ピアニスト 永野英樹 インタビュー<後編>(2025.11.8 ピエール・ブーレーズ生誕100年記念事業 ブーレーズへのオマージュ)

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インタビュー

偉大なる作曲家 ピエール・ブーレーズの生誕100年を記念して開催する、京都コンサートホールオリジナル企画「ブーレーズへのオマージュ」(11月8日)。

本公演の出演者であり、ブーレーズから薫陶を受けたピアニスト 永野英樹さんへのインタビュー後編では、本公演のプログラムについてお話を伺いました。

前編はこちら

【インタビュー後編:本公演のプログラムについて】

―――今回、ブーレーズの作品から《12のノタシオン》《ドメーヌ》《フルートとピアノのためのソナチネ》の3作品を選んだ理由をお聞かせください。

永野英樹

ブーレーズの室内楽作品は少なく、片手で数えられるくらいしかありません。もちろんピアノのソロ作品だけでプログラムを組むこともできなくはないのですが、どうしても偏ってしまうため、ソロも交えつつ、作品ごとに変化をつけるという意味でこの3作品を選びました。作曲時期によってブーレーズの作風も変わっていきますので、そういう点も聴きどころだと思います。

ブーレーズの作品には作品番号が付いていませんが、《12のノタシオン》は彼の作品カタログの中では作品番号1(=作曲年代が一番古い)にあたるほど、本当に初期の作品です。当初は古典的な手法を引きずっているという点で、ブーレーズ自身はこの作品をカタログの中に入れていませんでしたが、やはりこの後の作品へのつながりが感じられます。ブーレーズの音楽語法の出発点ともいえるような作品ですね。

《ドメーヌ》は偶然性の音楽(演奏時に奏者自身で演奏するフレーズや順番などを選択するもので、演奏のあり方を偶然に任せた音楽のこと)で、ジョン・ケージとの親交などから影響を受けて書かれた作品です。クラリネット奏者にとっては重要なレパートリーのひとつでもあります。

《フルートとピアノのためのソナチネ》は、ブーレーズが若い頃、一番血の気の多い時期の作品で、とても迫力があります。音楽的で演奏効果も高く、まさにブーレーズ!といった感じの作品です。

 

―――クラリネット・ソロの《ドメーヌ》、そしてフルートとピアノのデュオ《ソナチネ》については、選曲時に奏者のイメージもあったのですか?

そうですね。クラリネットの上田希さんとは、「いずみシンフォニエッタ」で何度かご一緒したことがありました。また、サントリーホールのサマーフェスティバルでも上田さん、そしてフルートとの上野由恵さんとご一緒したことがありました。ですので、コンサートの後半に演奏するシェーンベルク/ウェーベルン編曲の《室内交響曲第1番》も含め、お二人と一緒に演奏したいと思い選曲しました。

 

―――ブーレーズ以外の作曲家の作品を入れた意図を教えてください。

ブーレーズの作品だけではなくて、彼と関わりのある作曲家やブーレーズ自身が好んで演奏していた作品を入れることで、“ブーレーズ”という人としてのイメージを知っていただきたいという意図もあります。ブーレーズの作品だけを聴くよりも音楽、そして彼の人物像に奥行きが出ると思いますね。ラヴェルの《夜のガスパール》は斬新な部分と昔ながらの作風を感じられる部分があります。シェーンベルクの《室内交響曲第1番》はまだ調性音楽で書かれているため、シェーンベルクの作品に馴染みのない方も聴きやすいと思います。

 

―――ラヴェルとシェーンベルクはブーレーズの作品とどのような関係性がありますか?

ラヴェルは作風に直接的な関係性はありませんが、ラヴェルや同じくフランス印象派の作曲家であるドビュッシーは、近代から現代への過渡期にあった作曲家です。書法や楽譜を忠実に再現しようとする姿勢はラヴェルに近しいものを感じはしますが、どちらかというとブーレーズはドビュッシーの方が音楽に対する向き合い方や思想などの面で、より親近感を持っていたように思います。でも、ラヴェルのことも一目置いていて、ブーレーズ自身もラヴェルの作品はたくさん演奏していましたので、そういう意味では近しい作曲家だと思います。

ブーレーズは血の気が盛んな若い頃はいろんな作曲家に対し歯に衣着せぬ批判をしていて、シェーンベルクやストラヴィンスキーなど他の作曲家の考えや作曲技法を全て受け入れたわけではありませんでした。でもシェーンベルクに関しては確実に影響を受けていますね。例えば、アンサンブル・アンテルコンタンポランでもシェーンベルクの作品をたくさん演奏していますし、ブーレーズが遺したシェーンベルクやウェーベルンの作品の録音は、ブーレーズのコレクションのなかでも大切なもののひとつと一般的にも言われています。そういう意味でも、シェーンベルクら新ウィーン楽派***の作品というのは、ブーレーズにとって、演奏家としても作曲家としても大切な位置にあるものだと思います。特に今回取り上げるシェーンベルク/ウェーベルン編曲《室内交響曲第1番》は、ブーレーズがよく指揮をしていた作品です。

***新ウィーン楽派
20世紀前半、ウィーンを拠点に活動したシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクのこと。

 

―――永野さんが本公演のチラシに寄せてくださったメッセージの中で「難解だと思われがちなブーレーズの音楽だが、指揮者として活躍した彼ならではの響きやリズムへのこだわりが詰まっている」とありますが、そのこだわりとはどのようなものですか?

ピエール・ブーレーズ

先ほどもお話ししましたが、ブーレーズは安定したリズムが嫌いで、どこかでリズムを壊していました。初期作品の《12のノタシオン》でもこの手法はすでに見られるのですが、そもそも楽譜に拍子を書いていないんですね。常に3/4拍子だとか6/8拍子ではなく、小節ごとに拍子が変わっていくこともあれば、メロディーのような箇所も4分音符で分割される拍ではなくて、それにプラス16分音符みたいな箇所がたくさん出てきます。そういったリズムの崩し方が、ブーレーズの特徴だと思いますね。

響きに関しては、ピアノ・ソロの作品でも、今回演奏する《フルートとピアノのためのソナチネ》でもそうなのですが、音がよく響く書き方をしています。楽器を演奏している方だとわかるかもしれないのですが、音がすごくよく響く作り方と、あまり響かない作り方というのがあり、その点でブーレーズは音がよく響く作曲をしていますね。ドビュッシーやラヴェルなどと同様に、フランス人独特のピアノ作品の作曲手法や、楽器の鳴らし方、和音の書き方があるのだと思います。特にピアノのエクリチュール(書法)に関して言えば、ブーレーズ自身がピアノを弾いていたということも大きく影響していたと思いますね。

 

―――永野さんが普段活動されているパリに比べ、日本ではまだ現代音楽に対して「難解」というイメージがどうしても強いように感じます。今回のプログラムやブーレーズの作品、そして現代音楽を聴く際のポイントを教えてください。

現代音楽というネーミングには語弊があります。現代音楽とは曲のスタイルではありません。20世紀以降の音楽がほとんど現代音楽として括られていますが、その中にはいろいろなスタイルがあります。まずはいろいろな音楽を聴いていただき、自分が好きなものを探すことが第一歩だと思いますね。現代音楽と聞いて「嫌」と思うよりも、「この曲・この作曲家は知らないから聴いてみよう」とか、「この国の作曲家は知らないから聴いてみよう」とか、そんな感じでよいと思います。あるいは「この楽器が好きだから聴いてみたいな」とか。そのくらいの興味でいろいろと聴いていただくと、ひょっとするとその中に自分の好きなスタイルの現代音楽が見つかるかもしれません。僕もブーレーズは偉大だと思うのですが、作曲家は必ずしもブーレーズ一人ではありません。現代を生きている作曲家、若い作曲家もたくさんいますし、彼らから新しいスタイルの音楽もどんどん生まれていくわけですので、たくさんの種類の曲を聴くのが一番よいと思います。あと、絶対に言えるのは、どんなものでもそうなのですが、録音されたものよりライブで聴く方が「あっ、これなら聴ける!」という音楽が絶対にあると思いますので、ぜひコンサートで聴いていただきたいです。

 

―――ありがとうございました。ブーレーズの真髄に迫るコンサート、楽しみにしています!

