【公演レポート】第21回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート (9/17)

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京都コンサートホール

9月17日、無事に21回目となる「京都の秋 音楽祭」が開幕しました。
――なぜ「無事に」を強調したか・・・?それは開会記念コンサート当日に台風18号が日本列島を横断したからです!
直前までヒヤヒヤしましたが、幸運なことに雨にも風にも遭わず、たくさんのお客さまと一緒に音楽祭開幕を祝うことが出来ました。
ご来場くださったお客さま、誠にありがとうございました。

前置きはさておき、今日は開会記念コンサートの様子をみなさまにお届けします。
まずは当日のプログラムから!
(演奏は京都市交響楽団、指揮は同楽団常任指揮者の広上淳一。ピアノ独奏はルーカス・ゲニューシャス)

すぎやまこういち:序奏MIYAKO (2016)
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調  op.21
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 op.27

開幕に先立ち、門川大作京都市長が開会宣言を行いました。
これからおよそ2ヶ月間続く音楽祭のオープニングとあって、門川市長の挨拶にも熱が入ります。

市長による開会宣言

市長の開会宣言後、間髪入れずに始まった曲は、すぎやまこういちの《序奏MIYAKO》。
この曲は、2016年に20周年を迎えた「京都の秋 音楽祭」のために書かれたものです。
昨年の開会記念コンサートの際にもこの曲が演奏されたのですが、今年は「21回」という新たな局面に入った音楽祭の未来を意識して演奏されました。
冒頭の力強いファンファーレは、「京都の秋 音楽祭」の幕開けにぴったり。

次に演奏された作品は、ショパンの《ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調》です。
この曲はショパン20歳の時のもの。その瑞々しい曲調や切なくも美しいメロディからは「青春の輝き」を思い起こさせます。ショパンの甘い初恋や心の葛藤が目に浮かぶような作品です。
舞台へ颯爽と現れたゲニューシャスは、ピアノの椅子に腰掛けたあと、独奏パートが現れるまで天を仰ぎました。長い序奏のあいだ、おそらく作品に身も心も沈めていたのでしょう。

ルーカス・ゲニューシャス

そして始まるピアノ独奏。フォルティッシモでDes(変ニ音)を高らかに鳴らしたあと、ユニゾンで一気に下降していきます。この劇的な瞬間を経て第1主題が出現するのですが、ゲニューシャスは一気に力を抜き、言葉では言い表せないほどの美しい音色でテーマを奏でたのでした。それはまるで、ショパンの「感情の襞」をピアノで描いたかのよう。あまりにも美しい彼のレガートに、思わず感嘆のため息をついてしまいました。

変イ長調で始まる第2楽章は、「愛の調べ」そのものでした。
作曲当時、ショパンは同じワルシャワ音楽院の声楽科に通うソプラノ歌手のコンスタンツィア・グラドコフスカに恋をしていたものの、最後までその想いを告げることが出来なかった――という逸話が残されています。
ゲニューシャスは、そういったショパンの心に秘めた想いを、繊細なタッチで描いていきました。ときに耳をそばだてなければ聞こえないほどのピアニッシモで(しかし不思議なことに、ゲニューシャスのピアニッシモは、どれだけ小さくても会場の隅々まで届くのです)決してその想いを全面に出すことなく、丁寧に奏でていました。

第2楽章のしっとりとした雰囲気を残したまま始まった第3楽章。耳に残る付点リズムは、祖国ポーランドの民族舞踊であるマズルカを彷彿とさせます。

この楽章はピアノの華やかな演奏技巧がふんだんに用いられているのですが、ゲニューシャスの完璧な指先のコントロールがきらりと光っていました。
ホルンの合図で始まるコーダでは、マエストロとオーケストラがゲニューシャスの軽妙なピアノ・タッチを支えつつ、終盤に待ち構えるクライマックスまで共に盛り上げていく様子が印象的でした。

