特別寄稿「ラ・ヴァルス」に映る旧世界(「ラヴェルが幻視したワルツ」)

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京都コンサートホール

音楽家が見た世界をウインナ・ワルツであぶり出す「ラヴェルが幻視したワルツ」(10/2開催)。
今回の公演を監修していただき、コンサート当日にはレクチャーしていただく、音楽学者の伊東信宏(大阪大学大学院教授)さんに、本公演のプログラムの要であるラヴェルの《ラ・ヴァルス》についてご寄稿いただきました。

「ラ・ヴァルス」に映る旧世界/伊東信宏

ラヴェルの「ラ・ヴァルス」というのは、捉えがたい曲です。「ウィンナ・ワルツ」へのオマージュだというだけあって、そこここからワルツの断片のようなものが聞こえてきます。それは時としてふるいつきたくなるほど魅力的に立ち上るのですが、それが全面的に展開されることはなく、奥の方でチラチラ見え隠れするだけです。そして、あの穏やかで甘い「ウィンナ・ワルツ」に基づいているにしては、「ラ・ヴァルス」にはどこか不穏なものが漂っています。特に後半、ワルツの回転は止まらなくなり、暴走を始めて悲鳴をあげ、最後には断ち切られるように終わります。どう見ても、どう聴いても、古き良き時代への賛歌などではありません。

そもそもこの曲は、はじめはあまり評判が良くありませんでした。当初は、ロシア・バレエ団の総帥ディアギレフがラヴェルに委嘱したバレエ音楽だったのですが、出来上がった曲を聴いたディアギレフは「これは傑作だがバレエじゃない、バレエの肖像画だ」と言ってこの音楽のバレエ化を断り、ラヴェルはディアギレフと仲違いすることになりました。同じ場に居て、このやり取りを聞いていたストラヴィンスキーは何も言わなかった、と伝えられます。

だが、時代が移り、1981年にカール・ショースキーが書いた闊達な書物『世紀末ウィーン』(邦訳の出版は1982年で、その後の「ウィーン世紀末」ブームの先駆けになった)では、この曲は冒頭に取り上げられて「19世紀世界の非業の死」を象徴する作品という役割を与えられています。私は曲を詳しく知る前からむしろこの評言が頭にあって、なるほどそういう曲なのか、と思ってはいたのですが、実のところあまり得心はゆきませんでした。最初に述べたように、実際の音楽を聴いてみると、魅力的なワルツの断片と不吉な加速についてラヴェルが本当のところ何を考えていたのか、感覚的に理解できなかったのです。

2020年にコロナ禍で家に閉じこもるようになってしばらくして、クサヴィエ・ロトが指揮する管弦楽版「ラ・ヴァルス」の映像を観て、ようやくピンと来るところがありました。—過去と現在との間に決定的な線を引かざるを得ない出来事が起こり、現在から見える過去が輝かしく、麗しく映る。と同時に、あの狂騒ぶりはやはりどこかおかしかったのではないか、という気もしてくる—ラヴェルは「ラ・ヴァルス」にそんな感覚を描こうとしたのではないでしょうか。

私にとっては、コロナ禍がその過去と現在との決定的な分割線となりました。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」にとっては、第一次大戦(1914-18年)、ロシア革命(1917年)、スペイン風邪の流行(1918年から20年)、そして母の死(1917年1月)といったことがその分割線になったと思われます。ラヴェルは、母とヴァカンスを過ごしている時に第一次大戦勃発を知り、軍隊に志願しました。最初は体重が足りず入隊できなかったのですが、運転免許を取り輸送兵として志願し直して、実際に前線との輸送の任務に就いたのは1916年3月から翌年7月までです。激戦地ヴェルダンへの物資輸送という危険な任務で、多くの悲惨で不気味な光景を目にした、と伝えられています。ラヴェルの母は、この頃次第に弱っていったのですが、1917年1月に亡くなります。幼い頃から特別な愛情で結ばれていた母を失い、ラヴェルは葬儀で憔悴しきった姿を見せていた、といいます。

「ラ・ヴァルス」が書かれていたのは、まさにこの前後のことです。「ヨハン・シュトラウスへの賛歌」、ないし交響詩「ウィーン」という曲が1906年頃から構想されていて、これらが「ラ・ヴァルス」の前身と考えられていますが、本格的に作曲に取り掛かったのは1919年12月だったようです。前述のような様々な分割線の後、ラヴェルはさらに自身の胸の手術などもあって、創作意欲を取り戻すのに時間がかかったのですが、「ラ・ヴァルス」は復帰後始めての大作だったと言えます。最初にピアノ独奏版、2台ピアノ版が書かれ、管弦楽版が完成したのは1920年4月、先ほど述べたディアギレフなどへの試演会が行われたのは、同年5月のことでした。

そんなことを考えると、ラヴェルが「ラ・ヴァルス」で示した「旧世界」(「1855年頃のウィーン」と作曲者自身は書いています)への思いを、約100年後の我々がコロナ以前の世界に抱く思いと重ね合わせることはそれほど乱暴ではないのではないか、と思われます。我々と同じように、ラヴェルも「あの頃」を懐かしく、取り戻したく感じており、そして同時に現在から振り返ると「あの頃」がやはりどこか狂っていたと感じていたのではないでしょうか。そうだとすれば、「ポスト・コロナ」ないし「ウィズ・コロナ」の演奏会がまず真っ先に取り上げるべきなのは、この「ラ・ヴァルス」だと私は考えました。

三輪郁©Ryusei Kojima
三ッ石潤司

「ラ・ヴァルス」を聴き、ラヴェルが抱いた「旧世界」への複雑な感情に耳を澄ますこと。我々が失ったものを追悼し、そしてそれが暴走しはじめた地点を確かめること。10月2日の演奏会「ラヴェルが幻視したワルツ」では、そのような「ラ・ヴァルス」の2台ピアノ版を中心に据え、加えて「ラ・ヴァルス」が撒き散らす魅力的なワルツの断片を、実際の「ウィンナ・ワルツ」として仕立て直す作品を三ッ石潤司さんに委嘱初演します。三ッ石さんは長くウィーン音大で教えていた、ウィーンを内側から知る作曲家で、またこのようなパスティッシュ(模作)の名手でもあります。さらにラヴェルと同じ頃、ウィンナ・ワルツを別の角度から仕立て直していたシェーンベルクやウェーベルンの編曲で、ウィンナ・ワルツそれ自体も聴いてみる、というような趣向を凝らしました。演奏には三ッ石さんご自身のピアノの他に、やはりほとんどウィーン・ネイティヴとも言える三輪郁さん、そして谷本華子さんをはじめとする、筆者が最も信頼する演奏家たちが揃いました。毎日、感染者数を横目で見ながら、10月を心待ちにしている日々です。

 

 

 

伊東信宏(いとう・のぶひろ)

