「音楽家の枠を越えたリヒャルト・ワーグナー」音楽学者 岡田暁生 特別インタビュー【前半】(2023.11.18 京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト Vol.4『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編))

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京都コンサートホール

ドイツ・ロマン派時代の頂点に立つ作曲家、リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)。今年で生誕210年・没後140年を迎えます。
「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト Vol.4」公演では、日本のワーグナー演奏の第一人者ともいうべきマエストロ沼尻竜典氏を指揮に迎え、京都市交響楽団と共に特別なオール・ワーグナー・プログラムをお届けします。
コンサートに先立ち、「ワーグナーを知るためのプレ・レクチャー」を8月から3回にわたりお送りしています。講師は、京都大学人文科学研究所教授の岡田暁生さんです。第1回(8月25日)は「ワーグナーの人生」、第2回(9月22日)は「ワーグナーの魔力」というタイトルでお話してくださり、第3回(10月27日)は「ワーグナーと近代」についてレクチャーをしてくださる予定です。

今回は、ご自身もワーグナー(音楽)のファンであり、指揮者の沼尻竜典さんとも親交のある岡田暁生さんに「リヒャルト・ワーグナー」や「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4」にまつわるさまざまなお話を伺いました。
「前半」と「後半」の2回に分けて掲載します。

(聞き手:京都コンサートホールプロデューサー 高野 裕子)


高野:8月、9月と2回にわたり、ワーグナーに関する濃密なレクチャーをいただき、誠にありがとうございました。今日はレクチャーに参加されていないお客様にもワーグナーの魅力をお伝えしたく、岡田先生にいろいろなご質問をさせていただきます。
まず、19世紀の音楽史において、リヒャルト・ワーグナーという人物はどのような立ち位置にあったのか教えていただけますか。

岡田暁生氏(以下、敬称略):「19世紀の総合」、そして「20世紀の展望」、それに尽きるでしょう。つまりワーグナーは、19世紀に至るまでのさまざまな音楽の流れを総合し、それを20世紀の色々な音楽の流れに繋げた人物だということです。いま言った「20世紀の色々な音楽」には、ドビュッシーやシェーンベルクはもちろん入りますし、映画音楽やアニメ的な音楽まで入ります。ハリウッド映画の音楽にまで射程が及ぶというのは、ワーグナーにしかできない凄さだと思いますね。

高野:「オペラ作曲家」という枠に収まりきらないということですね。

岡田:そう、それを遥かに越えた人物です。この時代、こういう作曲家はほかにいません。

高野:ワーグナーはオペラや楽劇をたくさん書いた作曲家ですが、彼はそれらを通して何を目指したのでしょうか。

岡田:「世界を表現したかった」のではないでしょうか。世界が始まってから滅亡するまでを作品の中で描きたかった。言い換えれば、「近代の神話」を作りたかったのだと思います。
我々の一番の不幸といえば、世界の断片化だと考えます。例えば、私たちは各々の仕事以外のことは興味がないですよね。自分の仕事が世界の中でどうなっているかなんて、多くの人々は考えもしないでしょう。世界全体を憂いて、今後どうなっていくのかという視点を「持ちたい」とは思っても、なかなか持てないものです。なぜなら、世界が細分化・専門化しすぎて、全体像が見えなくなってきているからです。ワーグナーはそれをもう一度、「これが世界だ」ということを見せたかったのではないでしょうか。特に『ニーベルングの指環』では、そういうことを表現したかったのではないかと思います。

高野:ワーグナーがそのような考えに及ぶようになったきっかけはあったのでしょうか。

岡田:「資本主義に対する呪い」、「近代社会への呪い」ですね。ドイツの哲学者のカール・マルクスが当時、ワーグナーと同じような立場から物を考えていました。彼は、「資本とは何か」と考え、「この状況を放置すると、とんでもないことになるぞ」と心配していたのです。ワーグナーが『ニーベルングの指環』で描いたことは、まさにこういった「資本主義批判」なのです。この世界はいずれ滅びるだろう、滅びた後どのように世界が蘇るのか、それとも蘇らないのか、ということを作品で表現しようとしました。ここまで大きな視点で音楽を構想した人は、昔も今もひっくるめて、存在しないのではないでしょうか。

高野:確かにそうですね。ワーグナーは神話の世界を描こうとしましたが、同時代人のイタリアやフランスのオペラを見てみると、「私たちの目から見た現実世界」を描いていますからね。

岡田:そうそう、「私の恋は一体どうなるの」という視点で物語が進みますよね。
さらに、ワーグナーは『ニーベルングの指環』の中で、環境問題を予言しているようにも思えます。人間が「黄金」という資源をラインの乙女から奪い、またありとあらゆる地下資源を小人に繰り返し掘り起こさせて、そして黄金で作った指環で世界を支配し、結局滅びていく・・・という物語ですから。ヴァルハラ城が火で焼けて、洪水が来る・・・という話は、ある意味、21世紀の現在でも通じるテーマでしょう。
また同時に、ワーグナーは「どうすれば欲望から人間が救われるか」というテーマも常に頭の中にあったようです。これは、ほとんど宗教的なテーマとも言えますが。

高野:このようなワーグナーのオペラや楽劇は当時、誰に向けて書かれたのでしょうか。例えば、イタリアやフランスの作曲家たちは、さまざまな層の音楽愛好家に向けて音楽を書いていましたが、ワーグナーの作品はとても同じようなジャンルの音楽には思えません。

岡田:ワーグナーはまだ見ぬ未来の人類に向かって書いていたのだと思います。いわば、未来へのメッセージですね。同時代の人々に向けて書いていたとは考えられません。

高野:当時の人々は、ワーグナーがそのような壮大なテーマを掲げて作品を書いていたことに気付いていたのでしょうか。

岡田:一部の知識人は、確実に気がついていたでしょうね。例えば、フランスの象徴主義の詩人シャルル・ボードレールや哲学者アンリ・ベルクソン、ドイツの思想家フリードリヒ・ニーチェなど、思想界や文学界、美術界など、あらゆるジャンルの知識人たちがワーグナーの音楽を聴いて、「これだ!」と思ったわけですからね。昔は、教会の儀礼の中に音楽や美術が統合されて、一つの世界が形作られていたのですが、音楽、彫刻、美術などと世界が細分化されていくにつれ、世界を「一つのものとして見る」というプロセスがなくなっていきました。ワーグナーが「総合芸術」を目指したのは、そのような文脈があったのだと思います。つまり、もう一度「世界を見る」というテーマから芸術を作ろうとしたわけです。ワーグナーに陶酔した当時の知識人たちは、そういった考えに共感したのでしょう。

高野:ところで、岡田先生は8月のレクチャーの中で、「ワーグナー自身は《さまよえるオランダ人》以前の作品は自分の作品だと認めたくなかった」とお話されました。ワーグナーの作風が確立するに至った、つまり、ワーグナーに影響を与えた人物や事象は何だったのでしょうか。

岡田:ワーグナーが本当に“化け始める”のは、お尋ね者になってからです(注:ワーグナーは1849年のドイツ三月革命の革命運動に参加し、失敗。その後、全国で指名手配され、スイス・チューリッヒで9年間の亡命生活を送った。その間に『ニーベルングの指環』に着手した)。つまり、『ニーベルングの指環』以降ですね。《ローエングリン》までは、例えばドレスデンやパリなどの劇場のために、現実の枠の中で考えた作品を書いていましたが、お尋ね者になってからは時間もたっぷりありましたから、想像力の羽を伸ばそうとしたのですよね。当時、チケットの売れ行きを気にせず、自分のしたいことを徹底的にするだけの時間とお金があったのです。

高野:なるほど。ワーグナーは20年近くかけて『ニーベルングの指環』を書いています。それだけの時間を費やして、未来へのメッセージを書き続けていたわけですね。

岡田:彼は「近代の神話」を作りたかったのでしょうね。神話は未来永劫に語り継がれますから。芸術を通して、神なき世界に新しい宗教を作りたかったのではないでしょうか。

高野:ワーグナーは本当に宗教的ですよね。

岡田:ワーグナーは骨の髄までプロテスタントでしたが、J.S.バッハのように、神が存在していると心の底から信じられるほど無邪気な人ではありませんでした。時代的なものもありますが、当然ながら神に対して疑いのようなものを持っていたと思いますよ。本当のところは、神に救ってほしかったのでしょうね。滅びるのが怖かったから。死ぬのが怖い、と言ったほうが良いでしょうか。

高野:「神」といえば、「神々の死」を唱えたニーチェが思い出されます。さきほどニーチェがワーグナーに共感したという話題が出てきましたが、ニーチェとワーグナーは当時どのような関係だったのでしょうか。

岡田:ニーチェはワーグナー信者でした。ニーチェもワーグナーも、近代の最大の問題は、宗教的観念の滅亡であると考えた人物でした。ニーチェが初期のワーグナーにピンときたのは、そういった背景があるからです。ところが、ワーグナーの中にあるエセ宗教的なところと言いますか、自分を神格化しようとする体質があるとニーチェが見抜いてしまい、最終的には離反しました。

高野:実際問題、ワーグナーは自分を神に仕立てたかったのでしょうか。

岡田:そうだと思います。だから、離反したニーチェの気持ちは分かります。ただ、近代の芸術家は、ある種ポピュリスト的な資質がなければ、公衆に訴えかけることができないですよね。政治家にも共通する事柄だと思いますが、広く公衆に訴えかけるために、俗受けすることを躊躇しない胆力がないとダメ。ワーグナーはそういったポピュリスト的な資質を持った人間でした。

高野:ワーグナー人気は、このような資質にも起因しているのでしょうね。

岡田:はい。近代の作曲家を見てみると、大なり小なり、こういったある種の「はったりを躊躇しない力」が備わっているように思います。ワーグナーほどではないですが、マーラーやリヒャルト・シュトラウス、ラヴェルなどもそうではないでしょうか。リヒャルト・シュトラウスは、とある二流の作曲家について「彼はすごく良い音楽家だけれども、唯一欠けているものがある。それは、下品と言われることをためらいすぎることである」と言ったそうです。これは金言ですよね。巨匠は「下品」と言われることを時にためらわないですから。

高野:さて、話題をワーグナーのオペラに戻します。
ワーグナーは作曲だけではなく、脚本も書いていましたが、そちらの評価は当時どうだったのでしょうか。

岡田:文学的な質は低いですが、音楽と一体となれば話は別です。彼は自分の世界を自ら創出したかったので、すべて自分で担っていました。台本をほかの誰かに書かせたら、自分だけの世界ではなくなりますから。全ての起源に自分を関わらせたかったのでしょう。

高野:ワーグナーは舞台装置にもこだわったと聞きました。

岡田:そうです、ものすごくこだわりました。ワーグナーは演出家として一流だったそうです。舞台の仕組などにも非常に詳しかったと言われています。もしワーグナーが現代に生きていたら、作曲もできる「ハリウッドの映画監督」になっていたかもしれません。