(2024年4月 大阪にて 事業企画課インタビュー)

指揮者 ユベール・スダーン インタビュー(2025.9.15 第14回 関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール)

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京都コンサートホール

 

今年で14回目となる「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール」。関西の8つの音楽大学・芸術大学の学生が京都コンサートホールに集い、オーケストラや合唱の演奏を通じて学生間の交流を深め、互いに高めあう、年に一度のフェスティバルです。
第14回公演の指揮者ユベール・スダーン氏に、今年のフェスティバルについてお話を伺いました。


毎年、名だたる指揮者と共に熱演を繰り広げてきた本フェスティバル。今年の指揮者はフェスティバル史上初となる海外の指揮者――オランダ出身の名匠ユベール・スダーン氏です。音楽家を目指す学生にとって、言わずと知れた名匠との共演は何ものにも代えがたい経験となるでしょう。スダーン氏も学生との共演について今の若い音楽家はみんな活気にあふれており、私自身もエネルギーを分けてもらえます。そして、プロの演奏家と言ってもよいほど、演奏も大変素晴らしい。今回、関西の学生と一緒に演奏できることが楽しみでなりません。』と語ってくださいました。

 

今年のプログラムはブラームスの《交響曲第4番》と、チャイコフスキーの《交響曲第4番》と、2大交響曲が並びました。どちらの曲もオーケストラの主要作品です。
どちらも大作と言われ、技術的にも音楽的にも難しい作品です。練習も大変でしょうが、テクニックの面に捉われず、ブラームス、そしてチャイコフスキーの音楽がどういうものなのか、学生たちと一緒に考え作っていきたいです。

 

ブラームスの《交響曲第4番》は彼にとって最後の交響曲。作曲されたのは1884~1885年、《クラリネット五重奏》などの傑作を生み出した晩年に差しかかる少し前です。
ブラームスは「交響曲」の作曲においては非常に慎重でした。しかしそれは第1番が作曲される長い長い構想期間の間だけで、第2番、第3番については短期間で書き上げました。第4番も同様に比較的短い期間で完成されましたが、その内容はより洗練され「ブラームスらしい」気難しさを備えています。

 

チャイコフスキーの《交響曲4番》は今から50年前、スダーン氏が29歳の時に日本デビューを飾った際に演奏した作品です。
私自身、チャイコフスキーの交響曲を指揮する機会はあまりありませんでした。チャイコフスキーが《交響曲第4番》を作曲した時期、彼の人生に大きな転機が訪れていました。そのことが音楽にも大きく反映されています。ベートーヴェンにとっての「英雄交響曲」のように!


偉大なる2つの交響曲に挑む今年の「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル」。
ブラームスとチャイコフスキー、2人の作曲家の代表的な作品を一度に演奏することは、学生にとってすでに大きな挑戦です。』と語るマエストロ。
学生との熱演を、ぜひ京都コンサートホールでお聴きください!

 

 

 

第14回関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール

【日時】2025年9月15日(月・祝)15:00開演(14:00開場)
【会場】京都コンサートホール 大ホール

【出演】
ユベール・スダーン(指揮/東京交響楽団 桂冠指揮者、オーケストラ・アンサンンブル金沢 名誉アーティスティック・アドヴァイザー)
【参加大学】
大阪音楽大学、大阪教育大学、大阪芸術大学、京都市立芸術大学、神戸女学院大学、相愛大学、同志社女子大学、武庫川女子大学

【プログラム】
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
チャイコフスキー:交響曲第4番 へ短調 作品36

【料金】全席自由 一般1,500円、高校生以下500円
※未就学児入場不可

♪ 14:20~京都市立芸術大学・神戸女学院大学の学生によるロビーコンサートを開催します。
♪ 8大学それぞれの魅力を紹介する案内ブースをホワイエに設置します。進学に関するご相談も可能です。

 

 

 

 

 

 

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合奏指導者 井手カナ インタビュー(京都市ジュニアオーケストラ)

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京都コンサートホール

2024年度から京都市ジュニアオーケストラの合奏指導者として関わってくださっている、指揮者の井手カナさん。
東京藝術大学音楽学部指揮科に在学する傍ら、NHK交響楽団N響アカデミー指揮研究員を務めるなど、忙しい日々を送っていらっしゃいます。
京都市ジュニアオーケストラとは、8月9日開催の「ミュージック・サマー・コンサート」で共演予定!現在、最後の追い込みのリハーサルを重ねているところです。

そんな合間を縫って、井手さんにインタビューを行いました。
なぜ指揮者を目指すようになったのか、どんな指揮者を目指しているのか・・・などなど、様々なお話をお伺いすることができました。
ぜひご覧ください!

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壬生寺 貫主 松浦俊昭氏×京都コンサートホール プロデューサー 高野裕子 対談(Kyoto Music Caravan 2025)

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インタビュー

京都コンサートホール開館30周年事業として、京都市内各所で開催中のクラシック音楽の一大イベント「Kyoto Music Caravan 2025」。
2023年以来、2度目の開催となる本イベントは、これまでに10公演中4公演を実施し、多くのお客さまにご来場いただいています。

今回、8月11日公演の会場である壬生寺の貫主 松浦俊昭氏と、京都コンサートホール プロデューサーの高野裕子で、「Kyoto Music Caravan」にまつわる対談を行いました。ぜひ最後までご覧ください。


◆前回の「Kyoto Music Caravan 2023」について

――「Kyoto Music Caravan 2023」の開催から2年が経ちました。

松浦さん(以下敬称略):コンサートを開催したのはお盆の時期で、壬生寺では毎年「万灯供養会(まんとうくようえ)」を行っています。この期間中は元々お越しいただく方が多いのですが、本堂前で演奏を聴けるということもあり、地元(中京区)の方を中心に、約400名もの方にお越しいただきました。
音楽に関心を持っている方がやはり多いなと改めて感じたとともに、万灯供養会の灯篭前で演奏している風景を見て、お寺でのコンサートはいいなと思いました。

高野プロデューサー(以下敬称略):アンケートで、小さい頃から壬生寺さんに通っていた人たちが「ここでクラシックのコンサート聴けたことがすごく嬉しかった」と書いてくださって、私たちも嬉しかったですね。

松浦:お寺はもちろん信仰の場ですが、普段の喧騒から離れて、心が落ち着く場所だと思ってくださっている方もいらっしゃいます。また壬生寺は「新選組ゆかりの地」ということもあり、近藤勇の胸像と対話しに来られる方もいらっしゃいます。そういった部分も、お寺の大きな存在意義だと思っています。

――たしかに壬生寺さんに来ると落ち着きますし、お寺の周りは住宅街ということもあって、ふらっと入りやすいですね。

松浦:スマートフォンや携帯電話、テレビなどがなかった時代は、人々のコミュニケーションの場としてお寺が使われていました。そしてお寺に当時の流行りのものが集まってきて、その中で娯楽が生まれました。
壬生寺でいうと、今から725年前に始まった「壬生狂言」ですね。もともとは、仏教の教えを伝える目的で始まったのですが、江戸時代に少しでも多くの人に広めようと、他の様々な物語を取り入れたことで、バラエティー豊かな「壬生狂言」が出来上がったのです。
当時はきっと、「今日壬生さん行ってきた」「どうやった?」「面白かった、また行きたい」といった会話が繰り広げられていて、お寺は面白いと思ってもらえる場所だったのではないかと思います。

高野:「お寺は昔から人が集まる場所」と松浦さんがおっしゃっていたことは印象的で、お寺は宗教的な施設のイメージしかなかったので新鮮でした。
「Kyoto Music Caravan」を企画する際、お寺でコンサートをしてよいか松浦さんに相談したところ、「昔から壬生狂言のように人を楽しませる娯楽があって、音楽もそれとそんなに変わらない」と後押ししてくださったのは大きかったですね。

