【ベートーヴェンの知られざる世界 特別連載①】村上明美 インタビュー<前編>

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京都コンサートホール

2020年は、京都コンサートホールが開館25周年を迎えるとともに、ベートーヴェンの生誕250周年の年にもあたります。
この2つのメモリアルイヤーを記念し、京都コンサートホールでは、ほかでは聴くことのできない、特別なコンサート・シリーズ「ベートーヴェンの知られざる世界」を企画しました。

公式ブログでは、本シリーズをより楽しんでいただくため、特別連載を行い、アーティストの生の声などをお届けします。

まず最初は、10月10日のVol.1「楽聖の愛した歌曲・室内楽」に出演し、歌曲と室内楽のピアノを演奏する、村上明美さんのインタビューを行いました。大変充実した内容となりましたので、2回に分けてお送りします。前編では、村上さんが歌曲ピアニストを目指したきっかけや歌曲の魅力などをお話いただきました。

ぜひ最後までお読みください。

村上明美(C)Shirley Suarez

―――この度はインタビューの機会をいただき、ありがとうございます。
まず村上さんのことについてお聞きします。村上さんは、現在ドイツのミュンヘンを拠点に活躍されていますが、ドイツに移られたのはいつですか?また、なぜドイツを選んだのですか?

大学(京都市立芸術大学)を卒業して一年目の2007年からフライブルクに渡独しました。
京都市立芸術大学の図書館で偶然見つけた本がきっかけで歌曲の道に興味を持ち、留学先はドイツにしようとその時から決めていました。どうしてもドイツ歌曲を勉強したいという意思があったからです。

 

―――そのきっかけのお話を詳しくお聞きしたいと思います。音楽高校・芸大で音楽漬けの毎日だったと思うのですが、ソロよりもピアノで誰かと共演するということに最初から興味があったのですか?

音楽高校に通っていた頃はソロにしか興味がありませんでした。子どもの頃から母がピアノを応援してくれていたのですが、高校2年生の時に病気で他界してしまったことで、少しずつ音楽に対する心境も変わっていきました。生活環境の大きな変化に対応する中、「自分は何のために音楽を勉強しているのだろう。音楽でどういうことをしたいのだろう」と問いかけることが大学生になってから増えていきました。そんな時に、自分の好きな音楽を自己分析していて、詩と音楽のように内面的な方向性に惹かれるという傾向に気付いていきました。

 

―――先ほど偶然ある本に出会ったとおっしゃっていましたが、なんという本でしたか?また、いつ頃出会ったのですか?

「伴奏の芸術」というヘルムート・ドイチュという歌曲ピアニストの方が書かれた本です。出会ったのは、大学四年生の時ですね。

 

―――なぜその本を手に取ったのですか?

当時は室内楽をすることが多くて、その時ちょうどチェロとヴァイオリンの伴奏をしていたんです。それで、伴奏の参考になる本を探していて「伴奏の芸術」というタイトルに興味を持って手に取りました。まさか歌曲についての本だとは思いもせず。そして、読み進めてすぐにこれは運命的な出会いだと確信しましたね。今でもその瞬間を覚えています。

 

―――その本の中でどんなことが一番印象に残りましたか?

歌曲作品を演奏する際には、まず作曲家が惹かれた詩と向き合います。作曲家が曲をつけたいと思う言葉に触れるということは、彼らの人間性や当時の思想、感性に繊細かつ直接的に触れることとなります。その親密な世界観と表現の可能性にアーティストとして、とても魅力を感じました。歌曲が持つ表現の具体性と内面的感情表現も印象的でした。
また、私はロマンチストなので、単純に恋や人や、自然への憧れについての詩や音楽も素敵だと思いました(笑)

 

―――その本を読んでから伴奏するときの心持ちや感触というのは変わっていきましたか?

「伴奏」という言葉がどこか持ってしまう付け合わせ的な概念がなくなり、どんなに簡単なパッセージや和音にも役割、意味やファンタジーを求める芸術性を探求するようになりました。また、あの本に出会っていなければ、ドイツ語にここまで自分がのめり込むことはなかったですし、人生が変わるほど歌曲に向き合うことはなかったと思います。
当初はまだ歌曲の世界を全然知らなかったのですが、バッハやモーツァルトなどドイツ語を話す作曲家が好きで、そういう作曲家の曲を弾いているときに、彼らがどういう言葉を話すのか、その言葉から来るフレージングというのはどんなだろうとか、文化にもすごく興味がありました。歌曲を通して、自分の演奏でその世界観を表現したいと思うようになりました。「人生をかけて挑戦したい」と思えるほど、私の人生を変えてくれた出会いだと思います。

―――素晴らしい出会いですね。その出会いの後、フライブルクに行かれてからはこの先生に付くというのは決めていらっしゃったのですか?

フェリックス・ゴットリープ先生というロシア系の先生に付きました。彼もまた運命的な出会いで、偶然彼のCDをタワーレコードで見つけることができて彼の演奏を知ったんです。バッハやシューベルト、室内楽も得意だということを聞いて、迷いなく彼のところに行きました。当時、ソロピアニストとしての腕を上げつつ、ドイツ歌曲演奏に必要な要素を現地で下積みしたいと思っていました。

 

―――先生ともまた、運命的な出会いを果たされたのですね。海外の音楽大学と、日本の音楽大学・芸大というのは少し仕組みが違うと思います。日本では、少し言い方が悪いですが、「伴奏」はピアノ専攻の方が片手間にするイメージが持たれていると思うのですが、村上さんが行かれたところは伴奏専門の専攻だったのですか?

フライブルクではピアノソロを専攻したのですが、ミュンヘンでは歌曲について学べる「歌曲科」という専攻で、本の著者のヘルムート・ドイチュ先生のもとで勉強しました。留学当初から、彼の元で歌曲伴奏を勉強することが夢でした。

 

―――歌曲科というものがあるのですね。そこにはどんな方がいらっしゃるのですか?歌曲科に入ったら、歌手の方は歌曲だけを練習するのですか?

歌手もピアニストもいますが、歌曲を学ぶために来ているピアニストの方が多かったような気がします。また、声楽科に在籍していて授業の一環として歌曲の授業を受けに来る人もいました。歌曲科の歌手の生徒は、本当に歌曲だけに時間を費やしていましたね。歌曲科のピアニストは逆に、歌曲だけでなく、担当の声楽クラスで伴奏することもカリキュラムに組まれていて、そこでは多くの宗教曲やオペラ作品も演奏しました。

 

―――ソロのピアノ科と、歌曲科に入った時ではどんな違いがありましたか?

まず歌曲には詩があるので、詩を読んで言葉のニュアンスやフレーズを感じて楽譜を読むようになりました。詩を書いた人と作曲家の世界観を考えるようになったのは、やっぱり歌曲科に入った後からですね。またソロは一人で音楽を作りますが、歌曲の世界は共演者とともに音楽表現をするので、そこにも大きな違いがありますよね。その他、一曲の長さも全く違います。歌曲は、時に1分以内のものからとても長くて7分から10分ですので。
一つの演奏会で演奏される曲数も当然多くなりますし、またレパートリーも共演者の声質や、得意分野に左右されるので、表現の多彩さが自然と求められます。

 

―――フライブルクとミュンヘンには何年いらっしゃったのですか?そこではどんな本番を迎えられたのですか?

フライブルクに2年、ミュンヘンに2年在籍していました。ミュンヘンは今も私の活動の本拠地です。ソロ科では、学校の発表会での本番が中心でした。歌曲科では、必ず二人の伴奏を担当することが決められていました。私は限られた時間の中でいろんな人と演奏することがとても大事だと思っていたし、レパートリーもたくさんほしかったので、八人の歌手と演奏していました。その分学校の本番を始め、コンクールや録音での共演も多くありました。

 

―――八人!忙しいですね。

そうですね。でも、歌手はそれぞれコンディションがあって、八人全員が毎回歌えるわけでもないので、私としてはたくさんいてちょうどいいくらいでした(笑)一緒に演奏できる時間って少ないから、その時間を本当に後悔のないように過ごしたいという気持ちはありました。

―――そこで2年間勉強されて手ごたえはありましたか?歌曲について深く学べたという満足感はありましたか?

フライブルクの時から副科で歌曲を勉強していたのですが、やはりドイチュ先生のところで勉強してからは、特に深く知ることができたという実感がすごくありました。

 

―――ドイチュ先生はどんな方なのですか?

ドイチュ先生はヘルマン・プライの伴奏ピアニストとしてキャリアを始めた方で、その後世界的歌手のヨナス・カウフマンやディアナ・ダムラウの専属ピアニストとして共演し、今は歌曲ピアニストの世界第一人者として活躍されています。

 

―――私たちは歌曲ピアニストとしてのドイチュ先生しか知らないので、どんなことを大切にして指導されていたかなど、「先生」としてどのような方なのかを教えてもらえませんか?

考えることをとっても大事にされている先生で、楽譜と詩を結び付けて考えさせてくれました。歌曲の世界は人から与えられて出来ていくものではないので、感受性や「自分で考えること」がとても大事で、その辺を鍛えていただきました。また共演者と音楽づくりをする上での音質、指揮者のようにテンポや共演者とのバランスを構築していく感覚も、彼から学びました。あとは、ドイチュ氏が歌手に言うこともすごく勉強になりましたね。歌手は声が楽器なので、演奏上も精神的にもデリケートな世界です。だから、どういう風にコミュニケーションを取っているか、どうやって意見を伝えているのかということも興味深く学ばせていただきました。

 

―――村上さんは歌手の方とコミュニケーションを取る中で、なかなか意見しにくい時もありましたか?