高野:当時から、そんなワーグナーの存在は偉大だったと思いますが、ワーグナーから影響を受けた作曲家はたくさんいたのでしょうね。

岡田:影響を受けなかった作曲家はいないでしょう。ジョン・ウィリアムズも、ワーグナーがいなかったら「スター・ウォーズのテーマ」を書いていなかったかもしれません。

高野:逆に言えば、「ワーグナーから絶対に影響を受けたくない!」と頑なに思っていた作曲家もいたのではないでしょうか。

岡田:それもみんな思っていたでしょうね。「影響を受けたくない」と思っていること自体、影響を受けているわけですから。みんな、ワーグナーから逃れられないのです。リヒャルト・シュトラウスは「ワーグナーは乗り越えられる壁ではないから、自分はその回り道をした」と言っています。ストラヴィンスキーも初期の作品は、ワグネリズム全開です。
ワーグナーが作品の中で達成してみせた“観客に宗教的法悦を体験させる”ことを、みんなやってみたかったのでしょうね。

高野:前から不思議に思っていたのですが、ワーグナーの音楽って、無宗教のわたしなどが聴いたとしても、宗教的なエクスタシーをなぜか感じてしまうのです。

岡田:ワーグナーはそれがやりたかったのですよ。音楽を通して、新しい宗教を創りたかったのです。そして、それは成功したと言えるでしょうね。
つまりワーグナーは、音楽家の枠を越えた人物だったのです。

――【後半】に続く――


★チケット好評販売中!!★
京都コンサートホール×京都市交響楽団 プロジェクト Vol. 4
ワーグナー生誕210年×没後140年
「『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編)」
2023年11月18日(土)14時30分開演(13時45分開場)
京都コンサートホール  大ホール
<オール・ワーグナー・プログラム>
《ニュルンベルクのマイスタージンガー》より  第1幕への前奏曲
《トリスタンとイゾルデ》より 〈前奏曲〉〈愛の死〉
『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編)
[指揮]沼尻竜典
[ソプラノ]ステファニー・ミュター [バリトン]青山 貴
[演奏]京都市交響楽団

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指揮者 沼尻竜典 インタビュー<後編>(2023.11.18 京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト Vol.4『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編))

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京都コンサートホール

京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4 ワーグナー生誕210年×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト・沼尻編)(11/18)の開催に先がけ、指揮者の沼尻竜典氏とびわ湖ホール総括プロデューサーの村島美也子氏にお話を伺いました。後編では、今回共演されるお二人の歌手や京都市交響楽団についてお話いただきました。ぜひ最後までご覧ください!

――今回コンサートにご出演いただくステファニー・ミュターさんは、びわ湖ホールの『ニーベルングの指環』で見事なブリュンヒルデ役をこなされましたが、彼女との出会いを教えてください。

ステファニー・ミュターさん

沼尻:エアフルトの劇場で働いている旧知のピアニストから「まだ無名だが、今後とても伸びそうな歌手がいるので一度声を聴いてほしい」と紹介され、当時私が音楽総監督を務めていたリューベックの劇場まで来てもらいました。ワーグナーは歌手に声量がないといけないんですが、彼女はしっかりした声が素晴らしく飛ぶ。その場でミュターさんにブリュンヒルデ役をお願いしました。今ではバイロイト祝祭劇場に出るほどの歌手になりました。

村島:彼女は、実力はもちろんのこと、お人柄も本当に素晴らしいです。

沼尻:ドイツの劇場の世界には、小さな劇場でキャリアを開始した歌手にも、世界の頂点に立つ劇場へとつながる階段が用意されています。しかし日本の歌手は、地域ごとにあるオペラ団体の所属の方が多いので、なかなか世界とつながる機会がありません。世界どころか、地方在住の優秀な歌手が東京の舞台に立つことさえ難しい。そういえば、私のいたリューベックの劇場も決して大きくはありませんが、そこで《さまよえるオランダ人》にゼンタ役で出演した歌手が今年、バイロイトでゼンタを歌いました。ベルリン·ドイツオペラにも出演するようです。

――『リング』でヴォータン役を務めた青山貴さんも、びわ湖ホールオペラシリーズの常連ですよね。

沼尻:彼はとんでもなく声が良いのです。

村島:圧倒的な美声ですよね。沼尻さんは青山さんをずっと逸材だと言い続けてらっしゃいますし。当時、びわ湖ホールのオペラでは大抜擢とも言える配役でしたからね。

沼尻彼は、準備をきっちりしてきます。最初の稽古から、長いオペラの歌詞を完璧に覚えてきます。

――青山さんはもともとワーグナー歌いだったのですか?

沼尻:いえ、そもそも真の意味で「ワーグナー歌い」と呼べる歌手は日本にいません(笑)。ワーグナー作品の公演がほとんどないのですから。

――ちなみに、初めてヴォータン役に抜擢された時の、青山さんの反応はどうでしたか?

青山貴さん

村島:ご本人はすごく悩んだと後日仰っていました。なにせ、ヴォータンは神々の長ですからね(笑)。青山さんは、普段は腰が低くて優しい人なのです。でも、ステージに立つと本当に堂々としていて、そのギャップも魅力のひとつです。

沼尻:日本のオペラ団体が制作する公演では声楽の先生が配役するわけですが、海外のオペラハウスや、日本でも劇場制作のプロダクションでは、芸術監督、プロデューサー、演出家が歌手を選びます。劇場制作のオペラ公演がもっと増えて世界標準のやり方で配役していけば、日本人歌手の可能性がさらに引き出され、世界と戦えるようになると思っています。その代わり、配役する劇場側も歌手のことを勉強しなければなりません。

村島:マエストロは、本当に色んなところに歌手を観に行かれますよね。これだけ公演を観に行く指揮者はいないと思いますよ。歌手を見つけてきては、「あの子良いと思うのだけど」と話せる。素晴らしいと思います。ミュターさんや青山さんも、そういうところから見つけてこられましたしね。

――ミュターさんと青山さんについて、貴重なお話をいただきありがとうございました。さて、マエストロは京都市交響楽団とも長年共演されていますが、沼尻さんから見て、京都市交響楽団のワーグナー演奏はどこが魅力的でしょうか?

沼尻:京響のメンバーはびわ湖ホールのワーグナーを毎年楽しみにしてて、実によく個人勉強、個人練習をされていました。もうワーグナーの毒が皆さんの体じゅうに回っているのでは(笑)。実際、毒に当てられてないとワーグナーはうまく演奏できないんです。9演目ワーグナー作品に一緒に取り組んできた蓄積を、11月18日のコンサートで凝縮してお見せできるのではないかと思います。

――今回プログラム前半で演奏する《トリスタンとイゾルデ》は、実は京都市交響楽団との共演は初めてなのですよね。

沼尻:はい、ワーグナーの主要オペラ10作品のうち、《トリスタン》だけ京響と演奏していないのです。私に体力があるうちに、いつかぜひ京都市交響楽団さんと一緒に全曲演奏したいと勝手に考えています。
今回演奏する『ニーベルングの指環』(ハイライト·沼尻編)は、もともと2001年に東京フィルハーモニー交響楽団と新星日本交響楽団が合併した時記念演奏会で初披露しました。その後、名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でも演奏しましたが、どちらも歌が入らない版でした。今回は特別に声楽入りの版を作りました。

――すべて繋げて演奏されるのですよね。

沼尻:はい、すべて繋げてひとつの曲のようにしています。今までにいくつものリングの演奏会用の抜粋版が作られていますが、「沼尻編」は完全なオリジナルです。音楽的に特に魅力的な名場面を繋いだ感じですね。全曲で16時間のうち、美味しいところをまとめて1時間にしていますので、ワーグナーを初めて聴く方でもお楽しみいただけると思います。ワーグナーの音楽にハマるきっかけになれば嬉しいです。

――びわ湖ホールでワーグナー作品を全部制覇したお客様でも楽しめますでしょうか。

沼尻:もちろん楽しめます。舞台の情景を思い出しながら聴いていただけたら。

村島:びわ湖ホールで熱演をしたステファニー・ミュターさんもドイツから再びお呼びいただき、素敵な企画だと思います。バイロイト歌手の実演に触れる機会は、日本では滅多にないですし。

沼尻:ワーグナーの音楽は、ドイツの管弦楽法、和声法の成熟の極地だと思います。ワーグナーの後に活躍したリヒャルト·シュトラウスがさらにそれらをもう一歩、彼なりの方向に進めましたが、以降の発展はもうほとんど無いのです。むしろ現代音楽の作曲家たちによって既存の音楽を破壊する方へ向かいますから。

――本当に楽しみです。

沼尻:私と京響のワーグナーをこのまま終わらせてはもったいないと、今回の企画を提案してくださった京都コンサートホールには心から感謝しています。楽譜の編集にあたった京響の楽譜係はとても大変だったと思うので、この場をお借りしてお礼を申し上げたいです。京響ファンにもオペラファンにも楽しんでいただける内容ですから、迷っていらっしゃる方にはぜひ今すぐポチッとしていただきたいです(笑)。

――沼尻さんと京都市交響楽団の『リング』再演、いまから心待ちにしています。本日はお忙しいなか、お時間をいただきありがとうございました。

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★公演情報「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4
ワーグナー生誕210年×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト・沼尻編)」


 

 

京都市立芸術大学 副学長 大嶋義実×京都コンサートホール プロデューサー 高野裕子 対談<前編>(Kyoto Music Caravan 2023)

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インタビュー

京都市立芸術大学の新キャンパス移転と文化庁の京都移転を記念した一大クラシック音楽イベント「Kyoto Music Caravan 2023」。京都コンサートホールと京都市立芸術大学(以下「京都芸大」)、京都市、そして京都市交通局の4者共同主催のもと、開催しています。

4月29日の仁和寺でのコンサートを皮切りに、京都市11行政区それぞれの名所や観光地で無料コンサートを開催しており、多くのお客様にご来場いただいています。

10月1日に新キャンパスオープンを控える京都市立芸術大学。春・夏とさまざまな場所でコンサートを開催した「Kyoto Music Caravan 2023」も、いよいよ秋のシーズンに突入します。大学・イベント共にターニングポイントを迎える今、京都市立芸術大学副学長の大嶋義実教授と、Kyoto Music Caravan 2023のディレクターであり同大学出身者でもある京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子による対談を実施しました。
前半・後半の2回にわたり、お届けします。

(聞き手:京都コンサートホール 中田 寿)

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指揮者 沼尻竜典 インタビュー<前編>(2023.11.18 京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト Vol.4『ニーベルングの指環』より(ハイライト・沼尻編))

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京都コンサートホール

1118日に、京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4として、ワーグナー生誕210×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト·沼尻編)を開催します。公演に先立ち、今年の3月にびわ湖ホール第2代芸術監督を退任された指揮者の沼尻竜典氏と、長年オペラ制作に携わってこられたびわ湖ホール総括プロデューサーの村島美也子氏にお話を伺いました。前編では、びわ湖ホールでのオペラについて、後編では今回のコンサートについてお話いただいております。ぜひ最後までご覧ください!