松浦:壬生寺では最近、コンサートやマルシェ、落語の独演会などを行っていますが、「楽しい」と思ってもらえることが大事だと改めて感じます。
ですので、前回も今回もこのようなご縁をいただいて、コンサートをしていただけるのは、お寺にとっては滅多にない、とてもよい機会だと思っています。

◆キャラバンを企画した思い――松浦貫主が繋いでくださったご縁

――「Kyoto Music Caravan」は、京都市内の寺社仏閣などの名所で無料コンサートを開催している一大イベントです。そもそも本イベントはどのように生まれたのでしょうか。

高野:このイベントの企画意図は2つあります。
まず私が留学していたパリでは、街中の様々な場所でコンサートが行われ、ふらっとコンサートを聴いて帰るという光景が日常になっていて、京都でもそのようなコンサートを開催したいと思っていました。
そしてもう一つは、今まで京都コンサートホールに来たことがない方にも「クラシック音楽っていいな」と思っていただきたかったのです。

ただ、いきなりホールへ行くのは、なかなかハードルが高いですよね。
京都の様々な場所でコンサートを無料で開催することで、「京都の街って素晴らしいな」「クラシック音楽っていいかも、次はホールで聴いてみようかな」という方が増えてほしいと思ったのです。

実際に京都で開催するなら、会場は京都の町を象徴するお寺や神社だと思い、松浦さんに相談したところ、「ここでやるか?」と言ってくださったのですよね。そして松浦さんから様々な方をご紹介いただき、その縁を繋いで生まれたのが「Kyoto Music Caravan 2023」なんです。

松浦さんを一言で表現するなら、「結ぶ人」だと思います。
これまで繋いでいただいたご縁は数えきれず、そのご縁からまた違うご縁に繋がっていきました。

松浦:ご縁を結んだ後が大事で、そのご縁をどうやって紡いでいくかは、その人の努力次第なんですよね。

高野:松浦さんからのご縁は今も続いていて、本当に宝物です。
ちなみに松浦さんは、お寺でクラシック音楽を演奏することに抵抗はなかったのでしょうか?

松浦:やりたかったんです。

20年前に東寺さんの音楽イベント「音舞台」を見て以来、壬生寺でも何かできないかと思っていました。その後、2009年にご依頼いただいて、大沢たかおさんの朗読会を本堂前の特設ステージで開催しましたが、この境内に1,640脚ものイスが並んだんですよ。
その光景を見て、うちでもコンサートができるのではないかと思い、それからずっとやりたいと思い続けていました。10数年を経て実現できたので、感慨深いものがありますね。
そういえば、同じく「Kyoto Music Caravan 2023」の会場であった隨心院さんも、「こういうオファーを待っていた!」とおっしゃっていましたね。

――「クラシック音楽×お寺」の組み合わせは、今ではよく聞きますが、実際のところ、相性はどうなのでしょうか。

松浦:クラシック音楽が好きな人は、その音を聴いて癒される方もいらっしゃると思いますので、ご本尊に拝むのと同じご利益があると思うのです。それに、これだけたくさんの方が集まったら、庶民の仏であるお地蔵さんは、きっと喜んでいらっしゃると思います。
そして一般の方にとっても、コンサートに来ていただくことで視野が広がる可能性があるのです。

高野:クラシック音楽好きの人にとっては、この機会に京都の街を訪れるよいきっかけになっていると思います。まさに、今回のキャラバンのキャッチフレーズである「クラシック音楽が、京都のまちと人びとをつなぐ」ですよね。

前回の壬生寺公演の様子(2023年8月12日)

 

◆ぜひコンサートを生で楽しんでいただきたい

――実際に「Kyoto Music Caravan」を開催してお客さまの反応はいかがでしょうか。

高野:お客さまにも大変喜んでいただいています。2023年度に開催した際「またぜひ開催してほしい」というお声を多くいただき、今回2年ぶりの開催へとつながりました。

松浦:前回のコンサート開催後、「来年も開催しますか?」と言われましたよ。可能なら定期的にやってほしいなと思いますね。
お盆はご先祖さんがお帰りになられるので、お寺にお参りしましょう、と昔から言われていますが、こんなに暑い時に外へ出ようとなかなか思わないですよね。
そんな時にコンサートのような楽しみが一つでもあると、「やっぱりちょっと行ってみようか」「じゃあちょっとお寺に行って手を合わせてみようか」に繋がってくるわけですよ。
ですので、そういうきっかけをいただけることは、非常にありがたいことです。
ぜひこれからも「Kyoto Music Caravan」を続けていただきたいと思います。

そして8月11日のコンサートでは、初めて聴く方も、前回来られた方も、より多くの方々にお越しいただき、ぜひ楽しんでいただきたいです。
今の時代、スマートフォンで簡単に写真や動画で思い出を残せる時代ですが、スマホに保存して終わるのではなく、心に残してほしいですね。

高野:そうですね。私たち京都コンサートホールにとっては、ホールから出て音楽を届けることも大事だなと思います。ぜひいろんな方にクラシック音楽を聴いていただきたいですし、公共ホールにとって使命の一つだと思います。
前回と今回、「Kyoto Music Caravan」で開催させていただく会場は、いずれも魅力的なところばかりです。そしてそのコンサートにご出演いただく、京都ゆかりの音楽家がこれだけいるということは、京都の魅力の一つだと思います。
これまで「Kyoto Music Caravan 2025」では、4回コンサートを開催しましたが、いずれも素晴らしいコンサートとなりましたので、これからのコンサートも楽しみで仕方ありません。

――本日はありがとうございました。8月11日に壬生寺本堂で開催する「金管五重奏コンサート」は、入場無料で事前申込不要です。皆さまのご来場をお待ちしております。

(2025年7月壬生寺にて)

★「Kyoto Music Caravan 2025」特設ページ

第3期登録アーティスト 福田優花(ピアノ)インタビュー (2025.3.9 Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~「ジョイント・コンサート」)

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京都コンサートホール

2024年度から「京都コンサートホール 第3期登録アーティスト」として、アウトリーチ活動を行っているピアニストの福田優花さんと宮國香菜さん。2025年3月9日開催の「ジョイント・コンサート」では、それぞれの想いが詰まったプログラムを皆さまにお届けします。

公演に先立ち、福田優花さんにインタビューを行いました。福田さんご自身のことやアウトリーチ活動について、また今回の「ジョイント・コンサート」についてお話しいただきました。ぜひ最後までご覧ください!

 

幼少期(京都コンサートホールにて)

 ◆福田さんについて

――ピアノを習い始めたきっかけについて教えてください。

ピアノを習い始めたのは6歳のころです。母が趣味でピアノを弾いている姿を私が見ていて、「弾いてみる?」と聞かれ、「うん」と答えたのがきっかけのようです。練習などをどのようにしていたか記憶はないのですが、ピアノを始めて1年でコンクールに出ました。

――1年で!すごいですね。初めてのコンクールのことは覚えていますか?

幼少期の福田さん

全く覚えていません(笑)。ですが、初めての発表会の時のことはよく覚えています。《人形の夢と目覚め》という曲を演奏したのですが、母の話によると、 演奏中なのに弾きながらチラチラ客席の方を見ていたらしく(笑)。演奏後に母が「ピアノは上手だったけど、本番で弾いている時はこっち見たらあかんねん」と言ったそうです。緊張はしなかったのですが、子どもですので気が散っていたのでしょうね。

――ピアノは京都で習い始めたのですか?初めて師事された先生はどのような方だったのでしょうか。

私は父親が転勤族だったので、実は初めの先生には1年しか習っていないのです。ピアノを始めた時は石川県にいました。そして小学校2年生の終わりに京都に引っ越し、そこで出会った先生が、京都市立京都堀川音楽高校(以下、「堀音」)でピアノを教えていらっしゃった福井尚子先生でした。すごく熱心に教えてくださり、また私も福井先生が大好きだったので「ずっと習いたい!」と思い、そこから父に単身赴任してもらい、父以外の家族は京都に残り、ピアノを習うことができました。

堀音時代。福井尚子先生と

――ピアノを習うために、お父様が単身赴任されたのですね!福田さんの生まれは石川ですか?