休憩を挟んで最後に演奏された作品は、マエストロ十八番のラフマニノフ《交響曲第2番》です。1906年から07年にかけて作曲され、翌年に作曲者自らがタクトを取り初演を行ったこの交響曲は、ラフマニノフ作品の中でも最高傑作のひとつに数えられています。
この曲の特徴は、全体に漂う濃厚なロマンティシズムとロシア特有の土臭さ。マエストロは、指揮台をめいっぱい使って、体全体で表現していました。

目の前で繰り広げられる熱演に、時間を忘れて集中したお客さまも多かったのではないかと思います。
この曲はこれまで「歴史的名演」がいくつか残されてきましたが、この日のマエストロ&京響も間違いなく「名演」を残したといっても過言ではないでしょう。
最後は拍手喝采を浴びて、何度も指揮台へと上る広上氏。「京都の秋 音楽祭」のオープニングは大成功だったようです。

開会記念コンサートから早くも1ヶ月が経とうとしていますが、「京都の秋 音楽祭」はまだまだこれから。オーケストラや室内楽、リサイタルに邦楽など、バラエティに富んだ公演が目白押しです。
深まりゆく京都の秋を「京都コンサートホール」で味わうのはいかがでしょうか?お客さまのご来場を心からお待ちしております!(た)(写真はすべて佐々木卓男氏撮影)

 

【公演レポート】オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60(9/16)

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オルガン

去る9月16日(土)に開催されました、オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60「世界のオルガニスト」は、大盛況のうちに終演いたしました。台風前日でお足元が悪い中、多くのお客さまにお越しいただき、感謝申し上げます。今回は公演の様子をお伝えいたします。


考え抜かれたプログラム

京都初登場となったエスピナス氏は、バロック時代から現代作品まで、オルガンを堪能できる充実のプログラムを披露しました。しかも、ただ曲を並べるだけではなく、プログラム全体からエスピナス氏の思いや意図が伝わる、見事なプログラミングでした。

今回のプログラムについて

前半は、私の師であるアンドレ・イゾワールに対するオマージュです。彼は演奏家としても(素晴らしいグリニー全曲録音を出しています)、バッハ作品の編曲者としても、作曲家としても活躍しました。後半は、20世紀フランスの偉大な2人のオルガニストであるルイ・ヴィエルヌとモーリス・デュリュフレへのオマージュです。デュリュフレの《前奏曲、アダージョと「来たれ、創造主よ」の主題によるコラール変奏曲》は、プログラム冒頭に演奏するグリニーの作品に呼応しています。

フランソワ・エスピナス


荘厳なグリニーから変幻自在のイゾワールまで

パイプオルガン史における「フランス古典」の礎を築いたニコラ・ド・グリニー (1672-1703) による、賛歌〈来たれ、創造主よ〉からプログラムは始まりました。
エスピナス氏は、曲の冒頭でグレゴリオ聖歌「来たれ、創造主よ」の旋律を右手で奏でました。実は、プログラム最後の曲(デュリュフレの《「来たれ、創造主よ」の主題による前奏曲、アダージョとコラール変奏曲》)の冒頭でも同じ旋律を同様に奏したのですが、これは両曲ともにグレゴリオ聖歌「来たれ、創造主よ」をテーマに作曲されたためです。

グリニー作品の第1部「テノール声部に定旋律を持つ5声の『来たれ、創造主よ』」は、輝かしい響きで始まりました。あの響きは、「プラン・ジュ(Plein jeu)」と呼ばれる、オルガンの正面に並ぶパイプを中心としたプリンシパル族の合奏で作り出されたものなのですが、音(=jeu)がいっぱいに(=Plein)満ちるというフランス語のとおりに、聞き惚れんばかりの美しい響きがホールを包み込みました。