――このたびは、インタビューの機会をいただき、ありがとうございます。びわ湖ホールでのオペラ制作の秘話や、今回のコンサートについてお話をお伺いできればと思います。
沼尻さんは、これまでびわ湖ホールで長年オペラに携わってこられましたね。

沼尻竜典氏(以下敬称略):びわ湖ホールでは、開館前から色々な事業に携わってきました。開館してからは、青少年向けのオペラを日本語で上演する機会を毎年2回ずついただくようになりました。「原語でやるべきだ」という意見もありましたが、入門者には母国語でリアルタイムに内容が理解できることが大切なんです。オペラは長い練習期間が必要なので大津滞在が多くなり、地元との関わりを深めていきました。

――びわ湖ホールの第2代芸術監督に就任された際、初めからワーグナー作品に取り組もうと思ってらっしゃったのですか?

沼尻:いえ、それは全く考えていませんでした。初代芸術監督の若杉弘さんはヴェルディの日本初演作品など比較的珍しいプログラムを上演してこられたので、びわ湖ホールに来場されるお客さまはオペラをたくさん聴き込んだ方が多かったのです。そこで、オペラ通の方だけでなく、もっと幅広い層のお客さまに来ていただきたいと思い、メジャーな演目も選ぶようになりました。

村島美也子氏(以下敬称略):あまりメジャーな作品はなかったですけれどね(笑)。2007年に始まった「沼尻竜典オペラセクション」の初回は、いきなりツェムリンスキーの歌劇《こびと》から始まりましたから。

沼尻:年に2本大規模なオペラを上演し、1本はポピュラー路線、もう1本はマニアック路線というラインを作りました。ポピュラー路線では、プッチーニ《ラ·ボエーム》·《トゥーランドット》やヴェルディ《椿姫》、マニアック路線では《こびと》やベルク《ルル》、R.シュトラウス《サロメ》を上演しました。

沼尻竜典マエストロと村島美也子プロデューサー

――その後、ワーグナー作品に取り組まれますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

沼尻:まずは、マニアック路線の方で2010年に《トリスタンとイゾルデ》をやってみようという話になりました。上演してみると、お客さまの反応がとても良かったのです。案外多くの方がワーグナーを好きなのだと思いましたね。それで2012年にポピュラー路線のほうで《タンホイザー》をやることにしました。これがまた好評で、2016年には《さまよえるオランダ人》、2017年からは4年間かけて『ニーベルングの指環』(通称:リング)に取り組むことになりました。

――プロダクション選びは、沼尻さんとびわ湖ホールのスタッフの方が一緒にされるのですか?

沼尻:そうですね。私の提案に対して「(経費が)高い!」と村島さんによく言われました(笑)。『リング』の前までは、海外を旅して色んなオペラを観て、良さそうなプロダクションを見つけたら公演後にそのまま舞台裏に行き、舞台セットを買い付けるようなことも自分でしていました。

――マエストロが直々に舞台セットの買い付けもされるのですね。

沼尻:まずはコンテナ何個分に収まるかという話です。2個程度までなら輸入するのにそこまでお金はかかりませんが、「すごく良いな」と感激したあるプロダクションの舞台が「コンテナ6個分です」と言われ、さすがに見送ったこともあります。
当初は神奈川県民ホールと共同制作をしていましたが、両館の舞台機構の違いから演出上の制約も多かった。協議を重ねて『リング』以降はびわ湖ホール単独で制作することになりました。舞台セットをはじめ、何から何まですべてびわ湖ホールが製作したのです。

村島:『リング』は4年間続くことが分かっていたので、一度作った舞台装置は壊さずに劇場に置いていました。バックステージに大きい岩などがずっと置いてありましたね(笑)。

沼尻:『リング』はせっかく作ったのだから、4作品まとめて再演したかったのですけどね。お客さまや評論家からも「リングは4作品を短期間に続けて上演してこそ意味がある」とよく言われました。しかし実際は稽古も長くなるので、オーケストラと歌い手のスケジュールを確保するのが難しいですね

――ちなみに、沼尻さんが初めてワーグナー作品を手掛けられたのは何の作品だったのでしょうか?

沼尻:名古屋で《さまよえるオランダ人》を振ったのが初めてですね。その次に取り組んだのが、びわ湖ホールでの《トリスタンとイゾルデ》でした。これは上演時間が長いので体力勝負でしたね。オーケストラはトイレの心配をしていました(笑)。

――そうですよね(笑)。もともとワーグナーはお好きだったのですか?

沼尻:新婚旅行がバイロイトだったくらい好きです(笑)。ただ、『リング』を日本で上演するのは大変だと思っていました。二期会が『リング』を全曲上演するのに20年近くかかりましたから。その間に全曲日本初演は、ベルリン·ドイツ·オペラがやってしまいました。びわ湖ホールの芸術監督に就任した当時、『リング』やりましょうと言ったら、館長も含めてスタッフはみんな死んだふりをしていました(笑)。

村島:ちゃんと聞いていましたよ!でも即答はできないですよね。とてつもないお金がかかりますから。

沼尻:《神々の黄昏》が特にお金がかかるのです。空前絶後に長い上、大合唱も必要なので。コロナ前だったから上演を決断できたのかもしれないですね。今だったらとても無理でしょう。

――日本で『リング』全曲を聴ける機会として、音楽ファンにとっても貴重な4年間だったと思います。
今回は、びわ湖ホールさんのオペラについて、お話をお伺いしました。次回は、今年1118日のコンサートにご出演いただく歌手の方々や京都市交響楽団について、お聞かせください!★後編へつづく★


★公演情報「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクトVol.4
ワーグナー生誕210年×没後140年『ニーベルングの指環』(ハイライト・沼尻編)」


ウインドクインテット・ソノリテ 上野博昭(フルート)& 村中宏(ファゴット)インタビュー【後半】(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

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京都コンサートホール

2023年、没後60年を迎えるフランスの作曲家、フランシス・プーランク。
京都コンサートホールでは、10月21日(土)にオール・プーランク・プログラムのコンサート「プーランクの横顔」を開催します。出演者は、フランスの巨匠 パスカル・ロジェと、京都にゆかりのある木管五重奏団「ウインドクインテット・ソノリテ」です。
コンサート開催に向けて、「ウインドクインテット・ソノリテ」のメンバーであり、京都市交響楽団の楽団員でもあるフルート奏者の上野博昭さんとファゴット奏者の村中宏さんにインタビューしました。
【前半】の記事ではプーランクに関するお話をお届けしましたが、【後半】ではウインドクインテット・ソノリテの皆さんに関するお話をお届けします。

(聞き手:高野裕子/京都コンサートホールプロデューサー)


高野:今回、ご出演くださる「ウインドクインテット・ソノリテ」のお話をお伺いしたいと思います。メンバーは、フルートの上野博昭さん、ファゴットの村中宏さんに加えて、オーボエの須貝絵里さん、クラリネットの吉田悠人さん、ホルンの深江和音さんですね。
わたしが初めて「ウインドクインテット・ソノリテ」の演奏を拝聴したのは2016年、「ウインドクインテット・ソノリテ 第3回演奏会(青山音楽記念館 バロックザール)」でした。フランセの《木管五重奏曲 第2番》のほかに、プーランクの《2つのノヴェレッテ》を木管五重奏版に編曲した作品も演奏されていましたよね。とても素敵な演奏で、5人のハーモニーがとても瑞々しかったことを覚えています。このコンサートで、質の高いアンサンブルを聴かせた団体に贈られる「青山音楽賞 バロックザール賞」を受賞されました。
それでは、「ウインドクインテット・ソノリテ」を結成されたきっかけをお聞かせくださいますか。

村中宏氏

村中宏氏(以下敬称略):関西のオーケストラの若手管楽器メンバーで「木管五重奏をやりたいな」と思ったことがきっかけですね。結成した当時(2013年)、クラリネットの吉田悠人君は関西フィルハーモニー管弦楽団にいて、ソノリテ前メンバーでホルンの三村総撤君は日本センチュリー交響楽団、フルートの上野君は大阪フィルハーモニー交響楽団、僕は京都市交響楽団にいました。オーボエの須貝絵里さんは色々なオーケストラで吹いていましたね。

上野博昭氏(以下敬称略):それで、5人が初めて出会ったのが、たしか梅田の居酒屋さん。なんていう名前だったっけな、“手羽先じろう”だっけ?

村中:いや、“手羽一郎”だよ(一同笑い)。

上野:よく覚えてるね!そこで初めて5人全員が集まり、出会いました。

高野:皆さん、同年代ですか?

上野:そうですね。僕が一番年上で、須貝さんが一番年下。その差は5歳です。

高野:その席で意気投合されたのですね。

上野:いや、意気投合も別にしていないですね(笑)。

ウインドクインテット・ソノリテ

村中:「まあ、この5人で何かやってみようか」という感じで、とにかくソノリテのメンバーは皆がゆったりしているのです。でも、コンサートを開催すると決めた後は、吉田君が引っ張っていってくれましたね。彼は1回火がつくとガッと物事を進めてくれる、非常にエネルギーがある人で、初回のコンサートの時はホールの予定を押さえたり、チラシを作ったり、色々なアイディアを出してくれました。2014年4月に大阪でデビューコンサートを開催したあと、東京や名古屋等でもコンサートを開催しました。

高野:デビューコンサートでは、手応えを感じましたか?