いえ、実は東京なのです。両親が大阪生まれで関西に帰りたいとい気持ちがあったようで、最終的に京都に住むことになりました。小学校2年生からずっと福井先生にピアノを習い、先生の母校でもある堀音を受験しました。

――高校での生活はいかがでしたか?

文化祭にて(ミュージカル「ウィキッド」)

堀音がすごく好きだったので、毎日楽しく3年間通っていました。ちょうど、校舎が西京区から現在の中京区に移転して5年目の年だったのですが、出来たてのとても綺麗な校舎で、ピアノもたくさんあって、自由に練習もさせてもらえて、立派なホールもあり、音楽を学ぶには本当に素晴らしい環境でした。先生方もすごく熱心で、様々なことを勉強させていただきました。学内での実技試験など、クラスメイトとは競う機会もありましたが、高校生活は本当に楽しかったです。

 

東京藝術大学院時代(演奏会にて)

――その後、東京藝術大学に進学されましたが、もともと東京に行こうと決めていたのですか?

私は弟もいるので、経済的にも初めから「進学先は国公立で頼みたいし、浪人は難しい」と両親から言われていました。師事していた福井先生は、堀音から東京藝術大学に行かれており、「目指せる範囲内で1番難しいところに行くことが、のちのち必ず己のためになる」と言われ、東京藝術大学を目指しました。

――東京藝術大学での生活はいかがでしたか?

全国から様々な人が集まってくるので、とても面白い大学でしたね。学部時代は青柳晋先生、大学院時代は坂井千春先生に師事していました。当初、大学院への進学は考えていなかったのですが、もう少し勉強したいなと思い、両親に頼み込んで受験しました。

 

――その後パリに留学されましたが、大学入学前から視野に入れていたのですか?

京都フランス音楽アカデミーにて(ブルーノ・リグット先生と)

いえ、大学院を卒業したら、日本でピアノのお仕事をしていきたいと思っていました。しかし、学部4年生の頃、「京都フランス音楽アカデミー」を受け、そこで会ったブルーノ・リグット先生から「フランスに来ないか?」とお声がけいただいたのが留学のきっかけです。ちょうど新型コロナウィルス感染症のパンデミックが始まったばかりの時期でしたので、大学院を卒業してから半年後にフランスのパリ・エコールノルマル音楽院に留学しました。

 

――留学生活はいかがでしたか?

パリ郊外(近所の公園)

とても充実していました。ピアノの練習はもちろんですが、リグット先生はよく「せっかくフランスに来たなら、色々なものを見に行きなさい」と仰っていました。美術館など特定の場所に行くだけでなく、ただ街を歩くだけでも得るものがある、と。散歩をし、季節ごとに空気が変わるのを感じ、人が喋っている会話を音として聴いておく、そのような様々なことを経験し、自分の感性に取り入れることもやりなさい、と教えてくださいました。私が住んでいた場所はパリ郊外で落ち着いた静かなところでしたので、よく考え事などをしながら、街を散歩していました。

 

パリ・エコールノルマル音楽院前(リグット先生と)

――ピアノのレッスンはいかがでしたか?

先生は、とても優しく温かい方でしたが厳しい面もありました。一番大変だったのは、「この曲をしましょう」と決まった時に、2週間以内に暗譜をしなさいと言われたことです。その時はずっと練習していましたね。曲を仕上げるスピードも大事なことですので、2週間で必死に暗譜をしました。ただ楽譜を覚えることだけでなく、音楽として形にすることを習得してほしいという意図もあったのだと思います。短期間である程度自分の主張をまとめ、曲の全体像を形作るというのは、とても重要な訓練でした。また、リグット先生はシューマンとショパンをお得意で、私も好きな作曲家でしたので、たくさん学びました。

 

フランス(ノアン・ショパンフェスティバルにて)

――フランスからご帰国後は、京都に戻ってこられましたね。

はい、2023年の9月に帰ってきました。帰国後、すぐに登録アーティストに応募し、2024年の2月にオーディションを受けさせていただきました。
京都が好きですし、京都の先生に長い間師事していたので、故郷で活動して貢献できるような演奏がしたいなとは思っていました。ですので、勉強が一通り終わったら、京都に戻ってくることは大学で東京に行った時から決めていました。

――そうだったのですね!登録アーティストのことはいつ頃からご存知だったのですか?

第1期登録アーティストとして、高校の先輩である田中咲絵さんが活動していらっしゃる時、その時の演奏会チラシや募集チラシを見て、存在を知りました。大学時代に福井先生のお家に遊びに行った時に、「こういう制度が京都コンサートホールで新しく始まったみたい。あなたが卒業する頃に募集があったらぜひ応募してみたら?」と教えていただきました。

――ちょうどご帰国のタイミングが、登録アーティストの募集と重なったのですね!普段、アウトリーチ活動以外はどのようなことをしていらっしゃいますか?

リサイタルや室内楽コンサートなどでの演奏のほか、 十字屋(京都の楽器店・音楽教室)でピアノ専門コースというピアノを専門的に学びたいと考える方々の講師をさせてもらっています。堀音や音楽大学の受験、コンクールを目指す子どもたちから、熱心な大人の方まで幅広い方を対象としています。

――福田さんの今後の目標を教えてください。

アウトリーチにおける小学生の皆さんとの関わり合いを通じて、聴き手とさまざまな交流をし、相手の反応によって時には即興的な対応をしながら演奏するということを学んでいます。これは、話したりアクティビティをしたりはしない一般的なコンサートにおいても必要なことだと思います。聴衆の皆さんと何らかの形で、時には無言のうちに空気感のやり取りをしながら、その瞬間だけでも互いの気持ちをひとつにできるような演奏を目指していきたいと思います。

 

◆アウトリーチ活動&ジョイント・コンサートについて

――アウトリーチ活動を通して、福田さんが一番伝えたいことは何ですか?

「自分の経験と音楽を重ね合わせて、音楽を楽しんでほしい」ということです。
クラシック音楽は、よく分からないものを、静かにちんと座り、何の説明もないなか聴かされ、しかも長いみたいな、堅苦しいイメージがあると思います。そのような中で、クラシック音楽をあまり知らない人がどうやったら楽しいと感じてくれるかな、と考えました。そして、楽曲における背景や解釈、題名から連想される作曲家の想いなどが、聴き手の経験と結び付いた時、「面白い」「少し納得できる」という風に思えるのではと感じ、プログラムを組み立てていきました。

初めて訪問した小学校(2024年8月)

あらゆる角度から、聴き手にクラシック音楽を楽しいと思ってもらえるような、工夫凝らしたプログラムをお届けしています。音楽はやはり、最終的には心や精神で楽しむものだと思うので、アクティヴィティなどを通して身体で楽しむ形から、音楽から情景を想像するなど頭と心を使うような流れにしています。

 

――アウトリーチに参加してくれた生徒さんからのお手紙をいただくこともありますよね。

楽しかった!という言葉が多く、また時には演奏した楽曲に対する私が思いもよらなかった発想などが書かれていることもあり、どれもとても嬉しく思いながら読んでいます。とある女の子からのお手紙では、「最近は忙しくなったのでピアノは辞めてしまったが、久しぶりに演奏を聴いて、中学校に入ったら再開したいと思いました。そのようなきっかけをくださり、ありがとうございました」と書いてあり、とても嬉しかったです。

――3月9日のジョイント・コンサートでは、ショパンのバラードを全曲を披露してくださいますが、なぜこの曲を選ばれたのですか?

インタビューの様子

ショパンが好きな方は多いと思うのですが、私も例に漏れずショパンはすごく好きな作曲家です。 バラード全曲や スケルツォ全曲、プレリュード全曲など、ショパンの何かの作品ジャンルにおいての全曲演奏は、いつかやりたいと昔から思っていました。 今回、このような特別な機会をいただきましたので、それにふさわしいプログラムにしたいと思い、バラード全曲を選びました。
ショパンのバラードはポーランド詩人の愛国の詩に、祖国を追われたショパンが大変共感したことから書かれた、非常にメッセージ性の強い曲だと思います。私自身に立ち返ってみると、アウトリーチにおいて「自分事として音楽を楽しんでほしい」ということを目的にしているので、ショパンが詩を自分の境遇や心情に重ねて書いたバラードに通じるものを感じ、ジョイント・コンサートで演奏したいと思いました。

――コンサートには、アウトリーチを聴いてくださった生徒さんもたくさんお越しくださる予定です。どのように演奏を聴いていただきたいですか?

