【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー特別連載③】進々堂 続木社長インタビュー(後編)

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インタビュー

スペシャル・シリーズ《色彩と光の作曲家 クロード・ドビュッシー》をより知っていただく特別連載。第3回は、京都コンサートホールと一緒にコラボレーション商品を考えてくださった株式会社進々堂の続木創社長へのインタビューの後編をお届けします。パン作りと音楽の共通点など興味深いお話が満載です。

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★続木社長について★

――(前編では、続木社長の好きなクラシック音楽やドビュッシーについてお伺いしました)
続木社長は昔、弦楽四重奏をされていたということですが、音楽や楽器との出会いなどを教えていただけますでしょうか。

続木社長:両親ともに音楽が好きだったので、4歳の時からピアノを、7歳のときからヴァイオリンを習いはじめました。でも本当に音楽に興味を持ったのは中学2年のときだったかもしれません。僕は中学から東京の自由学園というキリスト教系の学校に行ったのですが、ヴァイオリンは卒業(?)したつもりで、寮にヴァイオリンは持って行かなかったんです。ところが自由学園で音楽の授業として毎年クリスマスに演奏していたヘンデルのメサイヤに接して、何て美しい音楽なんだって衝撃を受けて、オーケストラに入れてもらってメサイヤのヴァイオリンパートを演奏するようになったんです。そのうちに段々ヴァイオリンにのめり込んで、一番最初にヴァイオリンの手ほどきを受けた香西理子先生にお願いして、自由学園の大学2年のとき江藤俊哉先生をご紹介いただいて弟子入りしたんです。

――江藤俊哉先生と言えば戦後の日本を代表するヴァイオリンの大家ですね。

続木社長:大学では経済を勉強したのですが、ヴァイオリンが面白くてたまらなくなって、他のことしてる時間がもったいなく思いはじめ、後先考えずに自由学園の大学を中退しました。で、アパートを借りて毎日7〜8時間ヴァイオリンの練習をするような生活しながら、当時江藤先生が教えられていた桐朋学園大学のディプロマコースに2回挑戦したのですが、残念ながら2回とも落ちてしまいました。

実はそのころ、私の兄が父に「自分は進々堂は絶対に継がない」と宣言したんです。私は男ばかり4人兄弟の次男で、長兄が進々堂を継ぐので自分はヴァイオリニストになろうと思っていたのですが、今度は父が私にパン屋をやってくれないかと声をかけてきたんですよね。私は子供の頃から、お父さんがあんなに一生懸命やってる進々堂なんだから兄弟の誰かが継ぐべきで、兄がしないなら自分がやってもいいかなと思いながら育ってきましたので、「僕がするけど、その前にアメリカに留学して経営学を勉強したい」と父にお願いしました。そしてミシガン州立大学の経営学部ホテル・レストラン経営学科に行かせてもらいました。そこで運命の出会いがあったんです。

「Michigan State University」の画像検索結果
ミシガン州立大学(Michigan State University official Home Pageより)

ヴァイオリニストになる夢は捨てたけど、やっぱり趣味では弾きたくて、アメリカに楽器を持って行っていました。ある日、学生寮の音楽室で練習してたら同じ寮に住んでた音楽学部の生徒が僕の練習をこっそり録音して「うちの寮にこんなやつがいる」と音楽学部の学部長にテープを聞かせたんです。そしたらある日その学部長から呼ばれて何か弾いてみろと。で、バッハの無伴奏パルティータの1番を弾いたら「なぜ経営学なんて勉強してるのか。うちの音楽学部にはおまえのようなバッハに対するリスペクトを持っている学生はいない。奨学金を出すから音楽学部に来い」と言われたのです。もちろん、父との約束があるので転部はできないとお断りしました。そしたら、音楽学部の大学院生がカルテット(弦楽四重奏)を組むのに、第2ヴァイオリンが見つからないのでおまえがやれと言われて、カルテットの第2ヴァイオリン奏者を引き受けることになったのです。これにはとても喜びました。当時ミシガン州立大学の音楽学部には、ジュリアード・カルテットが年に6週間教えに来ていて、私の入った学生カルテットはそのレッスンを受けられたんです。

大学院生のカルテットのメンバーと、ロバート・マン先生(後列中央)を囲んで

――すごい巡り合わせですね!

続木社長:彼らのレッスンであらためて音楽に開眼してしまいました。江藤先生のレッスンではどちらかというと技術的なことを中心に教えていただいていましたが、カルテットのレッスンでは音楽の作り方・楽譜の解釈が全てだったのです。とても新鮮でした。音楽ってこうやって作るんだ!って。当時のジュリアード・カルテットのメンバーは、第1ヴァイオリンがロバート・マンで第2ヴァイオリンがアール・カーリス、ヴィオラがサミュエル・ローズ、チェロがジョエル・クロスニックでした。4人それぞれ世界一流の演奏家からレッスンを英語で受けて、英語で理解してというのは本当に楽しい体験でした。

――あの「ジュリアード・カルテット」からレッスンを受けられたのですね!

続木社長:1年目は大学院生のカルテットの第2ヴァイオリンだったのですが、3人の大学院生が卒業していなくなると、学部長から新しいカルテットを作るように言われました。私の好きなようにメンバーを選んでいいということで、ヴィオラとチェロはすぐに音楽学部の3年生で決まりましたが、ヴァイオリンはなかなか良い人が見つからなかったんです。

当時ピアノ科の看板教授にクライバーン・コンクール優勝者のピアニスト、ラルフ・ヴォタペック先生がいて、その娘さんのキャサリンがヴァイオリニストでした。当時まだ高校生でしたがとても弾ける子だったんです。そこで彼女を第2ヴァイオリンに指名していいかと学部長にきいたら何とOKだって言うんです。驚きました。OKを出す学部長も学部長だけど、ヴァイオリン科の学生や教授からクレームが出ないって、アメリカ流実力主義というか、アメリカ人の考え方ってすごいなと思いました。

――日本の大学では考えられないですね!

続木社長:そうでしょう?つまり2年間、ミシガン州立大学音楽学部を代表する学生カルテットは、第1ヴァイオリンが経営学部生(私)で、第2ヴァイオリンが高校生という異色のメンバーで、ジュリアード・カルテットのレッスンを受けながらながら、学内コンサートはじめ様々な演奏活動をしました。中でも一番思い出深いのは、年に一度、全米の音楽大学から学生カルテットがミシガン州立大学に集まって開催される「ジュリアード・カルテット・フェスティバル」に出させていただいたことかな。

そういうわけで、ミシガン州立大学では経営学も結構真面目に勉強してちゃんと卒業しましたが、音楽の面でも大変豊かな経験が出来ました。今でも付き合いが続いているのは、経営学部の友人よりもどちらかというと、音楽で結びついた友人が多いですね。当時高校生だったキャサリン・ヴォタペックとも親交が続いています。彼女はその後ジュリアード音楽院に進み、卒業後オハイオ州立大学で教鞭を取る傍らチェスター・カルテットのメンバーとして活躍し、今はミシガン大学の教授を務めています。

 

★パン作りと音楽の共通点について★

――そんなに貴重で濃厚な経験をされてしまうと、音楽の道から離れたくなくなりますね。

続木社長:そうなのですが、逆にアメリカでの音楽経験の中で自分はやっぱりプロの音楽家は無理だということがよくわかったし、やはりアメリカ留学の目的は進々堂を継ぐために経営学を勉強することだと思い続けていたので、父との約束通りミシガン州立大学卒業後すぐに進々堂に入社しました。

――音楽とパン作りに共通するものはありますか。

続木社長:共通点どころか、音楽作りとパン作りはとても似てるんですよ。パンも音楽も初めにイメージありきだと思うんです。

音楽の場合も、作曲家へのリスペクトや様式への理解をちゃんと持ちながら「こういう風に表現したい」というイメージというか熱意を持って演奏しないと、どんなにテクニックがすばらしくてもつまらない演奏になってしまいますよね。