上野:はい。ただ、とっても緊張しました。僕からすると、ボロボロの出来でしたよ。

村中:でも、コンサートに来てくださったお客さまが「とてもよかったよ!」と声をかけてくださって。自分たちの演奏で皆さんが喜んでくださったこともあり、2回目の開催につながっていきました。

上野:回数を重ねるごとに、アンサンブルとして成長しています。

高野:5人それぞれが個性豊かなメンバーですよね。今日はソノリテを知らないお客さまのために、5人の性格や特徴を教えていただきたいです。

上野博昭氏

上野:村中君は、頼りがいのあるファゴット奏者で何でも吹けます。とても努力家だし、真面目。僕が京都市交響楽団に入団した後も、彼はコンクールを受け続けていましたからね。

高野:すごいですよね。

上野:すごいですよ。尊敬します。プロのオーケストラに入りながらコンクールを受け続けるって、なかなかできないことですよ。オケの看板を背負っているというプレッシャーもあるじゃないですか。

村中:「コンクールを受けるのは嫌だな」と思うし、本当に緊張するのですが、そこでしかできない体験・体感ってあるじゃないですか。そういうものって、オーケストラで演奏する上でも必要だなと思ってコンクールを受けていましたね。

高野:村中さんは、普段から真面目でいらっしゃるのですか。

村中:僕ね、よく真面目だねって言われるんですけど、すごく適当なところもあるし、物忘れも激しいし、気分屋なところもあります。

上野:適当で物忘れが激しくて気分屋なのは、ソノリテのメンバー全員ですよね(笑)。

村中:上野君はとにかく動じないですね。かといって、重苦しいとか堅物とか、そういうタイプではなくて、柔軟性を持ちつつ、自分のペースを守る「ブレない人」なんです。多分、気を遣いすぎるような人だったら、こっちも気疲れしちゃうと思うのですが、上野君の場合は絶対にそうならない。
オーケストラの中で首席フルート奏者としてソロを吹いているところを見ると、気負わずに演奏していて「すごいなぁ」と思います。どっしりしているんですよ。

高野:須貝さんや吉田さん、深江さんについても教えてください。

須貝絵里(オーボエ)

村中:オーボエの須貝さんは、フットワークが軽いです。例えば、ソノリテのコンサートを開催する時に「あれもして、これもしなきゃ・・・」という話になると、彼女は「あ、それは私がやっておきます!」とテキパキ行動してくれる。
最初は年齢が一番下ということで気を遣っていた面もありましたが、今はメンバーと色々と話しながら、積極的に動いてくれています。

吉田悠人(クラリネット)

吉田君は先ほどの話にも出たように、いちど火がつくとエネルギッシュな人。あと、パソコン関係にめちゃくちゃ強いので、チラシ作成や録音、HPやSNSなどの話になると、彼に頼ってしまいます。

深江和音(ホルン)

深江君は、独特のオーラを持っていますよね。ふわっとした空気感を持っているというか。

高野:先日、深江さんに初めてお目にかかりましたが、とても真面目で、優しそうな方でした。

上野:でも、ホルンを吹く時はバリバリっと演奏するのです。

高野:そのギャップが魅力的ですね!
さて、今回はフランスの巨匠パスカル・ロジェさんと一緒にプーランク・プログラムをご披露いただきますが、どのようなことを楽しみにされていますか。

パスカル・ロジェ©武藤 章

村中:海外の演奏家の方と一緒に演奏すると、僕たちが思いつかないようなニュアンスだったりアゴーギクを付けられますよね。音楽って、ちょっとしたさじ加減でがらりと変わるので、今回もロジェさんがどのようなアイデアをお持ちでいらっしゃるのか、とても楽しみにしています。

上野:ロジェさんはプーランクのピアノ作品全曲録音をなさって、これまでたくさんプーランクを演奏されてきているので、僕たちとは経験値が違います。“ロジェさん”という人間味に溢れたプーランク演奏に直に触れられることが、とても楽しみです。

村中:新しい発見を察知できるアンテナを磨いておかないとダメですよね。音楽づくりについて、ロジェさん任せではいけないし。ソノリテでどのようなアプローチができるのか、しっかり準備をしておきたいと思っています。

上野:「僕たちはこういうふうに演奏したい」というものがある場合、それをロジェさんがどのように受け止めて、どう返してくれるのか楽しみです。これは、共演させていただける醍醐味だと思います。ロジェさんとソノリテが共演することで、新たな化学反応が起きれば良いですよね。

高野:それでは最後に、お客さまに向けてメッセージをお願いします。

村中:今回、ロジェさんやピアノ音楽のファンの方がたくさんお越しになると思います。中には、「管楽器のことはよく分からない」と感じられる方もいると思うのですが、そういう方でも「ピアノと管楽器の響きが混ざると、こんなに良いものができるんだ」と思える、新たな世界観を見つけるきっかけづくりのような演奏ができるといいなと考えています。

上野:ロジェさんとウインドクインテット・ソノリテが共演することで、京都ならではの独自のコンサートになると思います。プーランクに興味がある方やロジェさんのファンの方、管楽器が聴いてみたい方など、色々な方々にお越しいただけたらなぁと思います。
このコンサートは、「U-30」という30歳以下の方はチケット代が半額になるという、お得なチケットもありますので、若いお客さまにもたくさんお越しいただきたいと思っています!

高野:貴重なお話をたくさんお聞かせくださいまして、本当にありがとうございました。10月21日のコンサートを楽しみにしています。


上野 博昭(うえの・ひろあき)

 

 

 

 

岐阜市出身。名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー交響楽団)フルート副首席奏者、大阪フィルハーモニー交響楽団フルートトップ奏者を経て、2017年2月より京都市交響楽団の首席フルート奏者として就任し現在に至る。神戸女学院大学、大阪芸術大学講師。中学・高校の吹奏楽指導、各地方面での講習会開催、コンクールの審査員などを務める。 レッシュプロジェクトマスター級トレーナーの資格を取得。

村中 宏(むらなか・ひろし)

東京藝術大学をアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞し卒業。ソリストとしてヨルマ・パヌラ指揮、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演。宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞受賞。大阪国際音楽コンクール最高位。日本管打楽器コンクール第3位。JILA音楽コンクール室内楽部門第1位。松方ホール音楽賞受賞。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。京都市交響楽団ファゴット奏者。

【公演情報】
プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ 「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15:00開演(14:30開場)
ピアノ:パスカル・ロジェ
木管五重奏:ウインドクインテット・ソノリテ
(フルート:上野博昭、オーボエ:須貝絵里、クラリネット:吉田悠人、ファゴット:村中宏、ホルン:深江和音)
プログラム:オール・プーランク・プログラム
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲 ほか
詳細はこちら⇒コンサート情報のページ

ウインドクインテット・ソノリテ 上野博昭(フルート)& 村中宏(ファゴット)インタビュー【前半】(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

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京都コンサートホール

「軽妙洒脱でユーモラス、時々メランコリック」な音楽を書いた、フランスの作曲家 フランシス・プーランク。2023年は、そんなプーランクの没後60年の年にあたります。
京都コンサートホールでは、プーランクのピアノ曲や室内楽作品にフィーチャーしたコンサート「プーランクの横顔」を10月21日(土)に開催し、さまざまな角度から“プーランクの横顔”を投影することにより、作曲家の魅力を再発見します。出演者は、フランスの巨匠 パスカル・ロジェと、京都にゆかりのある木管五重奏団「ウインドクインテット・ソノリテ」です。
今回は、「ウインドクインテット・ソノリテ」のメンバーであり、京都市交響楽団の楽団員でもあるフルート奏者の上野博昭さんとファゴット奏者の村中宏さんにインタビューし、プーランクやソノリテのメンバーに関するお話を伺いました。【前半】と【後半】の2回にわたり、お届けします。

(聞き手:高野裕子/京都コンサートホールプロデューサー)


高野:今年はプーランク没後60年の年ということで、去年(2022年)から「2023年はプーランクの演奏会をするぞ!」と意気込んでいました。
プーランクって、同郷・同時代人のドビュッシーやラヴェルなどに比べると、日本ではあまり親しまれていない作曲家ですよね。

上野博昭氏(以下、敬称略):そうですね、オーケストラ作品をあまり書いていないからですかね。

村中宏氏(以下、敬称略):僕は京都市交響楽団に10年間在籍しているのですが、定期演奏会にプーランクの作品が出てきたという記憶は、あまりないのですよね。

高野:国内では鑑賞機会の少ないプーランクですが、実際に聴いてみると本当に魅力的な音楽なんですよね。今年はプーランクの記念の年ということで、これをきっかけに、たくさんの方々にプーランクの魅力をあらためて知っていただきたいなと考えています。
ところでお二人は、当ホールのSNSにアップロードしたパスカル・ロジェさんの動画はご覧になりましたか?

上野:はい、観ました。いやぁ、もう、ロジェさんの(プーランクとの出会いに関する)エピソードには敵いませんよね。だって、生まれる前、お母さんのお腹の中でプーランクの音楽を聴いていらっしゃったんですよね。

高野:そうそう、とても素敵なエピソードでした。
今日は、お二人のプーランクとの出会いについても教えてくださいますか。

上野:僕とプーランクの出会いは、中学生時代です。プーランクの《フルート・ソナタ》がきっかけでした。この作品は、購入するフルートのCDに必ずと言って良いほど入っている、名曲中の名曲ですからね。
フルート吹きにとってプーランクはけっこう身近な作曲家で、彼のフルート・ソナタはフルート吹きがまず最初に憧れる曲でもあります。

高野:ちなみに、初めてプーランクの《フルート・ソナタ》を演奏されたのは何歳ですか。

上野博昭氏

上野:実は、人前で初めて演奏したのはついこの間なんです(笑)。
演奏しようと思えばできるけれど、音楽の深いところに踏み込もうとすると、ちょっと勇気がいる。人前で軽々しく演奏できないんですよね。なぜなら、皆がそれぞれに考える「プーランク」があるから。
だから「俺はこう演奏する!」と思って演奏しても、それが受け入れてもらえるかどうか分からない難しさがあるのです。

高野:村中さんとプーランクの出会いはいつですか?

村中宏氏

村中:プーランクはファゴット独奏のために曲を書かなかったから、近い存在の作曲家ではなかったですね。
ただ、ファゴットが入っている作品は3つあります。クラリネットとファゴットのデュオやオーボエ・ファゴット・ピアノのトリオ、そして今回の演奏会でも演奏する、ピアノと木管五重奏のための六重奏曲です。
でもプーランクって、本当に難しい。例えば、クラリネットとファゴットのデュオは、クラリネットの友人と一緒に「よし、ちょっとやってみよう」と演奏したことがあるのですが、これがなかなか形にならないのです。
技術的にハイレベルなことを要求されるという難しさもありますが、ジャズっぽい要素が入っていて、ぱっと吹いてみてもサマにならない。クラシックだけではなく、色々な曲を知っていて、技術的にも上達した人が演奏してはじめて、かっこよく演奏できる曲なんだと思います。

高野:《六重奏曲》も難しい曲ですか?

村中:はい、難しいですね。コンサートのプログラムに初めて入れたのは大学生の頃でしたが、その頃から今にいたるまで、難しいなと思います。

高野:難しいというのは、技術的な難しさでしょうか?

