オルガニスト 近藤岳氏 特別インタビュー(オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.61「オルガン・ポップス」)

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オルガン

2月24日午後2時開演「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.61 『オルガン・ポップス』」に、ミューザ川崎シンフォニーホール専属オルガニストの 近藤岳(こんどう・たけし)氏が登場します。
彼が今回選んだプログラムのテーマは、ずばり「宇宙」。
時代・国・ジャンルの垣根を越えて、果てしなく続く「宇宙」をパイプオルガンで描きます。
華麗な演奏技巧で紡がれる雄大な宇宙のドラマは必聴必見です。

さて、京都コンサートホールには2度目の登場となる近藤氏。
皆さまに近藤氏の魅力をより知っていただくために、今回さまざまな質問をぶつけてみました。オルガンのこと、当日のプログラムのこと、そして趣味のことなど…。
どの質問にも真摯に答えてくださった近藤氏、とても楽しいインタビューとなりました。

©青柳聡

――近藤さん、こんにちは!2010年9月に京都コンサートホールでオルガン・コンサートを開催してくださいましたね。それから8年弱経つわけですが、今日はその時にお伺い出来なかった色々なお話をお聞きしたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。
それではまず、近藤さんがオルガンを始められたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

近藤岳氏(以下敬称略):オルガンを弾き始めた直接のきっかけは、僕が藝大(東京藝術大学)の作曲科に入学してからでした。

――それは少し意外な感じがします。作曲科って作曲の勉強ばかりするのだと思っていました。

近藤岳:いえいえ、専攻の作曲以外にも、「副科」といって専攻以外の楽器を履修することが出来るのです。迷わず副科はオルガンを選択しました。直にパイプオルガンに触れたのはその時が初めてでした。

――それまでにもオルガンには親しみがあったのでしょうか?

近藤岳:オルガンの響きに初めて触れたのは、小学生の時に家にあった「クラシック名曲選」なるカセットテープの中の、J.S.バッハの有名な「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」でした。トッカータ冒頭のあの鮮烈なユニゾンメロディーに、この世のものとは思えない「怖さ」を感じ、でもそれでいて、どこか気になるような、また聴きたくなるような、どうしたらあんな音が出るのかなぁ…とぼんやり考えていました。
しかし、高校に入ってからは作曲の勉強で頭が一杯になり、トッカータの怖さはすっかりどこかへ飛んでいってしまいました。
時は巡り、大学入学後、2年生で副科オルガンが選択できるようになり、いよいよオルガンと出逢うチャンスがやって来ました!
藝大のオルガン教室の一つに、三段鍵盤のやや大きめの・・・・・・そう、京都コンサートホールのオルガンと同じクライス社が製作した楽器がありますが、レッスンで初めて触れた時、何とも言えない不思議な感覚を覚えました。
鍵盤を弾くのにパイプから音が出るという、鍵盤楽器なのに管楽器という面白さ!
ただ、ピアノのように、音の強弱をタッチで表現できない難しさと複雑さを同時に味わいました。自分の意のままに演奏出来ないのです。
弾いてみたい曲が思いのままに弾けない…。どうしてだろう?と強く感じて、もっと上手に弾けるようにならないものか?と悶々としていました。

京都コンサートホールのパイプオルガン

――あらまぁ、ファーストコンタクトはなかなかほろ苦いものだったのですね。

近藤岳:そんなある日…あれは作曲科4年の時でしたね、作曲のレッスンで自作曲のピアノパートを恩師に聴いて頂いていた時のことです。恩師のさりげない一言が僕を思わぬ方向に突き動かしました。
「君には演奏家の気質もあるよ、作曲はもちろんだけど、今後演奏の勉強も何か本格的にした方がいい。」
…確かにピアノは好きでたくさん弾いていましたが、学校にはプロ級のピアノ科の学生がわんさかいて、その凄さを目の当たりにしていましたし、ピアニストなんて到底無理だと感じていました。
と同時に、なぜだか「オルガンをしっかり勉強するのはどうか?」と強い衝動に駆られたのです。新しい未知の世界に突然光が差し込んだように、「やりたい、やらなきゃ!」と思ったのです。それが大きな契機となり、当時副科オルガンを師事していた今井奈緒子先生にご相談し、作曲科卒業後に別科オルガン専攻を受験して、今度はオルガン科の学生へと転身しました!いよいよそこから本科的なオルガンの勉強が始まりました。