パンの世界も同じです。生地の配合や工程は決まっていますが、その通り作ったとしても必ずしもおいしく焼き上がるとは限りません。素材や製法をしっかり知った人が「こういう食感、こういう味にしたい」というイメージをしっかり持って、そこに向かって微調整を重ねることでおいしく焼きあがるのです。でもこれは結構難しいことで、作り手が同じでも、昨日と同じパンはなかなかできません。音楽も同じですよね、昨日と同じ演奏をしなさいと言われてできる演奏家は絶対にいないでしょう。

「パン」は生き物です。パン生地は発酵するので生き物であるとわかりやすいですが、実は小麦粉も日々違うんですよ。少し専門的な話になりますが、小麦粉はほとんどがでんぷん質、あとはたんぱく質と水分ですが、その中に酵素というものが生きてるんです。アミラーゼやプロテアーゼという名前は聞いたことがあると思いますが、そういうたくさんの酵素がパン生地のなかで様々な働きをしてパンをおいしくしてくれるんです。日々それぞれの酵素の活性度合いが違うので、同じ配合・同じ温度で生地をこね上げても毎日必ず違う生地になります。ですから、品質を一定に保つには、その日その日の生地状態を見極めながら、生地の扱いを調整する必要があります。複数のスタッフが関わる場合には「こういうパンが焼きたい」という共通のイメージが職場に浸透していないと、品質がぶれてしまうんです。

――開発者だけじゃなくて様々な製作ラインの方の気持ちが一致する必要があるということですか?

続木社長:はい、その通りです。うちは、仕込みは仕込みで整形は整形、焼きは焼きとわかれているので、それぞれの部門に携わるスタッフがパンの最終的なイメージをちゃんと持って瞬時に判断できないと、同じパンを作りあげることはできません。個人店さんと企業パン屋ではそこの難しさが違います。個人店では親方が出て行って全部指示できますけども、我々は分担していますから、焼き上がりの同じイメージを皆が持って、そこに向かって仕事してくれることがとても大切なんですよ。

――私たち素人がショーケースを見ていると、毎日同じパンが並んでいるように見えます。

続木社長:プロの目で見ますと毎日必ず微妙にぶれているのがわかります。それを一般の消費者の方が見て食べてわからないブレ幅にしないと、皆さんの期待を裏切ることになってしまいます。

今回のパティスリーも、開発段階では同じ担当者が一から自分で作ったので、そんなにぶれていないですけども、これを通常の製造ラインに乗せて、毎日同じ状態に仕上げるとなるとそこでまた一苦労があるんですよ(笑)。

その中でやはり一番大事なことは、「こんな風に焼き上げたい」というイメージを皆に共有して持ってもらうことなんです。

――まるで続木社長はオーケストラの指揮者みたいですね。

続木社長:まさにその通り!実際、指揮者の仕事と同じだと思います。ものづくりって全てそうだと思いますよ。

 

★続木社長のもう一つの顔「教会オルガニスト」★

――私どもが毎月発行している「コンサートガイド」で、1年間(2016年6月号から2017年5月号まで)「パン屋社長の音楽コラム~思い出の名演奏~」というコラムを書いていらっしゃいました。そこに教会のオルガニストと書かれていましたが、ヴァイオリンをされていた続木社長がなぜオルガンをされているのですか?

続木社長:いま行っている京都聖マリア教会にはプロのオルガニストがいなくて、数人で役割分担して、だいたい月1回オルガンを弾いているんです。僕はもともとピアノをやっていたので、自由学園時代に通っていた教会でも時々オルガンの当番にあたって弾いていました。でも、きちんと足鍵盤までつけて弾こうと思ったのは社会人になってからです。

オルガンをやろうと思った理由は、仕事が忙しくなって練習時間がとれなくなって段々ヴァイオリンが弾けなくなってきたのですが、やっぱり音楽する手段がほしかったんです。オルガンはヴァイオリンと違って一人で音楽が完結するのですごく楽しいんです。しかも、演奏と呼べるかどうか別にしても、月に1回ですが当番の日には人前で演奏する機会もありますし。年に1,2曲ずつですが(礼拝の前後に弾く)奏楽曲のレパートリーを増やしていくのも楽しいです。

――讃美歌だけでなく、奏楽も弾かれるのですか?

続木社長:はい、奏楽も弾いています。新しい曲にチャレンジするときは同志社女子大学講師のオルガニスト中山幾美子さんに時々レッスンを受けています。

――そうなんですね!素晴らしいです。続木社長はパンにしても音楽にしても「表現者」でいらっしゃるのですね。
お忙しい中ありがとうございました!

(2018年7月4日京都コンサートホール事業企画課インタビュー@進々堂 本社)

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【特別連載②】進々堂 続木社長インタビュー(前編)はこちら
【特別連載①】ドビュッシーとパン(牧神)はこちら
スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》の特設ぺージはこちら。

【NDRエルプフィル特別連載③】「北ドイツの雄、NDRエルプフィル」(中村真人、ジャーナリスト/ベルリン在住)

投稿日:
京都コンサートホール

いよいよ公演が来月に迫った「NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)」(11/1)。

本公演の魅力をお伝えする「NDRエルプフィル特別連載」。第3弾は、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団についてご紹介します。ライターは、ベルリン在住のジャーナリストで、ドイツのオーケストラ事情に詳しい中村真人さんです。


「北ドイツの雄、NDRエルプフィル」
中村真人(ジャーナリスト/ベルリン在住)

NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(エルプフィルハーモニーにて)

地方分権の伝統が強いドイツでは、公共放送も州レベルで置かれている。それら放送局を母体とするオーケストラがドイツにいくつもあり、いずれも高い水準にあることはこの国のオーケストラ文化の豊かさを物語っているといえるだろう。その中で、北の雄といえるのが、ハンブルクを本拠とするNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団である。

NDR(北ドイツ放送)の放送オケであるこの楽団は終戦の年である1945年に創設され、初代首席指揮者ハンス=シュミット・イッセルシュタットのもと、短期間で飛躍的に実力を向上させた。その後、1982年から第4代の首席指揮者を務めたギュンター・ヴァントのもと、楽団は新たな黄金期を迎える。

筆者はドイツへ短期留学した1998年夏、当時日本で新譜が出る度に話題になっていたヴァント指揮北ドイツ放送響(当時の名称)の生演奏をどうしても聴きたくて、はるばるエジンバラ音楽祭まで赴いたことがある。曲目はブルックナーの交響曲第5番だったが、まるで建築物を思わせる堅固な構築と、完璧に調和の取れた、それでいて人間味を失わない深い響きが脳裏に焼き付いている。オーケストラの響きの差異が昔ほど聴き取りにくくなっているグローバル化の世界にあって、NDRエルプフィルはドイツのオケとしての独自の響きをいまに伝える楽団の一つだ。それは、彼らが長年本拠地としてきたライスハレという豊かな響きを持つホールと共に育まれてきたもので、ハンブルク生まれのブラームスを始めとするドイツもののレパートリーはかけがえのない魅力をもつ。

2017年1月、この楽団に新たな歴史が刻まれた。世界中の注目を集める中、新コンサートホールのエルプフィルハーモニーが華々しくオープンしたのである。ライスハレは名ホールだが、これまでオーケストラはリハーサルを行う放送局のスタジオと本番のホールとの間を毎回行き来しなければならなかった。1つのホールでリハーサルから響きを作り上げられるということは、世界の一流オケにとってきわめて重要な環境であり、そのための条件でもある。また、2100席のキャパシティを持つエルプフィルハーモニーでは、マーラーやワーグナーといった巨大編成の曲にも余裕をもって対応できる。ホールの話題性もあって、ほぼ毎公演が完売という盛況だ。NDRエルプフィルは、これ以上ないほどの音楽的環境を手にしたのである。