村中:そうですね。プーランクは管楽器が好きだったそうで、楽器のことをよく熟知しているなぁと思います。それぞれの楽器が得意とする技術を使っているのですが、逆に、それぞれの楽器が苦手とすることもよく分かっているのです。楽器の短所をうまく音楽に取り入れている箇所が多々あって、それが音楽の幅の拡がりにも繋がっているなと思います。

高野:例えばファゴットで言うと、どのような難しいことを要求されますか。

村中:ファゴットって音が小さな楽器で、ピアノの左手パートの音を重ねることが多い。ファゴット=伴奏、と思われがちなのですが、プーランクは、その音が小さいという短所を逆手に、ファゴットのソロを入れるのです(笑)。《六重奏曲》でもそのような箇所がありますが、ファゴット以外の5人は音を出さず、ファゴット1人に吹かせるのです。そして、次の音楽に繋げていく。「プーランクは楽器のことをよく分かっているなぁ」と感心します。

高野:いま村中さんが、プーランクの楽器の扱いの巧妙さについてお話してくださいましたが、フルートに関しても同意見でいらっしゃいますか。

上野:プーランクの《フルート・ソナタ》は、1957年にストラスブールで初演を行ったフルート奏 者のジャン=ピエール・ランパル (1922-2000) と楽曲制作段階から密接な意見交換を交わしながら作られているので、フルート奏者にとって演奏しやすいように色々と変更されることは予測されます。ほぼ2人の共作だと思ってもいいのではないかとさえ思います。2人が出会わなければ世の中に残らなかったかもしれないのですし。
つまり、プーランクは、演奏家の意見を取り入れることを非常に大事にしていた作曲家なんじゃないかと思います。

高野:このようなお話って、演奏家ならではのお話ですよね。楽譜や書籍を眺めているだけでは分からない、貴重なお話です。
わたしはピアノでプーランクを演奏したことがありますが、楽譜を見ているだけではぜんぜん分かりませんが、実際に音にしてみると「これぞ、プーランク!」という響きになるのが不思議でした。

上野:《六重奏曲》にも、プーランクらしい箇所がたくさん出てきます。

高野:お二人は、「プーランクらしさ」ってどのようなものと考えていらっしゃいますか。

村中:演奏会のチラシに「軽妙洒脱でユーモラス、時々メランコリック」って書いてあるでしょう。まさにこの通りだと思うんです。真正面から「私、プーランクなんです」っていう音楽じゃなくて、ちょっと斜めから見ているようなニヒルな部分があったり、冗談っぽい部分があったり。それぞれの楽器で色々なことをやらされて、一人ひとりがとっても個性的なメロディを吹いているんですよね。それがもう、次から次へ、目まぐるしく現れるんです。
初めて聴く人は「面白い!」と思ってもらえると思いますが、「次、どうなるの?えっ、次は何が出てくるの!」って疲れちゃうかもしれません(笑)。
一般的な曲だったら、だいたい「次はこういう展開だろうな」と予想がつくじゃないですか。プーランクの《六重奏曲》は、予想がつかないです。まるでパズルのピースのように音楽が並んでいて、最終的に大きなひとつの作品になるようなイメージです。

上野:パズルのような音楽だから、一瞬なんですよね。ひとつ吹いたら、またすぐ次の音楽がやってくる。

高野:よくわかります。わたしがピアノでプーランクを弾いていた時、その切り替えが難しいなと思っていました。譜面上は難しい音の並びではないのですが、音にした途端にださくなっちゃう。

上野:そうなんですよ。何が難しいって、奏者一人ひとりがめちゃくちゃうまくないと、プーランクは音楽として成り立たないんですよ。名曲中の名曲なのですが、全員がうまくないと成り立たないので、なかなか敷居の高い作品でもあります。

村中:今回は大ピアニストのパスカル・ロジェさんとこの名曲を演奏できるので、フレンチなあの雰囲気、お洒落な感じ、そういうのを一緒に表現したいですね。
お客さまにはぜひ、6人が対等に音楽をやっている面白さというものを感じていただきたいです。

(【後半】に続く)


上野 博昭(うえの・ひろあき)

岐阜市出身。名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー交響楽団)フルート副首席奏者、大阪フィルハーモニー交響楽団フルートトップ奏者を経て、2017年2月より京都市交響楽団の首席フルート奏者として就任し現在に至る。神戸女学院大学、大阪芸術大学講師。中学・高校の吹奏楽指導、各地方面での講習会開催、コンクールの審査員などを務める。 レッシュプロジェクトマスター級トレーナーの資格を取得。

村中 宏(むらなか・ひろし)

東京藝術大学をアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞し卒業。ソリストとしてヨルマ・パヌラ指揮、藝大フィルハーモニア管弦楽団と共演。宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞受賞。大阪国際音楽コンクール最高位。日本管打楽器コンクール第3位。JILA音楽コンクール室内楽部門第1位。松方ホール音楽賞受賞。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」に出演。京都市交響楽団ファゴット奏者。

【公演情報】
プーランク没後60年
パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ
「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15:00開演(14:30開場)
ピアノ:パスカル・ロジェ
木管五重奏:ウインドクインテット・ソノリテ
(フルート:上野博昭、オーボエ:須貝絵里、クラリネット:吉田悠人、ファゴット:村中宏、ホルン:深江和音)
プログラム:オール・プーランク・プログラム
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲 ほか
詳細はこちら⇒コンサート情報のページ

オルガニスト 福本茉莉 インタビュー(2023.09.30 オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.72)

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京都コンサートホール

京都コンサートホールの人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」の72回目(9/30)は、世界の名だたるコンクールを制覇した福本茉莉さんをお迎えします。

福本さんにとって京都初リサイタルとなる本コンサートに向けて、Zoomでインタビューを行いました。
留学先としてドイツを選んだ経緯や、ドイツを中心とした演奏活動について、そして今回演奏してくださるプログラムなど、様々なお話を伺いました。ぜひ最後までご覧ください!

――ご無沙汰しております!前回は2020年9月に「第24回京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート」にソリストでご出演いただきましたので、今回の公演は3年ぶりのご登場となります。前回のメールインタビューではオルガンを始めたきっかけを伺いました。その後東京藝術大学でオルガンを学ばれて、ドイツのハンブルク音楽演劇大学へ留学されましたが、なぜ留学先にドイツを選ばれたのでしょうか?

ヴォルフガング・ツェラー先生と

福本茉莉さん(以下敬称略):大学入学直後から、やりたいことや自分に合うことが何かをずっと考えていました。レパートリーを考えた時に、バッハが遠い存在になるのが嫌だったので、バッハが得意な先生を探し始めたんです。

20歳の時、ハンブルク音楽演劇大学のヴォルフガング・ツェラー先生の講習会を受けに行きました。その後、様々なバッハのCDを聴きましたが、1音目から心を持っていかれたのがやはりツェラー先生だったので、先生に就くことに決めました。

また同時期に、歴史的なオルガンを見にドイツを半年ほど1人旅をした際、ハンブルク近くのシュターデという町にある「聖コスメ教会」に、北ドイツで有名なオルガン製作者アルプ・シュニットガーが作った楽器があり、どうしても弾いてみたくて当教会のオルガニスト マルティン・ベーカー氏にコンタクトを取りました。
そして初めて弾いた時に「こんなにも綺麗な音が出る楽器が世の中にあるのか!」と衝撃を受けたのです。まるで宝石箱をぶちまけたかのような、キラキラと輝く音でした。
この楽器との出会いもハンブルクに行こうと思った理由の一つです。

ちなみに、今年念願叶ってこの楽器でCDの録音(発売は来年予定)をしたところです!

――そんな運命的な出会いがあったのですね。留学後はどのように進路を決めたのでしょうか?

福本さん:もともとは2年で日本へ帰る予定でしたが、留学1年目が終わった時に受けた「第7回武蔵野国際オルガンコンクール」で優勝したことにより、状況が変わりました。
ドイツでは、留学した頃から定期的に仕事をいただいていたので、ドイツに残った方が仕事があると考えました。そして、ドイツでオルガンの仕事をするためには、教会音楽家の資格を持っている方が有利なので、演奏の博士課程と並行して、教会音楽を勉強し直し、演奏活動をしながら計8年間の学生生活を送りました。
最後の学期中に、ヴァイマール・フランツ・リスト音楽大学の常勤講師の公募があったので応募したところ、採用していただくことになりました。

――そうだったのですね!大学の常勤講師というのはきっと狭き門なのでしょうね。

福本さん:そうですね、大学のポストは公募されること自体が少ないので、なかなか難しいと言われています。

――その後、ポーランドのヴロツワフ国立音楽フォーラム(NFM)でアーティスト・イン・レジデンスを務めていらっしゃいましたね。

福本さん:はい、オファーをいただき、2020/2021シーズンのアーティストを務めました。ただ1公演を終えたところでコロナ禍になってしまい、子どものためのプロジェクトなど様々な企画があったのですが、残念ながら実現できませんでした。
ですが、演奏会だけでもやろうということで、残りのコンサートを昨年から今年にかけて実施しました。またその一環で、パスカル・ロフェ氏指揮のNFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団とレコーディングも行いました。なお、そのCD(エルジュビエタ・シコラ:協奏曲集)は、今年『レコード芸術』の特選盤に選ばれました!

バロック・オーケストラとヘンデルのオルガン協奏曲を演奏

パスカル・ロフェ氏とシコラのオルガン協奏曲を演奏

――そうだったのですね。そのほかにドレスデンの聖母教会でも定期的にに演奏されているとSNSで拝見しました。これはどのような経緯だったのでしょうか

ドレスデン聖母教会にて

福本さん:突然メールでオファーをいただきまして(笑)、去年の12月からオルガニストの主任代理を務めています。
この聖母教会は、第二次世界大戦中に爆撃を受け崩壊し、その後約45年間瓦礫のまま放置されていました。ドイツの東西統一の時に資金を募って再建されたため、ドイツ人にとって再統一や再び立ち上がったという想いを象徴する、歴史的な建物なんです。
教会と密接に関わる仕事は初めてで、ありとあらゆる経験をさせていただいています。具体的には礼拝と演奏会、そして来年度のオルガン・シリーズのキュレーターも任されています。

――すごいですね!演奏活動と大学の常勤講師の仕事を並行されている今の生活はいかがですか?

福本さん:今のところ、やりたいことが全部できているなと感じています。
アクティブに演奏活動をしながら、自分が経験したものを生徒たちに教えられるのは、とてもいい環境だと思います。

――生徒さんたちがとても羨ましいです。多忙な生活を送られているかと思いますが、練習は大学でなさっているのでしょうか。

福本さん:実は大学の楽器では練習できないので、練習楽器の無い状態が4年半続いています。鍵を貸してくれる知り合いの教会や、別の演奏会のリハーサルの空き時間を見つけて練習をしています。

 ――そうだったのですね。ちなみにプロフィール写真(本記事一番最初の写真)はどちらの教会で撮影されたのでしょうか。

クライス社長と

福本さん:オルガン・ビルダーのクライス社の社長に紹介していただいた、ドイツのボンにある教会です。この教会は、京都コンサートホールと同じクライス社のオルガンなんですよ。ちなみにポーランドのヴロツワフ国立音楽フォーラム(NFM)の楽器もクライス社の楽器でした。

――なんだかご縁を感じます。クライス社長は今年の5月に当ホールにもいらっしゃいました。今年はどこの国で演奏を予定されていますか?