学校でやったアクティヴィティに参加してもらうようなことは今回はできませんが、素晴らしいホールで実際に演奏聴いた時に、教室で聴いた時と違う感覚があれば、それだけで十分に嬉しいかなと思います。演奏する前に、曲についてのお話をすることになると思いますので、アウトリーチでの経験が活かし、想像力を働かせて聴いてもらえたら嬉しいです。また、バラード全曲を演奏会で披露するのは初めてですので、気合いを入れて頑張って準備しています!

――楽しみにしています!それでは最後に、コンサートに向けて一言お願いします。

アウトリーチ活動の1年目の締めくくりということで、今の自分にできる中で特別なプログラムにしたいと思い、準備しました。アウトリーチで生徒さんたちとのコミュニケーションを通して感じていることをたくさん盛り込みつつ、いい演奏会にできるように宮國さんと力を合わせて頑張りたいと思っております。ぜひ会場でお待ちしております!

――福田さん、ありがとうございました。ジョイント・コンサートを楽しみにしています!

2024年12月(京都コンサートホール応接室にて)

♪公演詳細はコチラ

第3期登録アーティスト 宮國香菜(ピアノ)インタビュー<後半>(2025.3.9 Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~「ジョイント・コンサート」)

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京都コンサートホール

2024年度から京都コンサートホール第3期登録アーティストとして、アウトリーチ活動を行っているピアニストの福田優花さんと宮國香菜さん。3月9日に開催いたします、ジョイント・コンサートに向けてインタビューを実施いたしました。

インタビュー前半では、宮國さん自身のことについてお聞きしましたが、後半では、アウトリーチ活動やジョイント・コンサートについてお話いただきました。是非ご覧ください!

 

――これまでの音楽歴について色々なお話をお伺いしましたが、アウトリーチ活動に関するお話もお聞かせください。なぜ、京都コンサートホールの登録アーティストに応募しようと思われたのですか。

京都コンサートホールが大好きだからです。小さい頃に両親がコンサートホールへオーケストラの演奏会などに連れて行ってくれたこともあり、思い入れのある大切な場所です。

アウトリーチ研修会にて(2024年5月)

大好きなホールと一緒にアウトリーチ活動ができるということが、自分にとってとても良い経験になるだろうと思いました。また、演奏機会を増やしたいと思ったことも応募した理由の一つです。学業を終え、生まれ育った京都の地でより多くの方に音楽をお届けしたいという思いがあり、その点においても魅力的な事業でした。

 

――子どもたちに生の演奏を届けるという本事業を通して、どのようなことを目指されていますか。

初めてのアウトリーチ公演(2024年7月)

アウトリーチ先の子どもたちは様々です。普段からクラシック音楽を聴いている生徒さんもいれば、そうでない生徒さんもいます。そんな中で、私のピアノ演奏を通して、少しでもたくさんの子どもたちが心が揺れる経験をしてくれると嬉しいなと思います。私自身、幼少期に音楽を聴いて感動した記憶はいまも残っています。そのような音楽が心に残る「きっかけ」を作ることのできる音楽家になりたいです。

――この一年間でこれまで8回のアウトリーチ・コンサートを開催しました(計11回開催予定)。プログラムは宮國さんの「手作り」ですが、こだわりのポイントを教えていただけますか。

私のプログラムには、ピアノをたくさん知ってもらうためのたくさんの仕掛けがあります。ピアノの歴史や楽器に関する知識を共有したり、色々なピアノ作品を演奏したり・・・。子どもたちが「ピアノの世界」に入って来られるよう、演奏する曲順にも工夫しています。

――今日(2024年12月14日“インタビュー実施日”)は嵯峨野児童館でたくさんの方々にピアノ演奏を届けることができましたね。

嵯峨野児童館でのアウトリーチの様子            (2024年12月)

今日のアウトリーチでは0歳の赤ちゃんから大人の方々まで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいました。特に、非常に近い距離で子どもさんたちがピアノ演奏を聴いてくださり、自分の演奏に対するリアクションを肌で感じることができて嬉しかったです。

 

――2025年3月9日の「ジョイント・コンサート」では、いつものアウトリーチ・コンサートとはまた異なる環境で皆さんに宮國さんのピアノ演奏を聴いていただきます。

京都コンサートホールのアンサンブルホールムラタで演奏させていただけるということで、自分がいま一番取り組みたい作品でプログラミングしました。この1年、アウトリーチ活動を経験したことにより、自分の選曲方法が変わってきたように思います。これまで以上に作品ごとの関連性について考えるようになりました。今回は、水や海連想できるような3曲(ドビュッシー《喜びの島》、スクリャービン《幻想ソナタ》、ショパン《舟》)を選曲しました。

《喜びの島》は、「シテール島への巡礼」という絵画からの印象を受けて作曲されたといわれており、愛に溢れた島へ向かう様子が描かれています。のちの管弦楽曲《海》にも通ずるような色彩感溢れる作品です。

《幻想ソナタ》は、スクリャービンが旅をした際に得たインスピレーションをもとに作曲されたと言われており、作曲家自身の手により、一楽章には「月明かりに照らされた静かな海」、二楽章には「嵐の海」という言葉が書き記されています。

ショパンの《舟》は、ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌に由来していると言われています。晩年の作品でもあり、彼の人生の旅路を映し出しているかのような美しい作品です。

 

――なるほど、3曲ともに水や海に関連する作品なのですね。このプログラムを通して、どのようなことをお客様に伝えたいですか。

宮國さんピアノリサイタル  (京都青山音楽記念館 バロックザールにて)

水のゆらめきや、水面、水の予測不可能な動き、そういう情景をピアノ の音で表現したいです。ピアノで多彩な音色を作ることは易しいことではありませんが、そういうことを追求していくこともまたピアノ演奏の醍醐味の一つでもあります。

――コンサートにお越しくださるお客様にメッセージをお願いします。

刺繍が趣味の宮國さん

私は良い演奏会に行くと、翌日までとても幸せな気持ちが続きます。私も皆様が幸せな気持ちになれるような演奏がしたいです。さらに、私のピアノを聴いていただき、「京都にはこんなアーティストがいるんだな」と興味を持っていただけるきっかけになったら嬉しいです。

――それでは最後に、今後のアウトリーチ活動に関する展望を教えてください。

この1年を通して、試行錯誤を重ねながらプログラムを考えていきました。次の1年は、さらに色々なことに挑戦できるような内容に展開していくことができれば・・・と考えています。どのようなアプローチをすれば、よりたくさんの方々の心に届くか、もっともっと自分で音楽を掘り下げて、さらに「伝える力」を磨いていきたいと思っています。

 

――宮國さん本日はありがとうございました!

 

(2024年12月14日 事業企画課インタビュー)

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★京都コンサートホール第3期登録アーティスト福田優花さんのインタビュー記事はこちら

 

 

 

第3期登録アーティスト 宮國香菜(ピアノ)インタビュー<前半>(2025.3.9 Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~「ジョイント・コンサート」)

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京都コンサートホール
第3期登録アーティスト                 ピアニスト 宮國香菜さん

2024年度から京都コンサートホール第3期登録アーティストとして、アウトリーチ活動を行っているピアニストの福田優花さんと宮國香菜さん。3月9日に開催するジョイント・コンサートに向けて、宮國香菜さんにインタビューを実施いたしました。宮國さんのインタビューを2回に分けてお届けします!

 

前半では、宮國さんご自身のことについてお話いただきました。是非ご覧ください!

 

――まずは、宮國さんはいつごろからピアノを始めましたか?