続いては、グリニーの曲を写譜して勉強していたとされるJ. S. バッハ (1685-1750) による作品、《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番BWV1001》の第1楽章〈アダージョ〉《カンタータBWV29》より〈シンフォニア〉(※オペラの序曲のように管弦楽のみで演奏される)が演奏されました。いずれの作品もエスピナス氏の師イゾワールによる編曲が施されているのですが、原曲がヴァイオリンや管弦楽のものとは思えないほど、パイプオルガンの響きに馴染む作品でした。

前半プログラムを締めくくったのは、イゾワール作曲《ユグノー詩編による変奏曲》。親しみやすいテーマがめまぐるしく変奏していくさまは圧巻で、聴衆アンケートでも高い評価を得ました。


大オルガンの魅力を活かしたフランスの作品たち

後半プログラムでは、20世紀フランスで活躍を遂げた2人の偉大なオルガニスト、ルイ・ヴィエルヌ (1870-1937) とモーリス・デュリュフレ (1902-86) の作品が取り上げられました。
彼らの作品にみられる魅力はなんといっても、その燦爛たる色彩感と立体感。多彩な音色選びや幅広いダイナミクスからは、大オルガンの果てしない可能性を感じさせられます。

パリ・ノートルダム大聖堂のオルガニストを務めたヴィエルヌ作曲〈ロマンス〉(交響曲第4番ト短調op.32より)は、穏やかな伴奏をバックに、低音から高音まで美しく歌われました。それはまるで、夜空に浮かぶ小さな星のようにそっときらめく音でした。
同じくヴィエルヌの〈ウエストミンスターの鐘〉op.54-6は、学校のチャイムでお馴染みの鐘のメロディーが使われていて、「オムロンパイプオルガンコンサートシリーズ」でもよく演奏されている曲です。最初は遠くから聞えてきたテーマが、フィナーレに向かってゆっくりと盛り上がっていき、最後はまるでウエストミンスター大聖堂の鐘が鳴り響いているかのごとく、輝く音のシャワーがきらきらと降り注ぎました。

プログラム最後は、デュリュフレ作曲の《「来たれ、創造主よ」の主題による前奏曲、アダージョとコラール変奏曲op.4。作曲者の師であるヴィエルヌに捧げられた大作です。「デュリュフレ」といえば《レクイエム》をイメージされる方が多いと思いますが、このオルガン曲が持つ壮大さを前にすると、彼がいかに傑出したオルガニストだったかが手に取るように分かります。

超絶技巧を駆使しながら、この25分にもおよぶ大曲を完璧に弾きこなしたエスピナス氏。万華鏡のように次々と移り変わる音色に、会場からは感嘆のため息が聞こえてきました。また、フォルテッシモの箇所では大オルガンの雄大さを、ピアニッシモのところでは神秘性を感じさせられました。パイプオルガンが持つ音色の多彩さに圧倒された方も多かったのではないでしょうか?

「コラール変奏曲」では、プログラム冒頭のグリニーでも鳴り響いた、輝かしい「プラン・ジュ」の響きが再びホールを満たしました。そしてテーマがさまざまな形で出現し、ホール全体を揺るがすような大音量がパイプオルガンから轟いたところで、曲一番のクライマックスを迎えました。耳のみならず、足の裏から体の芯まで、パイプオルガンの「響き」を体感していただけたことでしょう。

プログラムを通して、素晴らしい演奏を繰り広げてくれたフランソワ・エスピナス氏。お客さまからのアンケートからは、「オルガンの響きを聴いているだけで心地よい」「初めて聴いたが深く感動した」など賞賛の声が多く寄せられました。

エスピナス氏のサイン「今日、京都で演奏出来たことを光栄に思います」

近日、当日の録音(!)を数曲ホームページ上で公開する予定ですので、どうぞお楽しみに!