1960年京都市生まれ。大阪大学文学部、同大学院を経て、ハンガリー、リスト音楽大学などに留学。大阪教育大学助教授などを経て、現在大阪大学大学院教授(音楽学)。著書に『バルトーク』(中公新書、1997年)、『中東欧音楽の回路:ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』(岩波書店、2009年、サントリー学芸賞)、『東欧音楽綺譚』(音楽之友社、2018年)、『東欧音楽夜話』(音楽之友社、2021年)など。ほかに訳書『月下の犯罪』(講談社選書メチエ、2019年)など。東欧演歌研究会主宰。

公演情報

Powe of Music 特設ページ

【ストラヴィンスキー没後50年記念】音楽学者 岡田暁生インタビュー<後編>

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京都コンサートホール

京都コンサートホールでは、ストラヴィンスキーの没後50年に際し、彼が残した傑作のひとつである《兵士の物語》(10/16)を上演します。また、関連講座として「ストラヴィンスキー没後50年記念レクチャー」も開催します。
レクチャーに先がけ、講師をしていただく京都大学人文学研究所教授の音楽学者 岡田暁生氏にインタビューを実施しました。後編では、《兵士の物語》の内容について興味深いお話を伺いました。
ぜひ最後までご覧ください!(聞き手:高野 裕子 京都コンサートホール プロデューサー)

▶前編はコチラ
/archives/2078

―――それではいよいよ本題の、ストラヴィンスキー作曲《兵士の物語》について教えてください。

この作品は、ストラヴィンスキーの亡命時代、第一次世界大戦最末期に書かれた作品です。その前年にロシア革命が起きて、ストラヴィンスキーは故郷に帰れなくなってしまったのですが、そのことを作品に投影していると思います。さらに言えば、スペイン風邪が猛威を振るい始めたのもちょうどこの頃。つまり、現在と状況が全く同じです。今年、京都コンサートホールが《兵士の物語》を選んだのは深い理由があると思います。マーラーなどの大きな編成で演奏される作品だったら厳しいけれど、《兵士の物語》だったら奏者間の距離も十分に取ることができるから大丈夫。あと、編成が小さいので経済的にも助かる。だから、この作品はいまにふさわしいんですよね。

―――なぜストラヴィンスキーは当時、この編成(ヴァイオリン・コントラバス・クラリネット・ファゴット・トランペット・トロンボーン・打楽器)で作品を書いたのでしょうか。

この時代、当時の作曲家にとって一番お金になったのは、まずはオペラ、次に交響曲。ですが戦禍にあった当時、新作なんてとんでもないという話だったし、オーケストラの楽員もみんな兵隊に駆り出された。そこにスペイン風邪が猛威をふるいはじめるわけでしょう?音楽家やオーケストラを集めるのにも一苦労したし、大体、誰がお金を出すのだという時代だった。コンサートホール、オペラ劇場が頼っていた、ゴージャスなブルジョワ階級をあてにできなくなった時、お金に困っていたストラヴィンスキーはスイス人のパトロンだったヴェルナー・ラインハルトの援助を受けて《兵士の物語》を作曲しました。オペラ劇場みたいに大金が集まってくるわけではなかったため、このような小さな編成の作品になったのです。

――さきほど、ストラヴィンスキーはこの作品に自身を投影したとおっしゃいましたね。

これは戦時休暇の話で、兵士は休暇をもらって故郷へ帰っていきます。当時の従軍兵士にとって何より辛かったのは、戦時休暇だったようです。なぜかというと、第一次世界大戦はまだ空爆などが盛んではなかった頃だったので、故郷に帰ると戦前と変わらない生活が待っていたんです。だけど、一方で自分たちは、戦場で異様な体験を重ねている。戦場と故郷とのギャップが耐え難いものだったのです。《兵士の物語》には、どこかで聴いたことがあるようなコラールやマーチなどが登場します。教会に入ればコラールが歌われているし、街の祭りではマーチが鳴り響き、ワルツが演奏されている。すべて日常生活の中で鳴っている音楽なんだけれど、なんだか変――これぞ、シュールレアリスムですね。コロナが起こってからのコンサート風景にも同様のことが言えます。コンサートに行くとコロナ以前と同じ風景が展開されているが、何かが違うという感覚です。

―――この作品のなかでストラヴィンスキーは「“幸せ”とは何か?」と問いかけています。

作品の途中、兵士が王女様と出会うシーンがあり、そこで非常に美しい「コラール」が流れるのですが、それが唯一の“幸せ”でしょうね。あの音楽だけが異様に美しいのです。ご存知の通り、ストラヴィンスキーはオーケストレーションの名手だったリムスキー=コルサコフの弟子でしたから、美しくゴージャスなサウンドを書くという点では師匠並みで、音楽史上最もオーケストレーションが巧みだった人物の一人です。しかし、《兵士の物語》の中で、感覚的に「あぁ美しい」と感じるのは唯一、あの一瞬だけ。それも幻覚なので、いずれ消えてしまうのですよ。

―――兵士と王女様が結婚し、幸せになって、はいお終い・・・と思いきや、最後の最後で悪魔が再登場し、2人の仲を引き裂きます。なぜあのシーンで、兵士は悪魔に抵抗しなかったのでしょうか。

それは演奏家の解釈によるでしょうね。でも、ストラヴィンスキーは非常にニヒルでクール、感情移入ゼロの人で、特に音楽に感情移入するのが大嫌いだったようです。ストラヴィンスキーは、リズムの解放を行い、音楽の終わりを見極めた人物だったとお話しましたが、それらを言い換えると「ロマン派と決定的に縁を切った最初の人だった」ということです。ロマン派的感性やロマン派的な音楽観というものを徹底的に排除し、「音楽=感動するもの」という、それまでの公式を決定的に否定したのです。これはとても大きいですね。

―――聴衆は「音楽」に「感動」を求めるのが常だと思うのですが。

《兵士の物語》を普通に聴いたら、訳が分からないと思いますね。
私は中学2年生の時、ストラヴィンスキーの三大バレエにはまりました。毎日、春の祭典からペトルーシュカまで、一通り聴かなければ何も他のことができなくなるくらい。そしてクラシック音楽好きだった父親に、ストラヴィンスキーの他の作品を尋ねた際、《兵士の物語》や《プルチネッラ》を薦めてくれました。当時、レコードは高価なものだったので、父親に買ってもらってそれらの作品を聴きました。でも、何にも分からなかった。訳が分からなかったのです。いまはその意味がよく分かるのですが、三大バレエは音楽の中に思い入れができる、感情移入ができる作品です。でも、この《兵士の物語》はそうさせてくれない。感情移入しそうになるところで、ストラヴィンスキーは全て外しにかかるのです。だから、感動しないからといって心配する必要はありません。

―――なぜストラヴィンスキーが「綺麗」でもなく「楽しい」わけでもない音楽を書いたか、その点を考えながら鑑賞すると聞こえ方も変わってくるかもしれませんね。

第一次世界大戦が始まる前のヨーロッパ、特にブルジョワ階級の人たちは、ゴージャスなロマン派の音楽に感情移入していました。しかし、第一次世界大戦により、そういうものを成立させていた世界がズタズタになったわけですよね。私たちもそう、コロナの出現により、それまで成立していた世界がズタズタになりました。そういった意味では、いまこそ《兵士の物語》に共感できるのではないかと思います。
現在、多くの人々の中で、「ホール=楽しそう」というイメージがびっくりするくらいイコールになっているように感じますが、私は音楽って「楽しい」ばかりではないと考えています。「音楽=感動=楽しい」というのがステレオタイプのようになり過ぎている気がします。

―――《兵士の物語》をプログラミングしたのは去年、コロナのパンデミックの最中でした。先行きがなかなか見通せない中で行き詰まった時、ちょうど100年前に起きたスペイン風邪のパンデミック下に書かれた作品に注目してみたのです。これらの作品をいま演奏することで、我々はこれから先をどう考えるのかというヒントになるかなと思いました。つまり、先人が残した作品を通して、アフターコロナをシミュレーションしてみたかったのです。しかし、それから半年ほど経ち、自分の意識も変わり始めました。この先、どうなるのだろう?何があるのだろう?と。アフターコロナの世界について、先生はどう考えていらっしゃいますか?

