ピアニスト 永野英樹 インタビュー<後編>(2025.11.8 ピエール・ブーレーズ生誕100年記念事業 ブーレーズへのオマージュ)

Posted on
インタビュー

偉大なる作曲家 ピエール・ブーレーズの生誕100年を記念して開催する、京都コンサートホールオリジナル企画「ブーレーズへのオマージュ」(11月8日)。

本公演の出演者であり、ブーレーズから薫陶を受けたピアニスト 永野英樹さんへのインタビュー後編では、本公演のプログラムについてお話を伺いました。

前編はこちら

【インタビュー後編:本公演のプログラムについて】

―――今回、ブーレーズの作品から《12のノタシオン》《ドメーヌ》《フルートとピアノのためのソナチネ》の3作品を選んだ理由をお聞かせください。

永野英樹

ブーレーズの室内楽作品は少なく、片手で数えられるくらいしかありません。もちろんピアノのソロ作品だけでプログラムを組むこともできなくはないのですが、どうしても偏ってしまうため、ソロも交えつつ、作品ごとに変化をつけるという意味でこの3作品を選びました。作曲時期によってブーレーズの作風も変わっていきますので、そういう点も聴きどころだと思います。

ブーレーズの作品には作品番号が付いていませんが、《12のノタシオン》は彼の作品カタログの中では作品番号1(=作曲年代が一番古い)にあたるほど、本当に初期の作品です。当初は古典的な手法を引きずっているという点で、ブーレーズ自身はこの作品をカタログの中に入れていませんでしたが、やはりこの後の作品へのつながりが感じられます。ブーレーズの音楽語法の出発点ともいえるような作品ですね。

《ドメーヌ》は偶然性の音楽(演奏時に奏者自身で演奏するフレーズや順番などを選択するもので、演奏のあり方を偶然に任せた音楽のこと)で、ジョン・ケージとの親交などから影響を受けて書かれた作品です。クラリネット奏者にとっては重要なレパートリーのひとつでもあります。

《フルートとピアノのためのソナチネ》は、ブーレーズが若い頃、一番血の気の多い時期の作品で、とても迫力があります。音楽的で演奏効果も高く、まさにブーレーズ!といった感じの作品です。

 

―――クラリネット・ソロの《ドメーヌ》、そしてフルートとピアノのデュオ《ソナチネ》については、選曲時に奏者のイメージもあったのですか?

そうですね。クラリネットの上田希さんとは、「いずみシンフォニエッタ」で何度かご一緒したことがありました。また、サントリーホールのサマーフェスティバルでも上田さん、そしてフルートとの上野由恵さんとご一緒したことがありました。ですので、コンサートの後半に演奏するシェーンベルク/ウェーベルン編曲の《室内交響曲第1番》も含め、お二人と一緒に演奏したいと思い選曲しました。

 

―――ブーレーズ以外の作曲家の作品を入れた意図を教えてください。

ブーレーズの作品だけではなくて、彼と関わりのある作曲家やブーレーズ自身が好んで演奏していた作品を入れることで、“ブーレーズ”という人としてのイメージを知っていただきたいという意図もあります。ブーレーズの作品だけを聴くよりも音楽、そして彼の人物像に奥行きが出ると思いますね。ラヴェルの《夜のガスパール》は斬新な部分と昔ながらの作風を感じられる部分があります。シェーンベルクの《室内交響曲第1番》はまだ調性音楽で書かれているため、シェーンベルクの作品に馴染みのない方も聴きやすいと思います。

 

―――ラヴェルとシェーンベルクはブーレーズの作品とどのような関係性がありますか?

ラヴェルは作風に直接的な関係性はありませんが、ラヴェルや同じくフランス印象派の作曲家であるドビュッシーは、近代から現代への過渡期にあった作曲家です。書法や楽譜を忠実に再現しようとする姿勢はラヴェルに近しいものを感じはしますが、どちらかというとブーレーズはドビュッシーの方が音楽に対する向き合い方や思想などの面で、より親近感を持っていたように思います。でも、ラヴェルのことも一目置いていて、ブーレーズ自身もラヴェルの作品はたくさん演奏していましたので、そういう意味では近しい作曲家だと思います。