――近藤さんのお話を聞きながら「これが縁というものなのかな」と思いました。まぁ、それを「必然」とも言うのですけど…。そこまで近藤さんを突き動かしたパイプオルガンの魅力ってどこにあるのでしょうか?

近藤岳:やはりパイプからほとばしる「持続音」を両手両足を駆使して、何声部も同時に表現できることでしょうか。こんな楽器はオルガン以外無いように思います。全身を使って「歌」を歌う、楽器と空間と一体になって歌を歌えることが僕にとって一番の魅力です。またそれらの歌を、実に様々な音色を伴って表現できることもオルガンの醍醐味だと感じています。

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――ところで、近藤さんが京都コンサートホールで演奏してくださるのは実に8年弱ぶりになりますね。
わたしたちのホールの楽器はいかがでしょうか?

近藤岳:もうずいぶん前に伺ったので、次回2月に演奏させて頂く時には新たにどんな印象を受けるか今から楽しみなのですが、初めて伺ってリハーサルをさせて頂いた時は、音色(ストップ)の数も大変多くて、さてどうやって理想の音を作り上げようか?とワクワクしたのを覚えています。目の前にたくさんの食材が置かれていて、メニューを考えているうちに、脱線して次のメニューが思い浮かぶ…というような(笑)。
また、楽器を正面からご覧になってお分りかと思いますが、各鍵盤ごとのパイプ群が演奏台よりも右側に多く集まり、アシンメトリーに配置されているので、かなり面白いパイプの鳴り方をするなぁ!と思ったのを覚えています。
楽器の特性としては、ストップも多く、大きな響きのシンフォニックな楽曲が得意なのでは?と当時感じましたが、ひょっとしたら2月に伺う時にはまた違う印象を持つかもしれませんね。
久々に楽器と対面して、リハーサルで個々のパイプをゆっくり味わいながら、その時感じる直感やニュアンスを大事にしつつ、レジストレーションに反映してみたいと思っています。

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――わたしたちも『近藤さんはどんな音色を作ってくださるんだろう』と今から楽しみにしているんです。というのも、今回近藤さんが組んでくださったプログラムが面白いからです。

近藤岳:この度2回目となるこのコンサート出演のご依頼を頂いた時に、新たに「オルガン・ポップス」と銘打たれており、「もしや本当にポップスを弾かなければならないのか?」と思い、ビビっておりました。実際、弾くことは出来るのですが、よほど見事に編曲演奏しないとパイプオルガンでポップスは似合わないのです…サマにならない、と言った方が良いでしょうか。何で無理してオルガンでポップスを弾くんだろう、ギターやドラムが入った編成で聴いた方がよっぽどいい、となってしまっては元も子もないからです。

――いやぁ、なんだか悩ませてしまったようで申し訳ないですね(苦笑)

近藤岳:しかし、「オルガンで聴いたら良さが倍増!」とか「オルガンの響きが実はとても合う!」という楽曲ならば上手くいくかも知れない…と思い、今専属オルガニストを務めているミューザ川崎シンフォニーホールの公演企画で、これまでに何度か演奏して好評を頂いたJ.ウィリアムズの「スター・ウォーズ」のメインテーマを入れてみようかな、というところからプログラミングを始めました。映画をご覧になったり、このテーマ曲をお聴きになった方もたくさんいらっしゃいますよね。