私はあの本(「音楽の危機――《第九》が歌えなくなった日」)を出すにあたって、この先どうなるかについて、具体的に細かくシミュレーションしました。例えば人気アイドルグループのような何万人も収容する公演はどうか、あるいは宝塚のような1,000人~1,500人規模だが熱狂的なファンがいる公演はどうか、またクラシックのようにコアなファンが意外とあまりいない社交的感覚を持つ公演はどうか、もしくはライブハウスでの公演はどうか。はたまた、コロナがあっという間に収束したらどうなるだろうか、とかね。
とある教え子に「ワクチン接種が早急に進むと、ベルリン・フィルやウィーン・フィルが次々と来日する世界は戻ってくるだろうか?」と聞いたら、「そういう世界は意外と早く戻ると思います。少なくとも東京はすぐに戻ってくるでしょう。ただ、このダメージは多方面において相当なものだと思います。その影響は、10年後15年後に初めてはっきりと目に見えてくるもので、そうなった時に“この現象はいつから始まったのだろう”と記憶をたどると、“ああ、あのコロナの時から始まっているのだ”と気がつくものではないでしょうか。」と言われました。これには「あぁなるほど」と思いましたね。

―――いま我々もコロナの影響を受けています。コロナ前に見られたようなホールの賑わいを取り戻すことができません。

ホールに聴衆を取り戻そうとする時、安易な話題性に頼ってはいけないと思います。そもそも、コロナ前から日本のクラシック業界というのは、話題作りに頼り過ぎていたかもしれない。話題で粉飾してみても、話題だから行っているという人が大半で、そういう人たちってあっという間に別の話題にいってしまう。まあ、そういったことも必要でしょうけど、一度聴いても「二度目はいらない」という人々もいる。確率で言えば、もう一度聴きたいと思う人は1割くらいでしょう。やっぱり、音楽を聴きに来た人に「これはまた来よう」と思わせるようなコンテンツがないと、聴衆が一時的に戻ったとしてもその時だけの話題性で終わると思います。単なる話題作りでは、所詮メッキが剥げやすいでしょう。

―――そういったことが、今回のコロナであぶりだされてきたと思います。これからホールがどういう音楽を作っていくかということも見えてきているような気がします。そして、お客様がそれをどう感じ、その後もホールに継続して来てくださるか。お客さんの審美眼を養うのも、我々ホールの役割のひとつだと思います。

今日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

(2021年7月  京都コンサートホール  カフェ・コンチェルトにて)

 

▶【ストラヴィンスキー没後50年記念レクチャー】詳細はコチラ

https://www.kyotoconcerthall.org/powerofmusic2021/#lecture

▶【京都コンサートホール presents 兵士の物語】公演詳細はコチラ

https://www.kyotoconcerthall.org/powerofmusic2021/#soldat

 

【ストラヴィンスキー没後50年記念】音楽学者 岡田暁生インタビュー<前編>

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京都コンサートホール

京都コンサートホールでは、ストラヴィンスキーの没後50年に際し、彼が残した傑作のひとつである《兵士の物語》(10/16)を上演します。また、関連講座として「ストラヴィンスキー没後50年記念レクチャー」も開催します。
レクチャーに先がけ、講師をしていただく京都大学人文学研究所教授の音楽学者 岡田暁生氏にインタビューを実施しました。
ぜひ最後までご覧ください!(聞き手:高野 裕子 京都コンサートホール プロデューサー)

―――この度は、インタビューの機会をいただき、ありがとうございます。まずは、今年没後50年を迎える「ストラヴィンスキー」という作曲家について教えていただけますか。

ストラヴィンスキーは、美術の分野で言えばピカソに匹敵する人だと思っています。音楽史において20世紀を決定的に開いた人ですね。一般的に、ストラヴィンスキーあるいはシェーンベルクのふたりが20世紀音楽の扉を開いたと言われていますが、私の目から見ると、シェーンベルクははるかに19世紀、ロマン派寄りです。
間違いなく、ストラヴィンスキーは20世紀最大の作曲家ですね。

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)

―――「20世紀最大の作曲家」と考えられる所以を教えてください。

ストラヴィンスキーは、音楽の「スタンダード」を変えてしまった作曲家です。
まず、ストラヴィンスキーは、19世紀において三流ジャンルであったバレエをモダン・ダンスにしました。それまでのクラシック・バレエと決定的に縁を切った20世紀的モダン・ダンスは、ストラヴィンスキーの精神から生まれています。彼は「リズムの解放」を行いました。それまでの西洋音楽は「音の高さ」を重要とする音楽であり続けてきましたから、「リズム」の要素は弱いものでした。それに対して20世紀の音楽というのは、クラシックに限らず、ジャズやロックも含めて、「音の高さ」の音楽ではなくなり、リズムの精神が求められました。つまり、20世紀はリズムが解放された世紀。ストラヴィンスキーはその先駆者だったのです。
さらに、ストラヴィンスキーは「新古典主義」という点でも先鞭をつけた人物でありました。彼は三大バレエ(火の鳥[1910]・ペトルーシュカ[1911]・春の祭典[1913])で新しい世界を決定的に開いたのですが、第一次大戦後、古典派時代への回帰を見せたいわゆる「新古典主義」へと作風をスライドしました。それはなぜか?ストラヴィンスキーは「音楽の歴史はもう終わった」と感じていたからです。つまり、「ポストモダン」の発想を持っていたということなのです。1920年代の段階で、ストラヴィンスキーはポストモダンの感性を先取りしていた。ストラヴィンスキーは過去の色々な作品をカタログのように使ってコラージュ的なことを行い、なんとか新しいことができないかと試みていますが、これは「音楽語法の発展はもう余地がない」という、ある意味では現代的ニヒリズムをはるか遠く先取りしていたとも言えます。
「リズムの解放」と「ポストモダン的感性」。ストラヴィンスキーは音楽の歴史の発展というものを、根本的に否定した人物なのです。

アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)

―――初期のストラヴィンスキーは、シェーンベルクが考案した十二音技法を避けていましたが、晩年になって取り入れるようになりました。なぜでしょうか?