ブーレーズは血の気が盛んな若い頃はいろんな作曲家に対し歯に衣着せぬ批判をしていて、シェーンベルクやストラヴィンスキーなど他の作曲家の考えや作曲技法を全て受け入れたわけではありませんでした。でもシェーンベルクに関しては確実に影響を受けていますね。例えば、アンサンブル・アンテルコンタンポランでもシェーンベルクの作品をたくさん演奏していますし、ブーレーズが遺したシェーンベルクやウェーベルンの作品の録音は、ブーレーズのコレクションのなかでも大切なもののひとつと一般的にも言われています。そういう意味でも、シェーンベルクら新ウィーン楽派***の作品というのは、ブーレーズにとって、演奏家としても作曲家としても大切な位置にあるものだと思います。特に今回取り上げるシェーンベルク/ウェーベルン編曲《室内交響曲第1番》は、ブーレーズがよく指揮をしていた作品です。

***新ウィーン楽派
20世紀前半、ウィーンを拠点に活動したシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクのこと。

 

―――永野さんが本公演のチラシに寄せてくださったメッセージの中で「難解だと思われがちなブーレーズの音楽だが、指揮者として活躍した彼ならではの響きやリズムへのこだわりが詰まっている」とありますが、そのこだわりとはどのようなものですか?

ピエール・ブーレーズ

先ほどもお話ししましたが、ブーレーズは安定したリズムが嫌いで、どこかでリズムを壊していました。初期作品の《12のノタシオン》でもこの手法はすでに見られるのですが、そもそも楽譜に拍子を書いていないんですね。常に3/4拍子だとか6/8拍子ではなく、小節ごとに拍子が変わっていくこともあれば、メロディーのような箇所も4分音符で分割される拍ではなくて、それにプラス16分音符みたいな箇所がたくさん出てきます。そういったリズムの崩し方が、ブーレーズの特徴だと思いますね。

響きに関しては、ピアノ・ソロの作品でも、今回演奏する《フルートとピアノのためのソナチネ》でもそうなのですが、音がよく響く書き方をしています。楽器を演奏している方だとわかるかもしれないのですが、音がすごくよく響く作り方と、あまり響かない作り方というのがあり、その点でブーレーズは音がよく響く作曲をしていますね。ドビュッシーやラヴェルなどと同様に、フランス人独特のピアノ作品の作曲手法や、楽器の鳴らし方、和音の書き方があるのだと思います。特にピアノのエクリチュール(書法)に関して言えば、ブーレーズ自身がピアノを弾いていたということも大きく影響していたと思いますね。

 

―――永野さんが普段活動されているパリに比べ、日本ではまだ現代音楽に対して「難解」というイメージがどうしても強いように感じます。今回のプログラムやブーレーズの作品、そして現代音楽を聴く際のポイントを教えてください。

現代音楽というネーミングには語弊があります。現代音楽とは曲のスタイルではありません。20世紀以降の音楽がほとんど現代音楽として括られていますが、その中にはいろいろなスタイルがあります。まずはいろいろな音楽を聴いていただき、自分が好きなものを探すことが第一歩だと思いますね。現代音楽と聞いて「嫌」と思うよりも、「この曲・この作曲家は知らないから聴いてみよう」とか、「この国の作曲家は知らないから聴いてみよう」とか、そんな感じでよいと思います。あるいは「この楽器が好きだから聴いてみたいな」とか。そのくらいの興味でいろいろと聴いていただくと、ひょっとするとその中に自分の好きなスタイルの現代音楽が見つかるかもしれません。僕もブーレーズは偉大だと思うのですが、作曲家は必ずしもブーレーズ一人ではありません。現代を生きている作曲家、若い作曲家もたくさんいますし、彼らから新しいスタイルの音楽もどんどん生まれていくわけですので、たくさんの種類の曲を聴くのが一番よいと思います。あと、絶対に言えるのは、どんなものでもそうなのですが、録音されたものよりライブで聴く方が「あっ、これなら聴ける!」という音楽が絶対にあると思いますので、ぜひコンサートで聴いていただきたいです。

 

―――ありがとうございました。ブーレーズの真髄に迫るコンサート、楽しみにしています!