初めてのエレクトーンの発表会

 3歳から音楽教室に通い、最初はエレクトーンを習いました。ピアノ始めたのは小学校1年生ごろです。

お家にピアノがやってきた日

両親がクラシック音楽が好きで、特に母は私にピアノを習わせたかったようです。なにより、私もピアノが大好きでした。

 

――そうなのですね。いつ頃、クラシック音楽を本格的に学び始めたのですか?

小学校6年生の時だったと思ます。ピアノの先生から「音楽高校(京都市立京都堀川音楽高等学校)でピアノを学ぶことができるよ」と教えていただきました。そして、中学1年生の時、京都市堀川音楽高等学校(以下、堀音)のオープンスクールに行った際に、「ここで音楽を学びたい!」とピンと来たのです。

――その後、堀音に入学されましたが、高校生活はいかがでしたか。

堀音の定期演奏会にてプレゼント係を務める宮國さん

自分の知らないことをいっぱい知っている友人がいて、音楽の話をずっとしていました。そのような環境に身を置くことができて、本当に嬉しくて仕方がなかったです。

――音楽が大好きだったのですね。校生活で印象に残っている思い出はありますか?

大切な友人に出会えたことでしょうか。中学校の担任の先生が「高校に行ったら一生の友達ができるよ」とおっしゃっていました。その時は疑心暗鬼だったのですが、今では「本当だった」と思っています。高校時代に出会った友人は、今でも交流していますし、何でも相談できるような相手です。卒業後、10年ほど経ちますが、会えばすぐに当時の空気感に戻ります。

――ピアニストを目指されたのはいつ頃でしょうか?

高校時代の演奏会

高校2年の時、学校主催のコンサートに出演したことがきっかけだったと思います。先生方にコンサートの出演者として私を選んでいただき、とても嬉しかったです。シューマンの《アレグロ ロ短調 作品8》を演奏したのですが、本番日まで本気でこの作品と向き合いました。図書館でシューマンについて調べたり、シューマンのほかのピアノ作品を聴いたり・・・。なので、この曲は私にとって、今でも特別な作品です。

――さて、宮國さんが師事されたピアノの先生に関するお話もお伺いさせてください。これまで色々な先生と一緒にピアノを学ばれましたね。

堀音での新人演奏会

音楽高校時代に学んだ芝崎美恵先生との出会いは自分にとって大きかったです。芝崎先生はいつも「いま」だけではなく「その先」を見るよう指導してくださいました。「芽が出て花が咲く時期は人それぞれなんだよ」とおっしゃってくださったことは今でも忘れられません。これから先、私がピアノや音楽と長く付き合っていけることを願ってくださいました。

――素敵な先生ですね。そして大学では馬場和代先生に師事されましたね。

馬場先生もとても優しい先生でした。第一に、私のことをいつも信じてくださっていました。ピアノを演奏する私の背中をポジティブに押してくださるような、そんな温かい先生です。馬場先生という大きな味方がいてくださることが、心強かったです。

――次に師事されたのは野原みどり先生と三舩優子先生でしたね。

大学院の修士演奏会

お二人には大学院時代に師事しました。一年目に師事した野原先生は、素敵なオーラにいつもドキドキしていました。以前、演奏会のご案内をお送りすると多忙でいらっしゃるのに来てくださり、とても嬉しかったです。二年目に師事した三先生も素敵な方で、とても親身にレッスンをしてくださいました。卒業後も気にかけてくださり感謝しています。

――たくさんの素敵な先生に師事されたのですね。先生方から学んだことは、現在、宮國さんが生徒さんにピアノを教えられている時に活かされていますか? 

インタビューの様子

現在、私はお子さんから大人まで様々な方にピアノを教えていますが、自分がこれまで学んできたことを還元していきたいと思っています。そうすることによって、自分自身もさらに学ぶことがたくさんあるのです。

 

 ――後半ではアウトリーチ活動やジョイント・コンサートについてお話いただきます。どうぞお楽しみに!

 

(2024年12月14日 事業企画課インタビュー)

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★京都コンサートホール第3期登録アーティスト宮國香菜さんインタビュー記事後半はこちら

ヴァイオリニスト 弓 新 インタビュー(2024.10.5 没後100年記念公演―― フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会)

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京都コンサートホール

ロマン派から20世紀初頭の近代音楽への架け橋となったフランスの巨匠、ガブリエル・フォーレは2024年に没後100年を迎えます。

京都コンサートホールでは、フォーレの没後100年を記念して、「フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会」を開催いたします(10月5日)。

本公演にて、フォーレの《ピアノ五重奏曲 第1番 ニ短調 作品89》にて第二ヴァイオリン、《ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 作品115》にて第一ヴァイオリンを担当する、ヴァイオリニストの弓新さんにインタビューを実施しました。

今回のインタビューでは、フォーレの音楽が持つ魅力や、2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」公演から2年ぶりに共演するメンバーについて沢山お話しいただきました。

ぜひ最後までご覧ください。

――この度はお忙しい中、インタビューのお時間をありがとうございます。現在は、ドイツ在住で日本とドイツの2拠点を中心に多彩なご活躍を重ねられていますね!

はい、2023年までは4年弱、北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務めていました。オーケストラなどで忙しくなると、なかなかまとまった時間を確保することが難しかったのですが、今後は日本やドイツで室内楽やソロの活動ももっとしていきたいなと思っています。ピアノ三重奏や弦楽四重奏などの常設のアンサンブルでの活動や、それこそ今回のような室内楽の演奏会をしていけたらと思っています。

――今回の公演は、オール・フォーレ・プログラムですね。弓さんからみて、フォーレは西洋音楽史においてどのような作曲家ですか?

ワーグナーの流行や後半生にはドビュッシーやストラヴィンスキー、シェーンベルクなど新しい音楽語法が生まれた時代に活動していたにもかかわらず、生涯を通して独自の音楽を持ち続けた人だと思いますね。
フォーレはサン=サーンスの弟子でしたが、その流れは汲みつつも、誰かの作曲技法を真似ることに興味がなかった作曲家、と言えるかもしれません。

2024年4月20日ロームシアター京都にて実施したインタビューの様子

――フォーレのピアノ五重奏曲を2曲演奏していただきますが、どのような作品ですか?

1番はまだ演奏したことがなくて申し上げにくいのですが、2番についてはフォーレの後期作品にあたり、初期の作品に比べると分かりづらいとよく言われますが、たしかにそういうところはあるかもしれません。例えば、ピアノ五重奏曲第2番の最終楽章は、聴いてすぐは何拍子か分かりません。ヴァイオリンソナタの第2番でもそのような箇所があるので、そういうリズム遊びがみられるのはフォーレの音楽の特徴の一つだと思います。

個人的に特にフォーレのピアノ五重奏曲で素晴らしいと思うのは、緩徐楽章です。第2番の第3楽章は、息の長い旋律が連綿と続くように書かれています。これはやはり、フォーレがオルガニストだったということに関係しているのかもしれません。
フレーズの長さの点でいえば、以前、ドイツでピアノ三重奏のレッスンを受けたのですが、ドイツ人の先生が、フレージングを最小のモティーフごとに分解してしまったんですよ。ベートーヴェンのような音楽だったらそれで曲になるのですが、フォーレはうまくいかなくて。やはりフランスとドイツでは、フレーズの考え方も響きの捉え方も、言葉も違うのだなと実感しました。

――弓さんはフォーレを演奏される時、スタイルを変えられているのですか?