学生の時と今とではすごく変化がありますね。ミュンヘンで勉強していた1年目なんかは今よりもっとシャイで、どういう言い方をしたらより良いコミュニケーションができるか確信がなかったです。ヨーロッパと日本で好まれるコミュニケーションの差にも慣れていませんでした。プライベートでも演奏上でも、はっきりと意思表示することが求められますが、それでいて共演者と調和することが当時はテーマでした。経験と共に、お互いに「演奏の中で、考えと存在感を示す」というところに行きついて、コミュニケーションが取りやすくなりました。また、呼吸ひとつでも良いコミュニケーションはできますから。その中で「これは話さないとどうしても合わないな」と感じられたら「今のテンポどう思う?」とか具体的に話し合うことはできますけど、手探りでやっていたときは一番コミュニケーションが難しかったです。それぞれの性格や状況もあってのことですので、最終的に相手も自分もどちらもリスペクトすることが、良い音楽をするのに大切だと思います。

 

―――奥深いですね。村上さんが歌手の方と演奏するときに大事にしたいことはどんなことですか?

お互いにどれだけ詩と音楽の世界に向き合うことができるかを大事にしています。
作曲家は詩に音楽を付けているので、強弱ひとつでもその詩の感情表現であって、作曲家からのメッセージだと思うんですね。そのメッセージをどれだけ読み込むかというリスペクトがあってはじめて、作品が完成していくのだと思っています。また、心地よく意見を言い合えたり、表現を試しあえる信頼感も大切だと思います。最終的に、舞台で互いに音楽を楽しみ、私たちアーティストを通して作曲家のメッセージをお客様と共有することが目的ですから。

 

―――実は私もフランス語の詩を読もうと思ったことがあるのですが、何を言いたいのか掴みにくく、想像が難しかったんです…

フランス語の詩とドイツ語の詩は全然違いますね。ドイツの方は「フランス語の詩や音楽は苦手!」って感想をよく聞きますよ(笑)フランス語の詩や言葉のフレーズは、ドイツ物と比べ掴みどころがなくて抽象的なんですよね。そこが素敵だったりもするのですが。たぶん、ドイツ人や日本人はきっちりしているから「結局何が言いたいの?」と思ってしまうのかも。ドイツ語の詩はわりと具体的ですし、私はドイツ語の詩に励まされたり、癒されたり、人生について学んだりしていますよ。ぜひドイツ語の詩も読んでみてください!

 

―――ドイツの詩も読んでみたいと思います!おすすめの詩人がいたら教えてください。

詩人は人によって趣味があるので難しいですね。例えばゲーテ、ハイネ、アイヒェンドルフ、リュッケルトとかいろんな詩人がいますが、詩人によって同じ作曲家でも曲の仕上がりの雰囲気も全然違うんですよね。以前ゲーテの歌曲集をバリトン歌手の方と作ったんですけど、詩人を選ぶ際に、いろんな詩人ごとに様々な作曲家の歌曲作品を集めて比較しました。そうすると詩人の持つ特徴から作曲家の作品の雰囲気やエネルギーが相似していることに気が付きました。例えばゲーテだったら力強くていきいきしている作品が多いし、ハイネだったら繊細だけど巧みにエネルギーが交互している作品が多いと感じます。それぞれに良さがあるので、私はどの詩人が好きって言いにくいですね。

 

―――やっぱり詩を単体で読むより、音楽がついている方が入りやすいですか?

私にとってはそうですね。私も当初は歌曲をCDで聴くとき、ドイツ語が分かりにくかったので日本の対訳と同時に聴いていたんですけど、それでも言葉の響きと音楽から自分の中ですごくイメージが湧いたんです。音楽があるから詩が分かりやすくなるという実感があるし、言葉に抵抗があって詩が苦手と思っていらっしゃる方にも、歌曲の世界を通して身近に感じていただけると思います。

 

―――海外よりも日本は歌曲に触れる機会が少ないと思うのですが、もっと身近に感じられたらいいなと思いますよね。言葉が難しいというのもあるんでしょうね。

先ほどドイツ語があまり分からなくてもCDを聴いたらイメージが湧いたというお話をしましたが、それはドイツ語の特徴から来ていると思います。私にとってはドイツ語そのものが詩的で、たとえば「Wasser(水)」という言葉は「水が流れている!」と響きから絵が浮かぶし、「Mond(月)」は満月が輝いている様子が頭に浮かぶんですよ(笑)
心を開いて言葉を聴いて「なんだかこれはやわらかいな」とか「エネルギーが流れているな」といろいろ感じることは、音楽を聴いてイメージが湧くのと似ているのではないかと思います。言葉も音楽のように、リラックスして感じてみるとそれだけで楽しめるものだと思います。

 

―――すごいですね!そんな風にみんなに伝えたいっていう思いがあるから、今までたくさんご活躍されてきたのだと思います。

後編につづく・・・

(2019年9月事業企画課インタビュー@大ホール・ホワイエにて)


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「北山クラシック倶楽部2020」後半セット券のご案内【セット券販売中止(6/10)】

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京都コンサートホール

「いい音が響いてほしい」

それだけを願い、世界的建築家 磯崎新と永田音響設計が精魂込めて創り上げた「アンサンブルホールムラタ」。

ここを舞台に繰り広げられる「北山クラシック倶楽部」は、海外トップアーティストによる世界水準の演奏を、最高の空間で体感していただくシリーズです。

今回は、2020年度後半に開催される5公演(9月~2021年3月)のアーティストをご紹介します。いずれの公演にも、いま旬の演奏家たちが出演!
演奏者の息遣いまで聞こえてくる濃密な空間で、世界トップクラスの演奏をご堪能ください。


セット券販売中止のお知らせ(6/10発表)

京都コンサートホールでは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、お客さまに安心してご利用いただけるよう対応を行っております。

ホール内では客席間隔およびお客様と演奏者との間隔に十分な距離を確保するため、当面の期間、一部座席の使用を取りやめております。

そのため、「北山クラシック倶楽部2020 後半セット券」について今年度に限り取り扱いを中止させていただき、すでにご購入いただいておりますお客さまには大変申し訳ございませんがチケット代金のご返金をさせていただきます。

「北山クラシック倶楽部2020後半セット券」をご購入くださったお客様には京都コンサートホールより返金方法についてご連絡をさせていただきますので、いましばらくお待ちくださいますよう、宜しくお願い致します。

「オリヴァー・シュニーダー・トリオ (10/8)」、「ジャン=ジャック・カントロフ&上田晴子 デュオ・リサイタル (11/27)」、「ラデク・バボラーク&バボラーク・アンサンブル (12/1)」、「ユナイテッド・ユーロブラス・クインテット (3/4)」の各公演チケットに関しましては、大変お手数をおかけしますが、単券をご購入くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

アンサンブルホールムラタ(撮影:大澤正)

《孤高の天才》「世界一」と絶賛!カリスマ中のカリスマ
マルツィン・ディラ ギター・リサイタル 公演中止(※6/10発表)

マルツィン・ディラ

ワシントン・ポスト紙が「地上で最も才能あるギタリストの一人」と激賞。数多くの音楽評論家、愛好家、ファンたちも間違いなく世界のトッププレイヤーであると認める、ギター史に名を刻む天才中の天才。世界最難関と言われるGFA国際を含む19もの国際ギターコンクールで優勝。カーネギーホール、ウィーン楽友協会、アムステルダム・コンセルトヘボウなど世界屈指のホールや世界最高のギター音楽祭に度々招かれ演奏している。

◆公演詳細◆
[日時]2020年9月11日(金)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
ミヨー:セゴビアーナ
ポンセ:フォリアの主題による変奏曲とフーガ ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:5月17日(日)/一般発売:5月30日(土)

[主催]MCSヤング・アーティスツ


ピアノ・トリオを極める先鋭たち
オリヴァー・シュニーダー・トリオ(ピアノ三重奏)

オリヴァー・シュニーダー・トリオ

スイスの実力派ピアニスト、オリヴァー・シュニーダーと、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席奏者、アンドレアス・ヤンケとベンヤミン・ニッフェネガーによって結成された気鋭のピアノ・トリオ。2012年にデビューしてから、世界中で大絶賛を受けている。また、最新の録音であるベートーヴェンのピアノ三重奏曲全集も高い評価を得た。アンサンブルの極みを追求し続けている新世代のピアノ・トリオ。

◆公演詳細◆
[日時]2020年10月8日(木)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調 op.11『街の歌』
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 op.8(1891年改訂版)ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:6月20日(土)/一般発売:6月27日(土)

[主催]日本アーティスト


フランス・ヴァイオリン界の巨匠、最高のデュオ公演開催決定!
ジャン=ジャック・カントロフ&上田晴子 デュオ・リサイタル

ジャン=ジャック・カントロフ

フランスを代表する名ヴァイオリニスト。19歳にてカーネギーホールでのデビューを飾ってからは、世界中でソリスト、室内楽奏者として活躍。ヴァイオリニストとしての活動の他、パリ管弦楽団アンサンブルなど多くのオーケストラの常任指揮者を務める。2012年よりヴァイオリニストとしての活動を休止していたが、2017年春より再開し、2019年にはピアニスト上田晴子とともに日本ツアーを行い、圧巻の演奏で好評を博した。

◆公演詳細◆

上田晴子

[日時]2020年11月27日(金)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第35番 ト長調  K.379
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調  op.94bis
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第10番 ト長調  op.96  ほか

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 *会員:4,500円
*会員先行発売:7月18日(土)/一般発売:7月26日(日)