エルプフィルハーモニーの杮落とし公演の様子(C)michael_zapf

そういう中、2019/20年シーズンからアラン・ギルバートが首席指揮者に就任する。正式な就任はまだ1年後だが、ギルバートは2004年から15年までこのオケの首席客演指揮者を務めるなど、すでに緊密な協力関係ができている。新たな本拠地とシェフを得たNDRエルプフィルは、伝統的なレパートリーに加えて、より多彩な響きのパレットや柔軟性を獲得しつつある。ギルバートのもと、このオーケストラが新たな黄金時代を迎えるための条件は、すでに十分すぎるほど揃っているのである。


中村真人(なかむら・まさと)
フリージャーナリスト。神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2000年よりベルリン在住。著書に『ベルリンガイドブック「素顔のベルリン」増補改訂版』など。ブログ「ベルリン中央駅」http://berlinhbf.com

 


【特別連載①エレーヌ・グリモー】「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」(伊熊よし子、音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

【特別連載②アラン・ギルバート】スター指揮者のポートレート(山田治生、音楽評論家)

NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団特設ページ

【NDRエルプフィル特別連載②アラン・ギルバート】スター指揮者のポートレート(山田治生、音楽評論家)

投稿日:
京都コンサートホール

ドイツの名門「NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)」公演 (11/1) に向けて、前回からスタートした「NDRエルプフィル特別連載」。

4回にわたって、本公演の聞きどころや注目ポイントについて特集します。

第2弾は、今回タクトをとる指揮者アラン・ギルバートの魅力に迫ります。オーケストラ事情に詳しい京都出身の音楽評論家 山田治生さんが、マエストロの輝かしいプロフィールから知られざるプライベートな一面まで、様々な話を紹介してくださいました。

11月1日(木)19時開演の公演詳細はこちら


「アラン・ギルバート~スター指揮者のポートレート~」
山田 治生 (音楽評論家)

アラン・ギルバートは、1967年、ともにニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者であるマイケル・ギルバート&建部洋子夫妻の間に、ニューヨークで生まれた。ヴァイオリンを始め、ハーヴァード大学、カーティス音楽院、ジュリアード音楽院で学んだ。1994年のジュネーヴ国際音楽コンクールの指揮部門で第1位を獲得。その後、サンタフェ・オペラ音楽監督やロイヤル・ストックホルム・フィル首席指揮者を歴任。そして2009年に42歳の若さでニューヨーク・フィルの音楽監督に就任した。マーラー、トスカニーニ、バーンスタイン、ブーレーズ、メータ、マゼールなどの時代を代表するスター指揮者がシェフを務めたオーケストラ。ギルバートは、そんな名門楽団の音楽監督を8年間務めた。

ニューヨークフィルとアラン・ギルバート(C)Chris Lee
エルプフィルハーモニーの模型とアラン・ギルバート(C)Peter Hundert

2017年限りでのニューヨーク・フィルからの離任が発表されてから、ギルバートの次のポストが世界的に注目されたが、彼が選んだのはNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団だった(2019年秋に首席指揮者に就任)。かつて北ドイツ放送交響楽団と呼ばれたエルプフィルとギルバートとの付き合いは長い。2001年に初共演し、2004年から2015年まで首席客演指揮者を務めた。今回、新たに首席指揮者を引き受けたのは、新しいホール、エルプフィルハーモニーができて、大きな可能性を感じたからだ。「新しいホールができて、ハンブルクは世界が注目する新たな音楽スポットとなり、オーケストラも変わりました」という。

また、この4月からは東京都交響楽団の首席客演指揮者も務める。7月の就任披露演奏会では大きな成功を収めた。もちろん、世界の一流オーケストラや歌劇場への客演も続く。2018-19シーズンには、ベルリン・フィルをはじめ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、バイエルン放送交響楽団、ウィーン交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、イスラエル・フィル、ミラノ・スカラ座などに登場する。

(C)Peter Hundert

ギルバートにとって、オーケストラとの相性はとても重要だ。彼は、指揮者とオーケストラとが引き起こす化学変化や音楽を分かち合う気持ちを大切にしている。そして「音楽体験の質の高さは、よく言われているオーケストラのランキング通りではない」という。

彼は、オーケストラのメンバーとのコミュニケーションを積極的に図る。たとえば、今年の終わりには、ヴィオラ奏者として、東京都響メンバーとブラームスの弦楽六重奏曲を弾いたり、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(ゲヴァントハウス管の主力で構成)とドヴォルザークの弦楽五重奏曲第3番を共演したりもする。

もちろん、家族もとても大切にしている。両親がヴァイオリン奏者であることは最初に述べたが、妹のジェニファーもヴァイオリニストで、彼女はフランス国立リヨン管弦楽団のコンサートマスターを務める。アランには14、13、8歳の3人の子供がいて、家にいるときは料理や子供の学校の送り迎えもしている。14歳の長女が自らすすんで熱心にヴァイオリンやピアノの練習をしているのをアランは楽しんで見ているという。

 


山田 治生(やまだ・はるお)

音楽評論家。1964年、京都市生まれ1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌「音楽の友」などに寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。


【特別連載①エレーヌ・グリモー】「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」(伊熊よし子、音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

【特別連載③】「北ドイツの雄、NDRエルプフィル」(中村真人、ジャーナリスト/ベルリン在住)

NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団特設ページ

【NDRエルプフィル特別連載①エレーヌ・グリモー】「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」(伊熊よし子、音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

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京都コンサートホール

15年ぶりに京都公演を行う、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)。約2ヶ月後に控えた公演に向けて、当ブログにて4回に渡って、出演者に注目する特別連載をいたします。

第1回は、今回エルプフィルと共演する、フランス出身の世界的ピアニストのエレーヌ・グリモーについてお届けします。約30年前から彼女を知る、音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんに特別寄稿いただきました。

11月1日(木)19時開演の公演詳細はこちら

(C)Mat Hennek

「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は独創的で哲学的です」
伊熊 よし子 (音楽ジャーナリスト・音楽評論家)

エレーヌ・グリモーには初来日した17歳のころから取材を続けているが、性格も演奏も著しく変貌。当初より雄弁になり、表情も明るく、自信がみなぎるようになった。

「いろいろ回り道をしてきましたが、いまようやく自分が本当にしたいことができるようになったのです。私は子どものころからさまざまな問題を抱え、両親が扱いに困るような子でした。パリの音楽院に通っていたころも友だちはできず、いつもひとり。ベートーヴェンやブラームス、ロシア作品を弾きたいと思っていたのに、先生からは幅広い作品をまんべんなく学ぶようにいわれ、自分が弾きたい作品は弾かせてもらえなかった。次第に学校に行きたくなくなり、ひきこもりになったの」

子どものころからベートーヴェンに惹かれていた。「ベートーヴェンとともに人生を歩んできたといっても過言ではない」と語る通り、演奏する機会のないピアノ・ソナタやピアノ協奏曲をいつもひとりで弾いていた。

「ベートーヴェンは常に新しいことを目指しながらも古典的な形式に根差し、伝統を重んじる作品を書きました。伝統と革新、この両面が見事に融合されて、すばらしく大きな美の世界が生まれる。ベートーヴェンのソナタやコンチェルトを演奏していると、ひとりの偉大な人間に対する理解が深まっていく。ただし、それらの作品は容易に手の内に入るわけではありません。何度もコンサートにかけ、聴衆の反応を見て、奏法、表現、解釈を深めていかなくてはならないのです」