そうですね、例えばヴィブラート。普段から僕はあまりヴィブラートをかける方ではないのですが、フォーレの長いフレーズをヴィブラート無しでキープさせようとすると、音楽の緊張感が高くなりすぎてしまう気がします。

どちらかと言えば、フォーレの音楽は非日常的で劇的な緊張感というよりも日常的な雰囲気があると思います。僕の作る音は、ガラスや金属のような純度の高い音だと思うのですが、フォーレでは、もう少しあたたかな手触りのある音色にしていかなければいけないのかなと考えています。例えば、絨毯とか、アンティークの家具のような。

――前回の公演で演奏してくださったセザール・フランクの音楽とはずいぶん印象が違いますね。

そうですね。フォーレの曲は、フランクの音楽のように分かり易いストーリーが無いように感じますね。
ジャンケレヴィッチの著書に、フォーレの音楽は“言葉では言い表し得ないもの”と書かれているんですけど、まさにその通りだなと。フォーレの音楽を語れといわれても語ることは難しい。
また、フォーレはあまり感情が激しい人ではなかったのではないかと思います。
別の言い方をすれば、フランクの音楽には体温を感じるのですが、フォーレの音楽から感じない、言うなればまるでオブジェのようだとも言えます。オブジェといっても、生活から切り離された美術的な意味ではなく、もっと古典的で日常的なイメージと言ったら良いのか。フォーレ自身の内面を音で描いているというよりはフォーレの眼を通した世界、一歩引いた観察者的な視点を彼の音楽からは感じる気がします。こういう客観的な視点はフランスの作曲家に特有のものなのかもしれません。

――話をフォーレのピアノ五重奏曲に戻します。さきほど第2番の話を少ししてくださいましたが、第1番の魅力的な部分を教えてくださいますか。

第1番は美しい作品です。特に冒頭部分は、アルペッジョとユニゾンだけなのに、天才的に素晴らしい音楽に仕上がっています。
あと、これは第1番に限ったことではないですが、使用される音域が全体的に広くないのですね。低音も高音もあまり使われていなくて、ミドルレンジなんです。ピアノ五重奏曲第2番を書いた時期は、フォーレの聴覚障害が深刻化していった時と重なるのですが、こういった特徴には、その影響があるかもしれません。この頃のフォーレの音楽がどこか客観的・傍観的であるように感じるのも、こういった事情とリンクしているかもしれませんね。ただ、そのような状況であっても、限られた音域の中で息の長い音楽を書けるというのが、フォーレのすごいところだなと思います。

また、フォーレの室内楽作品では、どちらかというと内声である第2ヴァイオリンやヴィオラが大事な役割を担うことが多いです。ピアノ五重奏曲第1番の冒頭で、最初に主旋律を奏でるのは第1ヴァイオリンではなく、第2ヴァイオリンなんですよ。とても意外でした。

2024年4月20日ロームシアター京都にて実施したインタビューの様子

――前回に引き続き、カルテットのメンバーは、弓さんに加え、ヴァイオリンの藤江扶紀さん、ヴィオラの横島礼理さん、チェロの上村文乃さんの4名ですね。

このメンバーで演奏するのは前回のフランク公演が初めてだったのですが、キャラクターとしても音楽としてもピタッとはまったな、と良い手応えを感じました。ですので、今回もフォーレのピアノ五重奏曲を一緒に演奏できることがとても嬉しいです。

――カルテットのメンバーのみのリハーサルにも力を入れるとお聞きしました。

そうですね。みんなで音程を合わせたり、息の長いフレーズを演奏する時の弓の速度配分であったり、メンバー全員で同じ質感作りをしていかないといけません。それらの調整をし続けるリハーサルになるでしょうね。すべてのパートが対等でユニゾンが多いからこそ、4声部がでこぼこになってはいけないのです。この作業をやるのとやらないのとでは、ピアノと合わせた時に全く違う出来栄えになると思っています。

2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」公演の様子

――4人でしっかりとリハーサルをされた後、ル・サージュさんとのリハーサルがますます楽しみになってきますね。

そうですね。ル・サージュさんは「ザ・フォーレ」というべきピアニストです。僕は、ル・サージュさんとエベーヌ弦楽四重奏団が出しているフォーレのCDで彼のファンになったくらい。ですので、今回ル・サージュさんとフォーレを演奏できることが本当に嬉しいです。

――5人で創られるフォーレの世界観がとても楽しみです。それでは最後に、お客様に向けたメッセージをお願いします。

今回のプログラムはオール・フォーレ・プログラムということで、フォーレの魅力が最大限に感じられる内容になっています。間違いなく、終演後には「フォーレをもっと聴きたい」と思っていただけるコンサートになるはずです。ぜひお越しください。

――色々なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。コンサートを楽しみにしています。

<出演メンバーのメッセージやインタビューをSNSにて発信しています!>

エリック・ル・サージュさんメッセージ&演奏動画

弓 新さんインタビュー

藤江 扶紀さんメールインタビュー

藤江 扶紀さんメッセージ動画

横島 礼理さんメッセージ

上村文乃さんメッセージ動画

公演情報 フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会

ピアニスト エリック・ル・サージュ 特別インタビュー(2024.10.5 没後100年記念公演―― フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会)

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京都コンサートホール

ロマン派から20世紀初頭の近代音楽への架け橋となったフランスの巨匠、ガブリエル・フォーレ。

京都コンサートホールでは、フォーレの没後100年を記念して、「フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会」を開催いたします(10月5日)。

2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」から2年ぶりに、京都コンサートホールに登場する、世界的ピアニストのエリック・ル・サージュさんにメールインタビューを行いました。

今回のインタビューでは、ル・サージュさんとフォーレの作品との出会い、今回演奏するピアノ五重奏曲第1,2番についてお話いただきました。ぜひ最後までご覧ください。

――ル・サージュさんはフォーレの録音を非常に沢山なさっていますが、フォーレに惹かれたきっかけを教えてください。

私がフォーレを好きになったのは30歳頃のことです。それまで、フォーレについてあまり良い思い出がありませんでした。というのも、11歳の時にエクサン・プロヴァンスのコンセルヴァトワールの試験でフォーレの6番のノクターンを弾いたのですが、暗譜が飛んだのです。その後、フォーレの親しみやすい室内楽作品を弾き始め、深堀りしていくことにより、だんだんと彼の音楽が好きになっていきました。

――ル・サージュさんからみて、フォーレはどんな作曲家ですか?

フォーレは一筋縄ではいかない作曲家です。
彼の初期の作品には、《ヴァイオリン・ソナタ第1番》(1875年)、《ピアノ四重奏曲第1番》(1880年)など素晴らしいコンサート用の曲があり、天才的な旋律と非常に直感的な和声法に満ちた、技巧的な作曲法が際立っています。ピアノ・ソロの曲もありますが、あまり演奏されません。なぜなら、私が11歳の時に体験した苦い思い出のように、特に暗譜することがとても難しいからです。

――フォーレの傑作の多い、中期・後期の作品についても教えていただけますか?


中期の作品にあたる《ピアノ四重奏曲第2番》などは、より複雑になった和声法、非常に高いインスピレーションを必要とする気難しい旋律、そして、後期ロマン派の精神が依然として残るドラマツルギーといったものが素晴らしく調和しています。
そしてベートーヴェンがそうであったように、フォーレは晩年において、非常に濃密な内世界に入っていきます。彼は、極限まで高められたインスピレーションをとことん突き詰めていきました。そして、どんな作曲家も真似できないような、フォーレ独自の音楽語法と調性を見出し、旋律と演奏者を高みへと押しやっていったのです。革新的なことをしたというよりは、サン=サーンスからのフランス音楽の流れを汲んで、その作風を守り続けたともいえますが、誰かの作曲技法を真似ることには興味がなかったのかもしれません。

2022年「神に愛された作曲家 セザール・フランク」公演より


――今回演奏いただく、ピアノ五重奏曲はどのような作品ですか?


2つのピアノ五重奏曲はフォーレの晩年の作品にあたります。第2番はすぐに書き上げられましたが、第1番は長い時間をかけてフォーレ自身の手で推敲され、完成しました。
この2曲は素晴らしく色彩豊かで、かつ演奏するのが難しい曲です。外面的ではなく内省的で、密度があり、明確でありながら秘められたものがあります。雄々しい音楽ではなく、演奏者は音楽に入りこむ必要があります。


――最後に、公演へ向けてメッセージをお願いします!