[主催]日本コロムビア株式会社


極上のホルンとビロードの弦の音色が溶けあう、比類なき天上の響き
ラデク・バボラーク&バボラーク・アンサンブル

ラデク・バボラーク&バボラーク・アンサンブル

世界トップ・クラスのホルン奏者。これまでにチェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、バンベルク響、ベルリン・フィルのソロ・ホルン奏者を歴任。小澤征爾、バレンボイム、ラトル、レヴァインなどの指揮者からの信頼が厚く、世界的なオーケストラと共演。日本では、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団やパシフィック・ミュージック・フェスティバルにソリストとしてだけでなく指揮者としても客演している。2018年から山形交響楽団首席客演指揮者も務める。

◆公演詳細◆

ラデク・バボラーク(c)Lucie Cermakova

[日時]2020年12月1日(火)19:00開演(18:30開場)

[共演]
D.カルヴァイ、M. ヴァチョバー(ヴァイオリン)
K.ウンターミュラー(ヴィオラ)
H.バボラコヴァー(チェロ)ほか

[プログラム]
モーツァルト:ホルン協奏曲より
ベートーヴェン:六重奏曲 op.81b ほか

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 *会員:4,500円
*会員先行発売:7月18日(土)/一般発売:7月26日(日)

[主催]AMATI


トランペットの巨匠ラインホルト・フリードリッヒ率いる夢のブラス・クインテットが遂に来日
ユナイテッド・ユーロブラス・クインテット

ユナイテッド・ユーロブラス・クインテット

トランペットの名匠、ラインホルト・フリードリッヒの呼びかけにより結成された金管五重奏団。メンバーは、フリードリッヒ(ルツェルン祝祭管首席)のほか、トランペットのイェルーン・ベルワルツ(元ハンブルク北ドイツ放響首席)、ホルンにラッセ・マウリッツェン(デンマーク放響首席)、トロンボーンにイアン・バウスフィールド(元ロンドン響/ウィーン・フィル首席)、テューバにトーマス・ロイスランド(デンマーク国立響首席)と錚々たるメンバーで構成され、世界各国で活動している。

◆公演詳細◆

[日時]2021年3月4日(木)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]
エヴァルド:金管五重奏曲 第3番 変ニ長調 op.7
ビートルズ・メドレー ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,500円 学生:2,500円 小学生:500円 *会員:4,000円
*会員先行発売:11月21日(土)/一般発売:11月29日(日)

[主催]プロ アルテ ムジケ

[撮影]大澤正

★★お得な5公演セット券(限定100セット!)★★

5公演をお得に楽しめるセット券(限定100セット)をご用意しております。ご予約・ご購入時に指定範囲内から座席をお選びいただき、全公演共通座席「マイシート」でお聴きいただけるセット券です。みなさま、この機会にぜひお買い求めください。

【セット料金】
19,000円 <15%お得!>

【販売期間】
*会員先行期間  4月11日(土)~4月17日(金)
一般販売期間  4月18日(土)~5月14日(木)

*会員:京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)・京響友の会の会員が対象です。

※出演者、曲目、曲順など内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

【チケットご購入・お問い合わせ】
●京都コンサートホール・チケットカウンター 075-711-3231
(10:00~17:00/第1・3月曜休 ※休日の場合はその翌平日)

オンラインチケット購入 (24時間いつでも購入可能!)
(※参考 セット券をお求めの方は、こちらをクリック
※チケットの当日精算を希望される方はお電話にてご予約ください。

●ロームシアター京都・チケットカウンター 075-746-3201
(10:00~19:00/年中無休 ※臨時休館日を除く)

アダム・タバイディ氏 特別インタビュー(2/22オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ Vol.65「世界のオルガニスト」)

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オルガン

2020年2月22日(土)14時開催「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.65“世界のオルガニスト”」では、世界で活躍するハンガリー出身の若手オルガニスト、アダム・タバイディさんをお迎えします。タバイディさんは2019年9月から、第21代札幌コンサートホール専属オルガニストを務めている、いま注目のオルガニストです。

今回の京都初公演に向けてメールインタビューを行いました。オルガンの魅力やパリ・ノートルダム大聖堂でのオルガン研修生時代に関するお話をたくさん聞かせてくださいました。

――タバイディさんこんにちは。このたびはインタビューの機会をいただき、ありがとうございます!さて、早速ですが、まずタバイディさんがオルガンを始められたきっかけから教えていただけますでしょうか?

アダム・タバイディさん(以下“タバイディさん”):ピアノとトランペットを6歳から習いはじめました。子どもの頃、よく教会に連れて行ってもらっていて、オルガンの演奏をいつも聴いていました。その美しい音色にとても魅了されていました。そして今後の進路を決める時、たしか14歳の時だったと思いますが、両親の友人で、地元の音楽大学で教授を務めていた有名なオルガニストの薦めでオルガンを始めました。

――そうだったのですね。楽器を始められてから10年以上経った今、タバイディさんはオルガンのどんな魅力を感じていらっしゃいますか?

タバイディさんオルガニストという仕事をしていて最もワクワクすることは、二つとして同じ楽器がないパイプオルガンを演奏できることです。新しいオルガンと出会うたびに、まるで初めて会った人同士のように、お互いのことを知ろうとします。どのオルガンにも個性や特有の雰囲気があり、演奏者自身にもそれぞれ個性があります。そして、オルガンは、ほとんど聞こえないぐらい小さな音から迫力ある大きな音まで、無数にある音色を組み合わせながら、色彩豊かに表現することができます。この多様性は、数ある楽器の中でもオルガンならではだと思っています。

――時代や国によって、様々なタイプの楽器がありますよね。タバイディさんは歴史的オルガンについて勉強されたそうですが、具体的にどのような勉強をされましたか?

タバイディさんその昔、オルガン製作は楽器の演奏技法と非常に密接な関係にありました。具体的に言いますと、オルガンの作曲家たちはオルガン製作者と密につながっており、互いに意見を共有しながら作曲を進めていました。そのため、オルガニストにとって歴史的オルガンは「最高の先生」なのです。

歴史的オルガンを弾く際、現代の演奏方法ではふさわしくないことがあります。例えば、歴史的オルガンの送風システムは、現代のオルガンとは全く異なり、20世紀初頭までは人力で風が送り込まれていました(注:現代のオルガンは大きな送風機が備えられている)。この構造を持つ楽器を演奏する際、例えばとても短い音は演奏できないなど、演奏の際に細心の注意が必要なんです。

―― オルガンは同じ楽器が二つとない、ということですが、初めての会場に行く時や初めてのオルガンを触る時に心がけていることなどがあれば教えてください。

タバイディさん私はいつもオルガンのストップリスト(注:楽器の全てのストップが掲載されたリスト)を研究し、覚えるようにしています。そして、新しい楽器に出会うたびに、私は全てのストップを試してみて、その後で音色の組み合わせを決めています。この作業を「レジストレーション」というのですが、とても重要な作業です。
大きなオルガンでは、この作業に1時間以上かかりますが、作品ごとに最も合った音色を簡単に見つけることができるので、手間をかける価値があります。演奏台がオルガンとくっついている場合は、弾きながら楽器から出る本当の音を聴くことができないため、別の人にオルガンを弾いてもらい、自分は客席で響きを確認したりします。

――何十もあるストップリストを覚えられているのですね!京都コンサートホールには、楽器から離れて演奏できる演奏台もあります。
オルガン演奏において重要なレジストレーションについて、オルガニストたちは普段どのように勉強しているのでしょうか。

タバイディさん音楽大学等で勉強している時に、非常に大切な練習として、どのようにレジストレーションを行うか先生に指導してもらいます。一人でオルガンに向き合う時間が段々と増えていくと、オルガニストの個性がレジストレーションに出てくるようになっていきます。

――タバイディさんは、かつてパリ高等音楽院でオルガンを学ばれていました。パリといえば、いま復旧中のノートルダム大聖堂で、初のオルガン研修生を務められたということですが、具体的にどのような活動をされていたのですか?

タバイディさんノートルダム大聖堂では教会行事に参加していました。最初の頃は、専属オルガニストの傍で、礼拝者が訪れる時どのように演奏するかを聴いて勉強していました。後に、大聖堂の合唱団が行うミサの伴奏を務めるなど、徐々に教会業務にも加わるようになりました。

――すごいですね!あのノートルダム大聖堂で……と考えるとわくわくします。
さて、タバイディさんは去年の9月から北海道・札幌に居住し、Kitara専属オルガニストとして活動されていますが、札幌での生活はいかがですか?

タバイディさん:札幌での生活は本当に楽しいです。札幌コンサートホールのスタッフのサポートで、ほぼ100%専属オルガニストの仕事に集中することができています。この仕事は私の人生にとって、またとない非常に貴重な機会です。
札幌コンサートホールのスタッフは本当に親切ですし、日本料理も美味しいです。それに、札幌の街は穏やかで、とても魅力的な所です。

――今回、初となる京都公演で演奏されるプログラムを拝見しましたが、とても興味深いものでした。選曲理由と聴きどころをそれぞれ教えてください。

タバイディさん今回のコンサートでは、3つの要素から構成される、バラエティーに富んだプログラムをお届けします。ドイツとフランスのいわゆる「伝統的な」オルガン音楽、さまざまな国の民族音楽、そして私の故郷ハンガリーの音楽をお楽しみいただきます。

――とても楽しみです!それでは最後に、演奏会を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

タバイディさん京都コンサートホールで皆さまにお会いすることができて本当に光栄です。この美しいホールと皆さまへ色彩豊かなプログラムをお贈りします。どうぞコンサートをお楽しみください。

――お忙しい中インタビューにお答えいただきありがとうございました!演奏を聴けますことを楽しみにしております!

(2020年1月事業企画課メール・インタビュー)

★公演情報はこちら

2020年度オーケストラ・セット券「BIG3」詳細決定!