(C)Mat Hennek

ベートーヴェンの作品は、演奏するたびに常に新たな発見があるという。それがベートーヴェンのすばらしさであり、音楽家を惹きつけてやまないところなのだろう。

「ベートーヴェンは人間的にとても魅力的な人だったと思いますし、できることなら実際にお会いしたかった(笑)。人格の深さ、心の広さ、すべてが作品に表れています。私がもっとも多く演奏しているのはピアノ協奏曲第4番ですが、これはとても独創的で哲学的です。リリカルで詩的な面もあり、ラプソディーの要素も含まれていますよね。第1楽章の出だしも非常に美しいのですが、私はとりわけ第2楽章のオーケストラとピアノの音の対話に感銘を受けます。ことばでは表現できないほどの崇高さも秘めている。なんと魔力的な楽章なのでしょう。第5番《皇帝》の第2楽章も同様ですが、ベートーヴェンのいずれのコンチェルトも第2楽章はオリジナリティにあふれ、弾いていて幸せな気分になります」

グリモーは服装もメイクもごく自然でシンプル。それにもかかわらず、出身地のエクサンプロヴァンスの美しい色彩と馨しい香りをただよわせている。私は料理好きの趣味が高じてアーティストに自分のレシピを捧げているのだが、彼女には「白身魚のポワレ」を献呈。野菜たっぷりのラタトゥイユも彩り豊かに仕上げ、グリモーの説得力の強い、多種多様な色彩感を内包した演奏とリンクさせた。ピアノ協奏曲第4番の第2楽章が思い浮かぶように。


伊熊 よし子(いくま・よしこ)

音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社勤務、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、1989年フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。アーティストのインタビューの仕事も多い。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)、「図説 ショパン〈ふくろうの本〉」(河出書房新社)、「伊熊よし子のおいしい音楽案内―パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)、「ショパン大全集」(ユーキャン 共著)などがある。http://yoshikoikuma.jp/


【特別連載②アラン・ギルバート】スター指揮者のポートレート(山田治生、音楽評論家)

NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団特設ページ

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー特別連載②】進々堂 続木社長インタビュー(前編)

投稿日:
アンサンブルホールムラタ

2018年に没後100年を迎えるドビュッシーに焦点をあてたスペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家クロード・ドビュッシー》では、京都の老舗ベーカリーの進々堂様と特別コラボレーションをし、ご来場のお客様に記念パティスリーをプレゼントします。

シリーズをより知っていただく特別連載の第2回として、京都コンサートホールと一緒にコラボレーション内容を考えてくださった株式会社進々堂の続木創社長に、パティスリーの魅力をはじめ、パン作りや音楽についてお話を伺いました。非常に濃密な内容となりましたので、前編・後編と2回に分けてお送りします。

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★コラボレーションについて★

――改めまして、この度は京都コンサートホールとのコラボレーションをお引き受けいただき、ありがとうございます。これまで、今回のように異ジャンルとのコラボレーションをされたことはございますでしょうか?

続木社長:はい、一番面白かったのは、京都市美術館がバルテュス展(2014)を開催した時のコラボレーション。美術館のみではなく、京都市内のいろんなところにバルテュスに関連したものが存在するような環境を作りたい、ということでバルテュスに因んだメニューを進々堂のレストランとカフェで出して欲しいというご依頼でした。
バルテュス未亡人が日本人の素敵な女性という幸運もあり、バルテュスが生前好物にしていた食事につき奥様にいろんなお話を聞くことができました。ところがこれが結構ハードルが高くて、「パン・ド・カンパーニュにハムを挟んだシンプルなサンドイッチ」とか、「スパゲッティも塩とバジルだけのシンプルなもの」とか。実はそういうのが一番難しいんですよね。あとは「チョコレートムースが好きだった」というお話もあったので、四苦八苦しながらも何とかメニューとしての体裁を整え、奥様に試作品を食べていただきOKが出たときにはみんなで大喜びしました。それまで知らなかったバルテュスという画家を身近に感じるようになって、とても楽しい仕事になりました。

 

――とても面白い試みですね!コラボレーションをするには時間もエネルギーもかかるかと思いますが、どういったところにコラボの価値を見出されますか?

続木社長:このようなコラボレーションをすると、僕にとっても社員にとってもとても良い刺激になります。やっぱりパンはヨーロッパの文化の中で育まれたものなので、「芸術家がどのようにパンを楽しんでいたか」を再現してみると、社員たちにとってもイマジネーションをふくらませる良い助けになります。そして、自分たちの仕事のルーツみたいなところを再確認することにもなります。普段なかなかここまで手間暇かけて商品開発は出来ないんですが、実際にコラボレーションに取り組ませることで、これだけ広がりがあって楽しいことができるということが社員たちの気持ちの中に芽生えます。今回のコラボレーションを担当した社員たちも、「仕事が全部こんなんだったら楽しいのにな」と言いながらやっていますよ。なおかつお客様にも進々堂の「食文化に対する姿勢」みたいなものが伝われば良いな、と社長としてはそういう打算(?)をたくさん持ってやっています(笑)。

★今回のコラボレーションと特別パティスリーについて★

――コラボレーションはパン作りの原点を見直す大切な機会なのですね。社員のことを大切に、そして真剣に考えていらっしゃる続木社長の想いがとても伝わってきました。
ところで私どもの企画である、京都・パリ友情盟約締結60周年・日仏友好160周年・ドビュッシー没後100年 スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》とのコラボレーションについてもお話を聞かせていただけますでしょうか。

続木社長:京都市・パリ市の60周年という記念すべき年に、進々堂がこのような形で関われるというのはとても光栄だと思っています。しかもドビュッシーの没後100年という時に、ドビュッシーにちなんだものを作れるというのはとても楽しいです。

 

――そう言っていただけて嬉しいです!今回のコラボレーションでは、とても素敵なパティスリーを作っていただきましたが、完成までにはどのような経緯があったのでしょうか?

続木社長:もともとは、ドビュッシーの生家があるサン=ジェルマン・アン・レー(SaintGermain-en-Laye) にある「メゾン・グランダン(Pâtisserie Grandin)」という老舗洋菓子屋さんの「ル・ドビュッシー(Le Debussy)」というチョコレート菓子を作ろうと真剣に考えました。ところが取り寄せて試食してみたら、味そのものがイマイチしっくりこなかったんですよね。その他にも色々難しい条件もあったので結局「ル・ドビュッシー」を作るのは諦めて、高野さん(京都コンサートホール 事業企画課)と相談しながらどんなことができるか考え、生まれたのがこの3つのパティスリーです。

――この3つのパティスリーはどうのように開発なさったのでしょうか?

続木社長:奇をてらうのではなく、もともとフランスの食文化の中にあるものを応用しながら、何か新しいものを作りたいと思いました。結局、第1回ではアーモンドクリームを包みこんだブリオッシュ、第2回では様々な形のフィナンシェ、そして第3回では南西フランス・ボルドー地方の伝統菓子カヌレにオレンジ・リキュールをきかせたものになりました。フランスの伝統的な「美味しさ」をうまく組み合わせて、今回のイベントにふさわしい味を作り出そうという試みだったんです。

例えば、第1回のブリオッシュ生地にアーモンドクリームを包んだヴェノワズリー(注:卵や牛乳、砂糖などを用いたリッチなパンの総称)なんてあって不思議じゃないのに、なぜか今まで無かった。第3回のカヌレも、カヌレに「グラン・マルニエ」のオレンジ・リキュールを加えるなんて今まで誰もやってないと思うんですけれど、やってみたらすごく美味しかったんです。「こんなに美味しいのになんで今までなかったのかな」というものを目指したので、皆さんがどのように召し上がってくださるかとても楽しみです(※詳しくは、当ブログ「進々堂様ご提供の特別パティスリー、詳細決定!」をご覧ください)。

★ドビュッシーについて★

――さて、続木社長はクラシック音楽がお好きだと聞きましたが、ドビュッシーはお好きですか?