――超有名曲ですからね。お客さまは大喜びだと思います。

近藤岳:また、「ポップス」というネーミングを「ポピュラリティー」という言葉に置き換えて考え、ぜひ一度は聴いて頂きたいオルガンの名曲をプログラムに含めることも念頭に置きました。そして、そこから浮かび上がってきたのは、いっそ「天体」や「宇宙」になぞらえた楽曲を配して、コンサートの初めから最後まで、皆さん思い思いにストーリーを描いて頂けるようなことが出来ないかな?というアイデアでした。
また同時に、多種多様なオルガンの響きを存分にお楽しみ頂きたい!という欲張りなアイデアも浮かんだり…。最終的に出来上がったプログラミングでは、例えばバロック時代のブクステフーデからバッハの音楽的なつながりをご紹介したり、フランス近代のヴィエルヌが描く美しい「月の光」と現代のグバイドゥーリナの前衛的な「光と闇」が、それぞれの音響と手法で光と影の妙なるコントラストを浮かび上がらせたり…と、バロック〜現代の曲想の振れ幅はもちろん、緩急を大いに織り交ぜて、およそ300年の時空を音で自由に行き来し、旅をするようなプログラムに至りました!
ちなみに、オープニングの「太陽への讃歌」とエンディングの「スター・ウォーズ」の終盤が同じト長調なのですが、両方とも壮大な響きで、実はコンサートのプロローグとエピローグに見立てているのも、ちょっとした工夫です。
皆さんの琴線に少しでも触れる曲や、オルガンの響きがあれば…と願っています!

2010年9月25日の公演から(京都コンサートホール)

――良いことを教えていただきました、オープニングとエンディングに注目しますね。楽しみがまたひとつ、増えました!さて、プログラムの中には近藤さん作曲の《きらきら星変奏曲》が組み込まれています。これはどのような作品ですか?

近藤岳:この変奏曲は、2003年に横浜みなとみらいホールからの依頼で、オルガンの音色紹介になるものを…というご依頼で作曲したものです。懐かしいですね。
ホールオルガニストの三浦はつみさんによって初演され、非売品ですがホールのオルガンCDに収録されました。皆さんおなじみの「きらきら星」のメロディーを用いて、代表的なパイプの音色のキャラクターをそのまま各変奏の曲想に反映して作曲しました。
かなり昔の作品なのですが、僕の作品の中で一番多くのオルガニストに演奏されている曲かもしれません。初めてオルガンの響きを耳にするお客様も音色を楽しく聴き比べられるようで、そこが様々なオルガニストに取り上げて頂ける大きな理由のようです。
今では日本のみならず欧米でも演奏される機会も多く、嬉しいような恥ずかしいような…。
ただオルガニストの皆さんがおっしゃるのは、楽しい曲想に反して弾くのが難しい…と(笑)。
京都コンサートホールでも演奏して頂いたことが何度かあるとお聞きしており、今回自身による演奏も実に数年ぶりで、身が引き締まる思いです!
オルガンの様々な音色を味わって頂きたいのと、プログラムのアイデアである「天体・星」繋がりということもあり、半ば強引にプログラムに入れてしまいました(笑)。

――作品は演奏機会に恵まれてこそ存在意義が生まれると思いますので、たくさんの方々に演奏されているのはとても幸せなことですよね。
…と、ここまでずっとオルガンの話ばかり聞いてきましたが、このあたりでチョット違う話題を入れてみたいと思います。近藤さんが最近夢中になっている事や物について、ぜひ教えていただきたいです。

近藤岳:そうですね・・・・・・週に一度は美術館巡り…などとオシャレなことを言いたいところですが、実際は寝る前一時間の、ベッドに潜り込んでスマホ片手にYouTube、です(笑)。

――おっ、YouTubeですか…(笑)

近藤岳:はい。見るのはもっぱらクラシックやオルガン動画…と言いたいところですが、ほとんど見ません。いつも見るのは、お笑いと昭和のバラエティとか歌謡曲など。寝る前に大笑いしたり口ずさんだりして、気がついたら寝ています。
あと、なぜか動物の動画を定期的に見てしまいますね…特に犬やハシビロコウの動画なんかを見てます。授業中に学生に話すと笑われちゃうんですけどね!
皆さんはいかがでしょうか?何か面白い動画があったら、ぜひこっそり教えて下さい!

