高野:「お寺は昔から人が集まる場所」と松浦さんがおっしゃっていたことは印象的で、お寺は宗教的な施設のイメージしかなかったので新鮮でした。
「Kyoto Music Caravan」を企画する際、お寺でコンサートをしてよいか松浦さんに相談したところ、「昔から壬生狂言のように人を楽しませる娯楽があって、音楽もそれとそんなに変わらない」と後押ししてくださったのは大きかったですね。
高野:そうですね。私たち京都コンサートホールにとっては、ホールから出て音楽を届けることも大事だなと思います。ぜひいろんな方にクラシック音楽を聴いていただきたいですし、公共ホールにとって使命の一つだと思います。
前回と今回、「Kyoto Music Caravan」で開催させていただく会場は、いずれも魅力的なところばかりです。そしてそのコンサートにご出演いただく、京都ゆかりの音楽家がこれだけいるということは、京都の魅力の一つだと思います。
これまで「Kyoto Music Caravan 2025」では、4回コンサートを開催しましたが、いずれも素晴らしいコンサートとなりましたので、これからのコンサートも楽しみで仕方ありません。
ーーフランス留学の後、東京藝術大学での助手、雪ノ下教会のオルガニストを務める傍ら、2019年にはバッハ作品を収録した「Joy of Bach」をリリースされました。こちらはどのような経緯で制作されたのですか? オランダで鈴木雅明先生がCDを収録される時、ちょうどパリにいた私にアシスタントとして声をかけてくださいました。その時の録音技師さんが私に「君もCDを収録してみたら」とお声がけくださったのがきっかけです。バッハの音楽は、リズミカルで和声も素敵で、何も分からなくても聴いていて純粋に楽しいものだと思います。実際、子供の頃に私もそこに惹かれたので、堅苦しく考えず、ポップスを聴くように多くの方にバッハを聴いてほしいと思いました。本当に良いものって、ジャンルの境界線はないと思うのです。宗教的な背景や、難しい理論は一旦おいて、ただ楽しんで聴いてもらいたい、というコンセプトで、「Joy of Bach」を作りました。理屈抜きで、まずは「私はバッハのこんなところが好きなんだよ!」という想いをぎゅっと詰め込みました。
ーーだから「Joy of Bach」なのですね! そうなのです!小さい頃感じていたような、本能的に楽しいと思える気持ちでバッハを聴いてほしいという想いが詰まっています。有名な曲や聴きなじみのある曲もたくさん選んでいるので、ノリノリで聴いてもらえたら嬉しいです。あまり難しいことを考えずにただ聴いてほしいです。
ーー2作目のCD「Pray with Bach」は対照的に厳かな作品が並びますね。 そうですね。こちらは、私がオルガニストを務める鎌倉雪ノ下教会で収録したアルバムです。コロナ禍で、礼拝がYouTube配信になった期間、信者の方々から「生のオルガンの音が恋しい」という声が寄せられました。しかし、配信では音質がどうしても悪くなってしまいますし、いつも教会で弾いていたような曲をご自宅でも聴いていただけたらと思い、バッハの《オルガン小曲集》をメインに収録をしました。