続木社長:ドビュッシーはとても好きな作曲家です。僕自身はどちらかというと、バッハ、モーツァルトからベートーヴェン、ブラームスという流れのドイツ・クラシックが好きなんですけど、フランス音楽の中でも印象派のラヴェルやドビュッシーは好きです。実は僕は子供の頃からヴァイオリンを習っていて、学生時代に弦楽四重奏もやったのですが、ラヴェルの弦楽四重奏曲は弾いたことがあります。ドビュッシーも演奏したかったんですが、実はドビュッシーの方がずっと技術的に難しくて諦めました。でも、ロマン派以降の弦楽四重奏曲で一番好きな曲はと訊かれたら、多分ドビュッシーと答えます。特に子守唄のような第3楽章が好きですね。

それから今回のコラボレーションがはじまってもっとドビュッシーについて知りたいと思い、ドビュッシーの伝記、島松和正著 『ドビュッシー: 香りたつ音楽』(講談社エディトリアル刊)を読みました。お医者さんが書かれたすごく素敵な本で、ああいうディレッタンティズム(注:芸術や学問を趣味や道楽として愛好すること)ってすごいと思いました。読んでいて本当に楽しかったです。
今はユーチューブで世の中の曲ほぼ全てが聴けますよね。その伝記を読みながら、曲名をユーチューブに入力するとほとんど全部聞けてしまってびっくりしました。そして知ったのですが、ドビュッシーって若い頃に素敵な歌曲を本当にたくさん書いているんですね。後年に書かれた管弦楽曲とかは結構聞いていたんですけど、今回この企画に関わったおかげで若かりし日にドビュッシーが書いた歌曲たちという新しい世界を知ることができました。こういう出会いって本当に嬉しいものですね。

* * 後編につづく * *

(2018年7月4日京都コンサートホール事業企画課インタビュー@進々堂 本社)

*  *  *

インタビュー後編はこちら。
スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》の特設ぺージはこちら。
特別連載①「ドビュッシーとパン(牧神)」はこちら。

京都コンサートホール×ニュイ・ブランシュKYOTO 2018 「瞑想のガムラン――光と闇に踊る影絵、覚醒の舞」

投稿日:
京都コンサートホール

みなさん、「ニュイ・ブランシュ(白夜祭)」というイベントはご存知でしょうか?
「ニュイ・ブランシュ」とは、パリ市が毎秋行う一夜限りの現代アートの祭典のこと。京都・パリ友情盟約締結60周年にあたる今年、日仏の現代アートを楽しめる「ニュイ・ブランシュKYOTO」が市内各所で盛大に開催されます。

今年のテーマは「五感」!視覚、聴覚はもちろんのこと、触覚、味覚、そして嗅覚を刺激するアートが、街のいたるところで繰り広げられます。
そこで京都コンサートホールでは、2018年に没後100年を迎えるフランス人作曲家クロード・ドビュッシーが大きな影響を受けた、インドネシアの伝統楽器「ガムラン」演奏と影絵「ワヤン」を皆さまにお届けします!

ガムラン
ワヤン(影絵)

ドビュッシーとガムランとの出会いは1889年にまでさかのぼります。その年、フランス革命100周年を記念して4回目のパリ万国博覧会が開催されました。エッフェル塔が建設されるなど、これまでにない盛り上がりを見せたこの記念すべきイベントで、作曲家クロード・ドビュッシーは「ガムラン」を初めて見聞きしたのです。その出会いは彼にとって衝撃的なものだったようで、友人のピエール・ルイスに宛てて次のように書き残しています。

ジャワの音楽を思い出してくれ。あらゆるニュアンスを、もうなんとも形容しがたいニュアンスまでも含んでいたではないか」。

とてもユニークで神秘的な響きを持つガムラン音楽。その秘密は、「スレンドロ」や「ペロッグ」と呼ばれるガムラン特有の音階にあります。「スレンドロ」とは一オクターブをほぼ均等に分ける五音音階、「ペロッグ」とは一オクターブを不均等に分けた七音音階のことです。先のパリ万博でドビュッシーが聴いたとされるガムラン音楽には、スレンドロ音階が使われていたと言われています。それを聴いたドビュッシーは、さっそく自らも5音音階を用いて作曲を試みましたが、あのガムラン独特の響きは再現出来ませんでした。それはなぜでしょうか?

その答えは「音律」です。スレンドロ音階では、五音の音程関係は固定されません。ところが、クラシック音楽で用いられる音律は「平均律(1オクターブを12音で均等に分ける方法)」。平均律では音程幅が固定されるので、スレンドロ風に5音を選んでも、均一な響きになります。つまりドビュッシーがガムラン風に作曲したとしても、基本の音律が異なるために、あの独特な響きを生み出すことは不可能なのです。ところが、このガムランとの出会いはドビュッシーの作曲家人生におけるターニングポイントとなり、「ドビュッシーらしい」響きを生み出すきっかけとなったのでした。

さて、今回のニュイ・ブランシュはそんなガムラン音楽を京都コンサートホールで聴くことが出来る、滅多とないチャンスです!
場所はホールではなく、京都コンサートホール1階のエントランスホール。演奏はインドネシア伝統芸能団「ハナジョス」の2人が担当します。

ハナジョス

身体に響きわたるガムラン音楽に酔いしれながら、幻想的なインドネシアの影絵「ワヤン」やバリ料理(特別出店・京都北山ダイニングカフェ バリガシ)も同時にお楽しみいただける、特別な一夜を演出します。入場は無料、21時30分スタート予定です。ぜひ、秋の夜長を京都コンサートホールでお過ごしくださいね。

 


出演:インドネシア伝統芸能団ハナジョス(ローフィット・イブラヒム&佐々木宏実)
入場無料(定員100名)
日時:2018年10月5日(金)21時30分開始予定(21時開場/22時30分終了予定)
場所:京都コンサートホール1階 エントランスホール
主催:京都コンサートホール(公益財団法人 京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市
協力:北山街協同組合
特別出店:ダイニングカフェ・バリガシ https://baligasi.com/
お問い合わせ:京都コンサートホール ☎075-711-2980 ※第1第3月曜休館(休日の場合は翌平日)

181005Nuit Blanche KYOTO 2018 English Flyer

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー特別連載①】ドビュッシーとパン(牧神)

投稿日:
京都コンサートホール

2018年に没後100年を迎えるフランスの作曲家ドビュッシーを讃えて、全3回のスペシャル・シリーズ『光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー』(10/13、11/10、11/23)を開催いたします。

よりドビュッシーを知っていただくため、そしてこのシリーズをより楽しんでいただくため、本ブログで特別連載を行います。

連載の第1回目は、本シリーズの第2回『ベル・エポック~サロン文化とドビュッシー~』で演奏される《ビリティスの3つの歌》をはじめとする3作品から、ドビュッシーとパン(牧神)の関係に迫ります。

* * *

牧神の午後への前奏曲、シリンクス、ビリティスの3つの歌。
ドビュッシーが残したこの3つの作品に共通するもの――それは「パン(牧神)」です。

ルーベンス:パンとシュリンクス

「パン(牧神)」とはギリシャ神話に登場する牧人と家畜の神。顎髭を生やし、山羊の角と脚を持ち、半人半獣の姿をしています。そしていつもトレードマークとも言われる「パンの笛」と呼ばれる笛を手にしているのですが・・・。この「パンの笛」とはいったい何でしょう?