■次回予告

次回の「オムロンパイプオルガンコンサートシリーズVol.61」(2018年2月24日開催)は、ミューザ川崎シンフォニーホール専属オルガニストの近藤岳氏が登場!8年ぶりに京都コンサートホールのパイプオルガンを演奏していただきます。近藤氏が選んだテーマはずばり「宇宙」。パイプオルガンを使ってどのような「宇宙」が描き出されるか、どうぞご期待ください。(な)

京都 ラ ビッシュ アンサンブル Vol.14(10月9日)インタビュー

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アンサンブルホールムラタ

京響メンバーを中心に、2002年に結成された「京都 ラ ビッシュ アンサンブル」。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルンというユニークな楽器編成による多彩なレパートリーを誇り、これまでに京都公演をはじめ、鳥取、兵庫、岐阜、滋賀など各地の公演で好評を得てきました。

京都 ラ ビッシュ アンサンブル

今年はラ ビッシュ アンサンブルにとって、結成15周年となるメモリアルイヤー。
10月9日(日・祝)14時、京都コンサートホール アンサンブルホールムラタで公演を開催します。
プログラムは、2つの大曲を演奏します。まず、ベルギーの作曲家マルセル・ポート (1901-1988) の《クラリネット、ファゴット、ホルン、弦楽五重奏のための八重奏曲》。
そして、かの有名なアントニオ・ヴィヴァルディ (1678-1741) のヴァイオリン協奏曲「四季」を八重奏用に編曲したものです。8人全員が主役となって、色とりどりの四季を表現します。
バロックと近現代それぞれの「八重奏」をお楽しみ頂ける、なんとも贅沢な一夜です。

京都 ラ ビッシュ アンサンブルVol.14演奏会チラシ

「八重奏」とは、2台のヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスというオーケストラの基本的な編成に、クラリネット・ファゴット・ホルンという管楽器を組み合わせたもの。その完璧な響きから「オーケストラの縮小版」と称される一方で、各奏者のヴィルトゥオジティもじっくり味わうことが出来ます。「京都 ラ ビッシュ アンサンブル」も然り。これまで、八重奏ならではの濃密な響きで、たくさんの聴衆を魅了してきました。
今日は、「京都 ラ ビッシュ アンサンブル」の代表でコントラバス担当の神吉正氏に、ラ ビッシュ アンサンブルの魅力についてインタビューを行いました。

神吉正(コントラバス)

――結成15周年、おめでとうございます!みなさんにとって、15年は長かったですか?それとも短かったでしょうか?
神吉正氏(以下敬称略):室内楽が好きな京響メンバーが集まり、その楽しさをお伝えしようと一回一回を大切に発信し続けて、あっという間に時間が経った感覚です。

――アンサンブルは続けることに意味があると思いますので、素晴らしいと思います。15年継続して活動するということは、決して簡単なことではありません。ところで、アンサンブル名の「ラ ビッシュ」とはどのような意味があるのですか?
神吉正:「ビッシュ」という言葉は、フランス語のbiche(「雌鹿」の意味。フランスでは愛らしい女性に対して、この言葉が用いられることも)と日本語の「美酒」をもじったもの。
長く熟成される「美酒」のように、皆から愛されるアンサンブルを目指して活動を重ねてきました。
時間をかけてビッシュのサウンドを作り上げ、これからさらに熟成させていきたいと思っています。

――なるほど、素敵なアンサンブル名ですね。
みなさんは全員、京都市交響楽団で出会ったメンバーでいらっしゃいますが、お名前と担当楽器をご紹介頂けますか?
神吉正:全員、京響の団員または元団員で構成され、世代を越えて意見をぶつけ合う仲間です。共通点は「アンサンブルが好き」であるということですね。
まず、ヴァイオリンを担当する2人を紹介します。田村安祐美と片山千津子です。

田村安祐美(ヴァイオリン)
片山千津子(ヴァイオリン)

ヴィオラを担当するのは、小峰航一です。

小峰航一(ヴィオラ)