――お笑い?!昭和のバラエティ?!きっと学生さんたちは、オルガンの前の近藤さんとのギャップが激しすぎて笑っちゃうんでしょうね。皆さん、面白動画があれば、ぜひ近藤さんに教えてさしあげてください(笑)。
いや~とても楽しいインタビューでした。お忙しいところ、誠にありがとうございました!2月24日のコンサートを心待ちにしています。

2017年12月26日、京都コンサートホール事業企画課インタビュー (た)

NYP公演(3/11) 特別インタビュー「ヴァイオリニスト五嶋龍に聞く」

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インタビュー

来年3月11日、京都コンサートホールにニューヨーク・フィルハーモニック(NYP)がやってきます。
京都での公演はなんと16年ぶり。指揮者に、2018/19シーズンからNYP音楽監督に就任するヤープ・ヴァン・ズヴェーデン、ソリストにはヴァイオリニストの五嶋龍を迎え、メンデルスゾーンの《ヴァイオリン協奏曲ホ短調》とストラヴィンスキー《春の祭典》を演奏します。
NYPの「伝統」と「革新」をイメージさせるようなメンバーとプログラムで、史上最強・最高の「ニューヨーク・サウンド」を披露します。

さて、今日はNYP京都公演を記念して、ヴァイオリニスト五嶋龍のインタビューをみなさまにお届けします。
コンサートにボランティア活動、テレビ出演など、とてもご多忙でいらっしゃる五嶋氏ですが、お話を伺っていて「どんなことからでも学びたい」というアクティブな姿勢でいらっしゃることに驚かされました。

――龍さんこんにちは!京都コンサートホールです。来年3月のNYP公演ではソリストとして京都に来てくださいますね。
さて、当ホールに龍さんが初登場された演奏会のチラシを今日は持参してみました。この演奏会です。龍さんは当時のことを覚えていらっしゃいますか?

五嶋龍ヴァイオリン・リサイタル(2006年)

五嶋龍さん(以下敬称略):おー、ずいぶん昔ですね(笑)
もう11年前か。印象にないというよりも、あまりにも昔で覚えていないですねぇ。すいません。

――いえいえ、そうですよね。京都コンサートホールには、「五嶋龍ヴァイオリン・コンサート2008年」以来となりますから、来年ホールにいらっしゃる時には10年ぶりのご登場となります。今回、NYPと共演なさいますが、龍さんにとって「NYP」はどのような存在ですか?

五嶋龍ヴァイオリン・コンサート2008 チラシ

五嶋龍:NYで生まれ育った僕にとって、NYPは憧れの存在でした。なので、共演出来るなんて夢の世界です。いまだにそれをまだ自覚出来ていないというか、不思議な感覚です。

あともう一つ、不思議なことがあります。それは「新生NYP」になったということですね。
NYPはずっと憧れていた存在で、やっと共演出来るという感じなのですが、僕が知っているNYPとはぜんぜん違う。オーケストラメンバーも若い世代ばかりですし、何より音楽監督が今度変わりますからね(※来年3月に五嶋氏が共演する指揮者は、次期NYP音楽監督であるヤープ・ヴァン・ズヴェーデン氏)。
だから色々な意味で、NYPのイメージはがらっと変わるでしょうし、新しいアイデンティティが見えてくるでしょうね。
そう考えると、今度の日本公演はとても楽しみです。できたてほやほやの「NYP」を味わえるなんて、日本のお客さまも楽しみでしょうね。僕もとっても楽しみです。

NYP公演チラシ(2018年3月11日・京都コンサートホール)

――プログラムはメンデルスゾーンの《ヴァイオリン協奏曲ホ短調》ですね。
五嶋龍:そうです。僕、実はこの1年半の間にメンコンをたくさん演奏するんですよ…10回くらい?もちろんこれまで、もう何回もメンコンを演奏してきたんですけど、僕は毎回違うメンコンを演奏するような気持ちで演奏しています。