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京都コンサートホール

2020年度の京都コンサートホールのオーケストラ公演セット券「BIG3」の詳細が決定しました!
3人のマエストロによる、壮大なる交響曲3作品が披露されます。豪華ラインアップをご紹介いたします。


「人類愛と平和」——ベートーヴェン《交響曲第9番「合唱付」》
ムジカエテルナ

テオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナ(c)Olya Runyova

世界中のクラシック音楽ファンを熱狂させるテオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナ。2019年2月に待望の初来日を果たし、東京で開催された3公演のチケットは全て完売するなど、日本のクラシック音楽界に大きな爪痕を残しました。
そんな彼らが、ベートーヴェン生誕250年にあたる2020年、再び日本で旋風を巻き起こします!京都初公演のために選ばれたプログラムは、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付」。
この傑作中の傑作をクルレンツィスとムジカエテルナはどう表現するか――今回の関西公演は京都での1公演のみ。どうぞお見逃しなく!

 

◆公演詳細◆
[日時]2020年4月10日(金)19:00開演(18:15開場)

[指揮]テオドール・クルレンツィス(ムジカエテルナ芸術監督)
[合唱]ムジカエテルナ合唱団
ソプラノ ジャナイ・ブラッガー
メゾ・ソプラノ ゾフィー・ハルムゼン
テノール ウギョン・キム
バリトン アンドレイ・キマチ
※2/13ソリスト決定

[プログラム]
ベートーヴェン:交響曲第9番 二短調 op.125「合唱付」

[一回券]
S 21,000円 A 18,000円 B 14,000円 C 11,000円 D 9,000円*会員は各席種1割引
会員先行発売:1月11日(土)/一般発売:1月19日(日)

[主催]KAJIMOTO


「復活と救済」——マーラー《交響曲第2番「復活」》
京都コンサートホール開館25周年記念事業
ロンドン交響楽団

ロンドン交響楽団 (C)Ranald Mackechnie

世界屈指のオーケストラ、ロンドン交響楽団(LSO)。
1904年の創立以来、首席指揮者にH・リヒターやA・ニキシュ、P・モントゥー、A・プレヴィン、C・アバド、V・ゲルギエフら、名だたる巨匠たちを迎えてきたLSOですが、2017年9月から実力・人気共に世界トップ・クラスのサイモン・ラトルが音楽監督として就任しました。
今回の京都公演ではマエストロたっての希望でマーラーの交響曲第2番「復活」を選曲。関西二期会や神戸市混声合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル、京都市立芸術大学など、関西の声楽家たちが集結し、京都公演だけの特別な合唱団を結成します。
京都コンサートホールでしか聴くことの出来ない至極のマーラーをお楽しみください。

サー・サイモン・ラトル(c) Oliver Helbig

◆公演詳細◆
[日時]2020年10月4日(日)16:00開演(15:00開場)

[指揮]サー・サイモン・ラトル(ロンドン交響楽団音楽監督)
[ソプラノ]エルザ・ドライジグ
[メゾ・ソプラノ]エリーザベト・クールマン
[合唱]関西二期会合唱団・神戸市混声合唱団・びわ湖ホール声楽アンサンブル ほか有志(※3/9追記)

[プログラム]
マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」

[一回券]
S 22,000円 A 19,000円 B 16,000円 C 13,000円 D 9,000円 *会員は各席種1,000円引
会員先行発売:4月4日(土)/一般発売:4月11日(土)

[協賛]株式会社ゼロ・コーポレーション


「平和への祈り」——バーンスタイン《交響曲第3番「カディッシュ」》
京都コンサートホール開館25周年記念事業
京都コンサートホール×京都市交響楽団 プロジェクトVol.1
「佐渡裕指揮バーンスタイン《交響曲第3番「カディッシュ」》

佐渡裕(C)Takashi Iijima

京都が誇るマエストロ佐渡裕が登場!しかもプログラムはオール・バーンスタイン・プログラム!中でも《交響曲第3番「カディッシュ」》は必聴必見です。
この作品は1963年、当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された際、バーンスタインが楽譜の1ページ目に「ジョン・F・ケネディの愛する思い出のために」と書いたことで知られているものです。バーンスタインがその一言をしたためた日付は1963年11月22日でした。
奇しくもその日と同じ日に師バーンスタインの作品を振ることになるマエストロ佐渡。この不思議な巡り合わせはまさに奇跡と言ってもよいでしょう。
京都コンサートホールと京都市交響楽団による新たなコンサート・プロジェクトの第一弾です!

京都市交響楽団(c)井上写真事務所 井上嘉和

◆公演詳細◆
[日時]2020年11月22日(日)14:00開演(13:15開場)

[指揮]佐渡裕[管弦楽]京都市交響楽団
[朗読]原田美枝子[ソプラノ]天羽明惠[合唱指揮]本山秀毅
[合唱]京都コンサートホール祝祭合唱団京都市少年合唱団

[プログラム]~オール・バーンスタイン・プログラム~
ディヴェルティメント
プレリュード、フーガ&リフス
交響曲第3番「カディッシュ」

[一回券]
S 8,000円 A 6,000円 B 4,000円 *会員は各席種500円引
会員先行発売:5月10日(日)/一般発売:5月17日(日)


★★ お得な3公演セット券「BIG3」 ★★

★セット券料金(全席指定・3公演共通座席)
S席セット券 51,000円⇒45,000
A席セット券 43,000円⇒38,000

★販売期間
*会員先行期間 2019年12月8日(日)~12月14日(土)
一般販売期間 2019年12月15日(日)~2020年2月16日(日)

★特典
①1回券より10%以上お得 !
②3公演を共通座席「マイシート」で味わえる!
③演奏会当日、会場にてツアープログラム(有料)をプレゼント!
(※11/22公演を除く)

*会員:京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)と京響友の会の会員が対象。
※出演者、曲目、曲順など内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

★購入はこちら

 

「北山クラシック倶楽部2020」前半セット券のご案内

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京都コンサートホール

世界的建築家 磯崎新と永田音響設計が精魂込めて創り上げた、室内楽専用ホール「アンサンブルホールムラタ」。星座の描かれた天井、宇宙を思わせる舞台照明、磁北を示す光のラインなど、まるで「ミクロコスモス」を思わせるホールのインテリアは、演奏者と聴衆の胸を高鳴らせると同時に我々を「異空間」へと誘います。

ここを舞台に繰り広げられる「北山クラシック倶楽部」は、海外トップアーティストによる世界水準の演奏を、最高の空間で体感していただくシリーズです。

さて、この度、2020年前半4公演(4月~6月)のラインアップが出揃いました!いずれの公演にも、いま旬の演奏家たちが出演!
演奏者の息遣いまで聞こえてくる濃密な空間で、世界レベルの演奏をご堪能ください。

また、とってもお得に「北山クラシック倶楽部2020」の前半4公演を聴いていただけるセット券(限定100セット・約10%割引)を販売いたします。
ご予約・ご購入時に指定範囲内から座席をお選びいただき、全公演共通座席「マイシート」でお聴きいただける、こだわりのセット券です。みなさま、この機会にぜひお買い求めください。

アンサンブルホールムラタ

国際的チェリストと気鋭のカルテットが共演
ミハル・カニュカ(チェロ)&関西弦楽四重奏団
~シューベルト・プログラム~

2017年のリサイタルで、洗練された演奏で京都の聴衆を虜にしたミハル・カニュカ。
チェコを代表する国際的チェリストと第一線で活躍する俊英たちで結成された日本の関西弦楽四重奏団が共演します。
この室内楽の達人5人がシューベルトの名作を披露。まさに、この日、この時でなければ聴けない響きをお楽しみいただけるでしょう。室内楽ファン、シューベルト・ファン必聴の一夜です。

◆公演詳細◆
[日時]2020年4月7日(火)19:00開演(18:30開場)

[出演]
ミハル・カニュカ(チェロ)
関西弦楽四重奏団
林七奈、田村安祐美(ヴァイオリン)
小峰航一(ヴィオラ)上森祥平(チェロ)

[プログラム]
シューベルト:
弦楽四重奏曲 第12番 ハ短調 D703「四重奏断章」
アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D821(ソロ・チェロ&弦楽四重奏版・編曲:ミハル・カニュカ)
弦楽五重奏曲 ハ長調 D956

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 *会員:4,800円
*会員先行発売:1月13日(月・祝)/一般発売:1月17日(金)

[主催]コジマ・コンサートマネジメント


2016年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝!進化を続けるパリの精鋭カルテット
カルテット・アロド

(C)Marco Borggreve

2013年にフランス・パリで結成された弦楽四重奏団、カルテット・アロド。16年には難関ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し、大きな注目を集めました。そのフレッシュな魅力が日本の聴衆の心をとらえた17年12月の初来日後も、ロンドンのウィグモアホールやバービカンセンター、フィルハーモニー・ド・パリ、カーネギーホール、エルプフィルハーモニー・ハンブルクをはじめとする欧米の有名会場で喝采を浴びるなど、ますます躍進を続けるカルテット、2度目の来日です。

◆公演詳細◆
[日時]2020年4月22日(水)19:00開演(18:30開場)

[出演]カルテット・アロド
ジョルダン・ヴィクトリア、アレクサンドル・ヴ(ヴァイオリン)
タンギー・パリソ(ヴィオラ)サミー・ラシド(チェロ)

[プログラム]
ハイドン:弦楽四重奏曲第79番 ニ長調 op.76-5「ラルゴ」
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調  D810 「死と乙女」 ほか

[一回券]
全席指定 一般:3,000円 *会員:2,700円
*会員先行発売:1月19日(日)/一般発売:1月25日(土)

[主催]Eアーツカンパニー


21世紀、この世に再びパガニーニが現れた!
ロマン・キム 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

カザフスタン発。規格外、桁外れのヴァイオリニストがこの地上に爆誕!日本上陸!!「ヴァイオリン一挺でありとあらゆる音楽を再現する」とんでもないこの若者は、単なる超絶技巧の持ち主ではなく「芸術の本質をえぐり出す」才能をも有する。ヴァイオリンだけで《G線上のアリア》全パート演奏する(しかも音楽的!)など、パガニーニが現代に生きたならこう書いたのではないか?と思わせる奇跡的充実の音楽に、ただただ茫然自失!