チェロを担当するのは、渡邉正和です。

渡邉正和(チェロ)

クラリネットとファゴットは、それぞれ鈴木祐子と仙崎和男が担当します。

鈴木祐子(クラリネット)
仙崎和男(ファゴット)

ホルンは小椋順二です。

小椋順二(ホルン)

そしてコントラバスは私、神吉正が担当しております。

神吉正(コントラバス)

そして忘れてはならないのが、毎公演、我々のために編曲を施してくれる前田肇氏です。

前田肇(編曲)

――ありがとうございました!どのような音色や響きになるのかとても楽しみです。
神吉さんにとって「八重奏」の魅力は何でしょうか?
神吉正:オーケストラの編成を縮小させると八重奏の編成になると言われてます。
弦楽器、管楽器、それぞれの音色と、それが調和された響きや迫力を一度に味わっていただけるのが、この編成の醍醐味です。

――今回の公演では、バロックと近代からそれぞれ1曲ずつ取り上げられますね。プログラムの聴きどころを教えてくださいますか。
神吉正:本来はヴァイオリン協奏曲である「四季」を、メンバー全員がソリストであるかのような、八重協奏曲として生まれ変わらせました。新しい響きをお楽しみください。
また、ほとんど知られていないポートの八重奏ですが、隠れた名曲が発掘される瞬間になるかもしれません。是非お立ち会いください。
今回のプログラムは、年齢に関係なく幅広い世代に聴いていただきたいですね。
クラシックに馴染みのない方でも、「四季」はどこかで耳にしたことのある曲だと思いますので、きっと楽しめると思います。

――いつも多彩な作品をプログラミングしていらっしゃるのが印象的です。どのようにしてプログラムを決められていますか?
神吉正:メンバー全員で、常にアンテナを張り、演奏会の情報やインターネット、CDなどをチェックしています。
お客さまからご提案いただいたケースもありました。また、カタログから楽譜を購入してみたものもあります。今回演奏するポートは、そのうちの一曲です。

昨年の公演から 京都 ラ ビッシュ アンサンブル

――それでは最後に、聴衆の方々へ一言お願いします!
神吉正:今回は新しい試みで、挑戦的なプログラムとも言えますが、初めて室内楽を聴かれる方でも、楽しめる内容になっています。
小編成ならではの緻密なアンサンブルを、是非聴きにいらしてください。

2017年9月1日 京都コンサートホール事業企画課メールインタビュー(た)

「芸術の秋」を京都コンサートホールで――「京都の秋 音楽祭」開幕!

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アンサンブルホールムラタ

国内外の著名アーティストや地元ゆかりの演奏家たちを中心に毎年開催される「京都の秋 音楽祭」。
21回を数える今年も、開催期間中の9月17日から11月26日まで、全23の多彩な公演が繰り広げられます。
音楽祭ならではの祝祭感・高揚感は、この時期にしか味わえないもの。
みなさまに京都コンサートホールにて素敵な「芸術の秋」を過ごして頂きたく、「第21回京都の秋 音楽祭」ラインナップから、おすすめの公演をいくつかご紹介します。

◆9月17日(日)14時開演(大ホール)  第21回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート<チケット完売>
広上淳一と京響がお届けする開会記念コンサート。今年は、ラフマニノフ《交響曲第2番》とショパン《ピアノ協奏曲第2番》(ピアノ:ルーカス・ゲニューシャス)を披露します。オープニングに相応しい豪華プログラムです。

広上淳一
R. ゲニューシャス ©Jean-Baptiste Millot

9月20日(水)19時開演(アンサンブルホールムラタ) 工藤重典(フルート)&リチャード・シーゲル(チェンバロ)デュオ・リサイタル
日本が誇るフルーティスト工藤重典とチェンバロ奏者リチャード・シーゲル。長年にわたり共演を重ねてきた2人が選んだプログラムは、ルイ14世時代の豪華絢爛なフレンチとバッハ父子のフルート・ソナタです。「黄金のデュオ」が奏でる軽妙洒脱なバロック音楽で、秋の夜長をお楽しみください。