パンは大の女好きでした。毎日、森や川の女神(ニンフ)を見つけては追いかけまわし、見つけては追いかけまわし・・・の繰り返し。そんなある日、パンは「シュリンクス(フランス語読みではシランクス)」というニンフに出会いました。女好きのパンはもちろんシュリンクスに声を掛けますが、パンのその醜い容姿に恐れおののいたシュリンクスは逃げ回ります。でも、パンの恋心は高まるばかり。あきらめきれないパンはしつこくシュリンクスを追いかけまわし、とうとう川辺まで追い詰めました。そしてパンがシュリンクスを抱きしめようとした瞬間・・・!シュリンクスは神に助けを求め、その姿を葦(あし)に変えてしまいました。
シュリンクスを失い悲しみに暮れるパン。するとヒューっと風が吹き、その風にそよいで葦が音を鳴らしました。その音色はまるでシュリンクスの声のよう。葦に彼女の姿を重ねたパンは「少なくとも、あなたの声と共にいることができた」と喜び、その葦を束ねて笛を作りました。そしてその笛に「シュリンクス」と名前をつけて、肌身離さずいつも身につけていたといいます。この「シュリンクス」と名づけられた笛が「パンの笛」です。

 

ドビュッシーはなぜこの「パン(牧神)」をテーマに3つの作品を書いたのでしょうか?

そのひとつのきっかけとなったのが、19世紀を代表するドイツの大作曲家、リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の存在です。

リヒャルト・ワーグナー

ドビュッシーが生まれる1年前の1861年、ワーグナーの楽劇「タンホイザー」のパリ初演がオペラ座で行われました。結果的には大失敗となったこの初演ですが、パリの文化人には多大な影響を与えることとなったのです。中でも、ボードレール(ドビュッシーが最も好きな詩人として名を挙げた人物)は『リヒャルト・ワーグナーと《タンホイザー》のパリ公演』を執筆しワーグナーを称え、マラルメ(「牧神の午後への前奏曲」の作者で、19世紀フランス印象派最大の詩人)は『ワーグナー論評』に論文を寄稿したというように、とりわけ文学者から絶大な支持を得ました。しかし音楽家にとって、このワーグナーの影響は少し違うものでした。ワーグナーが独自の手法で己の音楽様式を確立していく中で、フランスの音楽家たちはワーグナーの音楽に対してフランス独自の音楽を生み出すことの必要性を感じたのです。さらに、その思いに拍車をかけたのが1871年普仏戦争の敗戦。これまで音楽をはじめとする文化の中心地であったフランスですが、この敗戦を機にドイツの存在を意識せざるを得なくなります。そしてそれはドビュッシーが活躍する19世紀末まで続いたのです。サン=サーンス(1835-1921)は1871年に国民音楽協会を設立、フォーレ(1845-1924)らとともにフランス音楽の再興に尽力、近代フランス音楽の基礎を築きました。続くラヴェル(1875-1937)は古典的な形式や表現に回帰し、若くして独自の様式を確立。ドビュッシーはというと、全音音階や半音階、五音音階やギリシャ旋法を用い、これまでの調性・機能和声からの逸脱を図り独自の手法を見出したのですが、それらを音楽の中で実現する格好の題材のひとつがギリシャ神話、とりわけ「パン(牧神)」、そしてパンの笛から奏でられる音楽だったのです。

《牧神の午後への前奏曲》はマラルメの詩『牧神の午後』の官能的で夢幻的な世界を描写した作品ですが、この作品によりドビュッシーは独自のスタイルを確立するとともに、20世紀音楽の扉を開いたとも言われています。《シリンクス》(作曲当初は《パンの笛》と名付けられていました)では、音階や旋法を駆使してパンが奏でるその笛の音を、そしてギリシャ神話の世界を、たった1本のフルートで見事なまでに表現。《ビリティスの3つの歌》でもその東方的な旋律で、瞬く間に人々をドビュッシーの世界に惹きこみます。

ドビュッシーは「パン(牧神)」を通じて自らの音楽を創出していったのです。

* * *

さて、ここまで書いてきたことはドビュッシーのほんの一面に過ぎません。ドビュッシーにはまだまだ我々が知らないたくさんの魅力が隠れています。

そんなドビュッシーを、そして彼の音楽をより深く知っていただくため、京都コンサートホールではスペシャルシリーズ『光と色彩の作曲家クロード・ドビュッシー』を開催いたします。計3回にわたるコンサートでは、ドビュッシーに精通した専門家によるナビゲーションとともに、ドビュッシーにまつわる様々な作品をお届けいたします。

ドビュッシーを知りたくなった方、ますますドビュッシーに興味を持った方。この機会にドビュッシーの世界に浸ってみませんか?

スペシャル・シリーズ《光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー》の特設ぺージはこちら。

(京都コンサートホール 事業企画課)


【参考文献】
広瀬大輔 2018 「パリでわき起こったワーグナーへの熱狂」産経新聞社『モーストリー・クラシッック』254: 56
大嶋義実 2014 「無伴奏フルートアナリーゼ」アルソ出版『ザ・フルート』139: 56-57
松本 學 2012 「連載 Wagneriana ワグネリアーナ~ワーグナーにまつわるあれこれ 2」(『東京・春・音楽祭』ウェブサイト内) http://www.tokyo-harusai.com/news/news_1047.html (2018年8月2日閲覧)

特別連載②「進々堂 続木社長インタビュー(前編)」はこちら。

オルガニスト大木麻理 特別インタビュー(9/8オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.62「オルガニスト・エトワール」)

投稿日:
インタビュー

人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」の62回目、“オルガニスト・エトワール”にご出演いただく大木麻理さん。

大木さんは、第3回ブクステフーデ国際オルガン・コンクール優勝など輝かしい受賞歴を持つ、今注目のオルガニストです。その活躍は飛ぶ鳥を落とす勢いで、今年4月からミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストに就任されました。

今回、京都コンサートホール初登場を記念して、国内オルガニストの期待の星“エトワール”である大木さんに、オルガンの魅力や珍しい和太鼓との共演についてなど色々とお話を伺いました。

――こんにちは!この度はお忙しい中ありがとうございます。
まず大木さんのオルガンとの出会いをお聞かせいただけますでしょうか?

大木さん:小学校4年生の時に、地元静岡に新しいコンサートホールが完成し、そこにパイプオルガンが入りました。市民を対象に新しいオルガンの見学会が開催され、そこに参加したのがオルガンとの出会いです。
その豪華な見た目と、音色に一瞬で心をつかまれ・・・今に至ります!

――パイプオルガンは他の楽器にはない圧倒的な存在感がありますよね。大木さんにとって、パイプオルガンの魅力とは何でしょうか?

大木さん:心の琴線に触れるような繊細な音色から、天地がひっくり返りそうなダイナミックな音まで、一人で奏でることができることです。
また手だけではなく足を使って演奏したり、ストップ操作など、大きなおもちゃを操っている様な感覚になります。

――オルガニストの方々が両手両足を駆使して、大きなオルガンから様々な音色を引き出されている様子にはいつも感銘を受けます。この4月から務めていらっしゃる「ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト」について、具体的にどのようなお仕事をなさっているのか教えていただけますでしょうか。

大木さん:ソロやオーケストラとの共演など演奏のお仕事はもちろんのこと、「弾き込み」と称して、ホールが空いている時間は出来るだけ多くの時間楽器を鳴らすようにします。その中で楽器に不調がないか、チェックをしてオルガンが常に良い状態に保たれるように努めています。また外部からオルガニストをお招きする際には、その公演が円滑に進み、気持ちよく演奏をしていただくために“黒子”のような存在になることもあります。
そしてオルガンの魅力を一人でも多くの方に知っていただくため、オルガンの見学会やレッスンなども行っています。

(C)Mari Kusakari

――演奏だけでなく、様々な形でオルガンと関わっていらっしゃるのですね。大木さんは大学で教鞭も取られていますが、「教える」ことはお好きですか?また、「教える」ことによってオルガン演奏にどのようなプラス面がありますか?