◆公演詳細◆
[日時]2020年6月2日(火)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]~無伴奏ヴァイオリン芸術の極北~
J.S.バッハ:シャコンヌ
J.S.バッハ(R.キム編):G線上のアリア
パガニーニ:英国国歌による変奏曲 op.9
R.キム:レクイエム ほか

[一回券]
全席指定 一般:4,000円 *会員:3,600円
*会員先行発売:2月9日(日)/一般発売:2月16日(日)

[主催]MCSヤング・アーティスツ


知られざる才能の京都デビュー
イノン・バルナタン ピアノ・リサイタル

(C)Marco Borggreve

「イノン・バルナタン」という名前を初めて聞く方も多いかもしれません。彼はイスラエル出身、ニューヨーク在住のピアニストです。ニューヨークフィルの音楽監督を務めたアラン・ギルバートがバルナタンの才能に惚れ込んで2016年に日本で紹介。その豊かな音楽性が知られることとなりました。さて、バルナタンとはいったい、どんな才能の持ち主なのでしょうか。どんな音楽で私たちの心を揺り動かしてくれるのでしょうか。京都でそれらの疑問が解き明かされます。

◆公演詳細◆
[日時]2020年6月25日(木)19:00開演(18:30開場)

[プログラム]~時を超えた組曲~
J.S.バッハ:トッカータ ホ短調 BWV914
クープラン:《クラヴサン曲集 第12組曲》より〈アタラント〉
ラヴェル:《クープランの墓》より〈リゴードン〉
ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24 ほか

[一回券]
全席指定 一般:5,000円 U25:2,000円 *会員:4,500円
*会員先行発売:2月9日(日)/一般発売:2月16日(日)

[主催]ヒラサ・オフィス


★★お得な4公演セット券(限定100セット!)★★

★セット料金(全席指定)
15,000円 <15%お得!>

★販売期間
*会員先行期間  2019年12月4日(水)~12月10日(火)
一般販売期間  2019年12月11日(水)~2020年1月8日(水)

*会員…京都コンサートホール・ロームシアター京都Club(会費1,000円)・京響友の会の会員が対象です。

※出演者、曲目、曲順など内容が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

【京響スーパーコンサート特別連載④】スウェーデン放送合唱団メンバー 特別インタビュー

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インタビュー

2019年11月23日開催の「京響スーパーコンサート」では、世界トップクラスのスウェーデン放送合唱団と京響が初共演します。

公演の魅力をより知っていただくための連載を本ブログにて行っております。
第4回は、スウェーデン放送合唱団のメンバーにメールインタビューを敢行しました。お答えいただいたのは、2010年からアルトパートを務める、クリスティアーヌ・ヒューランド(Christiane Höjlund)さんです。

合唱団の活動や今回歌っていただくモーツァルト「レクイエム」についてなどお伺いしました。
ぜひご覧ください。

クリスティアーネ・ヘイリュントさん

――この度はインタビューにお答えいただきありがとうございます。
創団からまもなく95年が経ちますが、長年受け継がれている伝統などはありますでしょうか。

クリスティアーネ・ヒューランドさん(以下「ヒューランドさん」)この合唱団が創団された当初から、ラジオでの生放送はとても大切な仕事です。
創団当時はラジオ放送が開始されてまだ間もなく、ライブ・パフォーマンスが聴衆へ音楽を届ける唯一の方法でした。たとえテクノロジーが発達し、コンサートの録音を後で聴くことができるようになっても、生放送はいつもどこか神経質になってしまうものです。しかし、ラジオ放送を聴く人々にとっては、これがライブ・パフォーマンスだと知っていただくだけで、音楽をより一層楽しんでもらうことができるのではないかと思っています。
また、長年にわたり現代音楽に取り組んでいる合唱団のメンバーたちは、ラジオの前で音楽を聴いてくださる聴衆の皆さまに、まさしく今ここで起きていることを伝えようと力を尽くしています。

――今回演奏いただくモーツァルトのレクイエムについて、歌い手から見た時の魅力は何でしょうか。

ヒューランドさん:モーツァルトの《レクイエム》は、世界中のクラシック音楽シーンにおいて最もよく演奏されている作品の一つと言えるでしょう。合唱団のメンバーはこの曲を何度も歌い熟知していますが、それでも音楽の真価を語るこの作品に回帰するたびに、大いなる喜びを感じます。

この《レクイエム》はすべての構成要素が歌手たちによって表現されます。ソプラノ、アルト、テノール、バスはそれぞれ個々の旋律を持ち、そのどれもが喜びに満ちて歌いがいのあるもので、恐れをなすようなフォルテッシモから穏やかなピアニッシモまで、表現の幅に富んでいます。この作品は全体を通して多彩で、オーケストラと歌手はそれぞれ美しいソロのパートを持ち、印象的で穏やかな合唱のパートはその中間を成します。生と死、天国と地獄といった永遠の問題を扱った、死のミサのラテン語テキストがすべてを繋ぎとめています。創造的な遊び心と美の混交、かたやテキストの持つ引力、これらが聴衆と奏者の双方に訴えかけるのだと思います。

――合唱団としての強みや特徴はどういうところにあると思いますか。

ヒューランドさん:スウェーデン放送合唱団はよく、温かく深みのある(ワインの)フルボディのようなサウンドを持つ多才な合唱団だと言われています。
また、私たちには作曲家たちと共に新しい音楽を創り上げていく伝統があります。初めはどんなに不可能に思えることでも果敢に挑戦し続ける私たちですが、この合唱団の持つ献身や意欲といったものが作曲家たちの限界を押し広げることができるのです。このように、知られざる領域へと音楽を導き続けることは、合唱団にとってもっとも大切な仕事の一つだと考えています。

一方で、現代音楽以外の作品も喜んで歌います。その音楽が可能な限り自然に聴こえるように曲に合わせてサウンドや歌い方を調整するのは、この合唱団の象徴とも言えます。

スウェーデン放送合唱団(C)Arne Hyckenberg

――スウェーデン放送の合唱団として、自主コンサートとツアー以外にはどのような活動をされていらっしゃいますか。

ヒューランドさん:コンサートとツアーが大部分を占めていますが、マスタークラスや音楽学校との共同事業を通じた、合唱指揮者、作曲家、歌手たちの教育活動も積極的に行っています。これらの活動により、未来の合唱芸術とそれを担う合唱団の大いなる可能性を確かなものにできるのです。

――世界のオーケストラとの共演も多いかと思いますが、近年行ったオーケストラと公演の中で、印象的なコンサートがあれば教えてください。

ヒューランドさん:2018年の春、ベルリンでモーツァルトの《ミサ曲 ハ短調》を歌いました。ダニエル・ハーディングの指揮でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演させていただき、本当に光栄でした。スウェーデン放送合唱団はクラウディオ・アバドの時代にベルリン・フィルと密な関係を築き、この合唱団における伝説を残しました。世界屈指のオーケストラと名高いステージで共演できるというのは素晴らしいことです。

我らがスウェーデン放送交響楽団とも、いつも楽しんで共演しています。最近では、ブラームスの《ドイツ・レクイエム》を共演し、ライブ録音もしました。音楽の魔法が煌めいた瞬間を経験しました。

――最後に、京都のお客様へのメッセージをお願いします。

ヒューランドさん:京都の皆さまに私たちの演奏を聴いていただけること、感謝に尽きません!日本という美しい国を訪れることを、どれだけ私たちは楽しみにしていることでしょう!食べ物、電車、自然、街並み、人々の親切さやホスピタリティが大好きです。そして何より、各地には素晴らしいコンサートホールがあり、訪れるたびに思いやりのある素晴らしい聴衆の皆さまが温かく迎え入れてくださり、私たちに大いなる愛と音楽への想いをくださるのです。Thank you, Dōmo arigatō ” ”Tack så mycket”!

――お忙しい中ご協力いただきまして、誠にありがとうございました!23日の公演を楽しみにしております!

