/24)。
ご予約・ご購入時に指定範囲内から座席をお選びいただき、全公演共通座席「マイシート」でお聴きいただける、こだわりのセット券です。
この機会にぜひ「北山クラシック倶楽部2018後半セット券」をお買い求めください。

 

まるでオーケストラを思わせる多彩な音色 名コンビが魅せる洗練された世界観
2018/12/21(金)19:00開演「漆原朝子&ベリー・スナイダー シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 全3曲&3つのロマンス」
毎回テーマ性を持ったリサイタルで好評を得ている漆原朝子とベリー・スナイダー。20年以上におよぶ共演のなかで数々の名演を生んできました。そんな2人が選んだプログラムは、これまでにも大いなる賞賛を浴びてきたオール・シューマンによるもの。悲劇的な晩年に差し掛かりつつあった頃に作曲されたヴァイオリン・ソナタ全3作品と、それとは対照的にロマンティシズム溢れる《3つのロマンス》を演奏します。円熟のデュオが奏でる愛と孤独のシューマンの世界。忘れられないほどに深い感動を与えてくれる一夜となることでしょう。

[一回券(全席指定)]一般:4,000円、会員3,600円*
*会員先行:7月28日(土)/一般発売:7月31日(火)/主催:コジマ・コンサートマネジメント

 

ウィーン・コンツェルトハウスでのベートーヴェン全曲演奏会が話題に!
世界中から熱い視線を浴びるカルテットを聴く一夜
2019/1/31(木)19:00開演「ベルチャ弦楽四重奏団」

(C)Marco Borggreve

2012年、ウィーン・コンツェルトハウスにおいて僅か12日間で成し遂げた「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会」が話題となった「ベルチャ弦楽四重奏団」。かのアルバン・ベルク弦楽四重奏団の伝統を受け継ぐカルテットとして、また新時代を先導するカルテットとして今、最も世界中から注目を集めるカルテットです。今回、彼らが披露するプログラムはもちろんオール・ベートーヴェン。全16作品の中から、最初に作曲したとされる第3番、自らが「セリオーソ(=厳粛に)」と名付けた第11番、そして病を乗り越え完成された第15番の3作品を選曲しました。カルテット界のホープが魅せる新たなるベートーヴェン像、どうぞご期待ください!

[一回券(全席指定)]一般:5,000円、会員4,500円*
*会員先行:9月15日(土)/一般発売:9月23日(日)/主催:パシフィック・コンサート・、マネメント

 

 

両性的なクリスタル・ヴォイスと圧倒的な超絶技巧――
超人気スター歌手と名門古楽オーケストラ、夢の共演
2019/2/9(土)14:00開演「ヴァレア・サバドゥス&コンチェルト・ケルン」

 

(C)Henning Ross
(C)Giampiero Corelli

2016年にパリ・オペラ座ガルニエ・デビューを果たし、日本でも多くの反響をもたらした若手カウンターテナーのヴァレア・サバドゥス。高貴で透き通った、そして官能的な歌声で聴くものを瞬く間に魅了します。今回はドイツの古楽オーケストラ、コンチェルト・ケルンとのコンビで、カウンターテナーの魅力を存分に堪能できるヘンデルとポルポラらの作品をセレクト。我々を18世紀のヨーロッパへといざなってくれることでしょう。北山クラシック倶楽部シリーズ初となる古楽コンサートに、今から期待が高まります。

[一回券(全席指定)]一般:6,000円、会員5,500円*
*会員先行:9月23日(日)/一般発売:9月30日(日)/主催:アレグロミュージック

 

リード楽器を愛する全ての人へ
世界でも類を見ないスーパー・アンサンブル
2019/3/21(木・祝)14:00開演「カレファックス・リード・クインテット・アムステルダム」

(C)Marco Borggreve

オーボエ、クラリネット、サクソフォーン、バス・クラリネット、ファゴットによる5つのリード楽器のみで構成される世界唯一のアンサンブル「カレファックス・リード・クインテット・アムステルダム」。古楽から現代音楽、時にはジャズやポップスまで幅広いレパートリーを自らのアレンジで披露!抜群のテクニックと音楽性、そして息をのむほどのピッタリなアンサンブルに、リード楽器の無限なる可能性を感じさせられます。革新的でユニークなステージにファン続出のクインテット。まだ出会ったことのない、未知なるリード楽器の世界をお楽しみに!

[一回券(全席指定)]一般:4,000円、学生2,000円、会員3,600円*
*会員先行:10月7日(日)/一般発売:10月14日(日)/主催:ヒラサ・オフィス

 


 

★お得な4公演セット券(限定100セット!)★

[料金]全席指定 16,000円 <15%お得!>

[販売期間]
*会員先行:6月23日(土)~6月29日(金)
一般:6月30日(土)~7月24日(火)

*会員…京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)・京響友の会の会員が対象です。

☆セット券のご購入は、
<電話・窓口> 京都コンサートホール 075-711-3231(10:00~17:00)
ロームシアター京都 075-746-3201(10:00~19:00)
<インターネット> オンラインチケット購入

北山クラシック倶楽部2018後半セット券チラシ(表面)
北山クラシック倶楽部2018後半セット券チラシ(裏面)