大木さん:教えることは好きです。大きなやりがいを感じています。自分が教わってきたことを多くの人に伝えたいと思いますし、そのことがオルガンを習う人にとって何か助けになると嬉しいと考えています。レッスンをすることで音楽や演奏法などを客観的にそして冷静に見ることができ、自分が弾いている時には気付かない悪い癖などを知ることができます。
逆に生徒さんのオルガンと向き合う姿勢から学ぶことも沢山あり、レッスン後にはいつもオルガンが弾きたくなるんです!

――レッスン後でも弾きたくなるほど、オルガン愛に満ち溢れた大木さんから教えてもらえる生徒さんは幸せですね!
今回の演奏会では和太鼓との珍しいデュオを聞かせてくださいますが、なぜ今回和太鼓を選ばれたのでしょうか?

大木さん:いつかオルガンとコラボレーションしたい楽器の筆頭に「和太鼓」がありました。私の長年の夢だったのです!躍動感溢れる音、リズム、そして奏者の肉体と(誤解しないで下さい 笑)魅力的な要素が沢山詰まった楽器だと思います。

そしてもう一つの理由にオルガンと打楽器の相性の良さがあります。オルガンは繊細な音から地を揺らすような音まで、非常に大きなダイナミックレンジを持つ楽器ですが、アンサンブルをする時にお互いに音量の遠慮し合うことなく、つまりオルガンと対等のダイナミックレンジを持つ唯一の楽器が打楽器だと思います。

昨今ではオルガンとクラシック楽器としての打楽器との演奏機会は増えてきましたが、和太鼓はとても珍しいですよね・・・。日本人として日本の楽器を大切にしたい気持ちもあり、今回は同じ打楽器でも「和」なものを選んでみました。

大多和正樹(和太鼓)

――夢の共演を京都コンサートホールで聴けるのはとても楽しみです!
今回のプログラムの冒頭に演奏される、大木さんお得意の作曲家ブクステフーデについて、彼の作品の特徴や魅力などを教えていただけますでしょうか。

大木さん:得意なのかは正直わかりません・・・笑。でも大好きな作曲家の一人です。ブクステフーデの存在なしには、恐らくJ.S.バッハは誕生しなかったでしょう!
(青年バッハが約400kmの道のりを歩いて彼の演奏を聴きに行き、その虜になったという逸話が残っているくらいですから。)
ブクステフーデの音楽は、私にとって非常に「魅惑的」です。一筋縄ではいかない音楽の進行、そしてドラマチックなお芝居を見ているかのような劇的な音楽の展開に心を摑まれています。

――ブクステフーデはオルガン界にとって大切な存在で、時代や国を越えて多くの人を惹きつけた作曲家なのですね。
ところで、今回のプログラムについて、テーマや聴きどころをお教えいただけますでしょうか?

大木さん:私の中でのテーマは「未知への挑戦」です!オルガンと和太鼓によってどんな音楽が誕生するのか、私自身もわからないのです。でも面白いものになるという確信は持っています。
本音を言うと、私も一聴衆としてこの演奏会を聴きたいくらいです!
そして聴きどころは・・・「全部」!!

――プログラムを最初に拝見した時からずっとワクワクしております!
それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

大木さん:オルガンと和太鼓が一緒に演奏するなんて、どんな演奏会になるのだろう・・・と思われているお客様もいるのではないかと想像していますが、安心してください!きっとオルガンの新たな魅力を感じて頂ける機会になると思います。

個人的に最近気に入っている言葉に「オルガン浴」というものがあります。オルガンを聴くのではなく、リラックスしてオルガンの音を浴びて頂きたい、と思いついた言葉です。日光浴、森林浴などと並んで、この言葉がスタンダードになったら嬉しいな・・・なんて思っています。

初めての京都コンサートホールですが、新しいオルガンとの出会い、そしてお客様との出会いを今から心待ちにしております。オルガンの音を思う存分浴びにいらして下さい!

――色々なお話を聞かせてくださいまして、誠にありがとうございました。9月の公演がとても楽しみです!

(7月31日 京都コンサートホール事業企画課 メールインタビュー)

♪♪ 公演情報 ♪♪

オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62「オルガニスト・エトワール」

2018年9月8日(土)14:00開演(13:00開場)大ホール
[オルガン]大木 麻理(ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト)
[ゲスト]大多和 正樹(和太鼓)

[曲目]
ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV149
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ(A.ラントマン編曲):シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)
ボヴェ:「東京音頭」による幻想曲
ラヴェル(K.U.ルードヴィッヒ編曲):ボレロ
ほか

[チケット料金]
全席自由 一般 1,000円 高校生以下 500
〈京都コンサートホール・ロームシアター京都Club、京響友の会の会員〉 900円

※障がいのある方:900円(同伴者1名まで)
京都コンサートホール・ロームシアター京都のみで取扱。
窓口でご本人様が証明書等をご提示ください。

詳しくはこちら♪

和太鼓奏者・大多和正樹 特別インタビュー(9/8 オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.62「オルガニスト・エトワール」共演者)

投稿日:
京都コンサートホール

9月8日(土)午後2時から開催される「オムロン パイプオルガンコンサートシリーズ vol.62 “オルガニスト・エトワール”」。今回の“エトワール”は、ミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストを務める大木麻理さんです。

オルガニスト 大木麻理

彼女が今回のプログラミングを考える際、一番最初に見せたこだわりが「和太鼓奏者の大多和正樹さんと共演したい」ということでした。
わたしたち京都コンサートホールもパイプオルガンと和太鼓の共演は初めてということで、どのようなコラボレーションになるか、わくわくしています。
そこで、和太鼓奏者の大多和正樹さんに、共演される際の聞きどころなどについてお話を伺うことにしました。

✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥ ✥

――はじめまして、今回のパイプオルガンと和太鼓のコラボレーション、とても楽しみにしています。大多和さんは普段、どのような活動をなさっているのか教えていただけますか。

大多和さん:最も大事なのはその場に合った音量、音色と考えています。
故に呼吸を伴った演奏ができることを心がけています。
様々なアンサンブルやソロにて多様な音量幅で活動しております。
尺八、津軽三味線、箏、篠笛などの和楽器はもちろん、ジャズ、ラテン、アフリカン、クラシックなどあらゆる音楽、ダンサー、書家、役者など様々な創作者の方々と共演しております。

和太鼓奏者 大多和正樹

――従来の和太鼓のイメージにとらわれずに、様々な楽器と一緒に演奏されていらっしゃるのですね!その中で和楽器である和太鼓と、洋楽器(今回で言えばパイプオルガン)とのコラボレーションにどのような可能性を見出されていますか?

大多和さん:どんな楽器も先人のお陰で今日まで受け継がれてきていることの素晴らしさ、また歴史ある楽器が今回共に奏でられることに大変感謝しております。
互いに音量幅の広い楽器であること、このダイナミクスレンジの幅が似ていると思われる両者の音から生まれる新たなスタンダードアンサンブルに期待しています。

――なるほど、一緒に演奏することで魅力も2倍になるということですね。
ところで、大多和さんと大木さんが今回共演されるきっかけを教えてくださいますか。

大多和さん:昨年11月の東京オペラシティで、あるオーケストラと共演した際、楽屋前で大木さんから今回のお声掛けをいただいたのがきっかけです。
そのときは二人の共演はなかったのですが、和太鼓とのアンサンブルにとても興味を持っていらっしゃいました。
同時に私も「どんな繊細かつ壮大なアンサンブルになるのだろう!」とワクワクしたことを覚えています。

――ということは、今回が記念すべき「初共演」でいらっしゃるのですね!余計に楽しみになってきました。
さて、今回のコンサートで大木さんと共演なさる曲について、聞きどころをそれぞれ教えてくださいますか。