(2024年4月 大阪にて 事業企画課インタビュー)

指揮者 ユベール・スダーン インタビュー(2025.9.15 第14回 関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール)

Posted on
京都コンサートホール

 

今年で14回目となる「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール」。関西の8つの音楽大学・芸術大学の学生が京都コンサートホールに集い、オーケストラや合唱の演奏を通じて学生間の交流を深め、互いに高めあう、年に一度のフェスティバルです。
第14回公演の指揮者ユベール・スダーン氏に、今年のフェスティバルについてお話を伺いました。


毎年、名だたる指揮者と共に熱演を繰り広げてきた本フェスティバル。今年の指揮者はフェスティバル史上初となる海外の指揮者――オランダ出身の名匠ユベール・スダーン氏です。音楽家を目指す学生にとって、言わずと知れた名匠との共演は何ものにも代えがたい経験となるでしょう。スダーン氏も学生との共演について今の若い音楽家はみんな活気にあふれており、私自身もエネルギーを分けてもらえます。そして、プロの演奏家と言ってもよいほど、演奏も大変素晴らしい。今回、関西の学生と一緒に演奏できることが楽しみでなりません。』と語ってくださいました。

 

今年のプログラムはブラームスの《交響曲第4番》と、チャイコフスキーの《交響曲第4番》と、2大交響曲が並びました。どちらの曲もオーケストラの主要作品です。
どちらも大作と言われ、技術的にも音楽的にも難しい作品です。練習も大変でしょうが、テクニックの面に捉われず、ブラームス、そしてチャイコフスキーの音楽がどういうものなのか、学生たちと一緒に考え作っていきたいです。

 

ブラームスの《交響曲第4番》は彼にとって最後の交響曲。作曲されたのは1884~1885年、《クラリネット五重奏》などの傑作を生み出した晩年に差しかかる少し前です。
ブラームスは「交響曲」の作曲においては非常に慎重でした。しかしそれは第1番が作曲される長い長い構想期間の間だけで、第2番、第3番については短期間で書き上げました。第4番も同様に比較的短い期間で完成されましたが、その内容はより洗練され「ブラームスらしい」気難しさを備えています。

 

チャイコフスキーの《交響曲4番》は今から50年前、スダーン氏が29歳の時に日本デビューを飾った際に演奏した作品です。
私自身、チャイコフスキーの交響曲を指揮する機会はあまりありませんでした。チャイコフスキーが《交響曲第4番》を作曲した時期、彼の人生に大きな転機が訪れていました。そのことが音楽にも大きく反映されています。ベートーヴェンにとっての「英雄交響曲」のように!


偉大なる2つの交響曲に挑む今年の「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル」。
ブラームスとチャイコフスキー、2人の作曲家の代表的な作品を一度に演奏することは、学生にとってすでに大きな挑戦です。』と語るマエストロ。
学生との熱演を、ぜひ京都コンサートホールでお聴きください!

 

 

 

第14回関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル IN 京都コンサートホール

【日時】2025年9月15日(月・祝)15:00開演(14:00開場)
【会場】京都コンサートホール 大ホール

【出演】
ユベール・スダーン(指揮/東京交響楽団 桂冠指揮者、オーケストラ・アンサンンブル金沢 名誉アーティスティック・アドヴァイザー)
【参加大学】
大阪音楽大学、大阪教育大学、大阪芸術大学、京都市立芸術大学、神戸女学院大学、相愛大学、同志社女子大学、武庫川女子大学

【プログラム】
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
チャイコフスキー:交響曲第4番 へ短調 作品36

【料金】全席自由 一般1,500円、高校生以下500円
※未就学児入場不可

♪ 14:20~京都市立芸術大学・神戸女学院大学の学生によるロビーコンサートを開催します。
♪ 8大学それぞれの魅力を紹介する案内ブースをホワイエに設置します。進学に関するご相談も可能です。

 

 

 

 

 

 

公演情報・チケット購入はこちら!

合奏指導者 井手カナ インタビュー(京都市ジュニアオーケストラ)

Posted on
京都コンサートホール

2024年度から京都市ジュニアオーケストラの合奏指導者として関わってくださっている、指揮者の井手カナさん。
東京藝術大学音楽学部指揮科に在学する傍ら、NHK交響楽団N響アカデミー指揮研究員を務めるなど、忙しい日々を送っていらっしゃいます。
京都市ジュニアオーケストラとは、8月9日開催の「ミュージック・サマー・コンサート」で共演予定!現在、最後の追い込みのリハーサルを重ねているところです。

そんな合間を縫って、井手さんにインタビューを行いました。
なぜ指揮者を目指すようになったのか、どんな指揮者を目指しているのか・・・などなど、様々なお話をお伺いすることができました。
ぜひご覧ください!