――同じ曲なのに「毎回違うメンコン」なんて、可能なのでしょうか?
五嶋龍:はい。その秘密はおそらく、僕の周囲の環境と関係があるかもしれない。
うちは音楽一家でしたけど、友人や親友はそうじゃなかった。だから僕も、彼らと近いところからクラシック音楽を眺めていました。
だからクラシック音楽だけじゃなく、他のジャンルの音楽も面白いと思ってるんです。
たとえばポップスはいつも新しいものをクリエイトしているじゃないですか。もちろんクラシック音楽においても、過去にはみんながクリエーターだったんですけど、モーツァルトとかメンデルスゾーンの曲を弾くとなると「楽譜を読んでそのまま再現しているだけじゃないか」ってなる。
でも、突き詰めて考えると「過去のものは再現できない」んですよ。だって楽器も環境もホールも違う、知っているものそのものが違うんですから。例えばね、時間の流れ自体が違う。
いまはもう手紙はなかなか書きませんし、そのかわりEメールでやり取りしますからね。
だから昔の曲をそのまま再現しようとすれば「古びた歴史」を語っているだけになっちゃうんですよ。

生きた音楽をしようと思うと、相当なクリエイティビティが必要になってきます。メンデルスゾーンの意図をそのまま伝えるのではなくって、彼の先を越えていかなければいけない。
僕が楽器を介して「メンデルスゾーン」を伝えているうちに、自分がクリエイターになってきます。最終的に「メンデルスゾーンもお手上げ!」みたいにならないといけない。

でね、それが一部の人にしか伝わらないような演奏だったらダメなんです。さっき言ったみたいに、僕の友達は音楽をしていない人が多かった。そういう人こそが「この音楽いいね、楽しいね」って言うような、そういう音楽がしたいんです。
だって、クラシック音楽ファンの人が「クラシック音楽っていいね」って言っても普通でしょう?内部から外部に発信するのではなく、外部から発信することが大事だと思う。
僕は子供の頃からメンコンを弾いてきましたが、そこで止まりたくない。「もしかしてこうじゃないのかもしれない」って全部ひっくり返してみようと思って、新しい気持ちで演奏してみると、全然違うものが出て来ます。
「あ、メンコンってこんなに新鮮に出来るもんなんだな」っていつも思いますね。

五嶋龍氏

――なるほど。とても興味深いお話を伺いました。そういう音楽に関することは、何をしているときに考えていらっしゃったり思いつかれたりしているのですか?
五嶋龍:リハーサル中でしょうか。前日になって発見することも多いです。もちろん、ライブ中に発見することもあります。「こういうところを押していきたい」とか「強調していきたい」なんて考えていますね。
あとは、音楽以外のことを楽しんでいるときに発見することも多いです。
例えば誰かの演説を聞いているときに「こういうやり方もあるんだな」とか、読書をしているときに「こういう言葉遣いで、こんなメッセージを届けることが出来るんだな」とか。それをパラレルに音楽へリンクさせるのです。

それから僕の場合、レストランに行った時に発見することが多いですね。
料理でね、たまに衝撃的なものってあるじゃないですか。「これは一体何だ!」みたいな。
わかりやすいんだけど複雑で、深くって、見た目も味も、全て「これって凄いな!」っていう料理、あるでしょう。
数日経って「あれってやっぱりすごかったな、どうしてあんな味だったんだ」って考える時があります。
あのトリックは何だ、コツは何だ、構造はどうなってんだ、と。
それと全く同じことを音楽でするんです。

――たしかに、わたしも音楽と料理は似ているなと思います。繊細さとか大胆さとか、そういうところに共通点を感じますね。
ところで龍さんは、昔から空手をなさっていて有段者でいらっしゃいますね。また大学では物理学を専攻されていました。そういうものと音楽がつながる時はありますか?
五嶋龍:ありますね!物理と音楽はミステリーの部分で共通点を感じますし、空手だったら表現の仕方ですとか、気持ちの問題で共通点を感じる。
特に空手に関しては、最近になってやっと共通点を感じるようになったんです。
例えば組手をしている時、試合前やその途中で気合を入れなければいけない時、どれだけ自分を燃やしていけるかが大事になってきます。こういう面においても音楽と共通していますよね。演奏会前はやっぱりちょっと野性的にならないといけませんしね。
そうじゃないと人前に出られませんから。