大多和さん:《トッカータとフーガ ニ短調》については、いくつかのビートが出ているなかで各シーンが演奏されることになるかと思います。少しロック寄り?かもしれません。いずれにしても珍しいかたちで演奏されることになると思います。
《ボレロ》は当然の音量の変化と共に、両手で同時に鳴らされる太鼓の移り変わりにご注目ください。
《東京音頭》に関してはオルガンバージョンをまだ聴いたことがなく、今のところ全く見当もつきません。後日大木さんの演奏音源を頂いたらイメージが浮かぶと思います。

――バッハでロック寄りですか!?《トッカータとフーガ ニ短調》はもう何回も聴いている作品ですが、まったく新しい《トッカータとフーガ》に出会えるような気がします。バッハ=ロックは想像つかないのですが、絶対カッコイイですよね。
それでは最後に、当日お越しくださるお客様に大多和さんから一言お願いできますでしょうか。

大多和さん:演奏とは、イメージを擦り合わせるために会話をしていくことと似ている気がします。言語を使って人と意思を伝え合うように、その楽器を操る人、お客様と共感できることは大変大きな喜びです。
パイプオルガンと和太鼓の「繊細かつ壮大な音世界」、大木さんと私の「音の会話」から皆さんと共感できる瞬間が生まれることに期待しながら、とても楽しみです!是非体感しにいらしてください!

――ありがとうございました!新しいパイプオルガンの世界を創ってくださること、いまから楽しみにしております。どうぞ宜しくお願い致します。

(7月23日 京都コンサートホール事業企画課メールインタビュー)

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【公演情報】

2018年9月8日(土)14:00開演(13:00開場)
大ホール
Saturday 8, September 2018 2:00 p.m. at Main Hall

いま注目の若手女流オルガニスト
待望の京都コンサートホール初登場!

輝かしい国際コンクール受賞歴を誇る、若き女流オルガニストの大木麻理。十八番のドイツ・バロック音楽はもちろん、和太鼓奏者の大多和正樹氏をゲストに迎えて、オルガンと和太鼓のコラボレーションまで披露します。
この魅力的なプログラムは、京都コンサートホールのためだけに組まれたものです!どうぞお見逃しなく!

[オルガン]
大木 麻理
(ミューザ川崎シンフォニーホール・オルガニスト)
Mari Ohki, Organ (Organist of MUZA Kawasaki Symphony Hall from1st April 2018)

[ゲスト]
大多和 正樹(和太鼓)
Masaki Otawa, Taiko (Japanese Drum)

[曲目]
ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV149
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J.S.バッハ(A.ラントマン編曲):シャコンヌ
(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)
ボヴェ:「東京音頭」による幻想曲
ラヴェル(K.U.ルードヴィッヒ編曲):ボレロ
ほか

【光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー】進々堂様ご提供の特別パティスリー、詳細決定!

投稿日:
お知らせ

今年10月13日、11月10日、11月23日と3回にわたって開催されるスペシャル・シリーズ『光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー』。
そのチラシ裏面で予告させていただいていた「京都コンサートホール×進々堂 特別コラボレーション」について、このたびその内容が決定いたしました!
フランスにちなんだパティスリーをご来場いただいた皆さまにプレゼントさせていただくとアナウンスしておりましたが、進々堂様の粋なお取り計らいもあり、各公演をイメージしたとても可愛らしい&美味しいパティスリー3種が出来上がりました。

ほら、とっても美味しそうで可愛らしいでしょう?!

それでは、それぞれのパティスリーをご紹介させていただきます。

◆ブリオッシュ・ダマンド Brioche d’amandes (第1回(10月13日)配布予定)
新鮮なバターたっぷり、ほんのり甘くふわふわ食感のブリオッシュ。
中には、ブリオッシュと相性抜群のアーモンドクリームが包み込まれています。でも実はこのおいしい組み合わせ、何故かフランスのブーランジュリーでは見かけません。このブリオッシュ・ダマンドは進々堂様の職人技が可能にした、日本にしかないフランスの菓子パン(?)なのです!是非その新しいおいしさをお楽しみください。
ところで表面に プリントされたワンフレーズ、何の旋律かお分かりでしょうか?
そう、第1回にプログラミングされている《前奏曲集》第1巻より〈亜麻色の髪の乙女〉の冒頭部分です。コンサートと一緒に、ぜひこのブリオッシュを味わっていただきたいなぁと思って選曲してみました♪

◆フィナンシェ・ヴァリエ Financiers variés (第2回(11月10日)配布予定)
様々な楽器や作品が寄せ集められた第2回にふさわしい、色んな味が楽しめるフィナンシェです。進々堂様ではドビュッシーのピアノ曲「子供の領分」をイメージしながら開発したのだとか。
金融という意味の“financier”から、金塊型のフィナンシェが一般的ですが、今回はフランスから取り寄せた、ジンジャーマン型とハート型に可愛く作っていただきました。フレッシュなバターがふんだんに使われています。味はランダムで2種類入っており、抹茶やチョコチップ、フランボワーズなどを予定しています。

◆カヌレ・ア・ロランジュ Canelé à l’orange (第3回(11月23日)配布予定)
カヌレとはフランス南西部のボルドー地方の伝統的なお菓子ですが、このカヌレは普通のカヌレとはちょっとひと味違うんです!
フランスのオレンジ・リキュール一流ブランド「グランマルニエ」のリキュールが隠し味として入っています。
ふわりとフランスの薫り漂う《前奏曲集》のように、オレンジの香りが口いっぱいに広がります。

いずれもフランスの伝統的な作り方でありながら、ドビュッシーや彼の作風をイメージしながら新しく生み出された、こだわりたっぷりのオリジナル・パティスリーです。今回それぞれ各公演にお越しの方にもれなくプレゼントしますので、チケットをご購入くださったお客様はどうぞお楽しみに!

またこれら3点に加え、ドビュッシー没後100年を記念した特別マカロンを1個300円にて進々堂様で販売予定です。

表面には、「クロード・ドビュッシーを偲んで」とプリントされています。
味は爽快でほんのり甘いミント味(フレッシュミントをクリームに漬け込んで香りを抽出してあります)。マカロン部分のブルー&ピンク、クリーム部分の白色はもちろん、フランスの国旗トリコロール・カラーを意識したものです。
こちらのマカロンは、ドビュッシー・シリーズの各公演日に京都コンサートホール1階のカフェ・コンチェルトやアンサンブルホールムラタのドリンクコーナーでも販売予定です。ぜひお買い物求めくださいね。

さて、これらのパティスリーは、進々堂様と京都コンサートホールとの間でこれまで何度も話し合いをし、試作・試食を重ねてきました。
今日はその過程もほんの少し、ご紹介させていただきます。

第1回の試食会は京都コンサートホールにて。進々堂社長の続木創様と製造部の須藤様が試作品をご持参くださり、京都コンサートホールの職員で試食させていただきました。

この時点でパティスリーはすでに美味しかったのですが、第2回の試食会に向けて、意見交換を行いました。お菓子と音楽をリンクさせてお話させていただき、充実した楽しい時間を過ごすことが出来ました。

第2回の試食会は進々堂様で開催させていただきました。
当日実際に配布するものと同じパティスリーをご用意いただき、貼付するシールの大きさやデザインなどについて話し合いをさせていただきました。
京都コンサートホールの希望を精一杯受け止めてくださる進々堂様に感謝の気持ちでいっぱいです!本当にありがとうございます!

この試食会の後、今回の企画に快く応じてくださった続木社長様に取材をさせていただくことが出来ました。
パンや音楽など(続木社長は大のクラシック音楽ファンでもあります)、多岐にわたってとても楽しいお話を聞かせてくださった続木社長。インタビューの模様は近日中に公開予定ですので、こちらもどうぞお楽しみに!

 

★《クロード・ドビュッシー 光と色彩の作曲家》特設ページはこちら