Continue reading “合奏指導者 井手カナ インタビュー(京都市ジュニアオーケストラ)”

壬生寺 貫主 松浦俊昭氏×京都コンサートホール プロデューサー 高野裕子 対談(Kyoto Music Caravan 2025)

Posted on
インタビュー

京都コンサートホール開館30周年事業として、京都市内各所で開催中のクラシック音楽の一大イベント「Kyoto Music Caravan 2025」。
2023年以来、2度目の開催となる本イベントは、これまでに10公演中4公演を実施し、多くのお客さまにご来場いただいています。

今回、8月11日公演の会場である壬生寺の貫主 松浦俊昭氏と、京都コンサートホール プロデューサーの高野裕子で、「Kyoto Music Caravan」にまつわる対談を行いました。ぜひ最後までご覧ください。


◆前回の「Kyoto Music Caravan 2023」について

――「Kyoto Music Caravan 2023」の開催から2年が経ちました。

松浦さん(以下敬称略):コンサートを開催したのはお盆の時期で、壬生寺では毎年「万灯供養会(まんとうくようえ)」を行っています。この期間中は元々お越しいただく方が多いのですが、本堂前で演奏を聴けるということもあり、地元(中京区)の方を中心に、約400名もの方にお越しいただきました。
音楽に関心を持っている方がやはり多いなと改めて感じたとともに、万灯供養会の灯篭前で演奏している風景を見て、お寺でのコンサートはいいなと思いました。

高野プロデューサー(以下敬称略):アンケートで、小さい頃から壬生寺さんに通っていた人たちが「ここでクラシックのコンサート聴けたことがすごく嬉しかった」と書いてくださって、私たちも嬉しかったですね。

松浦:お寺はもちろん信仰の場ですが、普段の喧騒から離れて、心が落ち着く場所だと思ってくださっている方もいらっしゃいます。また壬生寺は「新選組ゆかりの地」ということもあり、近藤勇の胸像と対話しに来られる方もいらっしゃいます。そういった部分も、お寺の大きな存在意義だと思っています。

――たしかに壬生寺さんに来ると落ち着きますし、お寺の周りは住宅街ということもあって、ふらっと入りやすいですね。

松浦:スマートフォンや携帯電話、テレビなどがなかった時代は、人々のコミュニケーションの場としてお寺が使われていました。そしてお寺に当時の流行りのものが集まってきて、その中で娯楽が生まれました。
壬生寺でいうと、今から725年前に始まった「壬生狂言」ですね。もともとは、仏教の教えを伝える目的で始まったのですが、江戸時代に少しでも多くの人に広めようと、他の様々な物語を取り入れたことで、バラエティー豊かな「壬生狂言」が出来上がったのです。
当時はきっと、「今日壬生さん行ってきた」「どうやった?」「面白かった、また行きたい」といった会話が繰り広げられていて、お寺は面白いと思ってもらえる場所だったのではないかと思います。

高野:「お寺は昔から人が集まる場所」と松浦さんがおっしゃっていたことは印象的で、お寺は宗教的な施設のイメージしかなかったので新鮮でした。
「Kyoto Music Caravan」を企画する際、お寺でコンサートをしてよいか松浦さんに相談したところ、「昔から壬生狂言のように人を楽しませる娯楽があって、音楽もそれとそんなに変わらない」と後押ししてくださったのは大きかったですね。

松浦:壬生寺では最近、コンサートやマルシェ、落語の独演会などを行っていますが、「楽しい」と思ってもらえることが大事だと改めて感じます。
ですので、前回も今回もこのようなご縁をいただいて、コンサートをしていただけるのは、お寺にとっては滅多にない、とてもよい機会だと思っています。

◆キャラバンを企画した思い――松浦貫主が繋いでくださったご縁

――「Kyoto Music Caravan」は、京都市内の寺社仏閣などの名所で無料コンサートを開催している一大イベントです。そもそも本イベントはどのように生まれたのでしょうか。

高野:このイベントの企画意図は2つあります。
まず私が留学していたパリでは、街中の様々な場所でコンサートが行われ、ふらっとコンサートを聴いて帰るという光景が日常になっていて、京都でもそのようなコンサートを開催したいと思っていました。
そしてもう一つは、今まで京都コンサートホールに来たことがない方にも「クラシック音楽っていいな」と思っていただきたかったのです。

ただ、いきなりホールへ行くのは、なかなかハードルが高いですよね。
京都の様々な場所でコンサートを無料で開催することで、「京都の街って素晴らしいな」「クラシック音楽っていいかも、次はホールで聴いてみようかな」という方が増えてほしいと思ったのです。