あとは、計算的な美しさとは別に、計算外で思いもしなかった結果が出るときの美しさもある。
例えば空手でいうと、相手に対して計算通りこういうふうに誘ったら手がこういうふうに入って、こう受けて、顔面をぶん殴る、みたいな(笑)。
あまりガードを固くしてたら隙がないから攻撃されない。だから隙を作るんです。
隙を作って相手を誘うんです。誘ってバコンと殴る(笑)。うまくいったときって嬉しい、「やったー」ってね。これは漫才とかでも一緒だと思うんです。隙を見せて笑わせて、そしてオチをつくる。これね、ベートーヴェンもよくやるんですよ。
でもこれは計算通りのもの。
たまに、自分が計算していない技が出て、うまく入る時がある。やっぱり嬉しい。そういう楽しみって音楽にもありますよ。
ライブ中に「あれ、こんなことも出来るかな?じゃ、試してみよっかな」って思う時があります。
もちろん失敗してしまうときもあるけど、うまくいったときはそのリスクを取って良かったなと思いますね。

©Ayako Yamamoto/ UMLLC

――ほう・・・・・・。龍さんはお料理をされたり、漫才を見たりもされるのですか?
五嶋龍:そういう発見が大好きなんですよ!やっぱり楽しみながら勉強したいし、楽しめるときに楽しみたい。
でもね、ちょっと残念なところもあるんです。例えばロック・コンサートに行きますよね。楽しいんですけど、どこかで「見習いたい」とか「使えないかな」って思ってしまう自分がいる。完璧にリラックスして物事を楽しめないのです。
映画を見ていても何かを食べていても「何かを考えてしまう」。
だから、たまに自分に言い聞かせるんですよ、「何も考えずに楽しもう」って。常に頭が回転していますから。

――いやはや、龍さんの話は大きな刺激になります。なんてアクティブなんでしょう。
若い人たちにとっては、龍さんのような存在は憧れだと思います。
来年3月の演奏会がますます楽しみになってきました。素晴らしいメンデルスゾーンを心待ちにしています!
今日は忙しい中、ありがとうございました!

2017年9月1日京都コンサートホール事業企画課インタビュー@箕面市メイプルホール(た)

【公演レポート】第7回関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバルIN京都コンサートホール (9/24)

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京都コンサートホール

秋晴の爽やかな日曜日、第7回目となる『関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバルIN京都コンサートホール』が開催されました。

関西の8つの音大・芸大(大阪音楽大学・大阪教育大学・大阪芸術大学・京都市立芸術大学・神戸女学院大学・相愛大学・同志社女子大学・武庫川女子大学)がこの京都コンサートホールに集って開催される“音大フェス”。
今年もオーケストラと合唱によるエネルギーに満ち溢れた演奏を聴かせてくれました。

開演前、会場となった大ホールのホワイエには参加大学によるブースが設置され、音大・芸大への進学を目指す中高生で賑わいました。

また、今年はロビーコンサートを開催!大阪音楽大学(サクソフォン・カルテット)と大阪教育大学(金管アンサンブル)の学生が開演前のひとときを音楽で満たしてくれました。

大阪音楽大学 サクソフォン4重奏
大阪教育大学金管11重奏

さて、プログラム前半はモーツァルト作曲の《レクイエム》。「レクイエム」とはカトリック教会で“死者のためのミサ曲”。会場は厳かな空気に包まれました。

今年も指揮を務めてくださった秋山和慶先生。
第1回目の公演(2011年)から毎年、お忙しい合間を縫って関西まで指導に来てくださり、厳しくも優しい心で学生たちの成長を温かく見守ってくださっています。

レクイエムでソリストを務めた4名。音大フェスでは毎年合唱のソリストをオーディションによって選出しています。今年は5月半ばにオーディションが開催されましたが、オーディション内容が発表されたのはなんと3月!とても早くからこの日のために頑張ってきました。

本番の日を迎えるまでの約7ヶ月間、とても長く辛い日々だったと思いますが、この経験を糧にさらなる活躍を期待しています!