福本さん:ドイツがメインですが、日本も少し、あとはオーストリアやポーランドでも演奏を予定しています。

――今回の京都公演ではオール・ドイツ音楽・プログラムを披露してくださいますね。

福本さん:メインにレーガーを置きたかったので、レーガーにつなげることを考えつつ、皆さんに馴染みのある作曲家で揃えて、聴きやすいプログラムを組みました。
ベートーヴェンの〈アレグレット〉は可愛らしい曲ですし、リストの《神は我がやぐら》はオーケストラが祝祭的に演奏するために書かれた曲なので、気負わずにお聴きいただけると思います。

――メインのレーガーは大曲ですね。

福本さん:レーガー《序奏、パッサカリアとフーガ ホ短調》は重量級の曲ではありますが、音色の変化がはっきりしており、色んな音を楽しんでいただけると思います。レーガーの中でも聴きやすい作品で、3部に分かれています。最後の「パッサカリア」は、同じテーマが変奏していくので、初めて聴く方でもわかりやすいと思います。
またレーガーを例えると水戸黄門なんです(笑)。何があったとしても最後はハッピーエンドで、そこまでの道筋もわかりやすいんです。
ぜひ音のシャワーを浴びに、遊びに来ていただけたら嬉しいです。

――まさか水戸黄門が例えに出て来るとは思いませんでした(笑)。この作品はよく弾かれていますか。

福本さん:東京藝術大学の修士リサイタルで初めて弾いた後は、ニュルンベルクのコンクール決勝やハンブルクの修了試験、スイスのリサイタル、今年のウィーン・デビューとなったリサイタルでも演奏しました。日本の演奏会でこの作品を弾くのは初めてだと思います。

レーガーを弾いたウィーン・デビュー(イエズス会教会)

――大事な節目で演奏されてきた曲なのですね!福本さんにとってドイツ音楽の魅力は何でしょうか?

福本さん:ドイツ音楽と一番比較しやすいフランス音楽は、1オクターブ以上の音域で作られる「開離和声」が多く、透明感があって開かれた印象があります。
対してドイツ音楽は、1オクターブの中に音を詰め込んだものが多く、旨味がぎっしり詰まっている感じがします。その極みがレーガーだと思っています。

――それでは最後に、京都のお客様にメッセージをお願いいたします。

福本:3年ぶりに京都コンサートホールに帰ってくることができ、そして関西圏では初めてのリサイタルを弾かせていただけること、とても嬉しく思っています。日本でリサイタルという形で、私が大好きな作曲家であるレーガーを取り上げるのが実は今回が初めてなので、生誕150年を記念するレーガーイヤーにこのような機会をいただけて感謝しております。
今回はこのレーガーの大作をメインに、またドイツのオルガン音楽の歴史には欠かせないバッハやメンデルスゾーン、リストらの作品と共に、多彩なオルガンの音色をお楽しみいただきます。
ライブでしか味わえない、全身が震えるようなオルガンの醍醐味をぜひ、当日会場で満喫しに遊びにいらしてください!

リンツのブルックナーハウスにて(C)Floris Fortin Fotografie

――色々とお話を聞かせてくださってありがとうございました。9月30日を楽しみにしております!

★公演情報はこちら

ピアニスト パスカル・ロジェ メッセージ動画(2023.10.21 プーランク没後60年 パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ「プーランクの横顔」)

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インタビュー

2023年10月21日(土)午後3時開演「プーランクの横顔」(京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ)に出演する、ピアニストのパスカル・ロジェ氏。
コンサート開催に向けて、特別にメッセージ動画を寄せてくださいました。
今回のコンサートのテーマである「フランシス・プーランク」について、様々な秘話を交えながら、とっても素敵なお話をご披露くださっています。

ちなみにパスカル・ロジェ氏は、大のプーランク好き。1999年にプーランクのピアノ作品全集をリリースしており、今日にいたるまで、プーランクのピアノ作品録音の決定盤として世界中で愛聴されています。

<メッセージ動画 日本語訳>
みなさん、こんにちは。プーランクについてお話することができて、とても幸せです。
というのも、プーランクは私にとって非常に特別な作曲家であり、特別に好きな作曲家だからです。
わたしはプーランクのピアノ作品はもちろん、歌曲、室内楽、コンチェルトといった、彼のピアノが入る全作品を録音しました。この録音作業を通して私は彼の世界をとことん探求しました。私にとって、いつもとても個性的で、とてもフランス的なプーランクの音楽を演奏することは素晴らしい経験です。

なぜ、わたしはプーランクがこんなに好きなのか?個人的なエピソードがあります。本当かどうかわかりませんが、とても気に入っているエピソードです。
私の母が私を妊娠している時、プーランクの協奏曲を勉強していました。彼女はオルガニストだったので、オルガンとオーケストラの協奏曲を演奏することになっていたのです。
彼女は妊娠している間、この作品を練習していたので、私は母のお腹の中でこの曲をずっと聴いていたでしょうし、どこかで私の体にその音楽が刻み込まれたと、必然的にいつも思っていました。その5,6年後、母はもう一度この協奏曲を演奏する機会があったのですが、その時、すでにわたしは譜めくりもできましたし、楽譜を読むこともできました。そして、とてもよく覚えているのですが、この時、私は初めて音楽を聴いて、心から感動したのです。
これは、私が何年か前に聴いた音楽だと認識していたからだったのでしょうか?
そうですね、その可能性はあるでしょう。このエピソードは私にとって、プーランクに対する非常に特別な愛情の解釈になっています。

プーランクの音楽は非常に特別です。プーランクはドビュッシーのように革新者ではありませんでしたし、改革者でもありませんでした。でも、非常に独創的な音楽を書く音楽家でした。あるフランスの批評家は、プーランクの音楽は多くの作曲家の音楽が混ざり合ってできたようなもの、と言いました。でも、彼の音楽は誰の音楽でもないんです。つまり、彼は特に独創的な和声を使ったわけではないのですが、プーランクならではの方法で作曲していたのです。そして、私たちは、それがプーランクだとすぐに分かるのです。これは、非常に強力な個性の現れです。

ピアノは、いつもプーランクのお気に入りの楽器でした。彼はピアニストでした。だから、彼の作品の4分の3がピアノ作品なんです。
室内楽作品もまた、プーランクにとって非常に重要なジャンルでした。
プーランクは、木管楽器を特別に愛していました。プーランクは、オーボエ、クラリネット、フルートのために素晴らしいソナタを書きました。 今回の演奏会では、クラリネットとフルートのために書かれた2曲のソナタを演奏します。それらの作品を、若い日本の音楽家たちと共演できることがとても幸せです。彼らがどのようにプーランクの音楽を受け止めるのか、どうやって演奏するのか、どうやって解釈し、どうやってプーランクの音楽に対する愛情を観客と共有することができるのか、楽しみです。
プーランクの音楽は私たちを幸せにしてくれますし、優しく、またユーモアのあるプーランクの音楽を聴いていると心地よい気分になります。だから、お客様は、プーランクの音楽を聴くと幸せな気持ちになるに違いありません。プログラムも多彩ですしね。

今回演奏するプログラムは、ピアノ独奏曲とフルートやクラリネットのためのソナタ、そして木管五重奏とピアノのための六重奏曲です。この六重奏曲は本当に、本当に素晴らしい作品です。だから、私は、このプログラムをプーランク没後60年の年に演奏できることがとても嬉しいのです。彼は、1963年に亡くなりました。当時、プーランクの死を理解するには、私は若すぎました。しかし、私の母はプーランクと知り合いでした。プーランクの協奏曲を演奏した際、その場に彼はいなかったのですが、その演奏がラジオ放送された時、プーランクはそれを聴いたのです。
プーランクは感謝の気持ちを母に伝えるために、賛辞の言葉が書かれたメッセージカードを贈ってくれました。そして私の母は、私が20歳の誕生日に、そのカードを私にプレゼントしてくれたのです。

今回、プーランクのコンサートを開催することができて、本当に感動しています。プーランクは私にとって、非常に特別な作曲家です。プーランクの音楽を聴いたお客様は、きっと沢山の幸せと喜びを感じてくださることと思います。


◆公演情報◆
プーランク没後60年
パスカル・ロジェ×ウインドクインテット・ソノリテ
「プーランクの横顔」
2023年10月21日(土)15時開演
京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
出演:パスカル・ロジェ(ピアノ)、ウインドクインテット・ソノリテ(上野博昭[フルート]・須貝絵里[オーボエ]・田悠斗[クラリネット]・村中宏[ファゴット]・深江和音[ホルン])
プログラム:<オール・プーランク・プログラム>
クラリネット・ソナタ、3つのノヴェレッテ、3つの無窮動、《3つの間奏曲》より第2番 変ニ長調、《15の即興曲》より第13番・第15番・第6番、フルート・ソナタ、六重奏曲
▶公演の詳細はこちら

第2期登録アーティスト 福田彩乃(サクソフォーン)インタビュー(2023.3.4 Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~ジョイント・コンサート)

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アンサンブルホールムラタ

2022年度より2年間アウトリーチ活動を行う、2名の京都コンサートホール第2期登録アーティスト。
1年目は京都市内の小学校などの学校でそれぞれ10公演ずつアウトリーチを行い、その活動報告として、ジョイント・コンサートを2023年3月4日(土)に行います。

サクソフォーン奏者の福田彩乃さん(ふくた・あやの)にインタビューを行いました。楽器との出会いや1年目のアウトリーチ活動、そして「ジョイント・コンサート」など話をお聞きしました。

ぜひ最後までご覧ください。

福田さんについて

――まずは、福田さんについてお聞きしたいと思います。アウトリーチの感想文を子どもたちからもらった際、よく書かれている質問なのですが、サクソフォーン(以下「サックス」)との出会いについて教えてください。

福田彩乃さん(以下敬称略):初めてサックスと出会ったのは、中学校年生の部活体験の時でした。もともとピアノを弾いていたのですが、部活体験でサックスを初めて吹いて、その楽しさから「この楽器、やりたい!」と思いました。体験の時にどれくらい楽器を吹けたかを元に判断されるオーディションで、無事に勝ち抜くことができ、アルト・サックスを担当することになりました。

――楽しいという感覚は大事ですよね。そのあと高校まで三重で過ごされて、進学先として京都市立芸術大学を受けようと思われたきっかけは何でしょうか?