実際に京都で開催するなら、会場は京都の町を象徴するお寺や神社だと思い、松浦さんに相談したところ、「ここでやるか?」と言ってくださったのですよね。そして松浦さんから様々な方をご紹介いただき、その縁を繋いで生まれたのが「Kyoto Music Caravan 2023」なんです。

松浦さんを一言で表現するなら、「結ぶ人」だと思います。
これまで繋いでいただいたご縁は数えきれず、そのご縁からまた違うご縁に繋がっていきました。

松浦:ご縁を結んだ後が大事で、そのご縁をどうやって紡いでいくかは、その人の努力次第なんですよね。

高野:松浦さんからのご縁は今も続いていて、本当に宝物です。
ちなみに松浦さんは、お寺でクラシック音楽を演奏することに抵抗はなかったのでしょうか?

松浦:やりたかったんです。

20年前に東寺さんの音楽イベント「音舞台」を見て以来、壬生寺でも何かできないかと思っていました。その後、2009年にご依頼いただいて、大沢たかおさんの朗読会を本堂前の特設ステージで開催しましたが、この境内に1,640脚ものイスが並んだんですよ。
その光景を見て、うちでもコンサートができるのではないかと思い、それからずっとやりたいと思い続けていました。10数年を経て実現できたので、感慨深いものがありますね。
そういえば、同じく「Kyoto Music Caravan 2023」の会場であった隨心院さんも、「こういうオファーを待っていた!」とおっしゃっていましたね。

――「クラシック音楽×お寺」の組み合わせは、今ではよく聞きますが、実際のところ、相性はどうなのでしょうか。

松浦:クラシック音楽が好きな人は、その音を聴いて癒される方もいらっしゃると思いますので、ご本尊に拝むのと同じご利益があると思うのです。それに、これだけたくさんの方が集まったら、庶民の仏であるお地蔵さんは、きっと喜んでいらっしゃると思います。
そして一般の方にとっても、コンサートに来ていただくことで視野が広がる可能性があるのです。

高野:クラシック音楽好きの人にとっては、この機会に京都の街を訪れるよいきっかけになっていると思います。まさに、今回のキャラバンのキャッチフレーズである「クラシック音楽が、京都のまちと人びとをつなぐ」ですよね。

前回の壬生寺公演の様子(2023年8月12日)

 

◆ぜひコンサートを生で楽しんでいただきたい

――実際に「Kyoto Music Caravan」を開催してお客さまの反応はいかがでしょうか。

高野:お客さまにも大変喜んでいただいています。2023年度に開催した際「またぜひ開催してほしい」というお声を多くいただき、今回2年ぶりの開催へとつながりました。

松浦:前回のコンサート開催後、「来年も開催しますか?」と言われましたよ。可能なら定期的にやってほしいなと思いますね。
お盆はご先祖さんがお帰りになられるので、お寺にお参りしましょう、と昔から言われていますが、こんなに暑い時に外へ出ようとなかなか思わないですよね。
そんな時にコンサートのような楽しみが一つでもあると、「やっぱりちょっと行ってみようか」「じゃあちょっとお寺に行って手を合わせてみようか」に繋がってくるわけですよ。
ですので、そういうきっかけをいただけることは、非常にありがたいことです。
ぜひこれからも「Kyoto Music Caravan」を続けていただきたいと思います。

そして8月11日のコンサートでは、初めて聴く方も、前回来られた方も、より多くの方々にお越しいただき、ぜひ楽しんでいただきたいです。
今の時代、スマートフォンで簡単に写真や動画で思い出を残せる時代ですが、スマホに保存して終わるのではなく、心に残してほしいですね。

高野:そうですね。私たち京都コンサートホールにとっては、ホールから出て音楽を届けることも大事だなと思います。ぜひいろんな方にクラシック音楽を聴いていただきたいですし、公共ホールにとって使命の一つだと思います。
前回と今回、「Kyoto Music Caravan」で開催させていただく会場は、いずれも魅力的なところばかりです。そしてそのコンサートにご出演いただく、京都ゆかりの音楽家がこれだけいるということは、京都の魅力の一つだと思います。
これまで「Kyoto Music Caravan 2025」では、4回コンサートを開催しましたが、いずれも素晴らしいコンサートとなりましたので、これからのコンサートも楽しみで仕方ありません。

――本日はありがとうございました。8月11日に壬生寺本堂で開催する「金管五重奏コンサート」は、入場無料で事前申込不要です。皆さまのご来場をお待ちしております。

(2025年7月壬生寺にて)

★「Kyoto Music Caravan 2025」特設ページ