(2019年10月事業企画課メールインタビュー)


★公演情報はこちら

★特別連載
第1回「スウェーデン放送合唱団の魅力~人間の声の可能性は無限大~」
第2回「スウェーデン放送合唱団 前音楽監督ダイクストラ氏に聞く」
第3回「広上淳一氏 特別インタビュー」

【京響スーパーコンサート特別連載③】広上淳一氏 特別インタビュー

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インタビュー

2019年11月23日(土・祝)に開催する「京響スーパーコンサート」では、広上淳一氏指揮の京都市交響楽団が世界トップクラスの合唱団「スウェーデン放送合唱団」と共演し、オール・モーツァルト・プログラムを披露します。

本ブログでは、インタビューなどを通して公演の魅力をお伝えする特別連載を行っております。連載の第3回は、本公演で指揮を務める、京響常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一氏にお話を伺いました。スウェーデン放送合唱団やモーツァルトについて色々と語っていただきました。


共演するスウェーデン放送合唱団について


――本日はお忙しい中、インタビューをお引き受けいただきありがとうございます。昨年11月に行われた記者会見で、スウェーデン放送合唱団を聴いたとおっしゃっていました。その時のことを含めて、同団の印象を教えてください。

広上氏:スウェーデンのノールショピング交響楽団の首席指揮者(1991~95年)をやっていた時、アムステルダムに住んでいて、ストックホルムへ仕事に行った時、聞いたことがあります。

スウェーデン放送合唱団はとても有名な合唱団で、亡くなったクラウディオ・アバド先生がベルリン・フィルの常任指揮者でいらっしゃった時、必ず彼らを使って合唱曲を録音したり演奏会をしたりしていました。もともとはスウェーデン放送局のオーケストラ(スウェーデン放送交響楽団)と一緒に編成されている合唱団でしたが、1990年代から2000年の初めにかけて、世界的な名声を確立するところまで有名になりました。

ペーター・ダイクストラ氏(※2007年~2017年スウェーデン放送合唱団の常任指揮者を務めた世界的合唱指揮者)の前の常任指揮者、エリック・エリクソン氏(”合唱の神様”と称され、スウェーデン放送合唱団の常任指揮者を長く務めたスウェーデン出身の大指揮者)が彼らを高いレベルにまで育ててダイクストラ氏につなげて、合唱団の自力をあげるためにものすごく貢献したと聞いています。アバド先生がぞっこんになったように、これまで世界中で成功してきました。

私がストックホルムで聴いた時は、スウェーデン放送交響楽団と一緒で、たしかヴェルディのレクイエムを演奏していたと記憶しています。とても上手な合唱団で、独特で透明な性質の声を持っていました。


公演プログラムやモーツァルトについて


――今回は「オール・モーツァルト・プログラム」です。広上さんは、モーツァルトが大変お好きだと伺いましたが、どのようなところに惹かれますか?

広上氏:モーツァルトのすごさは、偉大だという意味で共通の認識がありますよね。ベートーヴェンの作品も偉大なのですが、厳しいんですよね。いわゆる古典派からロマン派の最後の中で、ロマンティストな人でしたから、いろんな意味で楽譜に書かれた音符の中に全てエネルギーを注ぎ込んでいます。ピアノだろうとオーケストラだろうと指揮であろうと、彼の作品を演奏しようとする時は、エネルギーを吸い取られるようなパワーがあります。なんてことない譜面をちょっとでも気を抜いて演奏すると本当につまらない演奏になってしまうのがベートーヴェン。それくらい気を抜いたり、リラックスすることを許してくれないんです。だから恋人としては嫌なタイプですね。

――(一同笑)

広上氏:それくらい彼は大真面目というかロマンティストだったと思います。シンフォニーに限らず彼の作品すべてに言えることで、“美しい”というよりは、人間愛に満ちた悲しさや苦しさ、優しさなど、いろんな喜怒哀楽が全部そこに含まれている、というイメージを持っていますから、時々逃げ出したくなります。

モーツァルトはロマン派で例えると、R.シュトラウスに近くて、ベートーヴェンはマーラーに近い。自分をいじめていく中でエネルギーを発散しながら相手に表現していく、という魅力がベートーヴェンの作品にあると思うんです。一方、モーツァルトはもっと楽で、例えが正しいかわからないですけど、全身麻酔みたいな感じです。はーっとさせてくれる。だけどその中には、ものすごく精緻で精巧で高貴なものが流れていて、時々頭が真っ白になっても許してくれるように作品が導いてくれます。まさに、天才が故に人間愛に満ちている、と言いましょうか。人間の弱さに対しても寛大なんですよ。

ベートーヴェンは、自分が弱い質でしたから、自分も含めて人間に対して寛大ではないんですよね。どちらかというと要求をしていく。それに対して彼には成し得た能力があって、耳の疾患にしても父親の虐待にしてもそういうものを乗り越えていくだけのエネルギーと能力があったわけですけれども、みんながみんな、それをできるわけではないじゃないですか。

ですけど、モーツァルトっていう人が書いた作品の中には、そういう怒りとか悲しみとかフラストレーションを増殖させないで癒してくれるようなものがあります。モーツァルトの曲を聞くと、病院でも患者さんにとっていい、っていうのはそういうところ。その流れている音波と構造は多分がシンプルなんだけど、複雑なんですよね。シンプルに聞こえるんだけど実は精緻な計算の中に組み込まれたシンプルさなので、おそらく気が付かないうちに気持ちよくなって、まさに全身麻酔のよう、というのがモーツァルトの魅力だと思います。

――聞いている感じだとシンプルだけど、演奏する方はかなり気を遣わないといけない、ということでしょうか?

広上氏:いえ、聞いているとシンプルに聞こえるようですけど、実はそうではないということです。でもそれは、彼がすごく簡単なように見せてくれているだけで、すごくシンプルである裏側には、実はものすごい人間の人体と同じような細かな計算と優しさがある、というのがモーツァルト。ベートーヴェンの方が、もちろん精緻で考え抜かれているのですけども、そこに要求が入る。モーツァルトやバッハは要求はしません。こうしようとか、これが絶対だとか、“俺が正義”だと言わないんです。

広上氏:「正義」っていうのは自分が思い込んでいる誤解だと思います。相手にだって「正義」があって、そこで意見が違うと衝突する。私の方が「正義」だと。でもそれは誤解です。どちらも正義でどちらも間違っているかもしれないんです。それを絶対的な「正義」だと言ったのがベートーヴェンで、音楽家としては時々逃げ出したくなります。

――ちなみに広上さんは、モーツァルトとベートーヴェン、どちらのタイプですか?

広上氏:モーツァルト(笑)。私たち演奏家は役者なので、ベートーヴェンの作品をやるときは、ベートーヴェンが乗り移ったように演奏しないといけない、そういう顔でアクションをしないといけないのです。僕自身は立派な人じゃないですし。

ベートーヴェンは、サヴァン症候群ではないかと思うんです。これだけのことはできる、っていうある種の特殊能力ですから、ある部分に欠けていた部分もあったでしょう。例えば彼の晩年の家の中に行くと、床に排泄物が落ちたままだったりして、それを女中さんに毎日掃除させて、それができなければやめさせて、1週間に3人くらい女中さんを変えていたということが日記に残っています。娼婦のところへ毎日行って、「今日も女の人を狩ってしまった、なんてことだ」と自分自身を痛めつけたという日記もある。とっても人間的ですけれども、ある意味では激しい人だと思います。ピアノも上手かったですしね。

モーツァルトの場合は、ベートーヴェンと異なり、貴婦人にモテたんです。女性がどことなく「かわいいわね」って言っちゃうようなチャーミングさがありました。2人は、時代も40,50年違います。貴族社会が壊れ始める真ん中くらいの時代がモーツァルトで、ベートーヴェンの場合はフランス革命の前後ですから。

――京響と過去に共演したモーツァルトの中で、印象に残っている曲や演奏会があれば教えてください。

広上氏:ずいぶん前に交響曲「リンツ」をやりました。モーツァルトの「レクイエム」はたぶん僕と京響でやるのは初めてではないでしょうか。なので、ちょっと緊張しています。

この曲はモーツァルトにとって最後の作品です。これまで、いかにもそう言われてきましたけど、この作品を書いた時、本人は死ぬつもりじゃなかったんですよ。生の豚肉をあまり焼かずに食べて、ばい菌が入って亡くなったらしいですよね。どこかの貴族が、自分の書いた曲としてみんなに宣伝したいからということで、お金渡すからゴーストライターとして作曲してくれというお願いだったようです。たまたまそれが絶筆になってしまっただけ。それがいかにも「モーツァルトの神秘」、「モーツァルトの謎」のように独り歩きしているわけです。しかも彼の墓に関して言えば、共同墓地のどこに入れられているかわからないんですよね。不思議といえば不思議です。

――レクイエムは他の曲と比べて使っている楽器が違いますよね。

広上氏:バセットホルンなどですね。彼は、初めて「神様の楽器」と言われていたトロンボーンをこの曲の中で使いました。ちなみにトランペットは天使の楽器、ホルンは俗人の楽器、といわれています。

 

――今回京響と「レクイエム」を演奏するは初めてということですが、広上さん自身は何度か演奏されているのでしょうか。

広上氏:今まであまりやっていなくて、おそらく3回目くらいです。この曲は聞くのは好きで、素晴らしい作品ですけど、演奏するのは怖い。
怖いというか、恐れ多い感じがします。絶筆になって、可もなく不可もなくという弟子ジュスマイヤーが完成させましたが、師匠の作品をあまり壊さないように気を付けているのがよく分かります。一応モーツァルトのスケッチは残っているらしく、オーケストレーションした研究家もいます。

いずれにしても「ラクリモザ(涙の日)」の途中で絶筆していますから、そういう意味で畏怖も感じますし、巡り合わせは感じますが、あまりそういうところに焦点を合わせないで演奏したいと思います。集大成の素晴らしい作品です。彼はそのつもりで書いてなくて、これからいっぱいシンフォニーをたくさん書きたいと言っていたそうです。41番までしか残ってないけど、60番くらいまで書きたい気持ちがあったそうですから。モーツァルトが長生きしていたら、ベートーヴェンからの影響も受けた作品が出来ていたかもしれませんよね。

――レクイエムとのカップリングの曲として、レクイエムにつなげるために、「ト短調」の交響曲2曲(第25番あるいは第40番)を京都コンサートホールからご提案させていただきましたが、第25番を選ばれた理由を教えてください。

広上氏:第25番は「アマデウス」の最初のシーンで使われていますよね。第40番にすると重くなってしまって、かなりエネルギーを取られてしまい、メインの前にお腹いっぱいになってしまうから第25番にしました。

歌劇「皇帝ティートの慈悲」は、彼のオペラ中でもシリアスな悲劇です。普段、「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」、「魔笛」など、モーツァルトのオペラは明るいイメージがあるかもしれませんが、悲劇もたくさん書いています。普段はあまり取り上げないのですが、今回は割と珍しい曲を取り上げてみました。