福田:高校一年生の終わり頃、三重県内で実施された楽器の講習会に初めて参加しました。ちょうど進路に悩んでいた時期だったのですが、初めてプロの方に楽器を教わり、「私も音楽の道でやっていきたい」という気持ちが芽生えました。そこから講習会で教えてもらった方に、後の師匠となる先生を紹介してもらい、レッスンに通っているうちに芸術大学を受けたいという思いになりました。

――最初から京芸を目標としていたのでしょうか。

福田:受験当時は京都市立芸術大学にサックス科がなかったので、愛知県立芸術大学を受験しました。ただ落ちてしまい、ショックを受けて楽器をやめることも考えましたが、一浪することにしました。その途中で、京都市立芸術大学にサックス科ができる情報を聞いて、目指すことにしました。
もし初年度の受験で受かっていたら、今とは全然違うことになっていたかもしれないので、京都には勝手に運命を感じています(笑)

――大学に入るまでは京都と縁はありましたか。

福田:小学校の修学旅行の時に来たくらいで、京都は憧れの存在でした。早いもので移住してから9年目になります。

――現在は大学院の博士課程に在籍していらっしゃいますが、今年度の活動は研究がメインでしたでしょうか。

福田:今年度はやはり博士論文の執筆を一番重視していましたが、ありがたいことに演奏の機会を多くいただいたので、両立がけっこう大変でした。今までと比べると練習時間が少なかったので、いかに少ない時間でクオリティーを保つかということに悩んだ一年でした。

――演奏に研究、そしてアウトリーチと、大変な一年だったのですね。大学院に行こうと思った理由は何でしょうか。

福田:感覚で伝承されている奏法を文章などにまとめられたら自分の強みになりますし、これから指導する立場になった時に役に立つのではないかと思い、大学院に進みました。

――ちなみに博士論文はどのようなテーマで書かれましたか。

福田:サックス演奏時の口の中の状態について、日本語音節に限定して、例えば「あ」と「お」を意識した時の違いが、サックスの音に影響を与えるかを研究していました。
音を数値化して分析した結果、大きく異なるデータが得られました。自分の体感としても、意識する音節によって音が変わる印象があります。なので、感覚的なものが今回の論文で証明されたのではないかと実感しています。

――たしかに細かいニュアンスが演奏では大事ですよね。普段の演奏にも影響はありますか?

福田:はい、かなり影響があります。特にサックスの音色について研究していたこともあり、音を出す時の意識がかなり変わり、少しずつですが「この口の形をすればこんな音が出る」というのが掴めるようになってきました。
また曲を演奏する中で、ずっと同じ吹き方をしていると退屈になってしまうので、意識して変えるようになりました。

――これまで日本語の発音をベースにした研究はあまりなかったのでしょうか。

福田:口元(アンブシュア)の研究はされるようになってきたのですが、具体的に日本語の音節を意識した研究はあまりなかったので、貴重かと思います。

――サックスは他の楽器と比べると、歴史が浅い楽器かと思いますので、日本でこれから役立ちそうですね。

福田:そうですね、特に楽器を始めたばかりの人に有用ではないかと思っています。

アウトリーチについて

――さて、今年度から京都コンサートホールの登録アーティストとして活動してくださっていますが、登録アーティストに応募されたきっかけを教えてください。

福田:もともと組んでいる「NOK Saxophone Quartet(ノックサクソフォンカルテット)」というグループで、3年ほど前に1年間アウトリーチ活動をしていました。その後アウトリーチに携わる機会が少なかったのですが、もっとやっていきたいと考えていました。そんな時にこのアウトリーチ制度を見つけ、ぜひ挑戦してみたいなと思い応募しました。

――実際にこの一年間活動されてみて、普段の演奏活動に与える影響はありましたか?

福田:いい影響ばかりです。アウトリーチは子どもたちとの距離が近い分、反応をストレートに感じることができて、言い回し一つで反応が変わるのがわかります。
その経験から、ちょっとしたことで全体の印象にどれだけ影響が出るかを学びました。

――カルテットで行っていたアウトリーチと比べていかがでしたか?

福田:カルテットの時は、他のメンバーの意見を聞いてまとめ役をすることが多かったのですが、今回は自分で全部決めないといけなかったので大変でした。プログラム作りにもずいぶん悩み、試行錯誤した日々でした。

――そうだったのですね。プログラムは共演者の曽我部さんと話し合って決めていますか?

福田:ピアニストの曽我部さんとは長い期間を一緒に過ごしているので、話し合って曲を決めています。新しいレパートリーをさらに少しずつ増やして、新しいことにも挑戦できればと思っています。

――曽我部さんとはいつ出会われましたか?

福田:京都市立芸術大学で出会ったので、今年で9年目になります。ピアノの伴奏法のレッスンのためにペアが組まれて、たまたま同じペアになったのがきっかけです。

――最初に会った時の印象はどうでしたか?

福田さん:元気で愉快な人だなという印象でした。自分の考えをしっかり持っているので、悩みを相談すると意見をくれたり、音楽的なこともアドバイスしてくれるので、私にとって大事な存在です。

――アウトリーチへ行く前には研修やランスルー(通しリハーサル)を行いましたが、実際に初めてアウトリーチへ行った時はどうでしたか?

福田:大人を相手に行ったランスルーと比べて、実際のアウトリーチの方がやりやすく感じました。反応がとても良い子どもたちだったので、楽しかったです。研修までは自分の目線でしか考えられていなかったので、多方面から意見を聞けたのは貴重でした。

――たしかに福田さんのアウトリーチを見ていると、いつも楽しんでされていると感じます。

福田:そうですね笑)、毎回子どもたちとのキャッチボールを楽しみながらやってきました。

――毎回子どもたちに合わせて言い回しを変えているのは素晴らしいと思いました。この一年間の活動で印象的だったことはありますか?

福田:吉松隆作曲の〈悲の鳥〉が6分半ほどの曲なので、低学年の子たちがずっと聞くのは難しいのではないかと思っていました。実際にアウトリーチで演奏してみたらそんなことはなく、子どもたちが集中して聴いてくれたのが、一番印象に残っています。
また後日いただいたお手紙の中で「〈悲の鳥〉が一番良かった」という意見もたくさんあり、とても嬉しかったです。

――福田さんは、最初のプログラム提出時から〈悲の鳥〉をメインに据えていて、聴かせたいという思いがあったと思うのですが、どういう意図があるのでしょうか?

福田:私自身悩んでいた時に励ましてくれたのが音楽だったこともあり、感情を揺さぶる音楽が好きです。「感情が動く」ということを子どもたちにも体感してもらいたくて、この曲を選びました。

――アウトリーチでは、曲の背景にあるエピソードをお話されているので、その意図が子どもたちに伝わっているように感じます。アウトリーチを通して子どもたちに一番伝えたいことは何でしょうか?

福田:近年はYouTubeなどで気軽に音楽が聴けますが、音楽は突然生まれたものではなく、色んな人が関わって、その人たちの気持ちや背景にあるものが反映され一つの曲ができていると私は思います。
アウトリーチでは、奏法や楽器の歴史について知ってもらい、最終的には「背景にあるものを知った上で音楽を聴いてほしい」ということを一番伝えたいと思っています。

――2年目の活動に向けた目標は何でしょうか?

福田さん:来年度は小学生だけでなく、大人の方も対象になるかと思います。アウトリーチの訪問先の方に何を伝えたいのかを自分の中でより明確にし、プログラム作りをしたいと思っています。

――登録アーティストの活動は2年間ですが、活動を終えた後にやってみたいことはありますか?

福田:ずっと京都で活動していきたいと思っています。演奏活動をする上で、私にとってアウトリーチはとても大切な活動なので、アウトリーチで得た経験を活かせるような活動をしていきたいと考えています。
通常のソロリサイタルでは、トークはアンコール前に少し、ということが多いと思いますが、私はどういう気持ちで演奏を聴いてもらうか、導入が大切だと思っているので、しっかりしたプログラムのコンサートでもトークを入れたいと思っています。

――通常のコンサートだとプログラムノートで内容を伝えることが多いですよね。

福田:もちろんプログラムノートも大切ですが、クラシック音楽に馴染みのない方もいますし、色んな方を対象に演奏活動をしたいので、トークで私たちのことも知っていただきつつ、演奏も聴いていただきたいと思っています。

――アウトリーチとつながっていますね。

――ちなみにサックスはいろんなジャンルで活躍できる楽器かと思いますが、その中でもクラシックでやっていこうと思われた理由は何でしょうか?

福田:初めて楽器と出会った吹奏楽部での選曲が、クラシックの落ち着いた曲が多かったことから、自分の好みがクラシック寄りになりました。あとは自分の出したいと思っている音が、クラシック音楽で使う、歌うような優しい音だと思うのが理由です。

――本拠地を東京に移して活動されるアーティストも多いですが、京都をベースにしたいと思っているのですね。

福田:京都が好きというのもありますが、京都市立芸術大学サックス科の第一期生ということもあり、これから京都の地でサックスという楽器をより広めていきたいと思っています。

――京都コンサートホールとしても応援しています!ちなみに京都で好きな場所やお気に入りはありますか。

福田:鴨川沿いが好きでよく散歩に行くのですが、四季折々の景色や時間によっても雰囲気が変わり、移り変わっていく様子が好きです。

――いいですよね。ほかにハマっていることや好きなことはありますか?

福田:ちいかわ」というキャラクターにハマっていて、グッズに囲まれて暮らしています。あとは水の生き物が好きで、亀を飼っています。京都水族館にもよく行きます。

あとはパソコンを触るのが好きなので、チラシのデザインをしたりします。アンサンブルやリサイタルのチラシ、プログラムも作りました。普段はほとんど楽器かパソコンを触っているという感じです。他にサックス四重奏のための編曲もよくやっています。

――すごいですね!!

福田さんがデザインした公演チラシ

 

ジョイント·コンサートについて

――さて、話題を「ジョイント·コンサート」に移したいと思います。これまで京芸の演奏会などで、京都コンサートホールで演奏される機会はあったかと思いますが、その中でホールでの思い出があれば教えてください。

福田:大ホールは、大学4年生の時に京都市立芸術大学の定期演奏会でソリストをさせてもらったことが思い出に残っています。
アンサンブルホールムラタは、同じく大学4年生の時に芸大のサックス科がようやく全学年揃い、サックス科での第一回の記念すべき演奏会をしました。演奏会を運営する立場でもあったので、とても記憶に残っています。

――そうだったのですね。アンサンブルホールムラタでリサイタルをするのは初めてですか?

福田:はい、一人は初めてですので、とても楽しみです。

――今回のプログラムについて、選曲意図を教えてください。

福田:今回登録アーティストになって初めて音楽ホールで演奏するので、この一年間どういうアウトリーチ活動を行ってきたのかを交えて、演奏したいなと思いました。
そのためアウトリーチでいつも演奏していた、サンジュレーの《コンチェルティーノ》を入れました。そのタイミングで楽器紹介もしようと考えています。
エスケシュ作曲の《リュット》は、サンジュレーと対照的で、特殊奏法を多用した現代曲です。
また《コンチェルティーノ》はサックスが生まれた頃の曲で、対して《リュット》は割と最近に作られた作品です。100年ほどしか経っていないはずなのですが、サックスでできることがたくさん増えたことを伝えたいと思いました。
そのあとは、私が一番大事に思っている「歌うようにサックスを吹くこと」を伝えられるような作品を2曲選びました。

――サックスの可能性を知っていただけるプログラムですね。それでは最後にお客様へのメッセージをお願いします。

福田:初めてコンサートに来ていただける方でも楽しんでいただけるように、トークを交えながら演奏いたします。来て良かったと感じていただけるような内容を考えておりますので、気軽に足を運んでいただけましたらと思います。
お待ちしております!