「新古典主義」の一種ですね。色々なスタイルが掲載されているカタログを使って、パッチワークやコラージュのようなことをやったのです。材料さえあればなんでも良い。ストラヴィンスキーにとっては、シェーンベルクだって材料のひとつ。ちょっと乱暴な言い方をすれば、“ギャグる”材料のひとつ。つまり、非常に高度なパロディです。当時ストラヴィンスキーは、もう「パロディとしてしか芸術は存在しえない」、「音楽の発展はもう終わっている」と思っていたのです。

―――ストラヴィンスキーは、音楽の未来を見抜いていたということですね。

そう、見抜いていた。こうなったら、今までみんなが知っている、過去の色んなスタイルのパッチワークをやるしかないと思ったのです。現代の音楽家たちも同じようなことをやっていますが、発想自体は何も新しいことはない。だって、20世紀初頭にはストラヴィンスキーがすでにやっていたのですから。

―――ストラヴィンスキーの同時代人で、同じような手法を試みた作曲家はいますか?

たくさんいましたが、ストラヴィンスキーのようなラディカルさはなかった。「歴史はこれ以上、先に進まない」という、ある種の絶望感がその背景にあったかどうか、です。

―――ストラヴィンスキーのそういったキャラクターは、当時の時代背景と大きく結びついていますよね。

そう、絶対に忘れてはいけないのは、彼が亡命者であったということ、つまり生まれ育った国から切り離されていたということですね。今回、京都コンサートホールが上演する《兵士の物語》にも通じる話ですが。
シェーンベルクの場合、ウィーンもしくはウィーン古典派に深く根を下ろしているという意識があったので、先祖から受け継いだものをさらに発展させなければならないという義務感がありました。
しかし一方、ストラヴィンスキーの場合は、故郷から放逐されてしまって「どこにも所属していない人」です。《兵士の物語》を創作した1917年にロシア革命が起き、印税を得ることができた三大バレエのスコアはすべて新しいソ連政府に没収されたので、経済的にも非常に困窮していました。《兵士の物語》のストーリーである「戦時休暇で里に帰るけど、里はどこにもない」という内容は、実はストラヴィンスキー自身の話なのです。どこにも帰る場所がない。

―――なるほど、ストラヴィンスキーは《兵士の物語》に自分自身を投影したのですね。ちなみに、ストラヴィンスキーは死ぬまで特定の場所に定住しなかった人です。祖国に戻れなくなったあと、スイス、フランス、アメリカと転々とした。作風が“カメレオン”と称されている理由は、そういった背景にも関係しているのかもしれません。

「本物なんてどこにもない」という感覚を持っていたのでしょう。「本物」・「偽物」という感覚は、自分が根を下ろしている土地があるという人間が持つものです。しかし、故郷から追い出されたストラヴィンスキーにとっては、「これが本物だ」という感覚がない。全てがフェイク、ゴージャスだけど表層的で、内面的には何にもないという感じじゃないかな。

―――晩年のストラヴィンスキーはソ連に一度戻っています。

あれは文化政策の一環ですね。スターリンの独裁体制が崩れ、アメリカ人ピアニストのヴァン・クライバーンがチャイコフスキー国際コンクールで優勝、グレン・グールドが北米のピアニストとして初めてソ連に招待され、ストラヴィンスキーはお里帰りするなど、ロシアの雪解けの一環として帰ったのです。
しかし、本人は故郷に戻ったなんて感覚はなかったでしょう。ストラヴィンスキーはロシアが嫌いだった。彼の有名な言葉で、「ロシアには規律のない自由か、自由のない規律しかない」というものがあるくらいだから、ロシアに対して「故郷」という感覚はなかったでしょうね。

―――なるほど。ストラヴィンスキーについてお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

<後編に続く>

▶【ストラヴィンスキー没後50年記念レクチャー】詳細はコチラ

https://www.kyotoconcerthall.org/powerofmusic2021/#lecture

▶【京都コンサートホール presents 兵士の物語】公演詳細はコチラ

https://www.kyotoconcerthall.org/powerofmusic2021/#soldat

 

「北山クラシック倶楽部2021」後半セット券のご案内

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京都コンサートホール

「北山クラシック倶楽部」は、海外トップアーティストによる世界水準の演奏を、京都コンサートホールの室内楽専用ホール「アンサンブルホールムラタ」で体感していただくコンサート・シリーズです。

この度、2021年度のシリーズ後半4公演(9月~2022年2月)のラインアップが出揃いました!ギター、ホルン、弦楽四重奏、ヴァイオリンとピアノのデュオと多彩な4組が登場します!

アンサンブルホールムラタ

京都コンサートホールではこれらの公演をお得にお聴きいただけるセット券(限定100セット・約15%割引)を販売いたします。

ご予約・ご購入時にお好きな座席をお選びいただく、全公演共通座席「マイシート」制のチケットです。

演奏者の息遣いまで聞こえてくる濃密な音空間で、世界レベルの演奏をご堪能ください。

 


「世界一」とギター界絶賛!カリスマ中のカリスマ
マルツィン・ディラ ギター・リサイタル

マルツィン・ディラ(C)Matthew McAlister

ワシントン・ポスト紙が「地上で最も才能あるギタリストの一人」と激賞。数多くの音楽評論家、愛好家、ファンたちも間違いなく世界のトッププレイヤーであると認める、ギター史に名を刻む天才中の天才。世界最難関と言われるGFA国際を含む19もの国際ギターコンクールで優勝。カーネギーホール、ウィーン楽友協会、アムステルダム・コンセルトヘボウなど世界屈指のホールや世界最高のギター音楽祭に度々招かれ演奏している。

 

◆公演詳細◆
[日時]2021年9月3日(金)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
ミヨー:セゴビアーナ
ポンセ:フォリアの主題による変奏曲とフーガ ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:5月16日(日)/一般発売:5月22日(土)

[主催]MCSヤング・アーティスツ


極上のホルンによる、比類なき天上の響き
ラデク・バボラーク&バボラーク・アンサンブル

ラデク・バボラーク(C)Lucie Cermakova

世界トップ・クラスのホルン奏者。これまでにチェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、バンベルク響、ベルリン・フィルのソロ・ホルン奏者を歴任。小澤征爾、バレンボイム、ラトル、レヴァインなどの指揮者からの信頼が厚く、世界的なオーケストラと共演。日本では、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団やパシフィック・ミュージック・フェスティバルにソリストとしてだけでなく指揮者としても客演している。2018年から山形交響楽団首席客演指揮者も務める。

◆公演詳細◆
[日時]2021年10月8日(金)19:00開演(18:30開場)

[共演]
バボラーク・アンサンブル(弦楽アンサンブル)

[プログラム]
モーツァルト:ホルン協奏曲より(室内楽版)
モーツァルト:「ラルゲット」~クラリネット五重奏より  ほか

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 *会員:4,500円
*会員先行発売:6月12日(土)/一般発売:6月19日(土)

[主催]AMATI

 


