ーーフランス留学の後、東京藝術大学での助手、雪ノ下教会のオルガニストを務める傍ら、2019年にはバッハ作品を収録した「Joy of Bach」をリリースされました。こちらはどのような経緯で制作されたのですか? オランダで鈴木雅明先生がCDを収録される時、ちょうどパリにいた私にアシスタントとして声をかけてくださいました。その時の録音技師さんが私に「君もCDを収録してみたら」とお声がけくださったのがきっかけです。バッハの音楽は、リズミカルで和声も素敵で、何も分からなくても聴いていて純粋に楽しいものだと思います。実際、子供の頃に私もそこに惹かれたので、堅苦しく考えず、ポップスを聴くように多くの方にバッハを聴いてほしいと思いました。本当に良いものって、ジャンルの境界線はないと思うのです。宗教的な背景や、難しい理論は一旦おいて、ただ楽しんで聴いてもらいたい、というコンセプトで、「Joy of Bach」を作りました。理屈抜きで、まずは「私はバッハのこんなところが好きなんだよ!」という想いをぎゅっと詰め込みました。
ーーだから「Joy of Bach」なのですね! そうなのです!小さい頃感じていたような、本能的に楽しいと思える気持ちでバッハを聴いてほしいという想いが詰まっています。有名な曲や聴きなじみのある曲もたくさん選んでいるので、ノリノリで聴いてもらえたら嬉しいです。あまり難しいことを考えずにただ聴いてほしいです。
ーー2作目のCD「Pray with Bach」は対照的に厳かな作品が並びますね。 そうですね。こちらは、私がオルガニストを務める鎌倉雪ノ下教会で収録したアルバムです。コロナ禍で、礼拝がYouTube配信になった期間、信者の方々から「生のオルガンの音が恋しい」という声が寄せられました。しかし、配信では音質がどうしても悪くなってしまいますし、いつも教会で弾いていたような曲をご自宅でも聴いていただけたらと思い、バッハの《オルガン小曲集》をメインに収録をしました。
2024年3月、18世紀オーケストラと共に「The Real Chopin」と題したコンサートツアーを行うトマシュ・リッテル。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第1位となった彼は、ピリオド楽器の音色を最大限に活かしながら、溢れる歌心とドラマティックな表現で魅せてくれるピアニストだ。そんな彼に、今回のコンサートに向けての意気込みを伺った。
2023年、京都市立芸術大学の新キャンパス移転と文化庁の京都移転を記念して、京都市内で開催中のクラシック音楽の一大イベント「Kyoto Music Caravan 2023」。京都市11行政区それぞれの名所や観光地で無料コンサートを開催しており、その締めくくりとして「スペシャル・コンサート」を京都市立芸術大学の新キャンパスで行います。
10月1日に京都市立芸術大学の新キャンパスがオープンしたことを記念し、京都市立芸術大学副学長の大嶋義実教授と、Kyoto Music Caravan 2023のディレクターである京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子による対談を2回に分けて実施しました。 前編では本企画が生まれた背景についてお届けしましたが、後編では京都芸大の新キャンパスや「スペシャル・コンサート」についてお送りします。
ぜひ最後までご覧ください。
――次はスペシャルコンサートについてお伺いします。いま対談を行っているこの会場で『Kyoto Music Caravan 2023』の締めくくりとなる「スペシャルコンサート」を2024年3月30日に開催します。どういった意図で企画されましたか。
高野:『Kyoto Music Caravan 2023』の最後を飾る「スペシャルコンサート」は、とにかく明るくて楽しいコンサートにしたいと思っていました。このコンサートが「終わり」ではなく、ここから何かが始まって、それがずっと先にまで繋がっていってほしいと気持ちがあったのです。
そこで、京都芸大の在学生はもちろん、京都にはクラシック音楽を学ぶ子どもたちがたくさんいますから、彼らにも出演していただくことで、京都の「未来の音楽シーン」を明るく華やかに描けるのではないかと考えました。
高野:京都コンサートホールでは、2019年からアウトリーチ事業に力を入れてきました。あらゆる方々に生演奏をお届けしてファン層を拡大していく、京都で活躍する若手音楽家の活動の場を公共ホールが広げていく――そういったことを目的とした事業です。このアウトリーチ事業と『Kyoto Music Caravan 2023』は違う事業のように見えるかもしれませんが、目指す方向性は同じです。今後もわたしたちは、地元京都ゆかりの音楽家を応援し続けるホールでありたいと考えています。