工藤重典&R. シーゲル

◆9月24日(日)14時開演(大ホール) 第7回関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバルIN 京都コンサートホール
関西の音大・芸大8校が一堂に会するオーケストラの祭典。秋山和慶指揮で、モーツァルトの《レクイエム》、レスピーギの《ローマの噴水》・《ローマの松》が演奏されます。瑞々しい音色と確かな演奏技術に定評のある公演です。

※写真は昨年度の模様

◆10月9日(月・祝)15時開演(大ホール) ルツェルン祝祭管弦楽団
ルツェルン祝祭管弦楽団(LFO)は、音楽祭の時期に合わせて夏のみ結成される特別なオーケストラです。指揮は、2016年にLFOの音楽監督に就いた巨匠シャイー。オールR・シュトラウスで、世界随一の音色を響かせます。

LFO&シャイー ©Peter Fischli/ LUCERNE FESTIVAL

◆10月12日(木)19時開演(アンサンブルホールムラタ) マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)&河村尚子(ピアノ)デュオリサイタル
いま世界中から熱い視線を集める、チェロ奏者ホルヌング。今回はピアノに河村尚子を迎え、ロマン派盛期の名作をプログラミング。ブラームスのチェロ・ソナタ1番で始まり同2番で終わる贅沢な一夜を、若きチェリストと共にお楽しみください。

M. ホルヌング ©Marco Borggreve
河村尚子 ©Hirofumi Isaka

◆11月5日(日)14時30分開演(大ホール) 京都市交響楽団meets珠玉の東アジア
「東アジア文化都市2017京都」関連事業のひとつ、日中韓共同コンサート「京都市交響楽団 meets 珠玉の東アジア」。3ヶ国の管弦楽作品や《カルメン》を通して、国や民族を超えたハーモニーが響き渡ります。広上&京響、一流歌手陣や京響コーラス・京都市少年合唱団が繰り広げる豪華絢爛な演奏をお見逃しなく!

©伊藤菜々子

宮本益光

◆11月16日(木)19時開演(アンサンブルホールムラタ) デジュー・ラーンキ ピアノ・リサイタル
かつて、A・シフやZ・コチシュとともに「ハンガリーの三羽烏」と呼ばれたラーンキ。甘いマスクと優美なピアノで一世を風靡しましたが、いまやハンガリーを代表する巨匠ピアニストに。そんなラーンキが選んだプログラムは、すべて「B-dur(変ロ長調)」。ハイドン、ブラームス、シューベルトによる多彩な「B-dur」をお楽しみください。

D. ラーンキ © Palace of Arts-Budapest, Szilvia Csibi

◆11月18日(土)18時開演(大ホール) ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
128年の歴史を誇るロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。7代目首席指揮者に就任したダニエレ・ガッティが振る、ハイドン《チェロ協奏曲第1番》とマーラー《交響曲第4番》は必聴必見です。個性豊かなソリストたちにもご注目ください。

RCO ©SimonVanBoxtel

この他にも、さまざまな公演が目白押しです。
皆さまお誘い合わせのうえ、京都コンサートホールで贅沢な「芸術の秋」をお楽しみください!