パリに磨かれた、クァルテットの輝石
ヴォーチェ弦楽四重奏団

ヴォーチェ弦楽四重奏団©Sophie Pawlak

結成17年目を迎えたヴォーチェ弦楽四重奏団は、多岐に渡るクラシック音楽シーンで常に冒険的な弦楽四重奏団のひとつとして認知されている。ジュネーヴ、ボルドー等、数々の著名なコンクールで入賞以来、パリを拠点に世界中で演奏活動を繰り広げている。アルファ・クラシックスからCDを多数リリース。その中には、ジャズやワールド・ミュージックも含まれる。近年は後進の指導にも力を注いでおり2017年に“Quatuor à Vendôme”を設立。今回の公演は、波多野睦美との初共演による特別プログラム。

◆公演詳細◆
[日時]2021年11月5日(金)19:00開演(18:30開場)

[共演]
波多野睦美(メゾソプラノ)

波多野睦美©HAL KAZUYA

[プログラム]ドビュッシー:弦楽四重奏曲
ドビュッシー/バルメール編曲:抒情的散文より⋆
バルメール:新作(ドビュッシーに献呈)⋆
⋆日本初演

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 U25:2,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:7月17日(土)/一般発売:7月24日(土)

[主催]テレビマンユニオン


フランス・ヴァイオリン界の巨匠、最高のデュオ公演開催決定!
ジャン=ジャック・カントロフ&上田晴子 デュオ・リサイタル

ジャン=ジャック・カントロフ

フランスを代表する名ヴァイオリニスト。19歳にてカーネギーホールでのデビューを飾ってからは、世界中でソリスト、室内楽奏者として活躍。ヴァイオリニストとしての活動の他、パリ管弦楽団アンサンブルなど多くのオーケストラの常任指揮者を務める。2012年よりヴァイオリニストとしての活動を休止していたが、2017年春より再開し、2019年にはピアニスト上田晴子とともに日本ツアーを行い、圧巻の演奏で好評を博した。

◆公演詳細◆
[日時]2022年2月4日(金)19:00開演(18:30開場)

上田晴子

[プログラム]
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第35番 ト長調  K.379
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調  作品 94bis
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第10番 ト長調  作品 96  ほか

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 *会員:4,500円
*会員先行発売:10月23日(土)/一般発売:10月30日(土)

[主催]オザワ・アート・プランニング合同会社

 


★★お得な4公演セット券(限定100セット!)★★

★セット料金(全席指定)
15,000円 <約15%お得!>

★販売期間
*会員先行期間  2021年4月10日(土)~ 4月16日(金)
一般販売期間  2021年4月17日(土)~ 5月13日(木)

*会員…京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)・京響友の会の会員が対象です。

※出演者や曲目など内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

【第1期登録アーティスト】ジョイント・コンサートに向けて④(DUO GRANDE ヴィオラ奏者・朴梨恵)

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京都コンサートホール

2019年度よりスタートした「Join us(ジョイ・ナス)! ~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」は、初年度1年間、京都コンサートホール登録アーティストと共にアウトリーチ活動を京都市内小学校にて展開しました。

1年間の活動の締めくくりとして、2020年3月に予定していた「ジョイント・コンサート」は公演中止となりましたが、2021年3月7日に1年越しで開催することとなりました。

本ブログでは、登録アーティストたち3組4名の昨年のコロナ禍での活動について、そして「ジョイント・コンサート」に向けての思いを紹介しております。
最終回は、DUO GRANDE(弦楽デュオ)の朴梨恵さんです。ぜひご覧ください。

* * *

©KOHAN

みなさま、こんにちは。DUO  GRANDEの朴梨恵です。

お元気にしていらっしゃるでしょうか。
去年も、今も・・どなたにとっても気遣い・気苦労の絶えない時間となっていると思います。
本当に、大変な1年です。

アウトリーチ活動が昨年一年間中止になりました。京都市民のみなさまの中で、登録アーティストのメンバーのことを心配してくださっているという声が届いています。
感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

昨年、多くの活動が中止となり、国の助成金をはじめ、京都府や京都市、文化を支えようとされる企業様・個人様の援助等により、文化活動を続けることができました。

もちろん常日頃から思うことですが、このような事態になって改めて、文化や芸術、音楽というのは助けがなくては生き残ることが難しい分野で、いかに多くの方の力によってこの長い歴史は支えられているかということを痛感しました。
自分たちの力ではどうしようもない状況でした。

特に、京都は次から次へと『今何が必要か』と時期毎に支援策を考えてくださり、そのときその時必要な分をたくさんの方々に分配されていたと思います。
実際にどこよりも早く、5月に京都市が「京都市文化芸術活動緊急奨励金」を立ち上げてくださったことには、とても安堵し励まされました。アーティストのモチベーションをとにかく下げないように、という素早いご支援とお計らいがあったのでは、と思っております。
京都のみなさまの文化への理解に対して、尊敬するとともに、深く感謝しております。

多大なご協力をいただき、歴史ある分野に自分が携わっているという自覚を持つことができた昨年1年。これから私も何かその助力となるように、背筋が伸びる思いでおります。どのような形で返していけるのか、手探りではありますが引き続き活動していきます。

さて、京都コンサートホールのアウトリーチ活動に参加させていただいていることも、そして私がそもそも音楽活動をしている動機も、どちらも『クラシック音楽の魅力を知らない人にその魅力を知ってほしい』という思いからです。
私は、クラシック音楽は「とてもわかりやすいもの」ではないと思っています。4才からヴァイオリンを始め、楽器を練習することを好きになったのが10才頃・・・音楽の本当の魅力にたどりつけたのは、もっともっと後のことです。その魅力は私を助けてくれて、今では励ましてくれる存在となりました。そして音楽は、ありがたいことに底なき世界です。無限の世界があります。
多くの方々にとって、そういう存在のものがあればいいだろうなと、思っています。

とはいうものの、クラシック音楽を知らない人にとって、いま演奏会に出かけることは、感染症の心配など、きっと恐怖でしかなく、混雑のなか出かけ、よくわからない世界の扉を開くことは難しいだろうなと、正直思っています。

一方でこの状況下でも、コンサートに足を運ぶなど、どうしても音楽が必要と感じて、音楽を聴くことを精神の糧としている方が、思った以上にたくさんいらっしゃるということがわかりました。アンケートやブログなどから、その気持ちを伝えてくださった方がたくさんいらっしゃいました。

音楽を本当に必要としている方にとって、癒しの時間となり、心がワクワクする時間となるならば、それはとても嬉しいことではないかという気持ちで、今は仲間と音楽を作りあげています。これは、きっと一生音楽と携わっていくであろう私の中で音楽をする大きな動機となりました。

この一年、中止になったアウトリーチ活動。今年一年、子どもたちはどれだけ多くのことを我慢しなければいけなかったのだろうと心を痛めていました。
私が経験することのできたこと、そして人と関わってきたからこそ素晴らしいと思える「学生時代特有の思い出」を、過ごすことができなかったと思います。せっかくの機会に子どもたちと音楽を共有できなかったことも残念でした。給食、休み時間の雑談、移動教室、特別なイベント‥
きっと、子どもたちは大人たちの心配をすり抜けて、何食わぬ顔で、面白いことを見つけて明るく過ごしている!!!と信じてはいるのですが、やはり経験させてあげたいことをさせてあげられないというこの状況は、とてももどかしいものです。