――「皇帝ティートの慈悲」は、レクイエムと同じ年に書かれたオペラですよね。

広上氏そうそう、死ぬ間際に書かれた最後のオペラですよね。今回の選曲はなかなかいいプログラムだと思っています。


みなさまへのメッセージ


――最後に、コンサートを楽しみにされているお客様へ、メッセージをお願いします。

広上氏満席になってほしいです。一番嬉しいのは、放っておいても常に市民の生活の一部として、一か月に一回の定期演奏会が満席になること。私たちは市民の皆さまに応援していただき、活動しています。だから、私たちは市民の皆さまに音楽で還元する存在にならないといけません。皆さまが一年に一回京響のコンサートに行ってみようと思うだけでも全てのコンサートが満席になると思います。

口コミでいいのですが、「知らない曲でも良い演奏を常に聴かせてくれる場所ですよ」という宣伝をしてもらえると嬉しいですね。有名な曲をやると人が来るというのはどこも同じですけど、聞いたことのない曲を「知らない」と思わないで、「なんか知らないけど面白いらしい」って言ってくださると、市民の生活の中に少しでもオーケストラが染み込んでいきます。それが正のスパイラルに入れば、放っておいても2,3年先までコンサートが全て売り切れになると思います。そんな状態になってほしい、というのが私の夢です。

(2019年6月事業企画課インタビュー@京都コンサートホール大ホール楽屋にて)


★公演情報はこちら

★特別連載
第1回「スウェーデン放送合唱団の魅力~人間の声の可能性は無限大~」
第2回「スウェーデン放送合唱団 前音楽監督ダイクストラ氏に聞く」

【フィラデルフィア管弦楽団 特別連載⑤】ピアニスト ハオチェン・チャン特別メールインタビュー

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インタビュー

アメリカ“ビッグ5”の一つである「フィラデルフィア管弦楽団」の魅力を様々な視点からお伝えする「特別連載」。

第5回は、11月3日の京都公演でラフマニノフ《ピアノ協奏曲第2番》を演奏するピアニストのハオチェン・チャン氏へのメールインタビューの模様をお届けします。チャン氏自身のことをはじめ、直近のフィラデルフィア管弦楽団との共演や、今回のプログラムについてなど色々とお聞きしました。

――インタビューを引き受けてくださり、ありがとうございます。
11月3日の京都公演で共演するマエストロ・ネゼ=セガンとフィラデルフィア管弦楽団(以下「フィラデルフィア管」)とは、今年5月の中国ツアーで共演されましたね。どのような演奏会でしたか?

ハオチェン・チャン氏:コンサートは素晴らしい出来でした。私たちはラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》をしたんですけど、フィラデルフィア管ってラフマニノフのお気に入りのオーケストラだったんですよ。ラフマニノフは、フィラデルフィア管が長年培ってきたロマンティックな音色と音楽作りが好きだったようです。それは今のフィラデルフィア管にも引き継がれています。
ですので、《パガニーニの主題による狂詩曲》をフィラデルフィア管とマエストロ・ネゼ=セガンと演奏できたことは、本当に感動的な経験でした。

 

――今回のプログラム、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、これまで何度も演奏されていると思いますが、ピアニストとして感じるこの曲の魅力を教えてください。

チャン氏:私にとって、この作品の最大の魅力は、ラフマニノフの精神や彼の音楽観が最もよく表現されている点にあると思います。つまり、ラフマニノフの表現力の深さや彼が追い求めようとする豊かで色鮮やかな和声です。ラフマニノフは本当に独創的天才です。彼の音楽には、不自然なことや取ってひっつけたような箇所が全くないのです。

 

――ハオチェン・チャンさんはフィラデルフィアにあるカーティス音楽院で学ばれたので、フィラデルフィアという土地は非常に思い入れのある場所かと思います。音楽的側面から見てフィラデルフィアはどういう魅力を持つ街でしょうか。

チャン氏:「フィラデルフィア」という街は、カーティス音楽院で学んだ私にとって切っても切り離せない存在ですし、私の人生において非常に印象深い街です。また「カーティス」という町は、私が聴いて育ったフィラデルフィア管の本拠地で、最高峰の室内楽シリーズが開催されていたり、美術館が多くあります。これらの芸術的側面を脇に置いたとしても、「フィラデルフィア」はユニークな都市です。その理由は、大都市のキャパシティを持ちながら、小さな町にあるような親密さも兼ね備えているからで、私にとって理想的な組み合わせです。

(c) B Ealovega

――音楽以外では絵や詩を書くことがお好きだと、あるインタビュー記事で見ました。どういった絵や詩を書くことが多いですか。また普段の演奏につながるところはありますか。

チャン氏:明確なスタイルを持っているわけではありませんが、純粋に自分の喜びのために、余暇を楽しむだけの“ただの”アマチュアです。技法的には、コンテンポラリーのスタイルだと思います。ただ“コンテンポラリー(現代的)”というカテゴリーは、いつが“現代”かとても曖昧なんですけどね…。
絵や詩を書くことで明確なアイディアを得られるとは思っていませんが、私の芸術的視点を豊かにしてくれます。また、きっと書かなければ見過ごしてしまうような音楽の細部に対して、自分の感性をこれまで以上に少し鋭く敏感にしてくれていると思います。

 

――来年で30歳を迎えられると思いますが、30歳になったら何か挑戦しようと思うことはありますか。

チャン氏:「挑戦」って何か特別なことであるべきではない、と私は思っています。芸術って、つまりは“成長すること”ですよね。だから私たちは常にチャレンジすることをやめないのです。例えば、私は今シーズン、いろんな場所で違うオーケストラと2公演形式でベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲全曲を演奏します。でも、私が30歳になる時に特別なことにチャレンジしているかどうかは、今の私には分かりません。

 

――最後に、京都のお客様へのメッセージをお願いします。

チャン氏:フィラデルフィア管とマエストロ・ネゼ=セガン、そして私が皆さまへお届けする刺激的なプログラムをお楽しみいただけましたらと思います。また、過去にリサイタル(※2011/10/11と2012/10/22に大ホールで行われたリサイタル)をさせていただいて以来、特にその美しいデザインと感動的な音響から、京都コンサートホールで音楽作りをできることに惚れ込んでいます。なので、また京都へ戻って、皆さまと音楽を共有できることを大変楽しみにしております。

 

――お忙しい中インタビューにお答えいただきまして、誠にありがとうございました!11月3日の公演を楽しみにしております!


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★特別連載
【第1回】受け継がれる伝統とフィラデルフィア・サウンド
【第2回】アメリカ在住ライターが語るフィラデルフィア管弦楽団の現在(いま)
【第3回】フィラデルフィア・サウンドの魅力
【第4回】指揮者 ヤニック・ネゼ=セガン特別メールインタビュー

フォーレに捧ぐ――特別寄稿「フォーレの音楽とそのピアノ五重奏曲の魅力」

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アンサンブルホールムラタ

日本を代表する若手トッププレイヤーたちが京都でフォーレの傑作に挑むコンサート「フォーレに捧ぐ――北村朋幹×エール弦楽四重奏団」(11/10開催)。

今回は、作曲家・音楽評論家でフランス音楽に詳しい野平多美さんに、フォーレの音楽と今回演奏される「ピアノ五重奏曲」について特別にご寄稿いただきました。


フォーレの音楽とそのピアノ五重奏曲の魅力/野平多美

フォーレの音楽は、とにかく身を委ねて聴く。それが最上の方法と分かっていても、何かと詮索してしまうのが人間のサガである。では、何を頼りに聞いたらいいのか。実は、もっとも重要なのが、いつもより“耳を開き”瞬間瞬間の“音楽の場を楽しむ”ことが有効である。

“音楽の場”とは、豊かな響きの移り変わりであったり、何か主張するテーマとその背景であったり。これは、古典派からロマン派の音楽を中心に聴いている方には察知するのがお得意なはず。しかし、フォーレの音楽で難しいのは、句読点が曖昧なこと。バロックー古典派―ロマン派では、何か断言するような締めくくりが出てくるのが拠り所なのであるが、それがなかなか聞こえてこないのである。だから、聴き始めは、行先知れずの、その音楽の宙吊り状態を楽しむのが秘訣である。そうしていると、自ずと音楽が必要な句読点に導いてくれる。

フランス近代音楽の三巨匠が、フォーレ、フォーレの弟子のラヴェル、そしてドビュッシーとすると、ラヴェルは、どれほど豊穣な響きで推移しても、音楽の句読点がとても明確である。輪郭も、くっきり描かれているので聴いていて迷子にならない。絵画で言えば、ゴーギャンか、美学的には異なれどロートレックの絵のようである。かたやドビュッシーは、細い線が幾重にも重なっても透明な響きが特長であり、近くで見すぎると何やら曖昧模糊としているが全体像が割と明確なモネやスーラの絵と似ていることは、ご存知であろう。では、フォーレはと言えば、実は絵の手法では難しく、同類の画家がなかなか思いつかない。突如とした色彩の転換が音楽で行われ、これは、ライヴで変化する音楽ならではの本質を捉えた見事な特徴と言える。つまり、聴いている者が期待するような音楽(調性・音響)の進み方をしないことが、フォーレの音楽表現の特長なのである。

 

知っておくべきことは、フォーレの音楽は、基本的にオルガン音楽がその源流になっているということ。それを頭に置いてフォーレ作品を聴いてほしい。しばしば下方にかたまる和声的な響きはそれに起因するものである。フォーレは、サン=サーンスの跡を継いでマドレーヌ寺院の正オルガニストを務めた。さらに、幼少の砌には、ニデルエイメール宗教音楽学校でグレゴリオ聖歌を学び、その和声付けなどの修練を重ねたフォーレの耳は、私たちが親しんでいる長調、短調の2極化の音響だけでなく、教会旋法の響きも根底にあるのだ。ちなみに、父親が校長を務めていたピレネ地方の小さな村モンゴジの師範学校の教会堂にあった小オルガンは、フォーレが触れた最初のオルガンで、本当に素朴な音がしたのを覚えている。