【第21回 京都の秋 音楽祭 イベント情報】
期間:平成29年9月17日(日)~11月26日(日)
会場:京都コンサートホール 大ホール(1,833名)/アンサンブルホールムラタ(510名)
公演:全23公演
内容:ソロから室内楽、京都コンサートホールのフランチャイズ・オーケストラ「京響」や海外名門オーケストラ、邦楽アンサンブルなど多彩な公演が開催されます。
主催:京都市/京都コンサートホール(公益財団法人 京都市音楽芸術文化振興財団)
チケット問い合わせ先:京都コンサートホール 075-711-3231 (10:00-17:00/第1, 3月曜休)

第21回京都の秋音楽祭総合パンフレット (PDFでご覧いただけます)

フランソワ・エスピナス 特別インタビュー

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インタビュー

9月16日(土)午後2時開催「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.60 『世界のオルガニスト』」。ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂首席オルガニストのフランソワ・エスピナスが、十八番のフランス音楽を中心に魅惑のプログラムを組みます。おかげさまでチケットは完売となりました。
今回、フランソワ・エスピナス京都初公演を記念して、特別インタビューをみなさまにお届けします。オルガンとの出会いからフランス珠玉のオルガン・レパートリーの話まで、フランス随一のオルガニスト フランソワ・エスピナスの素顔を知ることが出来る貴重な内容です。

©Emma POMMER

――現在エスピナスさんは、フランスを代表するオルガニストとして国内外で大活躍されていらっしゃいますが、オルガンを始められたきっかけは何ですか?
フランソワ・エスピナス氏(以下エスピナス、敬称略): 私は昔、アルビという南仏の街に住んでいたのですが、そこにはとても美しいパイプオルガンを備える素晴らしい教会がありました。そのオルガンを聴いた時、恋に落ちたのです。たしか、8歳か9歳の時でした。それからピアノを習い始めて、13歳の時にオルガンを弾き始めました。

アルビ大聖堂のパイプオルガン。1736年クリストフ・ムシュレル作

――エスピナスさんをそこまで惹き付けるオルガンの魅力とは何でしょう。
エスピナス: オルガンは非常に多彩な楽器です。製作される国と時代によって楽器の構造や機能が異なりますし、楽器によって音楽や音色も変わってきます。私がオルガンに魅了され続ける理由はここにあります。こういった多彩さがオルガンの魅力です。

――2016年、エスピナスさんは新しいCDを出されましたね。その中で、フランスの偉大なオルガニストであるアンドレ・イゾワールが編曲したJ.S.バッハの作品を演奏していらっしゃいます。イゾワールはあなたの師匠でもありますよね。彼との思い出話をひとつ教えてくださいますか。
エスピナス: このCDは、私の親友であり同僚でもあるミシェル・ブヴァールと一緒に出したものです。私も彼もイゾワールの弟子でした。イゾワール先生との思い出はたくさんありますね…ひとつ選ぶのが難しいくらいです。一緒に歴史的オルガンを見に出かけたこと、一緒に東京を旅したことなど…。その中でも、最後の思い出は特に心動かされるものでした。イゾワール先生が亡くなる数ヶ月前、彼はすでに重篤な状態だったのですが、ブヴァールと一緒に出したCDを聴いてもらうために自宅を尋ねました。すると先生は微笑んでくださったのです。それが忘れられません。

2016年リリースのCD (la dolce volta)

――フランスには素晴らしいオルガンがたくさんあります。たとえば、パリのノートルダム大聖堂やサン・シュルピス教会、フィルハーモニー・ド・パリ、リヨンのモーリス・ラヴェル・オーディトリウムなどのオルガンは本当に素晴らしい楽器です。京都コンサートホールにも、日本でも最大級の素晴らしいオルガンがあります。この楽器について、どんな印象を持たれましたか?
エスピナス: うーん、この質問にお答えするのは難しいですね。なぜならこの質問に答えている時点では、まだそのオルガンを演奏したことがないからです。でも早くこの楽器を知りたいですし、絶対に素晴らしい楽器だと思います。