プログラムの後半はイタリアの作曲家、レスピーギによる交響詩《ローマの噴水》と《ローマの松》。ステージ上には数々の打楽器やハープに加え、ピアノやチェレスタ、オルガンなどの鍵盤楽器も登場!大編成の作品が聴けるのも音大フェスならではです。

《ローマの噴水》は「ローマ3部作」の中でも最も情景描写が素晴らしい作品。木管楽器やヴァイオリン、チェロの美しく繊細なソロに会場のお客様もグッと引き込まれていました。学生と言えど、さすがオーディションで選出されたメンバーですね!
※音大フェスでは各曲の管打楽器の首席はオーディションで選出しています。

つづいて《ローマの松》。
こちらも、オーディションで選ばれた各楽器の学生が見事なソロを聴かせてくれました。

今回会場にお越しくださった方はどこか遠くから鳥(ナイチンゲール)の鳴き声が聴こえたかと思います。普段は録音を流すことが多いのですが、音大フェスでは打楽器の学生が、3階バルコニーから“鳥笛”を使って見事にイタリアの松並木を再現しました(鳥笛の写真を取り損ねてしまったのが非常に残念です…)。

そして、この曲の聴きどころはなんといってもバンダ隊!(※バンダとは、オーケストラから離れた位置で演奏する小規模のアンサンブルのことです)

京都コンサートホールのバンダ・ボックスから重厚なファンファーレが響き渡りました。

いよいよ演奏会もクライマックス!
地底から鳴り響くようなオルガンの音に導かれ、壮大なラストへと向かいます。
演奏している学生も、客席のみなさんも、この日一番の高揚感に包まれたのではなかったでしょうか。

音大フェスの醍醐味は、普段は異なった大学・専攻で学ぶ学生たちがひとつのオーケストラ・合唱団を結成しみんなで音楽を作り上げていくところにあります。

毎年5月頃にオーディションでメンバーを選抜、8月末より練習がスタート。8つの大学から学生が集まるので最初は音も心もバラバラです。でも、練習を重ねるにつれオーケストラが一体となっていくのが手に取るように感じられます。また、練習では秋山先生をはじめ、各大学の先生方も大集合!学生にとってもとても貴重な学びの機会になっています。

これからの音楽界を担うであろう音楽家の卵たちが、音大フェスを通して、ここ京都コンサートホールから大きく羽ばたいていってくれることを願います!今後とも関西の音大生・芸大生をよろしくお願いします!京都コンサートホールも学生の皆さんを全力でバックアップしていきます。

おまけに。
終演後、ホワイエでのレセプションでのひとコマ。みなさん、充実感に満ちたとても良い笑顔!(や)

【公演レポート】第21回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート (9/17)

投稿日:
京都コンサートホール

9月17日、無事に21回目となる「京都の秋 音楽祭」が開幕しました。
――なぜ「無事に」を強調したか・・・?それは開会記念コンサート当日に台風18号が日本列島を横断したからです!
直前までヒヤヒヤしましたが、幸運なことに雨にも風にも遭わず、たくさんのお客さまと一緒に音楽祭開幕を祝うことが出来ました。
ご来場くださったお客さま、誠にありがとうございました。

前置きはさておき、今日は開会記念コンサートの様子をみなさまにお届けします。
まずは当日のプログラムから!
(演奏は京都市交響楽団、指揮は同楽団常任指揮者の広上淳一。ピアノ独奏はルーカス・ゲニューシャス)

すぎやまこういち:序奏MIYAKO (2016)
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調  op.21
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 op.27