この作品を日本の素晴らしい若手音楽家たちと一緒に演奏できることがとても嬉しいです。彼らと一緒に、私にとってとても大切で特別なこの2曲を皆さんに知っていただくチャンスだと思っています。
京都はヨーロッパ人にとって夢のまちであり、私のお気に入りのまちでもあります。 京都で演奏できることを楽しみにしています。

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弓 新さんインタビュー

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公演情報 フォーレ ピアノ五重奏曲 全曲演奏会

オルガニスト 中田恵子 インタビュー<後編>(2024.11.2 オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.74「オルガニスト・エトワール“中田恵子”」)

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京都コンサートホール

11月2日に京都コンサートホール 大ホールにて、「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.74 オルガニスト・エトワール”中田恵子”」を開催します。公演に先立ち、オルガニストの中田恵子さんにインタビューを実施しました。
後編では、現在のご活動や今回のプログラムについてお話しいただいております。
ぜひ最後までご覧ください!
前編はコチラ

ーーフランス留学の後、東京藝術大学での助手、雪ノ下教会のオルガニストを務める傍ら、2019年にはバッハ作品を収録した「Joy of Bach」をリリースされました。こちらはどのような経緯で制作されたのですか?
オランダで鈴木雅明先生がCDを収録される時、ちょうどパリにいた私にアシスタントとして声をかけてくださいました。その時の録音技師さんが私に「君もCDを収録してみたら」とお声がけくださったのがきっかけです。バッハの音楽は、リズミカルで和声も素敵で、何も分からなくても聴いていて純粋に楽しいものだと思います。実際、子供の頃に私もそこに惹かれたので、堅苦しく考えず、ポップスを聴くように多くの方にバッハを聴いてほしいと思いました。本当に良いものって、ジャンルの境界線はないと思うのです。宗教的な背景や、難しい理論は一旦おいて、ただ楽しんで聴いてもらいたい、というコンセプトで、「Joy of Bach」を作りました。理屈抜きで、まずは「私はバッハのこんなところが好きなんだよ!」という想いをぎゅっと詰め込みました。

ーーだから「Joy of Bach」なのですね!
そうなのです!小さい頃感じていたような、本能的に楽しいと思える気持ちでバッハを聴いてほしいという想いが詰まっています。有名な曲や聴きなじみのある曲もたくさん選んでいるので、ノリノリで聴いてもらえたら嬉しいです。あまり難しいことを考えずにただ聴いてほしいです。

ーー2作目のCD「Pray with Bach」は対照的に厳かな作品が並びますね。
そうですね。こちらは、私がオルガニストを務める鎌倉雪ノ下教会で収録したアルバムです。コロナ禍で、礼拝がYouTube配信になった期間、信者の方々から「生のオルガンの音が恋しい」という声が寄せられました。しかし、配信では音質がどうしても悪くなってしまいますし、いつも教会で弾いていたような曲をご自宅でも聴いていただけたらと思い、バッハの《オルガン小曲集》をメインに収録をしました。

雪ノ下教会で「Pray with Bach」を録音した時の写真

ーー《オルガン小曲集》は、今回のプログラムでもご披露いただきますよね。生で演奏をお聴きできるのを楽しみにしています!
さて、2021年には神奈川県民ホールのオルガン・アドバイザーに就任されました。リサイタルのほか、バロックアンサンブルやバレエとオルガンのコラボレーションなど、多彩な活動をしていらっしゃいますね。
コラボレーションの公演は、異ジャンルの方々と意見を出し合って創っていますが、大変であると同時に、とてもやりがいを感じています。次回は、俳優さんとのコラボレーションを考えています。このような公演に来てくださるお客さまの半分は、オルガンに馴染みのない方々だと思うので、これを機にオルガンを好きになってくれたら嬉しいですね。

オルガンavecバレエ@神奈川県民ホール(c)Taira Tairadate


ーー俳優さんとのコラボレーション、楽しみですね!今後、どのようなオルガニストになりたいですか?
目の前のことで精一杯で未来をあまり想像できないのですが、中田恵子の演奏を聴きたいと言ってもらえるような、唯一無二の演奏家になりたいと思っています。またオルガンは、ピアノやヴァイオリンに比べればまだまだ耳にする機会が少ないと思うので、普及させていきたいですね。

ーーさて、次は11月2日に開催する公演のプログラミングについてお伺いします。初めに演奏される《前奏曲とフーガ イ短調 BWV543》は2作目のCD「Pray with Bach」でも冒頭に収録されていたと思うのですが、この曲をなぜ初めに選ばれたのですか?
この曲の次に演奏する《オルガン小曲集》の1曲目が〈いざ来ませ、異邦人の救い主よBWV599〉なのですが、これは「待降節(アドヴェント)」のコラールです。待降節とは、救い主であるキリストの降誕を待ち望む期間です。それに先立つ曲は、まだ救い主が現れていない旧約聖書の世界、暗い中で何かを切望しているような雰囲気で始めたく、《前奏曲とフーガ イ短調》を選びました。救い主を待ち望んでいる場面からだんだんと光が見えてきて…という流れで、待降、降誕(クリスマス)に入っていけたらと。《オルガン小曲集》はキリストの生涯を示した教会暦に沿って書かれています。前半のプログラムは、《前奏曲とフーガ イ短調》に続き、キリストの生涯を辿るように「待降⇒降誕⇒受難⇒復活」を表現する5曲を選曲しました。

ーー前半の最後に演奏される《トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564》は、修士論文のテーマにしていらっしゃいましたね。
この曲は、バッハのオルガン作品の中でも珍しく3つの形式で書かれていたり、他にも色々と特徴的な部分のある曲なので、もしかしてバッハが何かをイメージしてそれに沿って書いた曲かもしれない、と漠然と感じていました。《アダージョ》のペダル声部が、復活節のコラールのメロディーに似ていると思ったのがきっかけになり、「《トッカータ》がキリストの降誕、《アダージョ》が受難、《フーガ》が復活を表している」という仮説を立てました。修士論文では、歌詞のあるバッハのカンタータ作品や、《オルガン小曲集》の中で用いているバッハが歌詞を表すために象徴的に使った音型と、《トッカータ、アダージョとフーガ》にそれぞれ使われている音型とを比較して仮説を検証していきました。結果、修辞学的に仮説通りにはまるところが沢山でてきました。

ーー《オルガン小曲集》からキリストの「降誕・受難・復活」をテーマに選曲いただきましたが、その統括としてこの曲を選んでくださったのですね!
はい!そうなんです。またこの曲は、大学院の修了演奏会で弾いたのですが、修士論文は評価していただいた一方、当時の演奏は自分の中で反省が残るもので、それ以来ずっと弾いていませんでした。様々な経験を経た今、再び、この曲に向き合いたい!との想いもあり選びました。

ーープログラムの後半はどのような意図で組まれましたか?
《オルガン小曲集》は、コラールを基にした46の小作品が収められていて、曲集の前半はキリストの生涯を示した教会暦に沿ったもの、後半は信仰生活大切にしてをテーマにしたものとなっています。それに合わせ、プログラムの後半は信仰生活のコラールを選びました。それらのコラールを挟んで配置したのは、《トッカータとフーガ ニ短調》と《パッサカリア》です。《トッカータとフーガ ニ短調》は、誰もが知っている冒頭で始まる、有名曲ですね。《パッサカリア》は、同じバスの旋律が繰り返し紡がれ、過去も未来も全てが繋がっていくようなイメージがあり、最後に置きました。

ーー今からとても楽しみにしています!
それでは最後に、お客さまに向けてメッセージをお願いします。
バッハは私にとって特別な存在で、今回、オール・バッハのプログラムをご依頼いただけて、本当に嬉しかったです。理屈抜きに本能的に聴いていただくのも良し、修辞学的な内容を味わって聴いていただくのも良し、自由に楽しんでいただければと思います。また今回は、さまざまな形式の曲をプログラムに入れています。どの曲を弾いていても「バッハってすごいなぁ、よくこんな音楽を思いつくな」と驚かされます。バラエティ豊かに繰り広げられるバッハの宇宙を、ぜひご一緒に味わっていただけたらと思います。ご来場お待ちしております!

ーー中田恵子さん、お忙しいなかありがとうございました!中田恵子さんの想いが詰まったオール・バッハ・プログラムをご期待ください!

♪公演情報 公演カレンダー | 京都コンサートホール (kyotoconcerthall.org)