――ありがとうございました。ジョイント・コンサートを楽しみにしております!

2023年3月4日開催の「ジョイント・コンサート」の公演情報はこちら

☆福田彩乃さんからの動画メッセージ

「Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~」特設ページはこちら

第2期登録アーティスト 鎌田邦裕(フルート)インタビュー (2023.3.4 Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~ジョイント・コンサート)

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アンサンブルホールムラタ

京都コンサートホール第2期登録アーティストとして、アウトリーチ活動を1年間行った2人のアーティストが、3月4日開催の「ジョイント・コンサート」に出演します。本公演では、それぞれの想いがぎゅっと詰まった、特別なプログラムを皆さまにお届けします。
公演に向けて、第2期登録アーティストのひとりであるフルーティストの鎌田邦裕さんにインタビューを行いました。この1年間のアウトリーチ活動やご自身のこと、また「ジョイント・コンサート」のプログラムなどについてお話しいただきましたので、ぜひ最後までご覧ください!

――9月から始まった2022年度のアウトリーチ活動が無事終わりましたね。この1年間のアウトリーチ活動で印象的だったことは何でしょうか?

鎌田邦裕さん(以下、鎌田さん):子どもたちの「素直な反応」です。抽象的ですが、フルートの音を“届ける向き”やその場所(音楽室や体育館など)での“響きのイメージ”などを少し変えるだけで、反応がすごく変わるんですよ。さらにお話を交え、言葉を使うことで、子どもたちの聴き方やイメージする幅みたいなものが、全然変わってくるんだなと感じました。
毎回、自分の音楽や想いを「届ける」ことをとても意識していて、「一緒にやろうね、一緒に感じようね」という気持ちを込めて臨んでいます。

――普段のコンサートとこのアウトリーチ活動で、お話や演奏で変えていることはありますか?

鎌田さん:私は普段のコンサートでもお話をたくさんするようにしているのですが、話し方や内容は大人向けと子ども向けでもちろん変えています。でも、演奏の方は大人・子どもに関わらず、いつも自分が出せる全力を出さないといけないと思っています。
また、普段のコンサートでも、音楽に初めて触れる方にも届くように、わかりやすく演奏することを心掛けています。例えば、楽譜に「(ピアノ:弱く)」と書いてあっても、ただ小さく、弱く演奏するだけではないんです。例えば、舞台上でこそこそ話の演技をするときに、実際の距離感の声の大きさでこそこそ話をしても、誰にも伝わらない。でも、みんなに聴こえるような声でこそこそ話の演技をして初めて、お客さんにこそこそ話の演技をしていることが伝わる。演奏も同じように、わかりやすく、味濃く色付けてお届けするということを大切にしています。

――アウトリーチ活動が始まる前に、4回の研修会を経てプログラムを組みましたよね。実際に子どもたちの前で披露してみて、いかがでしたか?

鎌田さん:自分のやりたいことと、子どもたちが感じ取れることの差をどのように埋めていくのかがとても難しいなと感じています。子どもたちが聴きたいものだけを演奏するのではなく、初めて聴く曲でも、まずは一度聴いてみてもらうことが大事だなと思うので。
一方で、音楽に入る取っ掛かりとしては、みんなが知っている曲の方がいいなと思っていて、今のプログラムでは、映画『となりのトトロ』の「さんぽ」のメロディーを使って、イメージを膨らませてもらうワークショップをしています。こちらが想定している以上に面白い、自由な発想の答えが出てくることもあるので、毎回とても刺激的です。

――来年度に向けて、意気込みをお願いします。

鎌田さん:来年度に新たに出会う方々とも、アウトリーチを通して、音楽でも言葉でもコミュニケーションをとっていきたいですし、そこからみなさんの心も、自分自身の心も、さらに豊かになっていけば嬉しいですね。

――それではここで、鎌田さんの自身のことについてみなさんにご紹介したいと思います。まず、鎌田さんとフルートとの出会いについて教えてください。

鎌田さん:元々は4歳頃からピアノを習っていました。母が大人になってから趣味でフルートを始めていて、小学2年生の頃に、母がフルートを習っていた先生にピアノを教えてもらうことになったんです。その教室ではもちろん周りはフルートを吹いている方ばかりだったので、自分もフルートを吹いてみたいと思うようになり、小学3年生の10月に楽器を買ってもらって習い始めました。

――大学は、京都市立芸術大学に進学されましたよね。鎌田さんのご出身は山形県鶴岡市ですが、なぜ京都市立芸術大学を選んだのでしょうか?

鎌田さん:親との約束で、大学に進学するのだったら国公立の大学が条件だったので、「じゃあ、(音楽学部のある)芸大を目指そう!」となりました。芸大受験に向けて音楽を本格的に学ぼうと動き始めたのが、高校3年生に上がる年の春休みで、その後ご縁があって、8月の夏休みに京都市立芸術大学の大嶋義実先生と出会いました。レッスンを受けると自分の音色の悪さを指摘されることの連続で、1時間のレッスンがそれだけで終わるような感じでした。私は小学校の頃からフルートを吹いていたものの、芸大受験を目指すようなレッスンを受けていなかったので、全然きちんと吹けていなかったんですよ。その時は、自分の耳も開いていなかったので、大嶋先生が言っている意味が全くわかっていませんでした。ただ、先生がこれだけ熱心に「ちがう」と言うのだから、何か意味があるんだろうなと思って。「良い音で吹かないと意味がない」とずっと思っていたのもあって、大嶋先生のもとだったら音色が磨けると考え、京都市立芸術大学を受験しました。

――京都市立芸術大学で、アウトリーチ活動を一緒に行っている佐藤亜友美さんに出会ったんですよね。

鎌田さん:ピアニストの佐藤亜友美さんは大学の同級生で、クラリネットの山永桂子さんと3人で組んだ「panna cotta(パンナコッタ)」というトリオでも活動しています。「panna cotta」がなかったら、佐藤さんと一緒にアウトリーチ活動をすることはなかったかもしれないなと思っていて、とてもありがたい出会いだと思っています。

――そもそも京都コンサートホール第2期登録アーティストに応募したきっかけは何だったのでしょうか?

鎌田さん:自身のリサイタルでは曲間で毎回お話を入れていて、次の曲に入るための導入をしてから演奏しています。これはアウトリーチと通ずるところがあるかもしれないと以前から思っていました。第1期登録アーティストの先輩方のアウトリーチ活動や「ジョイント・コンサート」を見て、とても面白いアプローチの仕方だなと感動したのを覚えています。私も登録アーティストになれば、ホールからのサポートを受けられ、学ぶ機会が増えて、自身の成長につながるだろうなと思い、応募させていただきました。

――現在は京都コンサートホールのアウトリーチ活動のほかに、どのような演奏活動をしていますか?

鎌田さん:関西を中心にオーケストラの客演で演奏したり、フルートの指導を行ったりしています。また、地元の鶴岡市でリサイタルを20歳のときから続けていて、今年で10回目となりました。地域柄か、山形では音楽を学ぶ機会や場所がとても少なかったので、音楽の文化の土壌を作るために、種を蒔いているんです。今後は日本全国でも同じように、音楽家になりたい人たちが夢を叶えるための「架け橋」になっていければなと思っています。

――ここからは、3月4日開催の「ジョイント・コンサート」についてお伺いしたいと思います。まず、京都コンサートホールでの思い出があれば教えてください。

鎌田さん:初めて京都コンサートホールに来たのは、大学の定期演奏会だったと思います。大ホールにあった左右非対称な不思議な形のパイプオルガンがとても印象に残っています。何よりも特徴的だと感じたのが螺旋状のスロープで、外からはわからないのに、エントランスホールに入った瞬間からとても芸術的だなと思いました。以前ロビーコンサートにも出演させていただきましたが(2022年1月29日開催「京都コンサートホール・ロビーコンサート Vol.9 鎌田邦裕 フルートコンサート」)、とても素敵な空間でした。
アンサンブルホールムラタには、何度もコンサートは聴きに来ていますが、ステージに立つのは今回が初めてで、とても嬉しいです。

――「ジョイント・コンサート」のプログラムはどのように組みましたか?

鎌田さん:今回のプログラムは、アウトリーチで演奏している曲を中心に組んでいます。これは、一度アウトリーチで聴いてくれた子どもたちに、“コンサートホール”で同じ曲を聴いてみてほしいと思って選曲しました。
また、フラッター(巻き舌により音を震わせる特殊奏法)がたくさん出てくる「鶴の巣篭もり」を入れました。アウトリーチでフラッターを紹介するときに「くまんばちの飛行」演奏しているので、その「くまんばちの飛行」の“洋”の響きとは異なる“和”の響きを味わってもらえると思います。
さらに、プログラムの最後ではプーランクの「フルート・ソナタ」を演奏しますが、この曲は12~13分ほどあって子どもたちには少し長く感じるかもしれません。ですが、1楽章から3楽章まで通して聴いて「ひとつの物語を全て読み切った」という経験もしてみてほしいなと思い選曲しました。
プログラム全体を料理のフルコースだと思って、順番に味わっていただければと思います。

――それでは最後に、お客様に向けてメッセージをお願いします。

鎌田さん:フルートってどんな楽器なんだろう、音楽って何なんだろうと興味をもっている時点で、既に音楽の才能があると思います。その気付きや好奇心はとても素晴らしいものだと思うので、その探したいものを持って「ジョイント・コンサート」を聴きに来てくれたら嬉しいです。
また、音楽は心を動かしてくれるツールだと思うので、お越しいただいたみなさんに自分の心と向かい合ったり、思いを馳せたりする時間を過ごしていただけるような演奏会にしたいです。そして、心が動くとはどういう意味なのかを一緒に考えられたらいいなと思っています。

――たくさんのお話をありがとうございました!「ジョイント・コンサート」でお会いできるのを楽しみにしています!

★Join us(ジョイ・ナス)!~キョウト・ミュージック・アウトリーチ~「ジョイント・コンサート」(3/4)公演詳細はこちら
★鎌田邦裕さんのアウトリーチ活動はこちら <1> <2> [⇒Facebook]
★鎌田邦裕さんのからの「ジョイント・コンサート」に向けたメッセージ動画はこちら [⇒YouTube]

(2023年2月 事業企画課 インタビュー)