和声を詳しく見ると、三和音が基本形(ドーミーソ)で示されるのは、非常に間遠になっている。あとは、三和音の転回形(ミーソード、ソードーミ)の響きを好んでいて、そして属七の和音(ソーシーレーファ)は、圧倒的に第2転回形(レーファーソーシ)をフォーレは多用した。

そして音楽の中に時折見られる決然とした表情は、フォーレの信条そのもの。

パリ音楽院の院長時代には、時代に即して必要なものと不必要なものを見極め、科目の新設や教授たちの選考もとても潔く決断したという。これを、音楽院のロベスピエールと呼んだ人もいるほど。人情に流されないで信念を貫くのが、フォーレ流なのである。

「ピアノ五重奏曲」のそれぞれの背景を見ると、1909年作曲の第1番は、人生の中でも自らの感情を隠さずに恋愛に創作に、とても豊かな時代の作品。フォーレ独特の温かな厚い響きも、人生の満足度が表れている。

第2番は、それから後、亡くなる(1924年)前、最晩年の1921年に聴覚の異常と戦い、また病を得ながらも、内的な音を深く深く探求する方向性にある作品なので悲壮感が漂う。

聞きどころは、先述した和声の変化と、オルガニストとしては心から崇拝するバッハの対位法的な書式に洗練さを加えた、各声部の見事な絡み合いであろう。

若い演奏家が、この老成した音楽に高いテクニックとフレッシュな音楽感覚で挑むのは、聴く者にとってとても興味をそそられる。健闘を大いに期待したい。


野平 多美(作曲家、音楽評論家)

国立音楽大学を卒業後、フランスに渡り、パリ国立高等音楽院において作曲理論各科を卒業。1990年に帰国。国立音楽大学講師、東京学芸大学講師を経て、現在、お茶の水女子大学非常勤講師。2005年よりアフィニス文化財団研鑽助成委員、18年6月よりアフィニス文化財団理事を務めている。日本フォーレ協会、日本ベートーヴェンクライス会員。
作曲家としては、ギターのための「Water drops」(2017/CD・NAXOS「福田進一・日本のギター音楽No.4」に収録)、絵本と音楽の会「ぐるんぱのようちえん」(作曲、音楽構成2016)ほか作・編曲を多く手がけている。音楽評論家としては、「音楽の友」ほかで健筆を揮うほか、トッパンホールの企画アドヴァイザー(1999~2001)、軽井沢の音楽祭などや都内の演奏会の公演企画に携わり好評を得ている。2018年には、野平一郎作曲・室内オペラ「亡命」の台本を書き下ろし話題になった。
主要著書は「魔法のバゲット ~ マエストロ ジャン・フルネの素顔」(全音楽譜出版社)、 「フォーレ声楽作品集」(共著/同)などがある。


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★出演者特別インタビュー
①「北村朋幹さん×山根一仁さん(前編)」
②「北村朋幹さん×山根一仁さん(後編)」
③「田原綾子さんインタビュー(前編)」
④「
田原綾子さんインタビュー(後編)」

【フィラデルフィア管弦楽団 特別連載④】指揮者 ヤニック・ネゼ=セガン特別メールインタビュー

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京都コンサートホール

2019年11月3日(日)に「第23回京都の秋 音楽祭」のメイン公演の一つとして14年ぶりの京都公演を行う、アメリカの名門「フィラデルフィア管弦楽団」。本公演やアーティストの魅力をお伝えすべく、当ブログにて「特別連載」を行っております。

第4回は音楽監督のヤニック・ネゼ=セガン氏にメールインタビューを実施し、フィラデルフィア管弦楽団の魅力や今後の展望をはじめ、ご自身の指揮者としてのエピソードなどを語っていただきました。どうぞお楽しみください。

Yannick Nézet-Séguin portrait at Kimmel Center for the Philadelphia Orchestra, 11/8/16. Photo by Chris Lee

――この度は、お忙しい中インタビューをお引き受けいただき、ありがとうございます。ネゼ=セガンさんが音楽監督に就任してから7年経ちましたが、オーケストラはどのように変わりましたか?

ヤニック・ネゼ=セガンさん(以下敬称略):フィラデルフィア管弦楽団とは、2008年に初共演して以来の特別な関係です。私たちの親密な関係性は、この名門オーケストラをけん引してこられた歴代の指揮者の上に築き上げられているものであり、何年もかけて育まれたものです。私たちの目標は、音楽の喜びを、地元フィラデルフィア、アメリカ、そして世界中の聴衆と分かち合うことです。

The Philadelphia Orchestra performs on New Years Eve, Thursday, Dec. 31, 2015, in Philadelphia. (Photo by Jessica Griffin)

――フィラデルフィア管弦楽団の特徴や、アメリカや世界のオーケストラの中での位置づけをどのように捉えていますか?

ネゼ=セガン:フィラデルフィア管弦楽団は、ご存じのとおり、その唯一無二のサウンドがよく知られていますし、また、素晴らしく創造性に満ちた豊かな歴史を誇ります。私たちはツアーでの功績を誇りに思っており、世界中のオーケストラファンとともに築いてきた関係性を大切にしています。ツアーでは、ただ単に美しいコンサートを行うだけではなく、その土地の環境にどっぷりと浸かり、ツアーで出会う人と人との交流を大切にしています。

――フィラデルフィア管と共に現在取り組まれている活動やプロジェクト、そして今後の展望について教えてください。

ネゼ=セガン:とてもワクワクした気持ちで2019-2020年シーズンを迎えています。今シーズンは、女性作曲家の作品や女性指揮者を取り上げ、ベートーヴェンの交響曲全曲を現代作品と一緒に演奏することで生誕250年を祝福し、さらに、声楽作品からインスパイアされた編曲作品をお届けします。私たちはみなさんと音楽を共有することにより、人生を豊かにすることを望んでいます。そしてその実現に大きな責任感を持って取り組んでいます。

――来日公演ソリストのハオチェン・チャンについて、共演経験はありますか?ハオチェン・チャンの印象を教えてください。

ネゼ=セガン:ハオチェン・チャンは、たいへん優れた才能ある音楽家なので、共演できて嬉しいです。彼はフィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、私たちオーケストラメンバーと固い信頼関係を築いてきました。彼は音楽・技術の両面において、考え抜いて作品を解釈して演奏します。共演者として理想的です。2018年春のオーケストラツアーでは、ハオチェンと共演できて嬉しかったですし、またこのツアーで一緒に演奏できることを楽しみにしています。

(C)Jan Regan

――指揮者になろうと思ったきっかけを教えていただけますか。

ネゼ=セガン:小さい頃から指揮者になりたいと思っていました。途中まではピアノを弾いて、それが楽しかったのですが、合唱団で歌うということを始めてからは集団で音楽を作るということが、どれだけ自分を活気づけ、良い刺激を与えてくれるかに気付きました。グループの中で自分の役割を持つこと、そして他人を助けることに喜びを見出していましたので、指揮をするということは自分にしっくり来ました。私はこの仕事をしていて幸せです。世界中の音楽家と素晴らしい音楽をつくることが出来ますし、作品を通して世界中の聴衆の方々に音楽を聴く喜びを伝えています。

――就寝前もベッドでスコアを読むと聞きましたが、オフの日はどうのように過ごされていますか?

ネゼ=セガン:音楽から離れているときは、フィラデルフィアか、ニューヨーク、モントリオールの自宅で、パートナーのピエールと3匹の猫と一緒にゆっくり過ごすようにしています。そしてまた、自分自身の体の状態を良く保つための時間を取るようにしています。例えば、ランニングをしたり、散歩に出かけたり、ヨガをしたりといったことですね。

Yannick Nézet-Séguin conducts the Philadelphia Orchestra at Carnegie Hall with Gil Shaham as soloist, 10/13/15. Photo by Chris Lee

――指揮をする時、どんなことを考えてイメージして振っていますか?

ネゼ=セガン:作曲者が何を感じ、伝えようとしているのかを考えています。

 

――今回のプログラムについて、選曲意図と聴きどころを教えてください。

ネゼ=セガン:今回私たちは、非常に有名なラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏します。偉大な作曲家、ピアニスト、指揮者であるラフマニノフは、フィラデルフィア管弦楽団と深い繋がりがありました。彼は晩年、フィラデルフィア管弦楽団のサウンドを想像しながら作曲した、と話しているのです。そしてプログラム最後は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」で華々しく締めくくります。どちらの作品においても、この偉大なオーケストラの素晴しい演奏を体験していただけるでしょう。

 

――最後に、京都のお客さまへのメッセージをお願いします。

ネゼ=セガン:この名門オーケストラの音楽監督として、フィラデルフィア管弦楽団と京都で演奏出来ることを、大変嬉しく思っています。わたしたちは、“皆さん” のフィラデルフィア管弦楽団です。例え私たちがどこで演奏しようとも――フィラデルフィアであっても、世界中のどこかであっても、同じ旋律を演奏します。私たちがどこを旅していようと、最愛の聴衆である“皆さん”と音楽の喜びを共有するために、私たちはここにいるのです。みなさんは、私たちファミリーの一員です。美しい京都で、皆さんのクラシック音楽への深い愛情に触れることを楽しみにしています。今回の公演が、皆さんに大きな喜びをもたらしますように!

――お忙しい中誠にありがとうございました!

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【第2回】アメリカ在住ライターが語るフィラデルフィア管弦楽団の現在(いま)

【第3回】フィラデルフィア・サウンドの魅力