京都コンサートホールのパイプオルガン。ヨハネス・クライス社製

――ところで、エスピナスさんにぜひお伺いしたいお話があるんです。
フランスの「王のオルガニスト」の歴史は非常に長く、その役割も重要なものでした。1678年からは1人のオルガニストが3ヶ月間、つまり1年で計4人のオルガン奏者が「王のオルガニスト」として職務に就いていました。例えば、フランソワ・クープランも1月から3ヶ月間「王のオルガニスト」を務めたという記録が残っています。エスピナスさんは2010年に、ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂オルガニスト4名の中に選ばれました。当時と現在を比較すると、オルガニストを4人選定するという共通点がみられますが、オルガニストとしての役割においてどのような違いがありますか?
エスピナス: 17~18世紀の王立礼拝堂オルガニストは「演奏会」をしませんでした。彼らの役割は、典礼時に演奏することに限られていたのです。
今日、王立礼拝堂では宗教的な行事はかなり減っています。私たちの役割は特にコンサートで演奏することで、その他には非営利団体や学校、企業のセミナーのために演奏することもあります。

ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂のオルガン。1709-10年ロベール・クリコ&ジュリアン・トリブォ作

――9月16日の京都コンサートホールでの公演プログラムには興味深い作品が並んでいますが、どのように選曲なさいましたか?
エスピナス:前半は、師であるアンドレ・イゾワールに対するオマージュです。彼は演奏家としても(素晴らしいグリニー全曲録音を出しています)、バッハ作品の編曲者としても、作曲家としても活躍しました。後半は、20世紀フランスの偉大な2人のオルガニストであるルイ・ヴィエルヌとモーリス・デュリュフレへのオマージュです。デュリュフレの《前奏曲、アダージョと「来たれ、創造主よ」の主題によるコラール変奏曲》は、プログラム冒頭に演奏するグリニーの作品に呼応しています。

アンドレ・イゾワール(1992年、Orgue en Franceより)

――現在、幸いなことに私たちはフランスの素晴らしいオルガン・レパートリーに恵まれています。フランスのオルガン作品の魅力を教えてください。
エスピナス: フランスのオルガン・レパートリーは本当に幅広く、非常にたくさんありますよね。ルイ・クープランやティトゥルーズといった前期バロック作品からグリニーやマルシャン、フランソワ・クープランといった後期バロック作品、19世紀初頭のボエリー、フランクやヴィドール、ヴィエルヌ、デュプレのロマン派的かつ交響曲的な作品、トゥルヌミール、デュリュフレ、ジャン・アランの近代的な作品もあります。また、20世紀から21世紀にかけてもたくさんの素晴らしいオルガニストやオルガン作曲家がいます。オリヴィエ・メシアンもそうですし、ジルベール・アミ、グザヴィエ・ダラス、ジャン=ルイ・フロレンツ、ヴァレリ・オーベルタンなど……。私は彼らの多彩な作品が好きで、よく演奏します。

©Emma POMMER

――さて、最後になりましたが、エスピナスさんの演奏会を心待ちにしている京都のファンに向けて一言お願いします!
エスピナス: 1986年に初めて京都を訪れたのですが、日本の歴史が凝縮された素晴らしい街でした。
日本を訪れると、いつも大きな喜びを感じます。ですので、このたび京都コンサートホールでオルガンを演奏し、みなさまにお会い出来ることをとても幸せに思います。

2017年7月 京都コンサートホール事業企画課 メールインタビュー(た)

京都コンサートホール公式ブログ、始めます!

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京都コンサートホール

クラシック音楽や演奏会のことをもっとお伝えしたい、京都コンサートホールのことをもっと知っていただきたい――わたしたちのそんな願いと共に、京都コンサートホールTwitterFacebook公式アカウント、そして京都コンサートホール公式ブログを始めます!

公式ブログでは、自主公演のご紹介や演奏家インタビューをはじめ、京都コンサートホールにまつわるさまざまな内容の記事を掲載していきます。ホール建物の話であったり、ホール内の音響に関する話、パイプオルガンの秘密、ときには舞台裏のことなど……京都コンサートホールにお越しいただくことがもっと楽しくなるような、そんなブログを目指します。
みなさま、どうぞ宜しくお願い致します。

 

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