開幕に先立ち、門川大作京都市長が開会宣言を行いました。
これからおよそ2ヶ月間続く音楽祭のオープニングとあって、門川市長の挨拶にも熱が入ります。

市長による開会宣言

市長の開会宣言後、間髪入れずに始まった曲は、すぎやまこういちの《序奏MIYAKO》。
この曲は、2016年に20周年を迎えた「京都の秋 音楽祭」のために書かれたものです。
昨年の開会記念コンサートの際にもこの曲が演奏されたのですが、今年は「21回」という新たな局面に入った音楽祭の未来を意識して演奏されました。
冒頭の力強いファンファーレは、「京都の秋 音楽祭」の幕開けにぴったり。

次に演奏された作品は、ショパンの《ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調》です。
この曲はショパン20歳の時のもの。その瑞々しい曲調や切なくも美しいメロディからは「青春の輝き」を思い起こさせます。ショパンの甘い初恋や心の葛藤が目に浮かぶような作品です。
舞台へ颯爽と現れたゲニューシャスは、ピアノの椅子に腰掛けたあと、独奏パートが現れるまで天を仰ぎました。長い序奏のあいだ、おそらく作品に身も心も沈めていたのでしょう。

ルーカス・ゲニューシャス

そして始まるピアノ独奏。フォルティッシモでDes(変ニ音)を高らかに鳴らしたあと、ユニゾンで一気に下降していきます。この劇的な瞬間を経て第1主題が出現するのですが、ゲニューシャスは一気に力を抜き、言葉では言い表せないほどの美しい音色でテーマを奏でたのでした。それはまるで、ショパンの「感情の襞」をピアノで描いたかのよう。あまりにも美しい彼のレガートに、思わず感嘆のため息をついてしまいました。

変イ長調で始まる第2楽章は、「愛の調べ」そのものでした。
作曲当時、ショパンは同じワルシャワ音楽院の声楽科に通うソプラノ歌手のコンスタンツィア・グラドコフスカに恋をしていたものの、最後までその想いを告げることが出来なかった――という逸話が残されています。
ゲニューシャスは、そういったショパンの心に秘めた想いを、繊細なタッチで描いていきました。ときに耳をそばだてなければ聞こえないほどのピアニッシモで(しかし不思議なことに、ゲニューシャスのピアニッシモは、どれだけ小さくても会場の隅々まで届くのです)決してその想いを全面に出すことなく、丁寧に奏でていました。

第2楽章のしっとりとした雰囲気を残したまま始まった第3楽章。耳に残る付点リズムは、祖国ポーランドの民族舞踊であるマズルカを彷彿とさせます。

この楽章はピアノの華やかな演奏技巧がふんだんに用いられているのですが、ゲニューシャスの完璧な指先のコントロールがきらりと光っていました。
ホルンの合図で始まるコーダでは、マエストロとオーケストラがゲニューシャスの軽妙なピアノ・タッチを支えつつ、終盤に待ち構えるクライマックスまで共に盛り上げていく様子が印象的でした。

休憩を挟んで最後に演奏された作品は、マエストロ十八番のラフマニノフ《交響曲第2番》です。1906年から07年にかけて作曲され、翌年に作曲者自らがタクトを取り初演を行ったこの交響曲は、ラフマニノフ作品の中でも最高傑作のひとつに数えられています。
この曲の特徴は、全体に漂う濃厚なロマンティシズムとロシア特有の土臭さ。マエストロは、指揮台をめいっぱい使って、体全体で表現していました。

目の前で繰り広げられる熱演に、時間を忘れて集中したお客さまも多かったのではないかと思います。
この曲はこれまで「歴史的名演」がいくつか残されてきましたが、この日のマエストロ&京響も間違いなく「名演」を残したといっても過言ではないでしょう。
最後は拍手喝采を浴びて、何度も指揮台へと上る広上氏。「京都の秋 音楽祭」のオープニングは大成功だったようです。

開会記念コンサートから早くも1ヶ月が経とうとしていますが、「京都の秋 音楽祭」はまだまだこれから。オーケストラや室内楽、リサイタルに邦楽など、バラエティに富んだ公演が目白押しです。
深まりゆく京都の秋を「京都コンサートホール」で味わうのはいかがでしょうか?お客さまのご来場を心からお待ちしております!(た)(写真はすべて佐々木卓男氏撮影)