そして、3月7日に開催する「ジョイントコンサート」は、DUO  GRANDEにとってもとても久しぶりの公演となります。

2019年度、アウトリーチ先の小学校で大人気だった『魔法の笛』のコーナーを、一般のみなさまにも見ていただけることがとても楽しみです。小学生たちはとても大きな反応を見せてくれました。ホールでのみなさまの反応を想像すると、こちらはなんだか笑えて来ちゃいます。みなさま大人でしょうし・・笑!よろしければ、子供心を思い出して聴いていただければと思います。

ヴァイオリンの上敷領さんとたくさんのリハーサルを重ねて作りあげたプログラムです。信頼しあえる2人だからこその「音楽の会話」や「音の重なり」・・・たった2台の旋律楽器ですが、存分にその良さを楽しんでいただけるように準備しています。

会場でみなさまにお会いできること、心より楽しみにしております。

* * *

★ジョイント・コンサートに向けて
①ピアニスト・田中咲絵
②ヴァイオリニスト・石上真由子
③DUO GRANDE ヴァイオリニスト・上敷領藍子

「Join us !~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」特設ページ

 

【第1期登録アーティスト】ジョイント・コンサートに向けて③(DUO GRANDE ヴァイオリニスト・上敷領藍子)

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京都コンサートホール

2019年度よりスタートした、「Join us(ジョイ・ナス)! ~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」。
2019年度、1年間、京都コンサートホール登録アーティストと共にアウトリーチ活動を実施し、その締めくくりとして2020年3月に「ジョイント・コンサート」を予定しておりました。コンサートは、新型コロナウイルス感染症の影響により公演中止となりましたが、2021年3月7日に1年越しで開催することとなりました。

本ブログでは、登録アーティストたち3組4名の「ジョイント・コンサート」に向けての思いや、昨年の活動について紹介しております。
第3回は、DUO GRANDE(弦楽デュオ)の上敷領藍子さんです。ぜひ最後までご覧ください。

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2020年という年は、毎日繰り返し流れるTVのニュースを眺めながら過ごしているうちに一瞬で過ぎ去ってしまいました。音楽業界も予定されていた公演が次々と中止となり、見たことのない状況に気持ちが落ち込みましたが、公演が再開となると、それはそれで人を集めて「密」を作るきっかけになっているのではと、演奏する喜びの反面、人々の健康への不安と葛藤する日々が続いております。

私自身はコンサートが無くなり静かにしている間、何か自分にできる事はないかと考えました。そこで思いついたのは、自分と同い年の音楽家を多くの方々に紹介すること。それに伴い「あいこの音楽友だち部屋」という番組をYouTubeで立ち上げました。同世代には素晴らしい音楽家が沢山いて、小学生の頃から多くの刺激を受けてきました。今日も自分がヴァイオリンを弾き続けていられるのは、いつも音楽と真摯に向き合って演奏している同級生からの影響がとても大きいと日々感じています。番組内では彼らが日頃どのような想いで演奏家として生きているのか等のお話をとても正直に話してくれています。

実は第1回のゲストにはDUO GRANDEの朴梨恵さんが登場してくれています。とてもユニークでチャーミングな朴さんの素顔が沢山見られます!是非、「あいこの音楽友だち部屋」を見てくださいね。

さて、私と朴梨恵さんのデュオグループ、DUO GRANDEですが、去年の春からは一度も活動出来ませんでした。このジョイント・コンサートがとても久しぶりの私たちの舞台になります。舞台に立ってどんな事を思ったり感じたりするのか想像もつきませんが、ワクワクしたり、ドキドキしたり、ホールの響きを感じたり(舞台の真ん中に行くまでの自分の足音の響きなども)、マスクに隠れて目しか見えないお客様からの表情を読み取ったり、これから演奏する曲の事を考えたりときっと頭の中は忙しくて、一つ一つ認識する前に次の事を考えながら、その一瞬一瞬を感じているのだろうと思います。

お客様のいる「本番」でしか叶わない事、私と朴さんの二人の舞台がお客様と一体になることで大きな空間に生まれ変わるその瞬間が、待ち遠しいです。

2019年度のアウトリーチ演奏の様子

コンサートまであと少し時間がありますが、感染が拡大している今、無事コンサートが開催され、安心してご来場いただける事を願っております。

まずは皆様のご健康を心からお祈りしております。そして会場で元気にお目にかかりましょう!

 

上敷領 藍子

★ジョイント・コンサートに向けて
①ピアニスト・田中咲絵
②ヴァイオリニスト・石上真由子

「Join us !~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」特設ページ

【第1期登録アーティスト】ジョイント・コンサートに向けて②(ヴァイオリニスト・石上真由子)

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京都コンサートホール

「Join us(ジョイ・ナス)! ~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」は2019年度よりスタートし、京都コンサートホール登録アーティストの3組と共に、初年度1年間、京都市内の小学校にてアウトリーチ活動を展開してまいりました。
その締めくくりとして2020年3月に予定していた「ジョイント・コンサート」は、新型コロナウイルス感染症の影響により公演中止となりましたが、2021年3月7日に1年越しで開催することとなりました。

本ブログでは、登録アーティストたち3組4名の昨年2020年の取組やコンサートに向けての思いを紹介しています。
第2回は、ヴァイオリニスト・石上真由子さんです。ぜひ最後までご覧ください。

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(C)Shuzo Ogushi

◇2020年について

これまで時間に追われる生活だったので、実は少しほっとしました。京都で2年半ほど続けている月1〜3回の自主公演(Ensemble Amoibeシリーズ)を、中止する決断をしないといけなくなった時は流石に気落ちしましたが、活動再開後や来年度やりたい企画などを温める時間だ!と割り切って、意外とポジティブに過ごすことができました。

思い切ってジム通いを始めてみたり、夜型の生活を朝型に切り替えてみたり、プールに行ったり、忙しくてしていなかったパンやケーキ作り、茶道のお稽古を再開したり。音楽面では、レパートリーの開拓や、これまでやりたくてもできていなかった細々とした練習をじっくりできました。

また、環境面については、思い切って東京に住居を構え、新生活を楽しんでいます。

2019年度のアウトリーチ演奏の様子

◇ジョイント・コンサートに向けて

Ensemble Amoibe公演や、ほか出演予定公演の中止を公表した時、ファンの方々から沢山のメッセージをいただきました。「公演の再開を心待ちにしています」「音楽家にとっては苦しい時だと思いますが、石上さんの演奏を生で再び聴けるのを楽しみに私も頑張ります」など、私のことを待ってくれている人がこんなに沢山いらっしゃるのだ と実感しました。またその温かいメッセージに励まされて、ここで留まってはいけない、これからの時代に沿った音楽家のあり方を模索しよう と勇気をいただきました。

活動自粛を経験して、 何事もなく公演が開催できる、お客さんの前で演奏できることの有難さを再認識しました。そして芸術はやはり生活に必要である ということも。

みなさまとの時間を大切に、そして今回のステージをしっかり楽しみたいと思います。みなさまにお目にかかれますのを心待ちにしております!

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ジョイント・コンサートに向けて①(ピアニスト・田中咲絵)

「Join us !~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」特設ページ

 

 

【第1期登録アーティスト】ジョイントコンサートに向けて①(ピアニスト・田中咲絵)

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アンサンブルホールムラタ

2019年度よりスタートした「Join us(ジョイ・ナス)! ~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」。

初年度の2019年度は1年にわたり、京都コンサートホール登録アーティストの3組(石上真由子さん、DUO GRANDE[上敷領藍子さん・朴梨恵さん]、田中咲絵さん)と共に京都市内の小学校をまわり、たくさんの子どもたちに生演奏を届けることができました。その締めくくりとして2020年3月1日に「ジョイント・コンサート」を開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により直前に公演中止となりました。
2020年4月からの2年目のアウトリーチ活動も中止を余儀なくされましたが、2021年3月7日に、1年越しでジョイント・コンサートを開催いたします(※チケットは完売)。

登録アーティストたち3組4名はこの1年間、自分の内面を見つめなおす時間として前向きに捉え、ネガティヴな感情とも向き合いながらも、新たな曲に取り組んだり、インターネットでの配信を試みたり、改めて楽譜を深く読み返したり、感染対策を施して自主演奏会を行ったりと、今できる音楽活動を精一杯重ねてきました。

そんなアーティストたちがコロナ禍で取り組んだことやコンサートに向けての思いを本ブログにて順番に紹介していきます。
まず1回目は、ピアニスト・田中咲絵さんからのメッセージです。ぜひ最後までご覧ください。

* * *

2020年は世界中の誰もが、思い描いていた未来とは全く異なる1年を過ごされたのではないでしょうか。

私も、当初2020年3月に予定されていたこのジョイント・コンサートが中止になるなんて、去年の今頃は夢にも思っていませんでした。出演予定だったコンサートが中止になるということ自体が初めての経験でしたし、周りの音楽家の皆さんのコンサートも軒並み中止になっていく光景をSNSを通して目の当たりにし、胸が痛みました。

しかし、個人的にはコロナ以前は常に何かに追われるようにスケジュールをこなしていたので、「これは一旦立ち止まって自分自身を充電するチャンス」と捉え、前向きな気持ちで自粛期間を過ごすことができました。

自粛期間には、この時にしかできないことをしようと思い、ピアノに関して言えば、これまでに取り組んだことのない作曲家の作品や、ずっと弾いてみたかった曲にいくつか挑戦しました。(7月に京都コンサートホールのYouTubeにアップされたメッセージ動画内で演奏しているシューマン=リストの献呈も新しく取り組んだ曲です。)

本番のステージで皆さんに演奏を聴いていただけることはとても幸せなことですが、じっくりと自分のためだけにピアノと向き合えた時間もとても尊く感じました。この期間が少しでも自分の肥やしとなっていればいいなと思います。

夏以降は、他の楽器の方の伴奏として動画収録にご一緒させていただく機会や、感染症対策を施した上でのコンサートや試演会など、これまでにない形での演奏の機会が徐々に戻ってきました。お客さんの立場としても、いくつかのコンサートを聴きにホールへ足を運びました。

今までの普通が普通でなくなってしまった今、このようなご時世でも音楽を聴きに会場へ足を運んでくださる方々、感染症対策を始め、コンサート開催までにあらゆる面でサポートをしてくださるスタッフの皆さんのおかげで、コンサートが成り立っているということを改めて実感しています。

そして何よりも、「生の音楽を演奏者とお客さんが同じ空気の中で共有できることの喜び」をとても強く感じました。

ジョイント・コンサートの開催が1年越しに決定し、チケット発売後すぐに売り切れ状態になったことからも、多くの方々がこのコンサートを楽しみにしてくださっているんだなと、とても嬉しく思っています。このコンサートが今度こそ無事に開催され、皆さまと楽しいひと時を過ごすことができますよう、私も心から願っています。

★「 Join us !~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」特設ページはこちら

「北山クラシック倶楽部2021」前半セット券のご案内

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京都コンサートホール

「北山クラシック倶楽部」は、海外トップアーティストによる世界水準の演奏を、京都コンサートホールの室内楽専用ホール「アンサンブルホールムラタ」で体感していただくコンサート・シリーズです。

アンサンブルホールムラタ

この度、2021年のシリーズ前半3公演(4月~7月)のラインアップが出揃いました!今回の来日に合わせて組まれたトリオや、いま注目のトリオなど、3組の「トリオ(三重奏)」が登場します!

京都コンサートホールではこれらの公演をお得に聴いていただけるセット券(限定100セット・約15%割引)を販売いたします。

ご予約・ご購入時にお好きな座席をお選びいただく、全公演共通座席「マイシート」制のチケットです。

演奏者の息遣いまで聞こえてくる濃密な音空間で、世界レベルの演奏をご堪能ください。


国際的チェリストと極上のトリオ
ミハル・カニュカ(チェロ)ピアノトリオ・プロジェクト
伊藤恵(ピアノ) 漆原朝子(ヴァイオリン) ミハル・カニュカ(チェロ)

ミハル・カニュカ
伊藤恵©大杉隼平
漆原朝子©Naoya Yamaguchi, Studio Diva

プラハの春 国際音楽コンクール会長でプラハの春 国際音楽祭の芸術委員でもあるチェコが誇る名チェリスト、ミハル・カニュカ。数々の国際コンクールで入賞を果たし、世界各地でオーケストラのソリストや、ソロリサイタル、室内楽など幅広く活躍しています。
そのカニュカが東京藝術大学教授でもある日本を代表する2人の国際的名手たちと展開するピアノ・トリオの世界をお楽しみください。ベートーヴェン、シューマン、ブラームスとクラシックの王道ともいえる作曲家たちの作品を取り上げます。

◆公演詳細◆

[日時]2021年4月12日(月)19:00開演(18:30開場)

[出演]
伊藤恵(ピアノ)
漆原朝子(ヴァイオリン)
ミハル・カニュカ(チェロ)

[プログラム]
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調 作品 70-1「幽霊」
シューマン:ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 作品 110
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第2番 ハ長調 作品 87

[一回券]
全席指定 一般:6,500円 *会員:5,800円
*会員先行発売:1月22日(金)/一般発売:1月29日(金)

[主催]コジマ・コンサートマネジメント


アンサンブルの愉しみ
シェレンベルガーと仲間たち

ハンスイェルク・シェレンベルガー©Gerhard Winkler
赤坂智子
津田裕也©Christine Fiedler

オーボエ、ヴィオラ、ピアノそれぞれの楽器の魅力に触れていただけるプログラムです。
アメリカでヴァイオリニストとしても活躍したレフラーと、ドイツで指揮者としても活躍したクルークハルトによる隠れたロマン派の名作を取り上げます。
元ベルリン
フィルハーモニー管弦楽団首席オーボエ奏者で、京都市立芸術大学の客員教授を務める名手シェレンベルガーが共演者として選んだのは、国際的活躍を重ねる日本人奏者2名。ヴィオラ奏者の赤坂智子とピアニスト津田裕也が加わり、珠玉のアンサンブルをお届けします。

 

◆公演詳細◆

[日時]2021年5月18日(火)19:00開演(18:30開場)

[出演]
ハンスイェルク・シェレンベルガー(オーボエ)
赤坂智子(ヴィオラ)津田裕也(ピアノ)

[プログラム]
レフラー:2つの狂詩曲
シューマン:民謡風の5つの小品 作品 102より
クルークハルト:葦の歌 作品 28       ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 U25:2,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:2月6日(土)/一般発売:2月13日(土)

[主催]ヒラサ・オフィス


アンサンブルの極みを追求し続ける新世代のピアノトリオ
オリヴァー・シュニーダー・トリオ

オリヴァー・シュニーダー・トリオ©Raphael Zubler

スイスの実力派ピアニスト、オリヴァーシュニーダー。チューリッヒトーンハレ管弦楽団の第一コンサートマスターのアンドレアスヤンケと首席チェリストのベンヤミンニッフェネガーと共に気鋭のピアノトリオを結成しました。
2012年のデビュー以降、世界各地の音楽祭や著名なホールへ出演するほか、録音にも力を入れており、2017年にリリースされたベートーヴェンのピアノ三重奏曲全集も高い評価を得ています。アンサンブルの極みを追求し続ける彼らの演奏をお楽しみください。

◆公演詳細◆

[日時]2021年7月13日(火)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調 作品 11「街の歌」
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品 8(1891年改訂版) ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:3月20日(土・祝)/一般発売:3月27日(土)

[主催]日本アーティスト


★★お得な3公演セット券(限定100セット!)★★

★セット料金(全席指定)
12,000円 <約15%お得!>

★販売期間
*会員先行期間  2020年12月12日(土)~12月18日(金)
一般販売期間  2020年12月19日(土)~2021年1月15日(金)

*会員…京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)・京響友の会の会員が対象です。

※出演者や曲目など内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

【3つの時代を巡る楽器物語 第2章】小倉貴久子インタビュー(後編)

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京都コンサートホール

10月25日の『3つの時代を巡る楽器物語』第2章の公演開催まで、あと残りわずかとなりました。ご出演いただくフォルテピアノ奏者の小倉貴久子さんのインタビュー後編をお届けします。今回は、公演の聴きどころをお話いただきました。ぜひ最後までご覧ください!

――今回の演奏会では、小倉さんが所有されているフォルテピアノ(1845年製 J.B.シュトライヒャー)を使用させていただきます。ベートーヴェンと「ゆかりがある楽器」ということですが、詳しく教えていただけませんか。

シュトライヒャーは当時のウィーンで最も人気実力を誇った老舗メーカーです。ウィーン式アクションというドイツ系列の作曲家たちに支持された発音メカニズム(*1)は、シュタイン(*2)が発明して、その楽器をベートーヴェンも若い頃演奏していました。シュタインの娘ナネッテも素晴らしい女流ピアノ製作家になり、アンドレアス・シュトライヒャーと結婚して姓がシュトライヒャーになりました。ベートーヴェンとはプライヴェートでも大変親しかった女性です。ナネッテの息子ヨハン・バプティスト・シュトライヒャー(以下J.B.シュトライヒャー)もピアノ製作家になり、ベートーヴェンもJ.B.シュトライヒャーの製作するフォルテピアノに大きな興味をもっていました。この演奏会で使うフォルテピアノは、晩年のベートーヴェンが欲した6オクターブ半の音域をもち、ダイナミックな音響と歌うことを得意とする音色、皮巻きのハンマーによる繊細なイントネーションが可能な楽器です。この楽器は、ベートーヴェンの死後18年経過後に製作された楽器ですが、1824年にJ.B.シュトライヒャーのピアノを弾いたベートーヴェンが、将来を予見し望んだ楽器に近いのではないかと想像しています。

(*1) 跳ね上げ式と呼ばれる、軽いハンマーを梃子の原理で跳ね上げ打弦するというシンプルな構造。シュタインのフォルテピアノの音域は5オクターブで、タッチは浅く俊敏で、軽やかで華やかな音楽が奏でられる。

(*2) ヨハン・アンドレアスシュタイン:1728年~1792年、ドイツ生まれのピアノ製作家。ピアノ製作史における重要な人物として知られる。

今回使用する1845年製J.B.シュトライヒャー(製造番号3927)
1835年と1839年、オーストリア皇室から金メダルを受賞したことが鍵盤表面板に描かれている

――今回はベートーヴェン後期のソナタ第30番~32番を演奏していただきます。これらの曲の聴きどころを教えてください。

ベートーヴェンのピアノソナタはピアニストにとって、とても大切な作品です。ベートーヴェンはピアノの名手だったので、ボン時代の《選帝侯ソナタ》(*3)ですら既に超絶的な技巧が満載です。初期、中期では波乱の人生が投影された、常に前人未到の世界が描かれた革命的な一曲一曲は、どれもが個性豊かな作風となっています。そんな超人的なベートーヴェンですが、プライヴェートな事件やさまざまな要因が重なり、スランプ期に襲われます。しかし、その時期を経た後に到達した後期の世界では、追随する作曲家のいない孤高の世界が描かれます。それは現代の私たちにとっても大きな慰めとなり勇気を与えられ、人生の讃歌と思えるような素晴らしいメッセージに溢れているのです。

(*3) ベートーヴェンが少年期時代の1782年から翌年にかけて作曲した3曲からなるピアノ・ソナタ。作品番号はつけられていない。

――ナビゲーターにはベートーヴェン研究で著名な平野昭氏をお迎えします。平野さんとは最近も共演されていましたが、どのようなことを楽しみになさっていますか?

平野先生とは今までにもレクチャーコンサートや講座などでご一緒させていただいています。私もお話に参加して、ステージでピアニストの勝手な妄想をぶつけて盛り上がる場面も。平野先生の幅広い知識とベートーヴェン愛が、コンサートの楽しみを倍増させてくださること請け合いです。どうぞお楽しみに!

――京都コンサートホールは感染症防止対策を徹底し、万全の体制でお客様をお迎えします。最後に、当日ご来場のお客様に向けてメッセージをお願いいたします。

このような不安を感じられる状況の中、演奏会にお越しいただけるみなさまには感謝いたします。京都コンサートホールでは感染症防止対策を徹底していますので、演奏会中はゆったりとくつろぎながらお楽しみください。親密さはフォルテピアノの特色です。かたや宇宙的でもあるベートーヴェン後期の作品。特別な時間が共有できることを願っています。

みなさまと会場でお会いできますことを楽しみにしています。

***チケットは残りわずかとなってきました。公演の詳細はこちら♪

https://kyotoconcerthall.org/calendar/?y=2020&m=10#key20554